EDGE_第09話

Last-modified: 2010-09-30 (木) 20:56:46

試験終了の合図が鳴り、元の姿に戻る訓練場。既にアスランとなのはは退場した後だった。
今は隊舎のロビーに向かっている。

 

「それにしても…すごい戦い方だったね」

 

一緒に横で歩くなのはが、彼の戦闘の感想を口にした。

 

「リィンも驚きました!特に最後のあれは、すごかったですよ~~」

 

体全体でオーバーに表現し目を輝かせているリィン。
だがアスラン本人はどうも違う様子のようだった。
彼女達とは逆に、難しい顔をして悩んでいる。言葉もあまり耳に入ってないようだ。
疑問に思いなのはは尋ねる。

 

「どうしたのアスラン君?…嬉しくないの?」

 

やっとなのはの言葉が耳に届き、あっと気が付くアスラン。

 

「…いえ、そういう訳ではないんですが…」
「じゃあ、どうしてそんなに暗い顔してるの?」
「少し…やりすぎたと思って…」

 

アスランは最初、ジャスティスの最低限の機能を使ってあとは銃デバイスだけでクリア
しようと思ったらしいが最後の大型スフィアに手こずり、ムキになってかつい
あの便利な機能を使ってしまった。
威力を抑えきれず流れのままに撃ってしまったのを遺憾に思っている。

 

「あんな巨大な砲撃を実際の現場で撃ったら
 大変なことになるかもしれないので……制御しないと駄目だなって」

 

うつむいて話すアスランになのはは思う。

 

(アスラン君、ちゃんとわかってるんだ…。これがシュミレーションだからといっても
 本当はそういった対応力や決断力を見てるのを…)

 

本番でぼかすかと撃ちまくれば周りに被害を被るかもしれないので、
ランク昇格試験はそのような本人適正も考慮して確認するのだ。
だが彼は予めわかっていたようで自分の力を過信してもいないし、限度も知っているようだ。
これなら大丈夫だろうと、なのはは確信する。

 

【六課隊舎-ロビー】

 

一人暗いテンションだが二人は皆のいるロビーに帰ってきた。
部屋に入ってきた瞬間、幾つもの視線がアスランに注目しそれに気づく彼。
なんかさっきよりも人が増えているし、おまけに変な青い犬までいた。
スバルがわいわいと近寄ってくるが、なのはがそれを手で制して止める。
試験の結果がまだなので先にそれを済ませてからということだ。
じゃあこっちに、となのはに案内され少し離れたソファーに向かい合う形で座る。
リィンはいつの間にか何処かへ行っていた。
集中する視線の中で鋭いのが二つ、背に感じるが無視してなのはに向き直る。
真剣な眼差しでアスランを見るがそれが急にニコッと変わる。

 

「単刀直入に言います。……見事合格です!!」
「……あれでですか?」

 

合格発言に喜ぶところだが、笑顔な彼女に対して真面目な表情でアスランは問う。
あれとはさっきのことだろうと推測し、なのはは話す。

 

「確かにあれは結構な危険行為になるかも知れません。
 だからちょっと前まではどうしようかと迷ってたの」
「……」
「でもアスラン君はそのことをしっかり自覚してるし反省もしてるから
 今後は大丈夫かな、と思って合格にしました」
「そうですか……ありがとうございます…」

 

ぺこりと頭を下げ礼を言うアスラン。
ちょうどその時リィンが戻ってきた。
なにやらカードのような物を持ってきて、なのはにそれを渡す。
そして、彼の前にカードが差し出される。

 

「管理局のIDカードだよ。これでアスラン君も正式な魔導士だね」
(なんて、手際の早い……)

 

合格なんて分からないのに既にカードは出来ていたようだ。
それを受け取り、感慨にひたるアスラン。

 

(これで俺も正規の局員か…)

 

後戻りはできないという事を改めて実感させられ、カードを見つめる。
ザフトに復隊した時もこんな気持ちだったが、その内容は違う。
自分は戦争を止めるために入ったのではなく、ただ純粋に恩返しをするためだ。
人を殺すのではなく人を助ける任務。大いに結構なことである。
正にそれが自分の望んだことで、それが何より一番なってほしかった現実なのだから。

