LCS_短編

Last-modified: 2008-06-07 (土) 18:34:56

闇の書事件が終わり、季節は梅雨前となっていた。
「頼みがある、高町なのは、フェイト・テスタロッサ、キラ・ヤマト」
突然、リインフォースやヴォルケンリッターに呼ばれ、翠屋で会って早々そんな言葉が出てきた。
キラたちは頭を下げるリインフォースに一瞬ポカンと見つめてしまっていた。
「ど、どうしたんですか?」
先に我を取り戻したフェイトが質問する。
「実は主はやてのことなのだが・・・・・」
「あれ?そういえばはやてちゃんは?」
なのはが辺りを見回す。
しかし、リインフォースやヴォルケンリッターが見えるが、はやてがいない。
どうやらはやてには聞かれたくない話のようだ。
「私たちは・・・・・・無力なのだ」
そのまま悔しそうに俯いてしまうリインフォースやヴォルケンリッター。
その表情から事が大事であることが理解できる。
「もしかしてはやてちゃんの体に何か?」
「この前の闇の書事件のことで何かあったんですか!」
キラたちははやてを心配して質問を投げかけるが、今度はリインフォースたちがポカンとした。
「いや、主はやては至って健康だ。事件についてもグレアム提督たちが援助して助かっている」
「じゃ、じゃあ、何があったんですか?」
キラの質問にまたリインフォースたちは悔しそうに俯いてしまう。
「・・・・まらないのだ」
「え?」
「決まらないのだ」
「な、何がですか?」
「主はやてへの誕生日プレゼントが決まらないのだ」

 

「「・・・・・・・・」」
「え!?はやて誕生日なの!?」
沈黙するなのはとフェイト。そして、驚愕するキラ。
「キラ!てめぇ!はやての誕生日忘れるんじゃねぇ!」
ヴィータがキラに突っかかる。
「ご、ごめん!」
「あはは、キラくんらしいな」
「それで、プレゼントが決まらないんですよね?」
フェイトが話を元に戻し、ヴィータもキラに突っかかるのをやめる。
「はやてちゃんにそれとなく聞いてみなかったの?」
キラの質問にリインフォースたちは押し黙ってしまう。
「聞いた、全員1回は聞いた」
シグナムの答えは重いながらも、何故か幸せそうだった。

 

リインフォース
「主はやて、あなたが望むものとは何ですか?」
「そやな~、リインフォースとみんな・・・シグナムたちがいてくれれば何もいらんかな」
そして、とても眩い笑顔。

 

シグナム
「主はやてが欲しいものとは何ですか?」
「欲しいもの?もう持ってるで?」
「・・・・?・・・・それとは?」
「みんなや」
そして、とても眩い笑顔。

 

ヴィータ
「なぁ、はやて。はやては欲しいもの何なんだ?」
「う~ん、最近は皆が管理局に行ったり来たりやし、皆と一緒にいたいなぁ」
そして、とても眩い笑顔。

 

シャマル
「はやてちゃんは貰って嬉しいものって何ですか?」
「みんなの笑顔貰ってるから、他には何もないなぁ」
そして(ry

 

ザフィーラ
「(ry

 

「はやてちゃんらしいね」
なのはたちは笑いながらリインフォースたちの話を聞いていた。
1名ほど落ち込んでいるような者がいたが、誰も気付かない。
「でも、やっぱりあたしたちがはやてにプレゼントを上げてぇんだ!」
ヴィータの言葉に全員が頷く。
その気持ちだけではやてちゃんは喜ぶと思うけど、とはなのはたちは思ったが声には出さない。
リインフォースたちの真剣さが見ていて良く分かったからだ。
「リインフォースたちがはやてに上げたいものを上げたらはやては喜ぶと思うよ?」
フェイトの意見になのはもキラも頷く。
「「「「「・・・・・・・・・」」」」」
リインフォースたちはその言葉を聞き考え込んでしまう。
はやてには本当に喜んでもらいたいからこそ普通に浮かぶ案じゃ納得しないのだろう。
だからこそ、リインフォースたちは何が良いのか決められないのだろう。

 

「それだったら皆でケーキを作ったらどう?」
いつの間にか桃子さんが相談の席へと座っていた。
「ケーキ・・・・・ですか?」
「そうよ、プレゼントはやっぱり手作りが一番愛情を込めて出来るわ。
 それにケーキなら皆も食べれて一緒に幸せな気分になれるでしょう?
 はやてちゃんは皆が幸せであることを願う子だからちょうどいいんじゃないかしら?」
桃子の意見に全員の顔がほころぶ。
確かに名案だ、それならばはやても喜んでくれるだろう。
しかし、そこで全員の顔が1人の騎士に注目する。
「み、みんな何よ~。私だってちゃんとできるようになってるんだから!」
「たまに失敗した時はすげぇものになるけどな」
「な!?ヴィータちゃんたちは作ったこともないのに言って欲しくないわ!」
「まぁまぁ、2人とも!」
シャマルとヴィータが喧嘩腰になりそうなのをキラが止める。
「ケーキ作りなら私やなのはたちが教えてあげるから皆でがんばりましょう!」
桃子の言葉に全員が頷いていた。

 

