DEMONBANE-SEED_ですべのひと_04_4

Last-modified: 2013-12-22 (日) 19:27:53

 前略 母さん、お元気ですか。

 僕、キラ・ヤマトは今

「ぬぅはっはっはっはっ! ドォクタァァァァ・ウェェェスト!」

 元気に悪役をやってます。

「僕は、なんでこんなところにいるんだろう……」

「自分で言ったことロボよ」

 いやわかっちゃいるんだけどね。

「三つの心が一つになれば、一つの回路は100万パワー(当社比)!

 三位一体・真(チェンジ!)機動戦士スーパーウェスト無敵ロボSEED ― 所詮この世は諸行無常 ―、

 これさえあればデモンベインなど恐るに足らず!」

 ドギャ―――ンギュルギュルギュ……

「あだだだだだぁ!?」

「やめてよね、僕が本気になっても鼓膜はどうにもならないじゃない?」

「折角の出番に水を差すなであーる! 出番ブレイカー!」

 心外だなあ。

「まあ、よい。見せてもらうのである、貴様の調整したOSの性能とやらを」

「で、本当にデモンベインは来るんですか?」

「心配ご無用ロボ。何故ならダーリンとエルザは赤い糸で結ばれているロボ」

「へ、へえ。そうなんだ」

「主に亀甲縛りで」

 いや待とうよ。

「そんな話をするうちに、我輩のライバルはやってくるのである。ほれ」

 言われて空を見る。

 其処には、燃えるような五芒の星が浮かんでいた。



―――正しき怒りと憎悪に応え

―――我等は魔を断つ剣を執る



「「汝、無垢なる刃―――デモンベイン!!」」

 五芒星の浮かぶ空から、機械の、鬼械の神が招喚される。

 その名はデモンベイン。最弱無敵のデウス・マキナ。

「また性懲りもなく来やがったな、ドクターウェスト!」

 搭乗者、大十字九郎。

「なに、また倒せばよいだけのこと!」

 魔導書、アル・アジフ。

 彼等が駆るデモンベインに、断てぬものなし。

「覚悟しろ、ドクターウェスト!」

『ふん、大十字九郎。今までの我輩と思うなよ?』

「もう聞き飽きたわ」

『そうではない。今回は特別に超豪華オブザーバーを用意したのである』

「いや誰だよ」

 超豪華オブザーバー。

 大層なことを抜かして、一体誰なんだろうか。

『いや誰だよと聞かれたら!』

『応えてあげるが世の情けロボ!』

「いや、それもう変わってるから」

『(゚д゚)』

 こっちみんな。



『と、とにかく! 貴様のよく知っている人物なのである。ほら、何とか言え』

『何とかって』

『早く言うロボ』

『だからそんなこと急に……』

「えーと……誰だ?」

『気づかれんとは。ああ、可愛そうなキラ、あなたは我輩が守るから』

『あなたって人は……』

「……ああ」

 なんというグダグダ。伝わらなかったらどうなっていたか。

「あやつめ……ブラックロッジに加担するなどと、どういう頭の構造をしておる!」

「洗脳か? それとも脅迫か?」

『失敬な! いくら我輩とてそんなことはしないのである!』

 勿論、過去何度もやりかけたということは言ってはならない。

 ただ単に成功していないだけ。

「ああ、そう……ん?」

「九郎、後ろ!」

 慌ててその場を飛び退くデモンベイン。

 その元いた場所を―――ビームが抜けた。

「あれは、モビルスーツ……?」

 確かに、そこには黒いモビルスーツがあった。

「これは……インパルスやウィンダム、フリーダムとも違う!?」

「まさか、ブラックロッジは我々の知らないところでこれを回収していたのか!」

『ピンポン正解ご名答であーる! そしてそれを元に我輩の辿り着いた三位一体!