 

「…羨ましいな…」
「え?」

 

唐突に何かをポツリと口ずさんだアスラン。でもその小さな囁きはなのはには聞き取れなかった。
それに喜ばしいことであるはずなのに暗い表情をしている。
気に入らないことでもあったのだろうかと考える。

 

「…では私はこれで、ありがとうございました…」
「あっ……うん」

 

訊こうと思った矢先にアスランは席を立ち、敬礼をするとギンガの元に向っていった。
異様な後味を残したままとりあえずなのはも皆のもとに行く。

 

「アスラン!どうだった?」

 

近づくやいなやギンガが慌てながら尋ねてきた。
微笑しカードを出して結果を見せると、ぱあと表情が明るくなった。

 

「よかった~。なんか真剣な雰囲気だったから心配したよ」
「まあ、大事なことだったから―」
「アスランさん!おめでとうございます!!」

 

話しの途中だと言うのに突然スバルが割って入ってきて祝いの言葉を述べた。

 

「えっ?…ああ、どうもありがとう…」

 

苦笑いし返すアスラン。スバルは妙に生き生きしている。

 

「さっきの砲撃魔法すごかったです!どこでならったんですか?
 っていうか射撃じゃなくて格闘もできるんですねっ!」
「いや…まあ…」

 

高いテンションのスバルに圧され気味のアスラン。
彼女の雰囲気はなんとなくルナマリアに似ている気がした。
そんなことを思ったが―ちょっと待て…なにか変だ。
『さっきの砲撃魔法―』スバルの言葉を思い出し、周りを見渡す。
他の人達の視線を感じる中、大きめのモニターが目に入りもしやと思いギンガのほうを向く。

 

「…見てたのか?」
「えっ?…っと…その~八神部隊長が…」

 

両手の人差し指をつつき合わせながら苦笑して、はやてを見るギンガ。
はやてもあははは…と笑い誤魔化していた。

 

「…えっと…ごめんな、アスラン君。どうも気になって…」
「……いえ、訓練場をお貸し頂いたので私がどうこう言う立場ではありません…」

 

だが内心は趣味の悪い人と思うようになったアスラン。
はぁと小さく溜め息をつき呆れようにはやてを見る。

 

「……ところで見させてもらっといてなんやけど、
 アスラン君って変わった魔法陣やね?デバイスも私たちと違うし……レアスキル持ちなん?」

 

やはりきたこの質問。
あの魔法陣はミッドチルダにはないもので全く新しい形式だった。
周りの人達もそれが気になるようでうんうんと頷いている。
どうやって誤魔化そうと思考するが思い浮かばない…なので

 

「まあ……そんなところです…」

 

そのまま流すように返事をする。はやてはふ~んという感じで納得していた。
身の上を知られる前に早くこの場を立ち去りたいとアスランは思い
会話を切ろうとするが、はやてはさせてくれなかった。

 

「アスラン君はまだ…所属部隊決まってないんよね…?」
「ええ…そうですが…」

 

目が笑うようにアスランを見つめる。
まさか…、と思いその先を予想するアスラン。

 

「だったら六課にはいらへん?」
(ああ…やっぱり)

 

スカウトというものは本当にどこにでもあるもので彼は後悔の念でいっぱいになった。
頭を抱えたい気分だが取りあえずは理由を訊いておく。

 

「…なぜ私を?」
「まあ当然気になるわな。ええよ、聞いてな」

 

