Lnamaria-IF_LED GODDES_03

Last-modified: 2009-05-28 (木) 19:34:27

ヘリオポリス防衛本部――
彼らは混乱の極にありながらも必死で目の前の状況に対応しようとしていた。
「どうします! ヘリオポリス防衛隊、損害80%!」
「あの情報屋め! ぎりぎりになってから知らせてきおって!」
「とにかく、増援を! 周囲の資源開発衛星からかき集めるんだ!」
「ザフトめ! メイリン姫様の仇を!」
「俺、ここを生き残ったら地球軍に義勇兵として参戦してやる! ザフトの奴らをぶっ殺す!」
「こうなったら、名目を宇宙海賊襲撃にして、地球軍にも応援を要請しろ! いいか、ザフトなんて名前すらもったいない! 奴らは賊だ!」
「傭兵がいる? 早速雇え! 会計? 本土に回せ!」

 
 

「教授!」
「無事だったんですか!」
「いや、もうどうなる事かと!」
カトーの周りにサイ達が群がる。大人の知り合いに会えて安心したのだろう。
「ははは。私も危ないところだったがね、ルナマリア君に助けられたよ」
「やっぱり知り合いだったんですか」
「ああ、本土のね。ところで、君ら、協力してくれ。ここらのシェルターは皆もう入れなかったろう?」
「ええ、困ってしまって……」
「近くに地球軍の船がいるはずなんだ。そいつに救援を頼む。いいかい?」
「わかりました!」
「了解」
「では、紹介しておこう、私の仕事の同僚、みたいなもんかな。地球軍のマリュー・ラミアス大尉だ」
「よろしく、皆さん」
「よろしくー」
「よろしくお願いします!」
「じゃあ、サイ、このストライクに乗って通信を試みてくれ。トール達は地球軍の大尉さんとこの場所へ行って運搬車で……」

 

「で、ストライクはどうする?」
私はラミアス大尉に話題を振った。
「え、どうするって、ルナマリアさん?」
「オーブのモビルスーツ、2体あるが、ストライクに比べればまだまだ未完成だ。さすが大西洋連合の技術力だな」
「そうでも……」
そう言いながらマリューは嬉しそうに顔をほころばせた。
「僭越ながら、今、ここにいる中で一番うまくモビルスーツを操縦できるのは私だと思う」
「ええ」
「できれば、ストライクに乗らせて欲しい」
「……ええ、判ったわ」
「ありがたい! で、付けるストライカーだがエールを。ソードは対艦攻撃するわけでもあるまいし、ランチャーはコロニーの中で使うには物騒すぎる」
「了解! トール君! 7番のコンテナを持ってきて!」

 

「あ!」
サイが驚いたような声を上げる。
「どうしたの!? サイ君」
「通信が! 繋がりました!」
「なんですって!」
マリューはストライクのコクピットに駆け上がる。
『…ちら…ク……ジェル……ちらアークエンジェル!』
微かだけど、途切れ途切れだけど、呼びかけて来る艦名は確かにアークエンジェルだ!
マリューはマイクを取ると呼びかける。
「繋がった! こちらX-105ストライク。アークエンジェル、応答願います!」

 

――!
爆発音がした!
ラミアス大尉が嬉しそうに声をあげる。
爆炎から現れたのは一隻の戦艦だった。
見上げると鮮やかに赤と白に塗られた戦艦が飛んでいる。まるでペガサスのようだ、と思った。

 

