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51 ◆nOn5y7/wn._00話

Last-modified: 2008-06-01 (日) 23:54:58

「ごめんなさい…ギル…ごめんなさい…」
「いいんだ…もう…」
陥落するメサイア。それは一つの戦争の終わり。
──結局は私の負けか。だが、私の考えが正しかった事もまた、証明された。
──そう、最強の遺伝子を持つキラ・ヤマトが勝った…所詮人は遺伝子に定められた運命からは逃れられないのだ。
子供のように泣き続けるレイを抱きかかえながら、デュランダル議長は一人思いにふける。
遺伝子情報から適職を割り出し、それを強制するデスティニープラン。しかしデュランダルには、それを実行する気は最初からなかった。
この戦いに負ければ、自分は死に、プランは消滅する。
もし勝てば…ナチュラルたるレイと、受けたコーディネイトが比較的少ないシン・アスカが、
最強たる遺伝子を持つキラ・ヤマトと、最高クラスの調整を受けたアスラン・ザラを打ち破る事が出来たなら
その結果を持ってデスティニープラン…ひいては遺伝子調整による強者を作る事の無意味さを主張し
ナチュラルとコーディネイターの融和の一歩とする、それがデュランダルの考えだった。
その後、糾弾されるであろう自分は一線を退いて研究者へと戻り、レイの延命手段を探し出す。それが理想だった。

 

しかし、彼は負けてしまった。今後世界がどうなるかは分からないが…出来ればレイの事だけでも何とかしたかった。
だから、彼は賭けに出ることを決める。

 

──マルキオ導師。あなたに預けられたこの力、悪いが返す事は出来そうにない。
──最早この力ではこの戦いの結果を変えることは出来ないだろう。
──だから…私は我が息子のために使う。

 

「レイ…一つ、聞いて欲しい」
「ギル…」
「君は…生きろ。君の体を治す事が出来るかもしれない、その場所へ君を飛ばす。」
「…? 何を言って…嫌だ、俺はギルと離れたくない!」
「良いから行け。君まで私に付き合うことはない…その場所で、もし体が治せたなら…いつかこの世界に戻り、
 君が戦う理由、自らのような者が二度とでないようにと…そのために、戦ってくれ。」
「ギル、何を…」
「行くんだ…私最後のお願いだ…」
「……ギルが何をするのか、俺には分からない…だけど、ギルがそこまで言うなら…」
「良い子だ…だが、これが最後、もう、君の意志で…さぁ…さよならだ…」

 

デュランダルが手をかざすと、何処からとも無く光が集まり、それはレイの周りで渦を巻く。
そして光が飛び散り…もう、そこにレイ・ザ・バレルは居ない。

 

「レイは…行ってしまったのね」
今までデュランダルに寄り添い成り行きを見守っていたタリアが、心なしか寂しそうに言う。
「あぁ。巣立ちの時だよ…どんな子にだっていつかは来る事だ…」
「でも…やっぱり寂しい…?」
「少しね…だが…これで良いんだ…」

 

C.E74年、6月。開戦から一年を待たずして戦争は終結した。
プラント側の指導者であったギルバート・デュランダルは死亡、メサイアは陥落し、プラントは降伏。
ブレイク・ザ・ワールド事件から始まった、地球の人口を大幅にすり減らした戦争は終わったのだ。
ニュートロンジャマー・キャンセラーが普及し始め、
エネルギー問題は僅かながら解決へ向かっている。治安、経済も上向きだ。
生き残った人々は明日が平和であることを信じているし、
実際、混乱は多々ありながらも復興ペースは当初の予想より大幅に早い。

 

しかし、問題が無いわけではない。その一つが脱走兵や失業軍人の海賊化である。
彼等の跋扈により、宙域の通商路が大きな打撃を受けており、特に地球外国家であるプラントには大きな影響が出ている。
それに対してプラントは彼等を駆逐するという名目で新しく部隊が立ち上げ、その部隊は旧デュランダル派の人間を中心に編成される事が決まる。
隊長に選ばれたのはかつての英雄、シン・アスカ。
もっとも、この抜擢に忸怩たる思いを抱く者も多かった。確実に戦果と評価が見込める任務であり、
実績が無い「自称、ラクス・クライン派」にとっては何としても得たい地位であったからだ。
しかしこの抜擢はキラ・ヤマト元帥が中心となって決めた事であり、表立って異を唱えるわけには行かない。
そこで彼等は団結した。そう、団結して嫌がらせをする事にしたのである。
その内容は、「どうせ自分たちに利益が回らないならこの隊を使って旧デュランダル派を減らせるだけ減らしてしまおう」というものであった。