そして、はやては語りだす。機動六課の新設の理由を。
数年前から危険な古代遺物「ロストロギア」の中の一つ、レリックという名の結晶体が
さまざまな世界で発見され同時に多大な被害をもたらし、管理局はそれの対処に負っていたが
後手に回ることがほとんどで被害を食い止めることが難易だったそうな。
そして、それをいち早く阻止するために創設されたのがこの機動六課だ。
レリックの保守、回収を専任として行動し先手に回る。これがはやての狙いだったが
見事その役は果たされ被害が出る前に食い止めることに成功したそうだ。
任務に成功を収めていることは事実だが、一つだけ問題があった。
優秀な魔導士や一流のスタッフが揃ってはいるが戦闘要員が圧倒的に不足していたのだ。
新人部隊という訳あって上の方からはあまり良く思われていなく、入隊した新人も隊長が
前もって勧誘気味に知らせてあった4人だけ。他はいない。
それに隊長陣にはリミッターが掛けられていて力制御が限られている。
……それでも十分な強さではあるのだがそれは言わないでおいた。

 

一通り簡潔に話し、はやてはアスランの瞳を見ながら尋ねる。

 

「だから、アスラン君みたいな優秀な新人が入ってくれれば
 私たちとしては助かるし、この子達の前線での戦闘が少しは楽になるかもしれん…どうや?」
「……」

 

今の話を聞いていたアスランは途中自分の視聴を疑った。
新人4人と聞いたとき密かに確認したが、それらしき人物はさっきのスバルと
横にいるオレンジ色の髪をした女の子。それは別にいい、だが後の2人が問題だった。
管理局の制服を着ている子供がいた。明らかに10歳かそれ未満の年齢だろう。
そんな子供がこんな危険な任務を?―冗談じゃない。
確かに管理局は優秀な人材であれば子供でもスカウトするとゲンヤから予め聞いていた。
だが実際にしてみればその分早く危険な領域に踏み込むことになるのも事実。
戦争を経験している彼にとっては余りにも残酷なことと思い、こんな事を平然とやっている
はやてに段々と怒りがと込み上げてきた。

 

アスランが手を力強く握り締めているのに気づいたのはギンガだった。

 

「すいません…八神部隊長。彼とちょっと話しを…」

 

そう言ってアスランの手を引っ張って早歩でロビーを出て行く二人。
ロビーから声が聞こえないくらいの廊下に着くとアスランは乱暴に手を振りほどく。
そして怒りの矛先はギンガに向いているかのように睨みつけていた。

 

「こういう事だったんだな…俺をここに連れてきたのは…」
「…その……ごめんなさい…」
「一体どうゆうつもりだっ!!」

 

しょぼくれる彼女に対して容赦なく怒りをぶつけるアスラン。
予想していたこととはいえ、怒ると想像以上に怖い。
だが、ギンガは怯むことなく彼に向き直る。

 

「アスランは…本当は私と同じ部隊に入るつもりだったんだよね?」
「あたりまえだっ!俺は君とゲンヤさんに命を助けられたんだぞ!」
「…それで私たちに恩返しを?…」
「ああ、そうだ。そうしなければ俺は納得できない…それとも迷惑だとでも言いたいのか?」

 

その言葉にギンガは即座に首を振り不定する。

 

「ううん、違うよっ!すごく…うれしいよ。アスランのその気持ちは…」
「…ならどうして…?」

 

ギンガの悲しそうな表情を見て、それが本心だとわかり
猛りが次第に治まってきて柔らかな口調で問う。

 

「今なら言えるけど…実はアスランの諸事情やデバイスのことも全部含めてだけど、
 私達の部隊内で極秘扱いにしてたの」
「……なぜだ?」
「嘘じゃないっていうのを信じてくれる?」
「…わかった。信じるよ…」

 

溜め息をつき、ギンガの言葉に耳を傾けるアスラン。
事情によれば、アスランがこのままギンガと同じ部隊に入り任務を続けていけば
自然とその実力は本局に流れることになると予想し、そうなれば彼の素性が問われることになる。
軍人であることがばれたら管理局は彼を要注意人物として見なすだろう。
それに新機能搭載のデバイスも研究にもってかれて、色々と調べあげられた末に流用されたら
アスランにとっては嬉しく思わないだろうとゲンヤは予測した。
そして最も危ないのは彼が『コーディネイター』ということだ。
管理局は遺伝子操作にはまだ手を付けていないが、その成功体というべき人間がいるので
その事に関しても詳しく調べられてしまう。
だから、アスランをそんな面倒な立場にしたくなくて本部が軽視しているこの六課なら
そんなに目も入らないし、大丈夫となったわけだ。
なので試験は目立たないとこで行い、六課のメンバーに印象づけて後は成り行きに
まかせてなんとかしようと思ったらしい。
だが、そのメンバーが彼にとって良しとならなかったわけだが。