着陸してきたアークエンジェルから黒髪のショートの髪型の女性が降りて、駆け寄ってきた。
「ラミアス大尉! 御無事で何よりでありました!」
「あなた達こそ、よくアークエンジェルを……おかげで助かったわ」
「……艦長以下、艦の主立った士官は皆、戦死されました。無事だったのは艦にいた下士官と、十数名のみです。私はシャフトの中で運良く難を逃れました」
「艦長が……そんな……」
「よって今は、ラミアス大尉が最上級者であります。ご命令を、お願いします」
「……わかりました。奪われなかったこのストライク、なんとしても本部へ届けましょう!」
「ところで、この子供達は?」
「ああ……。オーブ側の、モビルスーツ開発協力者であるカトー教授と、その生徒です。危険な中を手伝ってくれているわ。……失礼の無いように」
「了解であります! で、困った問題ですが……ストライクのパイロットがいません。と、言いますか護衛のメビウスすらありません。モビルスーツのパイロット候補生達は皆、先程の攻撃で艦長に挨拶していたところを……」
「そう、とりあえず、ストライクのパイロットはルナマリアさんに頼んであるわ」
「ルナマリア?」
「ええ、カトー教授の知り合いでね、オーブでモビルスーツの操縦訓練を受けていたそうよ。私よりずいぶんましな腕前よ。先程もジンを一機撃退したわ」
「ええ!?」
「教官だったんだ、グリンベレーの――」
そう私が言うと、バジルール少尉は納得したように何度も頷いたのだった。
「それはすばらしい! で、あの赤と青の見慣れぬモビルスーツは……」
「……オーブが、作っていたそうよ」
「え?」
「ふふ。私達は素直に戦力が増えた事を喜びましょう。後は上層部が交渉なりなんなり、するでしょう。オーブのOSは私達の物より優れていました。すでにストライクにインストールしてあります。ここはオーブと大西洋連合、お互いに協力し合いましょう」
「了解しました!」

 
 

その頃ザフト艦――ヴェサリウス艦内

 

「ミツオの奴遅いな」
アスランはつぶやいた。
自分と代わるようにコロニー内に残ったミツオ。帰還が遅れているのが妙に気にかかる。
「ああ、しかし、ベテランだ。そう、遅れを取る奴でもないだろう」
「ん、そうだな」

 

「ふむ。オロール機が大破か。どうやらいささか五月蠅い蠅が一匹飛んでいるようだぞ」
「はっ」
「ところで紅茶の入れ方にはゴールデンルールと呼ばれる有名な入れ方がある。しかしその前に重要なポイントについて教えよう。紅茶の三大要素として『香り』、『色』、『味』がある。このうちの『色』と『味』はポットで決まってしまう。これは何故かというと単純に、抽出時間やポットでの茶葉の動きに起因するからという訳だ」
「はぁ…」
「厳しい理想としては、できるだけ丸いものを選ぶ。保温性の高いものを選ぶ。ボーンチャイナ製が大変好ましい。鉄製のポットは絶対使わない。そんな所だな」
「はぁ…」
「では次に……新鮮な紅茶葉、茶摘みされてから余り日数の経っていない物を使うのはもちろんだ。そして新鮮な美味しい水。これは、水により紅茶のまろやかさが全然変わってしまうためだ。
「はぁ……」
「お湯は緑茶と違い、100℃の空気を充分に含んだお湯を使う事。これはジャンピングを起こすためだ。ペットボトルの水や湯沸かしポットでの時間の経ったお湯はジャンピングが起きにくいので、水道より出したての空気を含んだ水を沸かした物を使う。そんなところか。ん、そろそろいいかな。注いでやろう」
「はぁ……頂きます」
「ミツオからの連絡が遅いが、まぁ彼の事だ。うまくやるだろう」

 

ラウ・ル・クルーゼはアデス艦長相手に優雅にお茶を楽しんでいた。
「――む!」
クルーゼは何かを感じた。うっすらと汗が吹き出るのを感じる。
「……容易ならん相手かも知れん、出るぞ!」

 
 

