Lnamaria-IF_赤き月の鷹_第05話

Last-modified: 2022-06-16 (木) 17:31:25

第5話『アスラン・ザラ』

「ふーん。けど何であれが?」
「隕石でも当たったか、何かの影響で軌道がずれたか」
「地球への衝突コースだって本当なのか?」
「うん、シン。バートさんがそうだって」
「はぁ~、アーモリーでは強奪騒ぎだし、それもまだ片づいてないのに今度はこれ?どうなっちゃってんの?」

「で? 今度はそのユニウス7をどうすればいいの?」
「ええ?」
「えっ?ああ……何できるんだろ」
「砕くしかない」

レイが、決然とした声で言った

「砕くって?」
「あれを?」
「軌道の変更など不可能だ。衝突を回避したいのなら、砕くしかない」
「でもデカいぜあれ?ほぼ半分くらいに割れてるって言っても最長部は8キロは……」
「そんなもんどうやって砕くの?」
「それにあそこにはまだ死んだ人達の遺体もたくさん……」
「でもメイリン、そうね、砕くしかないかもしれない。衝突すれば地球は壊滅するわ。そうなれば何も残らないわよ。そこに生きるものも」
「「……」」
「地球、滅亡……」
「だな。」
「そんな……」
「はぁー、でもま、それもしょうがないっちゃあしょうがないかぁ? 不可抗力だろう。けど変なゴタゴタも綺麗に無くなって、案外楽かも。俺達プラントには……」

「よくそんなことが言えるな! お前達は!」

オーブのお姫様が飛び込んできた。

「しょうがないだと!? 案外楽だと!? これがどんな事態か、地球がどうなるか、どれだけの人間が死ぬことになるか、ほんとに解って言ってるのかッ!? お前達はッ!」
「すいません」
「くッ…やはりそういう考えなのか、お前達ザフトは! あれだけの戦争をして、あれだけの想いをして、やっとデュランダル議長の施政の下で変わったんじゃなかったのかッ!!」
「よせよカガリ」

カチンと来た。なんなの?このお姫様は。モビルスーツデッキのことと言い!

「失礼ながら、よろしいでしょうか?」
「なんだ!?」
「ヨウランの発言が不適切であったことは謝罪いたします。しかし彼も場を和ませようとしてのことです。地球無しにプラントが成り立たない事など、皆わかってます。それを考慮せず、いきなり仲間内の会話にしゃしゃり出て頭ごなしに怒鳴りつける、しかも他国の人間がされるのはどうかと思います」
「な!?だけど私は!!」
「それから、『やはりそういう考えなのか、お前達ザフトは!』と言われましたね。『やっと変わったんじゃなかったのか』とも! お言葉ですが、宣戦布告されたのも、プラントに核を撃たれて民間人を虐殺されたのもプラントが先ですが! NJCの技術が漏洩してから、すぐさま、また核攻撃されましたが! 私達こそ聞きたい!『地球に住む人々は変わったのか?』と! ザフトが地球などどうでもよかったのなら、前大戦時に、部下の反乱にも合わずにザラ議長は地球を滅ぼしていたでしょう! ともかくあなたがザフトに対しどう言う考えを持っているかはよく分かりました。このことは是非議長にもお伝えしたく思います」
「お前ぇッ……」
「いい加減にしろ!カガリ!」
「くッ……」
「御自分の発言には責任を持ってください。それでは、失礼します」
「あ、待ってよ、お姉ちゃん」

後ろでは、まだシンがオーブのお姫様に何か言ってて、レイがたしなめてるようだった。

「でも、あれで代表だなんて、笑っちゃうわね」
「お姉ちゃん……」
「あれじゃただの……メイリンに当たってもしょうがないか。ちょっとね、期待してたのよ。前大戦の英雄って言うから。ああ、この人は英雄だって、思わせてくれるならよかった。ずるがしこい狐みたいな食えない人でもよかった。でもあれじゃ、ただの、馬鹿じゃない」

お父さん……あなたを殺したキラ・ヤマトがどうか只者ではありませんように。ただの馬鹿者なら、あたしは殺意を止められないかもしれない。


あとでアスランにエレベーターの前で出会った。

「あら、大丈夫ですか、お姫様は」

声に険が混じってしまうのを自覚する。

「ルナマリアか。すまない。先ほどの彼女の発言は失言だった」
「いえ。あなたに謝られても仕方ありません。むしろ、彼女のそばにいるあなたに対しても非常に失礼な言葉でしょう? アスランさん。まさか『そういう考え』を持っていた訳じゃないんでしょう? 前大戦時」
「アスランでいいよ。どうかな。母がユニウスセブンで亡くなった時は、とても悲しかった。ナチュラルすべてを敵だと思っていたよ。コペルニクスでのオーブ国民のコーディネイターの昔なじみがプラントに付かなかった時、ひどい裏切りだと感じた。さすがに地球を滅ぼしたいとまでは思わなかったがね」
「でも、アスランは防いでくれたじゃないですか。地球が滅びるのを。自分の機体を自爆させる危険冒してまで」
「うん、まぁ。ルナマリアは……地球は好きかい?」
「好きですよ。プラントが地球無しにやっていけないのとは関係なく。人類の発祥の地じゃないですか。地球の大自然ってやつにも憧れるし。あたし、シーゲル・クラインが唱えた『コーディネイターはナチュラルの中に帰っていくべきだ』って意見に賛成なんですよね。いつか地球に住んでみたい」
「そうか、その時はぜひオーブへ来るといい。ナチュラルとコーディネイターが共存してるし、海もきれいないい国だ」
「あは、その時は案内お願いしますね」
「ああ。きっと。そうだ、俺はこれからモビルスーツに乗って破砕作業の手伝いをすることにした! よろしく頼む!」
「アスランが? それは心強いです! じゃあ、あとで!」

あたしはアスランと別れてモビルスーツデッキへ向かった。


『モビルスーツ発進3分前。各パイロットは搭乗機にて待機せよ。繰り返す、発進3分前。各パイロットは搭乗機にて待機せよ』

「でも、粉砕作業の支援ていったって何すればいいのよ」
「それは……」
「ん? アスランさんだ」
「ガイアで出るんだってさ。作業支援なら一機でも多い方がいいって」
「さっき聞いたわ。なにはともあれ、数が多いのは心強いよね。ミネルバ、定数パイロット積んでないんだし」

『発進停止。状況変化。ユニウスセブンにてジュール隊がアンノウンと交戦中』

「え!?」

『各機、対モビルスーツ戦闘用に装備を変更して下さい』

あたしはアスランに呼びかけた。

「状況が変わりましたね。戦闘をして大丈夫なんですか?」
「非常時だろう。議長権限の特例って事で許可もらうさ」
「じゃあ、援護よろしくお願いします。この機体、接近戦用なんで」
「わかった!」

「ルナマリア・ホーク、グフ、出るわよ!」

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