CCA-Seed_125氏_第15話

Last-modified: 2007-11-10 (土) 19:11:01

ガルナハンの町にて

当初、不安要素だらけだった作戦だったが無事に成功した。ザフト軍も相当の被害を出したが、それでも予想に反して軽微なものであった。
というのもシン・アスカ、アスラン・ザラ、そしてアムロ・レイの3名が傑出した働きをしたからである。

作戦開始と同時に、シン、アムロはコアスプレンダーで坑道に突入、アスラン達が敵を引きつけている間に敵基地への奇襲を果たす。
即座に各々がフライヤーと合体し散開、シンはMAと周辺のMSの排除を試みるも、ビームライフル一丁という心許無い武装では如何ともし難く…
そんなときに駆け付けたアスランのセイバーとの連携を見事に果たし、全機撃墜に成功。
アムロは敵の基地内に侵入し、内部にいたMS及び残存勢力を排除しローエングリン砲台の破壊に成功し敵勢力を完全に無力化。
作戦前の憂慮を吹き飛ばす快勝であった。
そして今に至る……

カツカツカツカツ
ミネルバの艦内通路を歩いているアムロは周囲の喧騒から離れるように、静かな場所を探していた。
今、ガルナハンの町はお祭り騒ぎ状態だ。
連合の支配から開放されたことにより民衆は溜まりに溜まった鬱憤を晴らすかのようにはしゃぎ、踊り、笑っている。
アムロも作戦成功の影の立役者であるレジスタンスの少女が満面の笑みを浮かべてはしゃいでいるのを見たときは心が晴れたものだが……

「ふう…」

誰も来ないと踏んだパイロット控え室に入ると椅子に身を沈める。すると…どういうわけか溜め息が出てしまう。
天井をなんとはなしに仰ぎ見ていると、ガチャっ!と音がした。
顔を向けると、ザク・スプレンダーとともに作戦に携わった女性技師が入ってきた。

「あら、こんなところでお一人?」
「ああ、騒ぐのはそんなに好きじゃないんだ」

女を気にするでもなく目を瞑ったままアムロは返事する。そんなアムロに艶然と微笑みながら近づくと、隣に腰を下ろし…

「如何でした?『暴れ馬』の乗り心地は…」
「…振り落とされないように必死に掴んでたさ。まだ手が少し痺れてる気がするよ」

そう言って己の両手をかざす。
不意にその手が冷たいモノに覆われた感触に覆われた感触に目を開けると…技師が自分の両手で包み込んでいた。

「私、マッサージ得意なんですのよ?任せてくださる?」

アムロは何とはなしに自分の手を揉み解している女性の白くて細い指を見ていたが目を逸らすとポツリと口を開く。

「……君は、技術畑の人間じゃないな」
「…あら、どうしてそう思われるの?」

そう言っている間もマッサージは止めない。

「勘さ。さっきまでは確証はなかったが、こうして君の手の感触に包まれて確信したよ」
そう言うとアムロはゆっくり身体を向き直し、逆に女性の手を優しく掴むと両手を開かせた。女は黙ってされるがままだ。

「この手は技術屋の手じゃない。なにかしらの訓練を受けた……『兵士』の手だ」

違うかい?、と女性を見つめる。
その視線を真っ向から受け止めながら、しかし女はまだ微笑んでいた。だが、その薄めのサングラスに包まれた眼光は先程までとは違ったものになっている。

「どうして、そう思われるのかしら?」
「言ったろ?……勘だって。俺も…それなりに修羅場は潜り抜けてるんでね、多少の人を見る目はあるつもりだ」

遠目には、長椅子に座った男女が向き合って、手を握り合い恋詞を交わしているように見えたかもしれない。
だが、その場の雰囲気はそれとはあまりにかけ離れたものになりつつあった。それを破ったのは・・・・・・・