 ひとぉつ! 格闘担当、エルザ!』

『はーいロボ』

『ひとぉつ! 射撃担当、超コーディネイター2、キラ・ヤマト!!』

『2って何ですか2って。僕は某野菜星人じゃないんですけど』

『そして我輩はモビルスーツの遠隔操作! 三人で一部隊、気分はスクランブルコマンダー!』

 それは黒歴史である。

 しかし、突如として姿を消すモビルスーツ。

「なに!? 何処におる!」

 幸いにも、動く音は消せていない。かろうじて気配が感じられる―――

「九郎、我等は囲まれているようだ!」

 6つほど。

 片方を避ければ片方に当たる。

 なんとか避けきっても破壊ロボが火器とドリルで攻撃してくる。

「ちぃっ、これじゃ反撃できねえ!」

「まずいな……これでは何処にいるか把握しきれん。それに、だ。

 あのビームライフルとかいう武器だったか―――魔術的な要素を含んでおる!」

 ―――魔術的な要素を含んでおる!」

 そう、ただの光線銃ではない。

 デモンペインの掌にあった遠距離武装が、この火器に流用されていた。

 そのせいで、デモンベインの装甲は溶けはじめていた。

『まだ試作品であるが、貴様を九郎ハードするには十分である。

「くやしいっ……姿さえ見えればこんな奴らなんかに……」

「よかったじゃないか、ウェスト印ミラージュコロイドダブルツインマーク2セカンドのせいにできて」

『んんんんんんっ!! 2が多いー!』

『キラ、耳栓ロボ』

『ありがとう、エルザ』

 キラも大変だな。しかしそんな思考も一瞬、

 調子に乗ったキ○○○の一撃にまた撃たれてしまう。

「くっ……シンはまだか!」

「あやつの機体は我らと違ってすぐに呼び出すことはできん、耐えろ!」

 多勢に無勢。

 デモンベインは、見えざる敵と見える敵に危機を迎えていた。







 大十字九郎。

 我が御敵。

 どのような世界でも、自らの運命を知らぬまま、翻弄される者。

 だが、たとえ死そうとも揺るがぬ善、正義。

 ―――何時からか。

 渇ききった、飢えに飢えた「僕」の最大の楽しみが、

 その御敵の育成物語になってしまったのは。

 最早数を覚えることは放棄した。

 時折奴は、異世界の者と共にこの混沌とした世界を戦う。

 それも何回だったか、数えてはいない。

 結末すらどうでもいい。

 「僕」は、今も「余」としてクライマックスを待つばかり。



「マスター、此方にいらしたのですか」

 来たか、エセルドレーダ。

「……大十字九郎ですか」

「此度の奴は、そうだな。仲間がどのような者か識る事ができれば、予想はつきそうだが。

 朱に交われば赤くなる。彼奴の母国の諺だそうだ」

 ……滑稽だな。

 このようなどうでもいい事も、知りつくした。

 勿論何も満たされることはない。何も。



「……彼奴め、この段階でそれを思い付くのか」

 また面白いことをする。だが、余の位置にはまだ果てしなく遠い。

 余と同じ最終舞台に上がれるのは何時か。

 今回は余とどの程度闘えるのか。

 今はただ、来るべき時に思いを馳せるのみ。

 焦がれて、焦がれて、焦がれて―――





 咄嗟だった。

 奴に一度使った手だが、機械人形に対しては効くかどうか信頼性に欠けていた。

 だが、それは思わぬ方向に作用した。

「これは―――」

 何気ないこと程忘れがちで、とても気づきにくい。

 関連付けなどさらに難しい。

 そう、例えば。



 ニトクリスの鏡。

 鏡は光を反射する。

 光はビームに近い。

「弾いた!?」

 つまり、ビームはニトクリスの鏡で反射できる。

 如何に特殊でも、鏡は鏡だった。

「おお、その手があったか! 汝も戦いに慣れてきたな、九郎」

 ぶっつけ本番は御免被りたいがな。

 だが、この偶然のお陰で一体の場所が分かるようになった。

「一気に行くぞ! 断鎖術式解放!」

 間合いを詰める。

 背後からビームの嵐が襲うが、最早この程度のビームは敵ではなかった。

「ニトクリスの鏡・ミラーコーティング!」

 背面を鏡でコーティングしたデモンベインは、

 反射角を調整して敵が撃った方向にビームを跳ね返す。

「アトランティス……ストライク!!」

 勢いを生かした飛び蹴りがモビルスーツを粉微塵。

 他の機体に注意を向けたその時、

「どわっ!?」

 ミサイル着弾、未来の世界のビームには無敵の装甲が脆くも崩れる。

『おのれ大十字九郎! 我等三位一体・超ミラコロ殺法を崩すとは流石であるな。

 だが、独力でいつまでも闘えるとは思わないことなのである!