 

結果、アスカ隊は大した補給も受けられずに隊の規模から言えば大きすぎる作戦を優先してまわされ
地球内から月の裏のL2まで駆けずり回りながらその身をすり減らすのが任務となってしまった。
最早懲罰部隊さながらで、シンは彼方此方駆けずり回って物資を集め、
軍内の知人に頼み込んで隊員の転属先を探し、パイロットを鍛え上げて戦死率を下げる努力続けるたが、
それでも戦死者が途切れる事は無かった。
当初副隊長であったルナマリアとは別れた。別に気持ちが離れたわけではない。
ただ、この部隊に付き合わせたくなかった。だから部下に悪い噂を流してもらってまで、強引に別れ、そして転属を命じた。
もっとも、ルナマリアはその事も全部知っていたのだが。
話を戻そう。マスコミはそんな彼等を手放しで称えた。
先の大戦の英雄が率いる宇宙の平和を守護する部隊、少数の部隊で圧倒的多数を打ち倒す最強部隊、プラントも連合も大絶賛、と。
そもそもなぜそんな少数の部隊で戦わなければいけないのかを、態々指摘できるほど、戦後世界は余裕を持ち合わせていなかった。

 

そんなこんなで一年が過ぎ、パイロットの内、隊の発足から所属しているのはシンだけになった。
だが戦死者が出るたびに追加の人員がすぐにでも送られてくる。
当然のように、皆、本人や親類がデュランダル派の者ばかりであった。
それでも結果から言えば、部隊の規模からすれば奇跡のように死亡者は少なく、戦果は大きいかった。
たった十五機で八十機の海賊と戦い、敵組織を全滅。
九機帰還。これが奇跡ではなくなんだというのだ。

 

シンに授与された勲章は三十を超えた。だが、シンが欲しかったのはそんな物ではなく、隊の解散の知らせだった。
パイロット定数十八人、部隊がこなした作戦数五十一回、敵MS総撃端数、七百六十機、隊発足から一年での戦死者、百四十二人。
それが、シンの部隊の戦績だった。

 

そしてC.E.75年、九月。
任務からの帰還途中、シンの部隊は偶発的に戦闘に遭遇。商船が海賊の襲撃を受けているのを発見し、すぐさま隊員を伴って出撃したのだ。
しかし敵の数が多い。最近、軌道近くで大型の船を狙う大規模な海賊が出てると聞いていたが、おそらく今戦っている相手がそれなのだろう。
ならばどちらにしろいつかは戦っていた相手、機体の調子が良くないが、今片付けておいたほうが良い。そう考えて、愛機デスティニーを駆る。
ともかく数を落とし、少しでも隊の負担を軽くする事に集中。自分も、自分が鍛え上げてきたパイロットも、
海賊相手に一対一ならそうそうに負けないと言えるだけの自負がある。自分は敵を落としながら、複数相手を強いらている者がいれば救援に入る。
見る見るうちに敵機は数をすり減らし、最初四十機ほどいた敵機は今や半分以下。対し味方の被撃墜は現在一機。
「良し、一気に方を付けるぞ。散開して各自潰せ!」
これが間違いだった。最早勝てないと踏んだ敵は、隊長機を落とし指揮系統が混乱する間に逃げる事に決めたのである。
一体十五、流石にシンでもこれは苦戦した。
ビームライフルでしつこく狙ってくるゲイツを切り裂き、後ろから斧を振り下ろしてくるザクを蹴り飛ばす。
頭方向から体当たりを仕掛けてきたシグーの頭をパルマフィオキーなで掴んで破壊、中距離からバズーカを狙うジンにエネルギー砲を向けたところで
下方向からのゲイツRのレールガンが直撃した。
「隊長、大丈夫ですか!」
そこでやっと援護が入る。今まであまりにも密集していたため援護しようが無かったのだ。
「…あぁ、なんとか。こいつがPS装甲で助かったよ。」
が、これで終わりではなかった。いきなりデスティニーのスラスターが全開。どうやら衝撃で誤動作を起こしたらしい。
連戦続きでマトモな整備が出来ていなかったのが運のつきか。
いくらコーディネーターと言えど、そのふざけた推力から来るGには絶えられず、気を失った。
「隊長!? そっちは地球ですよ!? 何処へ行く気ですか!?」
「………」
シンは気を失っている。当然ながら返事が出来る状態ではない。
「おい、なんか変だぞ。だれか隊長の事助けろ!」
それに対し答えるのは、シンの次に古くからこの隊にいるパイロットだった。
「……もしかして隊長、態とやってるんじゃ?」
「はぁ!?」
「いや、この部隊の発足から隊長一日も休んで無いじゃん。もう一年以上。
 もう限界だろ、普通に考えて。でも上に嫌われてるから休みもらえないし。
 でも敵の攻撃に吹っ飛ばされて地球に落ちたことにすれば帰還の手配が出来るまで休暇なわけだし、デスティニーには大気圏突破能力あるし。」
「なるほど……ってんなわけあるか! 早く誰か隊長助けろって!」
そんな事をしている間に、デスティニーは隊員たちの機体では追い付けない所まで移動していた。

