ポタポタと天井から水滴のしたたる洞窟の中を、懐中電灯を片手にプリベンター達が奥へ奥へと進んでいた。
「つめてっ!たく何で水滴なんて落ちてくるんだよバーカ! いてっ!なんでこんな所に石が転がってんだよ!バーカバーカ」
小学生の様にモノにあたるコーラサワー。
彼の場合、転んだら自分のせいではなく石のせいにしちゃうタイプ。
「一々煩い男だ。ちゃんと足元を照らさないからだぞ。ほら、グラハムフラッシュ」
グラハムがコーラサワーに懐中電灯の灯かりをあてる。
「わっ! 眩しいじゃねぇか、このナルハム野郎!」
食ってかかるコーラサワーに対してグラハムは鼻で笑う。
「ふん。油断しているのが悪いのだぁあああ?」
コーラサワーに気をとられていたのか、グラハムも石につまずいた。
プリベンター・アホのコードネームは伊達じゃない。
「へっ!自業自得だバーカ! でもよーこんな所なんかに本当にMS(モビルスーツ)工場なんてあるのかよぉ」
コーラサワーが手元の懐中電灯を弄びながらブツクサ呟く。
「まぁ、砂漠の地下にMSの格納庫がある位だからなぁ。洞窟の奥に生産工場があってもおかしくないだろ」
デュオがちらっとカトルを見て答える。
デュオの言う『砂漠の地下』とはマグアナック隊のアジトの事だからだ。
それに気付いたカトルは少しばつの悪そうに苦笑した。
「デュオ、マグアナックの基地は地球圏統一国家になってからすぐに破棄しましたよ」
そしてチラリと懐中時計を取り出し文字盤を見た。
因みにこの時計、見た目はアンティーク調だが中身は最新式で、ライト付の電波時計。
さらにこの時計かなり名の通ったブランドの物。
こういう所でカトルのお洒落なお坊っちゃまらしさが出る。
「皆さん、洞窟に入ってそろそろ1時間になります。もしかしたら今回は空振りなのかもしれません」
先日この洞窟の奥に、OZの傘下にあった会社の1つが秘密裏に作ったMS生産工場がある、との報告を受けたプリベンター。
その工場の発見と破壊が今回の任務だ。
だが、この手の情報は信憑性も余り高くなく、空振りになる事も多い。
百聞は一見にしかず。
そういう訳でこういった任務にはプリベンター直々に調査に向かうようになっているのだった。
「……そうでも無さそうだぞ」
先頭を歩いていた五飛が突然立ち止まった。
「分かれ道だ」
五飛の指差す方向には、引きずり込まれそうな程沈んだ暗闇が、左・右・中央の3つに分かれて続いていた。
「前の工場の時も、分かれ道を作ってダミーにしてたもんなぁ。こりゃ今回はアタリかね。あーやだやだ。ハズレだったらさっさと撤収出来たのに」
デュオが嫌そうに呟く。
「特に目印になるようなものもないな」
「そうなると、三手に分かれるのが賢明だな。どうする?」
ヒイロの問いに答えたのは我らがコーラサワーさん。
「そりゃあ勿論、ジャンケンだろ!」
こうしてプリベンター一行は洞窟の暗闇でジャンケンをする事になった。
「ジャンケン」
「ポンッ!」
結果…
左ルートを進む事になったグーチームは、ヒイロ・デュオ・コーラサワー。
中央ルートを進む事になったパーチームは、五飛・ジョシュア。
最後、右ルートを進む事になったのはチョキチームは、トロワ・カトル・グラハム。
「洞窟の奥なので、何処まで電波が届くかわかりません。常に通信機の状態には気を付けて下さい。ダミーの場合でもアタリの場合でも、必ず連絡はしましょう」
カトルが、ヒイロと五飛に通信機を渡しながら注意を促す。
「「了解した」」
ヒイロと五飛も無線が作動するかを入念にチェックしてから返事をした。
「では、お互い健闘を祈ろう」
グラハムの挨拶で、各チームは洞窟の奥へと進んでいった。
こうしてプリベンター達は各々の道を進む事となった。
果たして彼らには一体何が待ち受けられているのだろうか…
* * *
「…はぁはぁ、こんな所まで来てしまった。だが、ここまで来れば奴も追って来ないだろう。しかし、ここは一体なんなんだ…?」
一つの黒い影が、洞窟の奥深くを進んでいた。
そしてその遥か後ろ。
「うふふ…僕から逃げようなんて、100万年早いよ…絶対捕まえるんだから」
もう一つの影が、前の人物の後を追うように同じく洞窟の奥を進んでいた。
(つづく…)
【あとがき】
今週になってから急に忙しくなってしまい、うまくまとまらなかったので、短いですが続かせます、こんばんは。
GWと書いて『ガンダムウイング』と読む。良い季節です。
次回からは各チーム編の話になる予定。
では。