「おい、少年」
「え、俺の事?」
「ふふ、そうよ。カズイ」
私はカズイに声をかけた。
「なんだよ」
「ふふ。君、モビルスーツに乗ってみたくない?」
「え、そりゃあ、乗ってみたいけど、なんでさ」
「ん。ストライクは私が乗る。レッドフレームはカトー教授が乗るわ。でも、ブルーフレームが、乗り手がいないのよね。もったいないでしょ」
「でも、なんで僕に」
「んー。ラボでさ、君、パワードスーツ動かしてたでしょ。見込みあるかなぁって」
カズイの顔が緩んだ。
「でも、危険なんだろう?」
「そりゃそうよ。でも最前線は私が受け持つわ。君にやって欲しいのは、私を狙ってる敵を見つけ出して、私が攻撃されないうちに、牽制のためにビームライフルを撃つ事。エネルギーはアンビリカブルケーブルでアークエンジェルと繋ぐから、危ない時は弾切れの心配なく弾幕張っていいわ。どう?」
「んー……」
「やれるよ、君なら――」
私はカズイの肩に手を置く。
一瞬逡巡した後、カズイは言った。
「よし、僕も男だ! 見込まれたなら、やってやる!」

 

「ところでキラ君、これ、やっといてね」
カトーはキラにまた宿題を押し付けた。
「ええー!? またですか? 教授?」
「ははは。いいじゃないか。プログラミングの腕はラボで君が一番だからね」
「はぁ……」
「そうだ! これはオーブのモビルスーツ開発と言う大事業だ。ボーナス出そう、ボーナス」
「教授のポケットマネーですか?」
「馬鹿言っちゃいけない。モルゲンレーテからたっぷり分捕ってやるさ!」
「むむ……」
「そうだなぁ。月に3000ドル出そう」
「……僕だけにですか?」
キラは自分だけ金をもらう事が心配だったのだ。
「いや、手伝ってもらう学生にはそれなりに出すさ」
「最後にもう一つ。……ジンバブエドルじゃありませんよね?」
「君も突っ込むね。もちろんオーブドルさ!」
「んん……じゃあ、いいかなぁ」
だが……もはや天文学的な数字の額面となったジンバブエドル紙幣にはコレクターによりプレミアが付いていたりするのだ。
ちなみに筆者も一枚持っている――

 
 

「くっ、こいつは!」
クルーゼは、たった一機のメビウス・ゼロによって追い込まれていた。
「この私とした事が! オロールがやられるのも頷ける!」
相手のメビウス・ゼロは、4つのガンバレルを縦横無尽に使い、クルーゼのシグーを追い込むように動く。
「こいつはムゥ? ムゥなのか!? しかしこのプレッシャーは!?」
クルーゼはシャフトに逃げ込み、コロニー内へと退避する。
「む、あれか? 地球軍のモビルスーツとやらは! ……数が多い!」
地球軍の新造戦艦らしき物のブリッジに3機ものモビルスーツがある。
しかし、何とか当たってみなければわざわざ自分が出撃してきた意味もない。
メビウスにはできない、モビルスーツならではの小回りの機動で一時的にメビウス・ゼロを振り切ると、地球軍のモビルスーツらしき物へと突っ込む!
稼いだ時間はわずかだ。
クルーゼはこちらへ向かってくるトリコロールカラーの一機に狙いを定めると、シグーの重突撃機銃を撃つ!
「効果無しか!」
クルーゼは素早く判断を下すとシールド裏面に設置されたバルカン砲で強化APSV弾を撃ち放つ!
「こいつもだめか! む!?」
敵モビルスーツが、こちらに突進してくる!
ビームライフルの光がシグーを掠める!
「ビームライフル? ビーム兵器か! これではこちらに分が悪い!」
「む!?」
殺気を感じて、クルーゼはシグーを急加速させる!
今までシグーがいた場所を、メビウス・ゼロのリニアガンの弾丸が通り過ぎていった。
――!
「うっ! ぬかった!」
危険を感じ、慌ててシグーの腕を盾にする。
その腕を、地球軍のモビルスーツは、ビームサーベルであっさり切り飛ばす!
「く、まだまだ、まだやられんよ!」
それにしても……どうやらバックアップらしい赤と青二機の機体からもビームの弾幕が上がっている。
どうやら地球軍はビーム兵器を本格的に運用し始めたらしい。
――!
クルーゼはまたしても紙一重のところでメビウス・ゼロの攻撃を避けた。
「潮時か! にしても地球軍にこれほどのパイロットがいたとは!」
目的は達した。
クルーゼは撤退に掛かる。
だが、それを見逃すメビウス・ゼロではない。ガンバレルを本体に合体、ブースターとして使用! クルーゼのシグーに追いすがる!
――!
クルーゼのシグーは、右足に被弾する!
「くっ、私とした事が! 足なんて飾りに過ぎん!」
クルーゼはシグーの両足をパージする!
軽くなった機体はスピードが上がり、どうやらメビウス・ゼロを振り切りシャフト内に逃げ込めた、
クルーゼは一目散にコロニー内から脇目もふらず撤退していった。

