Lnamaria-IF_赤髪のディアナ_第05話

Last-modified: 2013-10-28 (月) 01:54:24

出会い

「アークエンジェルよ!」

マリュー大尉が嬉しそうに声をあげる。
爆炎から現れたのは一隻の戦艦だった。
見上げると鮮やかに赤と白に塗られた戦艦が飛んでいる。まるでペガサスのようだ、と思った。

着陸してきたアークエンジェルから黒髪のショートの髪型の女性が降りて、駆け寄ってきた。

「ラミアス大尉!それにアスカ主任も!御無事で何よりでありました!」
「あなた達こそ、よくアークエンジェルを……おかげで助かったわ」
「……艦長以下、艦の主立った士官は皆、戦死されました。無事だったのは艦にいた下士官と、十数名のみです。
私はシャフトの中で運良く難を逃れました」
「艦長が……そんな……」
「よって今は、ラミアス大尉が最上級者であります。ご命令を、お願いします」
「……わかりました。奪われなかったこのストライク、なんとしても本部へ届けましょう!」
「ところで、この子供たちは?」
「ああ……ヘリオポリス工科大学の学生よ。彼らのおかげでそこにあるジンを捕獲できたわ」
「ジンを捕獲した!?それはお手柄です!さすがラミアス大尉!」
「いえ、その、この子達がOS改良してくれたり操縦してくれたのよ」
「この子供たちがですか!?」
「ここはオーブのコロニーだよ。コーディネイターの子もいるんだ」

アスカさんが口を挟んだ。

「コーディネイター!?」

それを聞いた兵士たちがいきなり銃を構えた!

「やめなさい!」

マリュー大尉がするどい声で制止した。

「私たちが戦っているのはザフトです!コーディネイターが皆敵ではありません!」

兵士たちは銃をおろして緊張が解かれた。マリュー大尉はアスカさんを見て苦笑した。アスカさんも苦笑した。

「しかし、この人数にMS一機でとなると、ザフトの攻撃を撃退するには……」
「それなんだがね、ほら、マリュー大尉」
「ええ、あなたたち、モルゲンレーテのこの場所へ行って……」

しばらくマリュー大尉たちと話しこんでいたアスカさんがこちらへやって来た。

「なぁ、キラ君、ルナちゃん、頼みがある」
「なんですか?」
「もし、再びザフトが攻撃してきたら、またMSに乗ってくれないか?」

「え!?」

驚くあたしたちに、アスカさんは頭を下げた。

「すまん、ほかに操縦できる奴がいないんだ。いや、戦う必要はない。自分が攻撃を受けないことを最優先にし
てうろちょろしていてくれれば、それでいいんだ。それだけで、こちらは助かる」
「でもMSってあれ一機しかないんじゃ?」
「実は、オーブでも秘密にアストレイってMSを試作していてね。ほら、あれだ」

少し、誇らしげに言うアスカさん。
ちょうど遠くに連合の兵士たちがMSをここに運んでくるのが見えた。
赤色と青色の二機のMS。バッテリーが切れて灰色のストライクとは違った、鮮やかな印象のMSだった。

「お断りします!僕達をもうこれ以上、戦争になんか巻き込まないで下さい!」
「キラ!?」
「僕は戦争が嫌で、戦いが嫌で中立のここを選んだんだ!それを……」
「いいわよ。なら、キラは乗らなくて」
「え!?じゃあ、ルナマリアは乗るって言うの!?」
「うん。アスカさんも、逃げ回ってるだけでいいって言ったじゃない?それにザフトがまた攻めてくるのは確実
だろうし。艦の中で自分の運命他人任せにして震えてるのって、趣味じゃないの」
「そんな……」
「その代り、あの赤と青のMS、ちゃんと乗れるようにOS直すの手伝ってね」
「う、うん」

その後、カレッジのみんなに手伝ってもらって赤と青のモビルスーツ(アスカさんたちはレッドフレーム、ブル
ーフレームと呼んでいるそうだ)からデータの吸出しと、OSの改良をした。データの吸出しは、アスカさんに言
われて連合の人たちには内緒だ。
赤にはナチュラル用の基礎的なOS、青にはオプションパーツの設計図などが入っていた。こういう情報は、使い
方によっては国と国との取引に使えるような物もあるそうだ。
OSの改良も、順調に進んだ。何のことはない。あたしたちがカトウラボでまかされてた作業の成果がかなり使われていたのだ。

「なぁ、ルナ。もしザフトが攻めてきたらこいつに乗るんだろ?大丈夫か?」

サイが心配そうに声をかけてきた。サイは最年長らしく、結構みんなを見ていないようで見ていてフォローして
くれて頼もしい。と言ってもあたしとたった2ヶ月しか違わないわけで、ともすれば妹しか気をつけてないあた
しとしては見習わらなきゃと思ったりする。

「うん、攻撃しろなんて言われたらあれだけど。このオーブのMSってあっちの灰色のより大分軽いのよ。機動性
は高いし逃げ回るだけならなんとかなりそう」
「そうか。くれぐれも、無理はするなよ。あー、もういっそこの艦ザフトに降伏してくれた方が安全かもな」
「だめよ!」

やばっ思わず大声を出してしまった。

「ごめん、大声出しちゃって。でも、ザフトは血のバレンタインの復讐だって言って地球に連合国も中立国もか
まわずNJ打ち込むような奴らなのよ。オーブもなんか連合と共同でMS開発してたんだし、捕まったら何されるか
わかったもんじゃないわ。……あたしのお爺ちゃんとお婆ちゃん、エイプリルフール・クライシスで死んでる
んだ」
「そうか。悪い事言ったな」
「いいのよ」

「……僕、僕も乗るよ。やっぱり」

突然、黙々とOSをいじっていたキラが言った。

「いや。最初は腹が立ったけどさ。このヘリオポリスは大きく感じたけど、外にはもっと大きな世界が広がって
て、無関係じゃいられないんだなって思い知らされて。それに、女の子だけ危険な目に遭わせる訳にはいかない
じゃない?」
「……ありがと。キラ」
「がんばれよ、キラ」

なんて話してると、爆音が響いた!あれは!シャフトが!?
赤い色の地球軍の戦闘機と、ジンとは違うMS――後で聞いたらシグーと言うらしい――がコロニーの中へ飛び込
んできた!