 

一通り話し終わり、ギンガはアスランの表情を見るが明るくはなかった。
逆にあっけらかんとした感じだ。

 

「それで俺のためにとわざわざこんなことを…?」
「うん…。ごめんね…話さずに私たちだけで勝手に進めちゃって…」
「そうか…………わかった」

 

返事をするとアスランは踵を返してロビーに向かおうとした。
彼のその行動に罪悪感を感じ余計に落ち込むギンガ。
怒っているだろうなぁと思いながら重たい足を歩めアスランの後を追う。

 

ロビーに帰ってくるとはやてがまた笑顔で近寄ってきた。

 

「話しはすんだ?…それでどうやアスラン君?」

 

部隊長の嬉しそうな顔を見てさらに暗くなるギンガ。
きっとアスランは断るだろう、と彼女は予想し目を背ける。
しかし、彼の口から出た言葉は意外なものだった。

 

「……わかりました。私でよければ…」

 

……あれ?今彼はなんと言った。一瞬自分の耳を疑うギンガ。
てっきり拒否の返事が出ると思っていたのにあっさりOK?
えっ?えっ?という表情でアスランの顔を見る。

 

「ホンマに!?いや~~ありがとうな!」

 

アスランの手を握り嬉しそうにブンブンとふるはやて。
戸惑いながら苦笑するアスラン。

 

(ちょ、ちょっとアスラン!?いいの?さっきまであんなに…)

 

思わず念話をして確認をとるギンガ。
彼はゆっくりとこちらを向き微笑む。

 

(いいよ…そういう事情があるなら仕方ないさ…俺自身もそんなことはご免だ)
(……でも、さっき六課のこと怒ってたんじゃないの?)
(まあな、子供を闘わせるなんて確かにどうかしてる…だから気になって…)

 

アスランの気になるとはあの二人の戦闘能力のことだ。
子供といえど此処にいるということは相当の“力”を持っていることになる。
だからこそ心配なのだ。その“力”をどのように使っているのかが。

 

(そう…でも本当にごめんね…アスラン。期待に背いちゃって…)
(いや、いいんだ。その気持ちだけで充分に嬉しいよ…)

 

この人達は本当に自分のことを考えてくれていたのだと先程の会話でアスランは理解した。
彼の過去の話を聞いたギンガは、アスランの心情を配慮してくれたのだろう。
利用されるという嫌なシナリオは確かにもうごめんだ。
自分の願うことをする。それが今のアスランにとって何より大事だから。

 

【六課隊舎-玄関前】

 

日は暮れ、辺りはすっかりと暗くなっている。
玄関の前ではギンガの見送りに皆集まっていた。

 

「でもいいのか?あれ…」
「うん、父さんからの合格祝いだって」
「なんてオーバーな…」

 

ギンガの言う合格祝いの物とは朝に借りてここまで来た車のこと。
新車ではなく中古車だが、アスランにしては充分すぎる送り物だ。

 

「じゃあ、俺が送って…」
「タクシー拾って帰るから安心して!」
「そ、そうか……」

 

せめて108部隊まで送っていこうとしたのだが、もの凄い勢いで断られた。

 

「あっ!そうだ!―ギンガちょっと待っててくれ」

 

何かを思い出し車のもとに走り出すアスラン。
後ろのトランクから紙袋をだし、再びギンガの前へ戻ってくる。

 

「どうしたの?」
「いや、俺からも今までお世話になったお礼をと思って…」

 

そう言い、紙袋から二つの箱を取り出す。一つは長方形の箱。
もう一つのラッピングした小さい正方形の箱をギンガに差し出す。

 

「えっ?あ、あの…これ…」
「お礼だ…ほら」

 