「………取りあえず、否定はしないでおくわ。アムロ・レイ」
今までとは顔つきや口調がすこし変わった。恐らくはこれが彼女『本来の仕事』のカオなのだろう。

「…少なくとも自分の立場は理解してるんでね、いつかは来るだろうとは思っていたよ」
「賢明な判断ね。でも…乗せられついでに話すけど、貴方の立場はもうちょっと複雑なのよ?」
「・・・・・・・・・」
「突如現れコーディネーターに味方する謎のナチュラル。経歴不詳、身元不詳、従軍経験はあるということだけどどこかは不明瞭。
なにより特筆すべきは、MSパイロットとしては文字どうり破格の技量を有す………ってね。警戒されないほうがおかしいわ」
「確かにね、自分でもそう思うよ」

これにはアムロも自分で言うのもなんだが、と苦笑するしかない。
改めて考えるでもなく、自分は怪しいな、それもとびきり。
自分の正体を知るのはギルバート・デュランダル議長とタリア、そして…この初めてこの世界に来て保護されていた『アソコ』だけだ。
こんな自分をデュランダル議長はよく雇い入れたものだと今でも思う…………いや、だからか…………

「他の組織も色々と嗅ぎ回り始めているわ。…こういう場合、ヒトのクチに戸は立てられないわね」
「ということは、君は情報部の人間か」
「さあ?どうかしらね」
そう言うとゆっくり手を離して立ち上がる。

「ひとつ聞いてもいい?なぜ、ローエングリン砲台を破壊したの?あのままいけば無傷で手に入れられただろうし、貴方にはそれが可能だった筈よ」
「作戦は『砲台の破壊』だ、『無傷で手に入れる』っていうのは範疇になかったと思うが?」

お互い目線を逸らさずにゆっくりと喋る。
……数刻の後、化かし合いに飽きたのか女はフッと眼光を緩めると、なにを思ったかおもむろにしゃがみこみ、アムロの唇に自分のソレを深く重ね合わせた。
お互い身じろぎせず、超至近距離にある瞳を覗いている
数秒か、あるいは数分か、定かではないがゆっくり女性はくちびるを離す……銀の架け橋を残しながら…………

「……わたしからのささやかな祝杯…受け取ってくれて?」
「……さもないと、後で手痛いしっぺ返しをもらいそうだな」

その答えに艶然と微笑みながら女性は踵を返し、部屋から立ち去ろうとする。
その背になにを思ったか、アムロが声を掛けた。

「よかったら名前を教えてくれないか。……初対面のとき言った名前は偽名だろう」

入り口で立ち止まった女性はサングラスを外すと切れ長の目でアムロを見つめると、
「……サラ。ただのサラであり、ただのオンナ…よ」
それだけ言うと退室する……後に残るはアムロひとり……………

とある執務室

「………そうか、ご苦労。命令あるまで休んでくれたまえ」
端末を切ると、男は…ギルバート・デュランダルはしばらく思案深げになにかしら考えている風だったが、立ち上がると少し離れた位置にあるテーブルまで歩く。
そのテーブルの上にはまだ指している途中のチェス盤が置いてあった。
自陣の中にある他のと比べてまだ新品の観がある兵士(ボーン)の駒を掴みあげるとおもむろにソレを眺める。

(アムロ・レイ…………ただの優秀な駒と思っていたが、予想以上だな……これほどとは……。いまのところ、計画の障害になるとは思えんが…)

敵陣に鎮座する女王(クィーン)に目をやると、傍にある騎士(ナイト)や城壁(ルーク)も目に入る。

(まさか…たった1つの兵士(ボーン)に女王(クィーン)と同じ力がある?)
その己の考えにフッと笑うとやや乱暴に卓上に駒を戻す。

「たかが一人の兵士(ボーン)になにが出来るというのか……なにも覆りはせんよ」
そう呟くとデスクにとってかえし、広げられている資料に目を通す。その中の一枚を手に取り、目を通すと…