「敵だ!君たちも早く乗り込め!」

アスカさんがそう言うとストライクに乗り込む!あたしはレッドフレーム、キラはブルーフレームに乗り込んだ。
アークエンジェルからミサイルが放たれ始めた。敵のMSはそれをかわし……ミサイルはシャフトに当たってい
る!このままじゃコロニーが!
ああ!スクリーンでは、地球軍の戦闘機がやられたところだった。
敵のMSはこちらに向かい……なんか動きが、鈍った?

「そこだあぁぁーー!」
『待って!アスカ主任!それは!』

アスカ主任が超高速インパルス砲――アグニを撃つ!それは敵のMSの片腕片足を吹き飛ばし……コロニーに、大穴を空けてしまった。なんて言う威力!マリューさんが止めたのはこういう訳か。
それでも。アグニに撃破された敵MSは、ふらふらとその穴から出て行った。ふー。

地球軍の戦闘機――メビウスもふらふらとこちらにやってくる!コントロールは失っていないようで、なんとか
アークエンジェルに着艦したようだ。
近くに行って降りてみると、メビウスのパイロットも降りて来て挨拶していた。

「地球軍、第7機動艦隊所属、ムウ・ラ・フラガ大尉だ。よろしく」
「第2宙域、第5特務師団所属、マリュー・ラミアス大尉です」
「同じく、ナタル・バジルール少尉であります」
「俺の乗ってきた船が落とされちまってねー。乗艦許可を貰いたいんだが、この艦の責任者は?」
「……艦長以下、艦の主立った士官は皆戦死されました。今は私がその任にあります」
「やれやれ、なんてこった。あーともかく許可をくれよ、ラミアス大尉」
「わかりました。乗船を許可します」

その時、ストライクからもアスカさんが降りてきた。ちょっとしょんぼりしていた。

「すまない。マリュー大尉。アグニは思ったより威力が大きすぎた」
「危急の際でしたから、シャフトに当たったら一大事でしたが、しょうがないでしょう。無事敵MSを撃退できた
のですから。それよりこちらのミサイルがシャフトに当たってしまって。オーブの皆さんには申し訳ありませ
ん」
「いやいや」
「あー、マリュー大尉、彼は?」
「あ、モルゲンレーテのMS開発部主任のノブザネ・アスカさんです」
「ふーん。よろしく。……あんた、コーディネイターかい?」
「……ああ」
「フラガ大尉、ここはオーブのコロニーで、現在艦に協力してくれる者の中にもコーディネイターがいます。ト
ラブルの元になるような言動は厳に慎んでください」

ナタル少尉がこちらに目をやりかすかに苦笑した。前にもあったなぁ。こんな事。堅苦しそうなナタル少尉だけ
ど、慣れれば仲良くなれるかもしれない。

「すまん。他意はない。俺はただ聞きたかっただけなんだよね。なにしろ、ここに来るまでの道中、これのパイ
ロットになるはずだった連中の、シミュレーションをけっこう見てきたが、奴等、ノロくさ動かすにも四苦八苦
してたもんでね。そういや、奪われなかったのは1機だけかい?あの2機は?俺の知ってるデータにはない機体
だが?」
「ああ、なんと言うか、オーブの作っていた秘密兵器さ」
「秘密兵器!そりゃなんとも頼もしそうな響きだねぇ。ところで、外に居るのはクルーゼ隊だ。あいつはしつこ
いぞ~。こんなところでのんびりしているより、早く出航した方がいいと思うがね」

あたしたちが出航したのは、それからまもなくだった。そして、フラガ大尉の言葉が悪く当たった。まだコロニ
ーから出ないうちに、敵のMSが今度は3数も襲来!アスカさんとあたしとキラも早速発進した。
ストライクはさっきの反省からエールパックだ。

「落ち着いて逃げ回れよ、ルナちゃん、キラ君」
「「はい!」」
「ん?あれはイージスか!?奪ったMSを投入してくるとは。ザフトも辛いのかな……いいか!あの赤いのはフェイズシフト装甲だ。実体弾は効かん!イーゲルシュテルンを無駄撃ちするな!」
「はい!……キラ?」
「あれは……は、はい!」

進入してきたジンは、拠点攻撃用の重爆撃装備だった。コロニーの事なんかこれっぽっちも考えてないんだ!
逃げ回るだけのつもりだったけど……守らなきゃ!
ジンは次々にミサイルをアークエンジェルに向けて放っている!イーゲルシュテルンとビームライフルで邪魔をする!当たらなくてもいい!邪魔さえできれば!
!一機、あたしの攻撃を避けようとしたところをアークエンジェルの砲火で撃沈された!やった!
もう一機もアークエンジェルの砲火に絡め取られた!……でも、そいつの放った最後のミサイルは、もうぼろぼ
ろになっていたシャフトを直撃した――

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