 

地上、ソロモン諸島を中心とする島国オーブ。
その百余の島のひとつに、盲目の導師、マルキオの住む家がある。
彼はアスハ家の所有する邸宅から、孤児たちを連れて、古巣のこの島に戻っていた。
マルキオがいつもの様に、孤児達に本(点字で書かれた物だ)を読み聞かせていると、急に玄関が慌しくなる。
どうやら外で遊んでいた子供たちが帰ってきようだ。

 

「導師様、何か降って来るよ!」
「ながれぼしー」
「ばっか、あれは流れ星なんかじぇねぇって!」

 

どうやら子供たちは外で何かを見つけたらしい。
その子達に連れられ外に出ると、既に周辺に住む人々が集まっていた。
何人かは望遠鏡等も使っているようで、子供たちが見せてくれるようせがんでいる。
もっとも、盲目のマルキオには空に何があるのかは見えない。

 

「何が見えますか?」
「MS…ですかね。望遠鏡で見える範囲ですけど、人型のようです。
 しかしあのスピードでは着陸できないのでは無いでしょうか。」
「ふむ…事故か何かでしょうか。」

 

MSがこの島に落ちてこないか、避難した方が良いのではないかと相談を始める村人たちをよそに、
マルキオはその場をそっと離れ、懐から小さな本を取り出す。
それはこの世界にある筈の無いもの、この世界以外の場所の言葉で書かれた本、デバイスと呼ばれる物の一種。
本を静かに開き、念を凝らす。感知の魔法だ。

 

(西側の空…みつけた……この反応、確かに人間の物。しかし意識を失っているようだ…このままでは危ない。)

 

ページをめくり目的の項目へ。そして再び念を凝らす。
どうやら飛行魔法の一種らしい。対象となった落ちてくるMSの、その速度が減少して行く。

 

(人家の上に落とすわけには行かない…この島の周囲の海に落としますか。)

 

不自然とならないよう注意しながら、軌道を修正。ちょうど目の前の海域に誘導する。

 

(本来なら、この世界で魔法を使うのはいけない事なのですがね…)

 

MS…デスティニーがこの島めがけて迫ってくるのを見て、住民が慌しく散って行く。
そして、大きな音と共に、着水。十分に減速していたため、少々大きな波が起こるだけで済んだようだ。
再び集まってくる村人たちに、パイロットの救助と、自分の家に運ぶように頼むと、マルキオは子供たちを連れて家に戻った。

 

「しかし、どうしたものですかね。」
本来ならすぐにオーブ政府と連絡を取り、本島の病院に運ぶなりするはずだったのだが、運ばれてきた人間を見た孤児の一人が
「あ、この人見たことあるよ。アスカ隊長っていって、宇宙で海賊と戦ってるってテレビで行ってたぁ。」
と発言。それがマルキオの胸中を複雑にしていた。
「シン・アスカ、ですか…」

 

──seedを持つもの。その中でも、唯一キラ・ヤマトに肉薄する力を持つ戦士。
──あちらに送り込めば、確実に有益な結果となる。少なくとも、今まで送り込んだ人間たちの助けにはなる。
──だが、この男はこちらの世界に必要な人間かもしれない。
──死んだのに?
──そうだ、自分が助けなければシン・アスカは確実に死んでいた。先に送り込んだ彼等と条件は変わらない。
──ならば。