そして、翠屋は次の日臨時休業となっていた。
なのはやフェイト、アリサやすずかなどのメンバーも手伝いに来ていた。
「ヴィータちゃんはこれを泡立つまで掻き混ぜてね」
「まかせとけ!」
そうやって掻き混ぜるが少々乱暴なのか時々零れてしまう。
「そうやるんじゃなくて出来るだけ細かく、こうやって」
そう言いながらなのははヴィータに手本を見せる。
「むぅ、分かった」
ヴィータは先ほどより大人しく掻き混ぜ始めた。

 

「シグナム、包丁はそんなに気合入れなくていいから」
フェイトは包丁を持ち、真剣な目で果物と対峙しているシグナムに話しかける。
「はぁ!」
「待って、待ってください。シグナム」
そのまま包丁を高々と掲げ、レヴァンティンのように振り下ろそうとする。
それをどうにかフェイトが押さえていた。

 

「シャマルさん。それお砂糖じゃなくてお塩です」
シャマルがウッカリをしてしまいそうになるのをすずかも何度も止めていた。
いつもはここまでしないミスもシャマルも気合が空回りしてしまっているからだろう。
「ち、違います。それ小麦粉じゃなくてうどん粉って、何でそんなのがここにあるんですかー!」
あのすずかですら叫び声に近い注意をしてしまっている。

 

「そうそう、リインフォースってやればできるじゃない」
唯一、リインフォースはアリサの指示通りに生地作りを進めていた。
その手際は中々のものだった。
「主はやてがやっているのをずっと見てきましたし、アリサの指示が良いおかげです」
そうやって楽しそうに談笑をしながらリインフォースとアリサは作業を続けた。
この中での唯一の救いだった。

 

一方、ザフィーラは・・・・・・。
「とりあえずこれだけ買えば、納得できるものが作れるだろうね」
「すまぬ、キラ。私たちのことに付き合わせてしまって」
キラとともにスーパーでの買出しをしていた。
ケーキ作りが始まり、色々と失敗や納得がいかないものの連続だった。
材料もお店のものを使うわけにはいかないためこうやって買出しに行かなくては行けなかった。
翠屋の厨房は女の戦場になっていたのでキラもザフィーラも買出しに追い出される形だった。
「さて、これを持って早く帰らないとね・・・・・ん?」
キラは帰り道にふと小さなアクセサリーショップを見かけた。
「ザフィーラ、先に帰っててくれるかな」
「承知した」
ザフィーラはキラから荷物を受け取ると先に翠屋へと向かっていった。

 

そして、はやての誕生日の6月4日当日を迎えた。
「「「「「「「「「(主)はやて(ちゃん)お誕生日おめでとう~!!」」」」」」」」」」
クラッカーが鳴り響き、翠屋は一段と騒がしくなった。
はやての誕生日会を翠屋を貸切りにして祝っているのだ。
「みんな、ありがとうな~」
そうやって嬉しそうに笑うはやての顔が中心にあった。
「はやてちゃん、これは私からだよ」
なのはやフェイトたちが次々にプレゼントを渡していく。
「うわ~、ほんまありがとうな。みんな」
「僕からはこれ」
そうやってキラがはやてに渡したのは新しい髪留めだった。
この前のケーキ作りの買いだし見かけたアクセサリーショップで買ったものだった。
「ありがとうな、キラ君」
そうやってはやてはそれを大事そうにそれを受け取っていた。
「それじゃあ、本日のメインを!」
そう言われ、ソワソワしていたリインフォースたちが一気に緊張した。
そして、厨房から出てきたのは1つの大きなバースデーケーキだった。
「これはね、リインフォースさんたちが作ったんだよ」
なのはが笑いながらはやてにそう伝える。
「これを・・・・皆が?」
そうやってはやては驚いた表情でリインフォースたちを見る。
全員が顔を真っ赤にしながらも笑っている。
「はやてちゃんに喜んで欲しいって、愛情をいっぱいいっぱい込めて作ったんだよ。
 失敗しても何度も何度も頑張って、やっと作れたケーキなの」
「さぁ、はやて。火を消して」
なのはとフェイトに言われ、はやてはゆっくりとふ~っとロウソクを消す。
するとはやての目から涙が溢れてきていた。
「(主)はやて(ちゃん)!?」
リインフォースたちがはやてを囲む。
「みんな・・・・みんな・・・ひっく・・ありがとな。本当に・・・・ひっく・・・・」
そうやってしゃくりあげながらもはやては自分の騎士たち・・・家族へと笑いかける。
そんなはやての手にリインフォースたちが優しく触れた。
「お礼を言うのはこちらです。我が主」
「私たちの主となってくださり本当にありがとうございます」
「はやてがいてくれるだけであたしたちも嬉しいんだ」
「私たちはずっとはやてちゃんの傍にいます」
「それは主と騎士として、そして家族として」
リインフォースたちは笑顔ながらも目尻には涙が見えた。
「みんな・・・・みんな大好きやで!」
今まで見た中で最大級の笑顔をはやては浮かべていた。
それを囲むリインフォースたちの顔も嬉しそうに笑っていた。
それは血も繋がっていない、存在自体も違う、だけど強い強い絆を持つ家族の姿だった。
これがはやてにとって今までの中で一番の誕生日となったことだろう。

 

HAPPY BIRTHDAY TO HAYATE