Char-Seed_1_第02話

Last-modified: 2007-11-10 (土) 19:25:59

シャアのデュエルに続くように次々と自立して行くMS達――!
ツインアイが点灯し、グレーの装甲が各々の色を成して行った。

「(OS調整がまだ完璧でないからな……
奪取された機体も捕獲出来るやもしれん)」

唯一OSがまともであるアドバンテージは大きいとシャアは予測し、メインカメラを奪取された5機に向けた。
――しかし、それは甘い考えであった。
バーニアを吹かせて次々とスムーズに飛び立って行く機体は、OSの稚拙さとは無縁であったのだ。

「この短時間でOSを書き換えただと!?」

文字の上だけで知っていた存在――コーディネイター。
これほどまでに優れているとはシャアは思ってもみなかった。
その油断が反応を遅らせ、みすみすと飛び去って行くのを許してしまったのだ。

「ちぃ!」

遅れて後を追い掛けたが、ライフルを撃つ間もなく4機は漆黒の宇宙へと消え去った。

「認めたくないものだな……何歳になっても、過ちというものは……!」

自らの失策に歯噛みしながら、周囲の状況を確認した。
すると、標的にされた機体のうちの一つ、ストライクが未だ自立したまま立ち尽くしているのに気付いた。

「(友軍が確保したのか……?)
ストライク応答せよ!」
『……シャア少佐!?』
「ラミアス大尉か!?」

通信回線を開きストライクとコンタクトを取ると、
本来は技術士官であるマリューが操縦悍を握っていた。
恐らく危機を免れる為の苦肉の策であろう。

『機体をアークエンジェルに……きゃあぁぁ!!』
「大尉!!」

ストライクを襲う弾丸――
なお奪取を試みる敵MS、ジンから放たれたものだった。

「冗談では無い!!」

ペダルを床まで踏み付け、一足飛びに距離を詰める――!

「堕ちろ!」

デュエルのサーベルが最大の急所であるコックピットに突き刺さり、
ジンは壊れたブリキの玩具のように軋みながら倒れた。
メインカメラを周囲に向けたが、もう敵はいないようだった。

「無事なら返事をしろ!大尉!」
『だ、大丈夫です……フェイズシフトが有りましたから……』
「よし。何処か安全な場所は無いのか?」
『アークエンジェルなら……』

新造艦アークエンジェル。
開発したMSの運用を目的として製造された戦艦である。
流石に戦艦を奪うキャパシティなどあるはずもないとマリューは判断した。

「とにかく撤退するぞ。
私はストライクの武装と……あのジンを回収する」
『ジンを……ですか?』
「何かの足しになるかもしれん」
『了解です……お先に失礼します』

よたよたと歩き始めるストライク。
鮮やかに去って行った『兄弟』とは対照的な光景であった。

「恐ろしいものだな……
コーディネイタというものは……」

人類の革新と言われたニュータイプですら、
あのような真似は到底出来るはずもない。
コーディネイターとは人類とは似て非なるものなのだろうかと、
シャアは自問してみたが答えが出るはずも無かった。