 三号の恨み、貴様をミンチよりひでぇ状態にして晴らしてやるのである!』

『ダーリン、さっきのダーリンはエルザには輝いて見えたロボ。

 思わず本作品中二度目のうおっまぶしっロボ』

『もう僕を放っておいてくれ……』

 台詞だけで何行取る気だ、お前ら。

「しかしまだ厳しいぞ、九郎。この防御方法は酷く不安定だ」

 そう、不意討ちとはいえミサイル一発で吹き飛ぶ臨時装甲だ、長々と展開できはしない。

 それに、破壊ロボが射撃と格闘を分業しているせいでいつ砲撃されるか分からない。

 ドリルを避けてもそこから機関砲を食らってしまうわけだ。

 一撃必殺が出来ればいいのだが、隙を作らない限りは―――

「大十字さん、シンさんの発進準備が整いました」

 漸くか。

 二人で攻めればどうにかなりそうだが、確かPS装甲はビームに弱い。

 グラコロに狙い撃ちされたらそれこそ終わりだ。

『ミラコロである!』

「そうそう、ミラコロ……って人の考えを読むな!」

 とにかく、奴から隙をもぎ取るにはどうすればいいのか。

 今の自分の持っている手札。

 鏡。

『済まない、来るのに少し時間がかかった!』

「遅いぞ、このうつけが!」

「シン、インパルスの換装パーツには何があった!?」

『高機動戦闘のフォースと近接戦闘用のソード、砲撃支援用のブラストがある!』

「よし、ブラストにしてくれ。俺に考えがある」





 ビルが割れる。

 そこから出てくる想定のデモンベインはなく、代わりに小さな巨人が姿を現す。

「何でわざわざこんな……」

 シンには掴めなかった。九郎の意図が。

 わざわざ遠くの回収口から出てきてくれというのだ。

 まわりくどい。それに、レーダーくらい搭載している筈だ。

 今更こんなことで、何の意味がある?

「……いや」

 信じよう。

 九郎は今まで、自分が不可能だった事も可能にしてきた。

 なら、信じよう。



 引き金を引いた。

 インパルス中最大の威力を誇るビーム兵器・ケルベロスの咆哮。

 遠くに見えるドラム缶―――その遥か上をすっ飛んでいくビーム。

 其処には、デモンベインがいた。

「バルザイの偃月刀!!」

 招喚したそれを、すぐさまコーティング。

 断鎖術式を用いたジャンプで、指定した場所まで飛ぶ。

 その超加速を受けたデモンベインは、減衰したビームを捉える。

 そして、

「喰らってろ!」

 振り下ろす!

『ぬおぉぉぉぉ!?』

 弾かれたビームは、吸い込まれるように破壊ロボの天辺に命中。

 隙が見えた!

「光射す世界に、汝ら闇黒棲まう場所なし!」

 あとは、あらかじめ送信してもらったナアカル・コードで発動させる―――

「渇かず飢えず、無に還れ!」

―――レムリア・インパクト!!



「昇華!!」



 結界が破壊ロボを飲み込む。

 勝った。

 そう思うのは、奴の不死身さを甘く見ていたせいだったか。

「お」

 爆風。

 バックステップで離れるところにピンポイント。

「あ」

 レムリア・インパクトはデモンベインの魔力を著しく消費する。

 ステップに断鎖術式を使うにも、今は魔力が不十分。

「あァァァ!?」

 落ちるしかなかった。

『げぇはっはっはっは―――! 必殺技それ即ち最大の隙。

 貴様のあまりある破壊力、利用させてもらうのである!』

『博士、脱出装置に乗って言うセリフじゃないロボ』

 あの変な奴らのセリフが聞こえる。

『……ふう、死ぬかと思った』

 フリーダムは不死身か。



 目の前の光景は悲惨なものだった。

 両足をもがれたデモンベイン。

 ビームの集中砲火を受けているではないか。

 すぐに援護に行かなければ―――。

 ブラストの速度が酷く遅く思えた。

 ヒヒイロカネといえど、いつまで持つか分からない。

 ミサイルをありったけ放って弾幕を張り、時間を少しでも稼ぎながら、パージ。

 空中でフォースシルエットを転送してもらい、装着。

 行かなければ。

 姿は見えないが、何かできるかもしれない。

 このままでは負ける。

 また失うのか、俺は。

 そういう思考が、頭を埋め尽くす。

 やめろ。

 お前達の勝手で、これ以上俺から居場所を奪うな。

 そんなことが許せるものか。

 否定しつくしてやる。未来像を。お前達の勝利という未来を。



 そして、荒れ狂う意識は開放された。

「種」が割れる。



 全てを観測し、把握する。

 俺の意識が広がる。

 それまで見えなかったものが、いやに鮮明に見えた。

 線。

「ロイガー!」

 躊躇なく刻む。

「ツァール!!」

 躊躇わず刻む。

 瞬間の剣戟は十七を数え、見えざる敵を微塵に裂いた。

 後の十七分割である。

「次!」

 二機目を捉える。

 串刺し。

 その間に武器を連結し、切り裂く。

 三機目。

 さらに変形させたロイガーとツァールを放り投げた。

 あとはマウントしたライフルを手に、四機目を撃ち貫く。

 弧を描いていたロイガー・ツァールの軌道に意識介入。

 五機目は、背後から軌道を曲げられたそれにバッサリだった。



 あまりに鮮やかな瞬劇。

 世界は、暫く止まっていた。



『お、おのれ貴様! 我輩から最大のWチャンスを奪いおって!

 次に会った時は応募ハガキに張り付けて郵送してやるのであ―――』



 射撃。

 爆発。



『『『や、やなかんじ―――っ!』』ロボ!』

 フリーダム、お前もか。

 ともあれ、デモンベインを襲った危機は一先ず去った。

 だがこの世界で初めての感覚は、確かに何かを捉えた。

 この力の正体は、未だに分からない。

 俺は、一体何なんだ?









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