556 ◆GHLUSNM8/A氏_第一話

Last-modified: 2011-09-06 (火) 23:42:49
 

第一話 「クルーゼ隊だよ、アムロさん!」

 

アスラン・ザラ、イザーク・ジュール、ディアッカ・エルスマン、ニコル・アマルフィ。
これから生死の狭間を共に往く戦友たちと会ったのは、今日が初めてだった。

 

(若いな………)

 

それが感想だった。
こんな子供たちが戦場に赴かなければならないほど、プラントは人的資源を持たないのか。
アムロはなぜか無性に悔しくなった。

 

ザフト第7演習場。ここでアムロ達はラウ・ル・クルーゼ直々に指導を受け、
演習をこなしたのちに任務につくことになっている。
今はブリーフィング・ルームでクルーゼの到着を待っているが、
予定では彼らの隊長がやって来るのは一時間も先だった。

 

「アムロさんは僕達の中で一番年長らしいですが、おいくつなんですか?」
人懐っこい笑みを浮かべて聞いてきたのはニコルだった。
彼には生来の愛らしさというか、庇護欲をかきたてる、そんな愛嬌を持った少年だ。
アムロも自然と柔らかな表情になってしまう。

 

「僕は27歳だ。君たちとは一回りも年が離れているな」
無論、この年齢も紙の上に記されたものでしかなかった。
本来の年齢を知らないアムロは、この与えられた人生を語る他ない。
恐らく20代後半だろうとアムロ自身も見ていたが、人によってはもう少し若く見える場合もあった。

 

「もう少しお若いかと思いました」
このような具合である。ちなみにアムロに返したのはアスランだ。
彼はあの歌姫、ラクス・クラインの許嫁である。それを聞いた時にはアムロも驚いた。
ちなみにアスランは実直な少年で、その不器用さをアムロは大いに気に入っている。

 

「27歳だと?ふん、信用ならない奴だ」
攻撃的な目を向けるイザーク。
とはいっても、その敵意はアムロにとって反抗期の子供のようなものでしかない。
「その年齢で貴様がどうやってアカデミーを卒業できる。素性も明かせない奴に、背中を任せられるか!」
「言い訳は出来ないな。僕も自分がどんな人間なのかよくわからないんだ、
 君たちに不審がられても仕方がない」
「記憶がないらしいが、それも疑わしい。どんな小細工をしたか知らないが、
 俺はお前のように鶴の一声でクルーゼ隊に入ったわけではない。よく覚えておけ!」
「まぁイザーク、その辺にしとけよ」

 

アムロとイザークの間に入ったのはディアッカだった。
「アムロさんとやら。残念だが俺もイザークと同じであんたを信用できない。
 アスランやニコルとは違うからな。でも同じクルーゼ隊なんだ、
 仲良くとはいかないが、よろしく頼むぜ?」

 

ディアッカの笑みは少し大人びていた。年の割には彼は成長しているようにアムロには見受けられる。
反発する者でも組織で動く以上は………という心構えは子供に似つかわしくないが、
軍人である以上それは不可欠なものだ。

 

「気にしてはいない。さっき会ったばかりなんだ、信用しろという方がどうかしている」
「でも僕は、アムロさんが悪い人な気がしません」
「ニコルがそう思ってくれるなら、それでいいさ。
 人の感情にまで何かを強要するなんて、してはいけないことだろう?」
「そうですね。でもイザークともディアッカとも、きっと仲良くなれますよ。彼ら、根は優しいですから」
「無駄な事は喋るな、ニコル!」

 

イザークは語気を強めて怒鳴る。となりのディアッカは肩をすくめ、やれやれ、とため息をついていた。
話だとクルーゼ隊に派遣される彼ら「赤服」はもう一人いるらしいが、
そのラスティ・マッケンジーは諸事情により合流が遅れるそうだ。

 

突如、部屋のドアがノックされる。
「クルーゼだ。入るぞ」
「「「「「!!!」」」」」
予定よりもだいぶ早く、彼らの上官は到着したようだ。
アムロ達は慌てて身だしなみをチェックして、整列する。
「どうぞ、クルーゼ隊長!」
そして全員の整列を確認したアスランが、張りのある声でクルーゼに応えた。
ガチャリ、とドアが開く。そこに立っていたのは、仮面をつけた男だった。

 

「私が君たちの隊長、ラウ・ル・クルーゼだ。君たちには「バキィィ!」ぐはあああああ!!

 

ニコル「ちょ、アムロさん!?」
イザーク「貴様ぁぁぁ!クーデターかーーー!?」
「はっ!?すまない、仮面が妙にイラついて………」
アスラン「だからって殴ることないじゃないですか!!」
「なんだか因縁を感じるんだよ、っとそれどころじゃない!隊長、申し訳ございません!!」
グフゥ………!か、構わんよ。君は記憶喪失によって情緒不安定な所があるらしいからな。
 これからは気をつけてくれたまえ」
「努力します!」
「(いや努力とかじゃなくてだな…)とにかく、君たちにはこれから即訓練に移ってもらう」
「た、隊長!そんな危なっかしい奴は戦場に出すべきではないのでは!?」
「そうもいかんさ、イザーク。彼は『特別』なのだから」
「クッ…!了解しました」
「たとえ私個人がいくら嘆いても、評議会はザフトに彼を縛り付けるだろうさ………
 だろう?『アムロ』君」
(白い服…なんかいいなぁ。欲しいなぁ)

 

アムロは全く聞いていなかった。