 
 

地球軍の戦闘機――メビウス・ゼロは、余裕のある様子でアークエンジェルの周囲を一回りし、着艦してきた。
降りてきたのは……険しい顔立ちをしたくせ毛の金髪の青年だった。
「地球軍、第7機動艦隊所属、ア……ムウ・ラ・フラガ少佐だ。よろしく」
「第2宙域、第5特務師団所属、マリュー・ラミアス大尉です」
「同じく、ナタル・バジルール少尉であります」
「私の乗ってきた艦は残念ながら落とされてしまった。乗艦許可を貰いたい。この艦の責任者は?」
「……艦長以下、艦の主立った士官は皆戦死されました。今は私がその任にあります」
マリューが答えた。
「ふぅ。あちらもこちらも大騒ぎだな。ともかく許可を。ラミアス大尉」
「わかりました。乗船を許可します」
「ところで、地球軍のモビルスーツを操縦していたのは?」
「私ですが」
コクピットから降りると私はそのフラガ大尉に言う。
「オーブの、ルナマリア・ホークだ」
「……そうか。不躾な質問をするが許してもらいたい。君はコーディネイターか?」
周囲に緊張が走る。
「ふ。ナチュラルですよ。それはマリュー大尉とカトー教授が証人だ」
「ふむ……」
フラガ少佐は自分のあごをつまんだ。
「すまん。他意はない。私はただ聞きたかっただけなのだ。なにしろ、ここに来るまでの道中、これのパイロットになるはずだった連中の、シミュレーションをけっこう見てきたが、奴等、ノロくさ動かすにも四苦八苦してたものでな」
「ふ……血反吐を吐くような訓練をしただけだ。文字通りな。それに、モビルスーツの原型のバトルスーツはコーディネーターが創ったと言うわけでもあるまい」
「確かにな。だが、それだけではなさそうだが」
秘密を探り出そうとでも言うように、フラガ少佐は強いまなざしでこちらを見つめてくる。
「ふぅ。ま、別に隠す事でもないが。OSは、オーブで開発された物に更新されている。ナチュラルでも使える物にだ。先程はモビルスーツには素人の学生でも銃撃戦が出来たぞ。もちろん彼はナチュラルだ」
「そうか。それは心強い。ところで、奪われなかったのは1機だけか? あの2機は? 私のの知ってるデータにはない機体だが?」
「ああ、なんと言うか、オーブの作っていた秘密兵器さ」
カトーが口を挟んだ。
「秘密兵器! そりゃなんとも頼もしそうな響きだな。ところで、外に居るのはクルーゼ隊だ。あいつはしつこい。こんなところでのんびりしているより、早く出航した方がいいと思うがね」
そう言ってフラガ少佐はアークエンジェルの中へ入っていった。
私はカズイの姿を見つけると、「上出来だったね」と握手を求めた。
彼は嬉しそうに照れた。

 
 
 

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