戸惑う彼女の手を無理やりとって箱を乗せる。
男性からのプレゼントなど父以外初めてなので驚き、落ち着きがなくなるギンガ。

 

「うわぁ~~!いいな~ギン姉、なにもらったの?」

 

横からスバルが顔を出し急かすように訊く。
ギンガはアスランの顔を見て確認する。
どうやら好きにしろというサインだったのか微笑んでいた。
ドキドキしながらゆっくりとリボンを解き、中のケースを出しそれを開ける。

 

「うわぁ、可愛い~」

 

感想を先に言ったのはスバルだがギンガも同じ意見だった。
中に入っていたのはイルカをデザインしたシルバーのイヤリング。
ジャンプしている様子なのか体を丸め円を描いている。
その中央には小さい青い宝石が煌めいていた。

 

「あ、ありがと。アスラン//」
「ハロかそれにしようかと迷ったんだけど、やっぱりそれでよかったかな…」
「「ハロ??」」
「あ…いや、何でもない」
「ふ~ん?…ねぇアスラン、付けてみても…いい?」
「ああ」

 

両耳にそのイヤリングをつけると、月の光に反射し綺麗な輝きを放つ。
手を後ろに組んでもじもじしながらギンガはアスランを見る。

 

「えっと…その、どう?」
「よかった。似合ってるじゃないか」
「ギン姉、キレイだよ♪」

 

二人に褒められ顔を赤くするギンガ。
そんな彼女に可愛らしいと思いながら、もう一つの箱をギンガに渡す。

 

「これはゲンヤさんに渡しておいてくれないか。中に手紙も入ってるから」
「うん、わかった」

 

ちなみに中身はネクタイだ。
手渡そうとした時にギンガが念話をとばしてきた。

 

(本当はね、アスラン。一つ頼みたいことがあるんだ…)
(……なんだ?)
(貴方がまだ恩返しを望んでいるのなら、私と父さんからのお願い。
 ……スバル達のこと護ってあげて…)
(……)
(この子達は一生懸命だけど、やっぱり無茶をする時があるかもしれないから
 その時は助けてあげてほしいの……だめ?)
(…断るなんてできるわけないだろう。わかった、約束する)
(…ありがとう)

 

念話し終えると二人は誓い合うように握手を交わす。
そして、ギンガは別れの手を振り月夜が照らすなか部隊へと戻っていった。
彼女の後姿を見ながら、今日何度目の溜め息をつくアスラン。
面倒なことになったのは変わりないが、こっちの方が確かにいいとは思える。
感謝したりないぐらいにナカジマ親子には世話になった。
ならばあの人達の願いは自分の願いとなる。
『必ず果たそう』とそう心に誓うアスランであった。

 

ふと気づく視線に横を向くと、スバルがニコニコしてアスランの顔を見ていた。
何かを待っているようなそんな瞳をしている。
ああ、そうかと気づく

 

「よろしく頼むよ…スバル」
「はいっ!こちらこそアスランさん!」
「……『アスラン』だ。スバル」
「……え」

 

彼の言葉にきょとんとするスバル。さすがに急すぎたかな、と思いアスランは微笑む。

 

「…慣れてくれたら『アスラン』でいい」
「え…あっ…はいっ!」
「ちなみに敬語も使わなくていいぞ」
「うぇっ!?」

 

表情豊かなスバルを見つめ、視線を後ろの人達に移す。
皆、にこやかにアスランを見ていた。

 

「これからお願いします」

 

頭を下げ新たにお世話になる人達に挨拶をする。
はやてが前に出てきて手を差し出す。

 

「ようこそっ!機動六課へ!!」

 

苦労の末、アスランが新たに入隊するのは機動六課となった。
アスランは彼女達のことを知らない。彼女達もアスランという人間を知らない。
過ごしていく中で果たして分りあえていけるのだろうか。
歯車は唐突に動き出し、抑え続けた本当の自分が疼き出す……。
今この手にある新たな”刃(エッジ)”は彼をどのような真実に導くのだろうか……。