Lnamaria-IF_赤き月の鷹_第16話

Last-modified: 2020-01-29 (水) 08:39:40

ぶつかりあう想い

「カオスがいるのか。カオスは俺が抑える! ハイネ、シン、ルナ! 十分に連携して戦え! オーブ軍は攻められない限りまだこちらから手を出すな! 最後に各員、アークエンジェルとフリーダムがオーブ代表を拉致して逃走したことは知っているな? もしあの勢力の人員が前大戦以来変わっていないなら奴らは、こちらを殺そうとはしない、無視してかまわん! ただし、武装を破壊されること及びミネルバの武装付近にいる人員達は二次災害に十分注意してくれ。以上だ!」
「「了解!」」

『オーブ軍、モビルスーツ各隊は地球軍と共にミネルバへの攻撃を再開せよ! もう敵に陽電子砲はない!』

 オーブ軍もか!

「オーブ軍は俺が引き受ける!」
「シン!」
「……わかったわ。だけど、あたしも混ぜてもらうわよ」
「ルナ……」
「仲間でしょ?」
「わかった!」

「ミネルバ及び各員! アビス確認! 下からの攻撃に気をつけろ!」
「了解!」

「ハイネ! 連携してまずカオスをやろう!」
「OK! アスラン!」

「ルナ! ミネルバに4機向かった! そっちに追い込む!」
「了解!」

「ちょこまかと!」

敵はMA形態、MS形態と頻繁に変形する!

ドラウプニル! ばら撒く! 一機被弾!
一機ずつ確実に行くしかないか! スレイヤーウィップを胴体に叩きつける!
シンも一機落とした。後一機!

「うわぁーー! なんだこいつ!」
「何?」

シンのインパルスが! 上空から舞い降りてきたフリーダムに右腕を切り落とされた!

「よくも……フリーダム! 父さんと――ミネルバの乗組員の仇!」
「え? 仇……?」

突然棒立ちになったフリーダム。だけど容赦はしない! 両腕からのスレイヤーウィップ!

とっさにフリーダムは動き、ビーム砲を破壊しただけで終わった。

――くそう! フリーダムは退いていった。

「何なのよ! あんた達はーーーー!!!」


……結局。海峡の防衛には成功した物の、尊い犠牲が出た。そのすべてはフリーダムにタンホイザーを撃たれて生じた物だった。
タンホイザーの発射寸前だった事が、艦首部の被害を大きくしたのだ。
最終的に死者10名、更に重傷者3名。彼らは後送された。

「あいつらのせいだ……」
「ん!」
「あいつらが変な乱入して来なきゃ……大体何だよあいつら!戦闘をやめろとか。あれがほんとにアークエンジェルとフリーダム!?
 ほんとに何やってんだよオーブは! 馬鹿なんじゃないの?」
「私の父さんもフリーダムに殺されたわ。宇宙を何時間も漂って、酸欠だった。でも、クライン派は、フリーダムは人の命を奪わないとか宣伝していたわ。所詮綺麗事言ってるだけなのよ! あいつらは!」
「くッ!」

アスランにあたるのは筋違いだと分かってる。アスランも苦しいと思う。知り合いがこんな事をしでかして。


廊下でアスランが壁を殴りつけてるのを見てしまった。

「くそう! 戦争はヒーローごっこじゃないんだぞ! キラ!」

アスランは泣いていた。あたしはそっとそこを離れた。


翌朝、セイバーが離艦していった。その前に、あたしは艦長に呼ばれていた。
そこであたしはアスランがアークエンジェルと接触するために離艦する事を知らされた。
そして、その様子を探る事も命じられたのだった……

アスランが泊まるホテルの部屋を監視できるホテルの部屋を取る。こんなことしてるとまるでスパイみたいだ。
ザフトに連絡すると、盗聴の手はずを整えてくれた。
ずっと見張っているのも疲れる物だ……
翌朝、動きがあった! あたしも後を追いかける! 小型ヘリコプターで待ち合わせの場所から離れた場所に降り、歩いて近くまで行って、集音機の準備をする。