「彼にはいくつか<鈴>を付ける必要がありそうだな…、アスラン・ザラはその役目を果たすまい…」

そこには、ピンク髪の歌姫が写っていた……『赤いハロ』と一緒に写り、微笑む歌姫の姿が……………

続く


おまけ1

「あれ?」
メイリンがパイロット控え室になんとはなしに入ると、アムロがソファーの上で長々と横になっていた。
そ~っと顔を覗き込むと

「寝てる…」
こんなチャンス、滅多にないよね、とばかりに姉の憧れ(とメイリンは思っている)の男性の顔をマジマジと見つめる。

(う~~ん、顔はまあまあ…かな。でも…これで30歳なんて……童顔だなぁ、普段はキリってしてるからそうでもないんだけど)
(あれ?眉間に皺が寄ってきた……うなされてるのかな。もごもご唇が動いてるし…)

声を聞き取ろうとさらに顔を密着させようとした……その時!!!

「うわっ!!!」
「きゃんっ!!!」
いきなりガバっと目を開きアムロが起き上がった。おかげで超至近距離にいたメイリンは驚きを通り越してビビッた!!
そのビビリのあまり、すってんころりんと尻餅をついてしまった。

「…っ!?…メ、メイリン?」
「えっ!?あ、えっと、その…あああのっ、アムロさんが寝てるのが見えたんでっ!そのっ…起こそうと…」

尻餅をついたまま手をあたふたと振り振りする。

「あ、ああ。あれから横になったから……寝てしまったのか」
「……あ、あのっ、うなされてたみたいですけど……」

なんとか話題を変えようとメイリンは話を逸らす。

「……ああ、恐ろし、もとい、変な夢だった。見覚えのある仮面を被った赤いヒヨコが…………っ」
「か、仮面を被った赤いヒヨコ?」

メイリンは想像しようとしたが……できなかった。
それにしても……汗を流しながらうろたえ気味のアムロを見ていると………………翌日、彼女はこう述懐している。

「あのときのアムロさん……ちょっと可愛かったかも☆」
そのことをうっかり、よりによってっ!姉であるルナマリアの御前でのたまったものだから…それはもう………。
シンですら
「日常で<梅干>が脳裏で弾けたのは後にも先にもこのときだけだった」
と言うほどのモノだったという……………げに恐ろしきはオンナの嫉妬か、メイリンの迂闊か………

「ところで……その、メイリン…」
「は、はい?」
「…その体勢は早く直してくれると、その、助かるんだが…」
顔を背けつつ喋るアムロに指摘されてメイリンはやっと自分の状態を把握した。
つまり、年頃の乙女としては問題ありの!腰を抜かしてスカートがずりあがった!!それも中身をアムロに向けて!!!

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッッッ!!!!!!!」
この後、両者の間でどういうやりとりがあったかは……二人の名誉のためにも伏せておく。


おまけ2
とあるホテルの一室

『フラグ1……マダオワランヨ』

と、<赤くて丸い物体>が窓を眺め(ているように見えなくもない)ながら、何事か音声を発していた。
それを、キングサイズのベッドに寝そべり、モデル顔負けの牝鹿のような肢体を泳がせて寛いでいた少女は「アラ?」と思った。

「アナタ、何時の間にデュランダル議長の音声を登録したの?」

そんな機能あったかな?と首を傾げていると、その<赤いハロ>がテーン、テーンと跳ねてきて枕元にとまり……

『キミハ‘ШПЮЕИЖ‘トイウオトコヲシッテイルカネ』
「え?なんか変な機械音が混じってて聞こえなかったわ」
『・・・・・・・・』
「壊れたのかな…修理に出さないと」
『!!ッ・・・・ハロ、ハロハロ!!テヤンデイ!!ミトメタクナイモノダナッ!!!!』
「あら…、もとの音声に戻ってる…ま、いいかぁ。あーあ、次はディオキアで慰問コンサートかぁ……」