901◆GbvohmL8bU_第39話

Last-modified: 2015-03-16 (月) 01:19:10

無事に大気圏を突破したアークエンジェルは高度を落とし、滑空している
「地球・・・いろいろあったけれど、なんとか戻ってこれたわね。索敵頼むわね」
「了解・・・艦長!着水予定ポイント付近に連合の艦艇が多数!」
(護衛ってことかしら?)
「わかったわ。このまま予定ポイントに向かいます」
『全艦に連絡します。
まずは、無事に大気圏を突破いたしました。このまま減速し、着水します。
着水の衝撃に備え、なにかに捕まっていて下さい。
まもなく着水します』
「アークエンジェル!着水まであと10m!9、8・・・1m!着水!」
マニュアルに沿って十分に減速していたアークエンジェルは無事、着水に成功した。
「艦内に異常がないか確認を。あと、現在地は?」
「現在地は・・・オーブ近海、予定ポイント付近です」
「ありがとう。このままオーブに向かって微速前進」
ピピピ
「連合艦から通信が入ってます」
『連合軍最高司令部の統合作戦室所属、ウィリアム・サザーランド、階級は大佐だ』
『マリュー・ラ』
『傍受の可能性があるため連絡事項のみを伝える。整備員とパイロットにも通信を繋げておけ』
『了解しました』
『1つ、フラッグの全データは確実に削除すること。
1つ、アークエンジェル並びに艦載機は、オーブ到着後に礼という名目で整備と補給を受ける。
1つ、乗組員はオーブで休暇の後、アラスカに向かう。その際に我が艦艇が護衛に入る。
1つ、ヘリオポリスからの志願兵はオーブ到着後、兵役を継続するか選択する。まあ連合を辞めてもオーブ軍から勧誘、もしくは強制されるだろうがな。
1つ、カタパルトハッチを開け、そこから避難民に外を見せろ。オーブ領海に入ったらマスコミのヘリが空撮に来る。以上
ああ、後、ストライクのパイロット、オーブ到着後にアズラエル氏がお会いになられる。粗相の無いようにしろ』
用件だけ伝えるとそのまま通信を切ってしまった。
・・・
「か、艦長、オーブの艦隊が接近。まもなくオーブ領海に侵入します」
「え?ええ、オーブ艦隊が接近しているから早口だったのね。
うん、避難民たちにカタパルトデッキに行くように指示を。
アークエンジェルはオーブ領海の外で一旦停止」
「了解。機関停止します」

 

アークエンジェル格納庫
待機していたキラとムウは整備員と一緒にサザーランドからの通信を聞いていた。
「・・・マードックさんよ、どうすっか」
「フラガ大尉か・・・おまえら!荷物を片付けするか固定しろ!民間人が来るから、見せれないものはシートで覆え!」
サザーランドのインパクトが強かったのか、いまだに、( ゚д゚)ポカーンとしているキラにムウが話しかける。
「キラ、戻ってこい」と言い、肩をゆする。
「え?あ?ムウさん?」
「さっきの大佐さんの話は聞いていたな?」
「聞いていました。いまだに理解が追いついてませんが」
「ま、確実に勧誘は受けるわな」
「ムウさん。なんで確実ってわかるんですか?」
「簡単だ。オーブ軍は実戦を経験していない。
で、だ。お前は数少ないモビルスーツの操縦が出来、尚且つ実戦を経験している。
新兵ってのは使い物にならないからな。経験者ってだけでも誘う理由になる」
「面倒ごとの匂いがプンプンしますね。ハァ」
「幸いにもオーブに着く前にわかったんだ。考える時間はある」
キラとムウの会話が一段落したらちょうど艦内放送が流れた。
『これより、オーブ領海に入ります。尚、付近にいるのは護衛のオーブ軍です。ご安心してください』
周りを見渡してみると、いつの間にか避難民達が格納庫にやってきていた。それを整備員たちが注意事項を伝えている。
「海を見れば戻って来たって気分になるんでしょうか?」
「コロニー育ちじゃなきゃそうだろうよ。しかも普段は絶対に行けない場所から見る特等席だ。自然と笑顔になるだろうよ」

 

アークエンジェルのブリッジ
「艦長、カタパルトデッキのハッチオープン完了です」
「わかったわ。カタパルトはロックできてる?」
「はい、電源を切って機械的にロックをかけてます」
「オーブのヘリコプターを確認」
「モニターに出して」
モニターには非武装のヘリコプターが映っており、カメラマンが身を乗り出して撮影している。
「ヘリコプターに通信、本艦はこのまま直進するので正面にはあまり近づかない様に注意を」
「了解。伝えます」

 

ヘリコプターは少し迂回し、左舷にいる避難民から撮影を始めた様だ。
避難民は疲れてはいるが、終わりが見えている為、笑顔で手を振っている。
その映像は生放送で流れている。
1部の識者が、連合の戦艦が入港することへの危機感を煽っているが、長い道程をザフトから襲われながらも無事に送り届けてくれたアークエンジェルには、基本的に歓迎、友好、感謝が多数を占めていた。
アズラエルが世論を誘導したのもあるが、手を入れなくてもほとんど結果は変わらなかっただろう。
こういった空気の中、アークエンジェルはオーブに入港していった。

 
 

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