「キラ。カガリ」
「アスラン……」
「どういうことだ!アスラン!お前……」
「……」
「ずっと、ずっと心配していたんだぞ!あんなことになっちゃって連絡も取れなかったけど。でも…なんで!なんでまたザフトに戻ったりなんかしたんだ!」
「その方がいいと思ったからだ。あの時は。自分の為にも、オーブの為にも」
「そんな…何がオーブの!」
「カガリ!」
「ぁぅ…キラ……ぁ……」
「あれは君の機体?」
「ああ」
「じゃあこの間の戦闘……」
「ああ、俺もいた。今ミネルバに乗ってるからな」

あれが、キラ・ヤマト。父さんの仇!

「ぁ……」
「お前を見て話そうとした。でも通じなくて……。だが何故あんなことをした!あんな馬鹿なことを!」
「ぁ……」
「おかげで戦場は混乱し、お前のせいでミネルバにも要らぬ犠牲も出た」
「馬鹿なこと…?あれは、あの時ザフトが戦おうとしていたのはオーブ軍だったんだぞ! 私達はそれを…!」
「ミネルバの乗組員を殺すのはかまわないのか? 陽電子砲を破壊されてどれだけの乗組員が死んだと思っている!
 それにあそこで君が出て素直にオーブが撤退するとでも思ったか! オーブの主力がここにいるなら、連合を裏切れば簡単にオーブはまた焼かれるだろうに、オーブが連合を裏切れるはずがないだろう!」
「ぅぅ……」
「君がしなけりゃいけなかったのはそんなことじゃないだろ!戦場に出てあんなことを言う前に、オーブを同盟になんか参加させるべきじゃなかったんだ! …まさか、出兵の強要を想像もしなかった訳でもないだろう? 2年前、オーブのマスドライバーの使用を強引に求めたのも、地球連合だ。……オーブを焼かないために、他国を攻める選択をしたのだろう、一度」
「それは……」

あたしの中のカガリ株が急降下した。やっぱり馬鹿姫だったか。

「カガリは、間違ってしまったことを分かってる! あの時は確かに間違った、でもアークエンジェルに来て分かってくれたんだ。他の国を撃つ事はやはりいけないって事、それを何とかしたいと思ったからカガリは……」
「何とかしたいと思って、何をしたんだ?」
「――!」
「まさか、間違いを分かるのにこんなに時間がかかった訳でもないだろう。それから、何をしていた。無為に時を過ごしていただけか。オーブ軍がミネルバを攻撃するまで。オーブが連合に出兵を強制されても、オーブ軍が出撃しても、オーブ軍が連合軍と合流しても、何もせず」
「もう、やめてくれ。カガリも混乱してる」
「まあ。いまさら言っても仕方がないか。でも、よく考えてくれよ、カガリ」

「でもそれで、君が今はまたザフト軍だっていうなら、これからどうするの? 僕達を探していたのはなぜ?」
「探していたのはもうあんなことはやめさせたいと思ったからだよ。俺がザフト軍兵士としての義務を果たす羽目になる前にああいう行動は止めてもらいたいんだ。ユニウス・セブンのことが問題なのはわかってるけどね、その後の混乱は、どう見たって連合が悪いよ。抑えようとすれば抑えられた民間の暴動を煽って、開戦に持ち込んだんだから。……まぁそんなことは今言っても仕方がない。とにかく今重要なのはこの戦争を早期に終わらせることだと俺は思ってる。早く終わらせるために俺の出来る事をやろうとも。でも君達の行動は、ただ状況を混乱させているだけだ。まるで戦争を長引かせたいかのようにね」
「本当にそう?」
「……?」
「プラントは本当にそう思っているの? あのデュランダル議長って人は、戦争を早く終わらせて、平和な世界にしたいって」
「俺はそう信じるよ」
「じゃあ、あのラクス・クラインは?」
「……ああ、彼女か」
「あのプラントにいるラクスはなんなの? そして、何で本物の彼女はコーディネイターに殺されそうになるの?」
「あのラクスの替え玉は混乱を抑えるための一手段だと思うが。なにしろ議長以上の影響力を持ちながらも終戦の立役者本人はオーブに引っ込んでしまったからな。まぁ俺も人の事は言えんが。その是非はともかく民衆の混乱の収束には一定の成果は上げているようだな。」