 

ミッドチルダ、首都クラガナン。
機動六課設立が二月後に迫った今、六課部隊長となる予定の八神はやての仕事量は、まさしく天井知らずだった。
今日も今日とて相方のリィンフォースⅡと共に、山と詰まれた書類相手に格闘している。
「あーしんどー。流石にこの量は殺す気とちゃうか? 多分今迄で一番多いで、この量は。」
そんなはやてのぼやきに、律儀にリィンフォースⅡが答える。
「そんなことありませんよ。昨日は更に多かったはずです。」
「まぁ昨日はは他に回せるんが多かったしな…やば、もうこんな時間や。リィン、ちょっと来客予定入ってるからあと頼むわ。」
「はいです。」
そう、今日は部隊員についての件で、ある人物との会談が入っていたのだ。

 

ロビーに入ると、既に目的の人物は来ていた。
その人物もはやてを見つけたようで、立ち上がると敬礼してくる。
相変わらず律儀な男だと思いながらも、はやては彼の正面へ向かう。
「久しぶりやな、アイマン三尉」
「ええ、八神二佐。どうやらお疲れのようで。」
「はは…分かる? まぁいいわ。こっちも仕事残してるし、さっさと終わらせよ。」
「そうですね。」
そんな会話をしながら、ロビーの隅へ。彼──ミゲル・アイマンもそれについて行く。

 

「で、フォワードの件ですが、とり合えず現段階では、二佐の個人戦力の方々と、
 高町一尉、ハラウオン執務官が確定と。」
数枚の書類を広げながら、確認を取る。
「そや、今んところ確定はそれだけ。ただ、ハラウオン執務官の知り合い二人、
 まだかなり若いそうやけど、能力では期待できそうなのがおって、
 多分その二人も入ると思う。あと、まだ分からんけど、私がめぇ付けてるのが二人。
 今度のBクラス試験見てからなのはと決めるつもりや。」
「そうですか。こちらのほうは、私とハイネはほぼ確定。ニコルもまず大丈夫でしょう。」
「モラシム一尉は?」
「断られました。本人も転属は望んでないようですし、上も渋ってます。」
「まぁ、そりゃそうやろうね。貴重な水中戦指揮資格持ちや、救助隊もそうそう手放したくは無いやろうし。」
仕方ないか、と言う風にはやては言う。
「そいでな、この分だと高町一尉とハラウオン執務官を小隊長、ヴォルケンリッターの二人を副隊長にして、
 その下にそれぞれ三人って事になるとおもうんよ。」
「三人ですか。と言う事は、私とハイネがそれぞれ編入、ニコルは後方ですか?
 確かにあいつの情報処理能力は高いですが、前線戦闘力を考えるともったいなくありません?」
「そうなんやけど、人数偏るのも問題やし、これ以上小隊員の数増えると小隊指揮官資格やと指揮取ることが出来へん。
 あと一人、どっかから引っ張ってきて、四人づつの三小隊にすることも考えたんやけど…」
「総クラス制限、ですか。確かに、任務を考えるとBクラス相当の人間が必要になる。」
「そうなんや。例の二人がBクラス受かることを前提にすると、あとCクラス一人分しか余裕ないんよ。
 これ以上隊長陣にリミッターかけるのも問題やし。」
「…つまり、それなりの経験と強さがあって、なおかつBクラスを持ってない人間が必要、と。」
「そうゆことなんやけど、流石に無理な話やね…」
はぁ、とため息。そんな都合のいい人間が、そう簡単に転がってるはずもない。
その時だった。
「おい、はやて。私だ、ヴィータだ。」
はやての前に通信ウィンドウが現れる。
「へ? どないしたのヴィータ。」
「街ん中で次元漂流者を見つけた。それで、ミゲルが来てるんだろ!?」
突然名を呼ばれたミゲルが怪訝そうな顔になる。
「来てるけど…なんで次元漂流者の連絡をあたしやアイマン三尉に?」
「えぇとだな、とり合えず映像回す。ミゲルも見ろ!」
何だ何だ、とミゲルははやての横に移動、送られてくる映像を見て、目を見開く。
「同じなんだよ! 着てる軍服と持ってるデバイスが! C.E.の人間だ!」

 

しばしの沈黙。先に切り出したのは、はやてだった。
「…どうやら、何とかなりそうやね。」