ああ! 驚くべき内容だけど、なんかすんなり納得できた。ラクス・クラインが何か変わったと思ったのも道理だ。あの議長ならやりそうな事だ。

「……で、殺されそうになったというのは?」
「オーブで僕らは、コーディネーターの特殊部隊とモビルスーツに襲撃された。狙いはラクスだった。だからボクはまたフリーダムに乗ったんだ」
「……何でフリーダムを保管してたんだ? ユニウス条約違反の?」
「彼女もみんなも、もうだれも死なせたくなかったから。彼女は誰に、なんで狙われなきゃならないんだ? それがはっきりするまでは、僕はプラントを信じられない」
「キラ、俺たちの手は血で汚れてるんだ。俺たちを恨んでる人間なんてそこらじゅうに居るんだよ。宇宙にも、地球にも、モビルスーツを持ち出してまで恨みを晴らそうという人間はね。まぁ、君たちが信じたくないのならプラントを無理に信じなくてもいいけど、もう戦場には出てこないでほしい。今の俺はザフト軍兵士だ。国と仲間の安全の為には義務を果たさなきゃいけないから」
「じゃあ、お前は戻らないのか?アークエンジェルにも、オーブにも!」
「オーブが、今まで通りの国であってくれさえすれば、行く道は同じはずだ。だから条約を早く何とかしてオーブを下がらせろ」
「アスラン!」
「俺は復隊したんだ!今更戻れない」
「でもそれじゃあ、君はこれからもザフトで、またずっと連合と戦っていくっていうの?」
「仲間を守るために。昔、お前が俺に言った言葉だな」
「じゃあこの間みたいにオーブとも?」
「攻撃されるなら、しかたないじゃないか。これも、昔お前に言われた言葉だな」
「……」
「ほんとに嫌なんだ、こんなことは。俺もオーブと戦いたくない。戦わせないでくれ。お願いだから」
「……でも、どうやれば……」
「カガリ、オーブにいて俺が感じた事だが、前大戦の後でもアスハ家を慕う物は民衆の中に大勢いる。
逆クーデターでもなんでもして、力ずくでも実権をアスハ家に取り戻せ! お前が覚悟を決めれば、知恵を貸し、協力してくれる者はアークエンジェルにもオーブにもいるはずだ。お前がオーブの実権を取り戻せば、俺もコネを総動員してザフトを動かして連合からの圧力を跳ね返す事もできる!」
「……あたしに、できるだろうか?」
「できる! 世界中の誰が否定しようと俺が肯定してやる! お前はオーブの獅子の子だろう!」
「……キラ、力を貸してくれるか?」
「……カガリがそう決めたなら」
「ありがとう、ありがとう……」
「じゃあ、俺は行くよ。派遣されているオーブの艦隊の事は……すまない。攻撃されれば反撃せざるを得ない」
「……くっ……キラ、私たちも急いで帰るぞ! マリュー艦長やバルトフェルドさんに相談しなきゃ!」
「カガリ!」
「なんだ、アスラン」
「頑張れ!」

あ……アスランはセイバーに乗って去り、オーブの代表も去って行った。
何? アスランてラクス・クラインと婚約者じゃなかったの? 今の様子じゃオーブの代表と恋仲って感じ……あたしは混乱した。

】 【戻る】 【