Lnamaria-IF_LED GODDES_06

Last-modified: 2009-06-12 (金) 21:30:31

ヴェサリウス艦内――
「なぜだ! 奴らの頭は抑えたはずだ! なぜ未だに見つからん! ガモフから知らせは無いのか!?」
クルーゼは焦る声で言う
「は、今のところありません」
アデスが答える。
「くそう、まさか本当に、素直に月基地へ向かったとでも言うのか! 地球軍の奴らは策の一つも使えないほどの馬鹿者だと言うのか!?」
「……」
「もしかしたら、我々の気づかぬ内にアルテミスへ入ったのかも知れない。確認せねばなるまい。アルテミスへ向かうぞ!」
「はっ」
そこに、ヴェサリウスクルーが言葉を挟んだ。
「クルーゼ隊長へ。本国からであります」
「……。ふん……」
通信文を読み終えるとクルーゼは鼻を鳴らした。
「評議会からの出頭命令ですか」
「ヘリオポリス崩壊の件で、議会は今頃てんやわんやと言ったところだろう。まあ、仕方ない。あれはガモフを残して、引き続き追わせよう」
「はっ……!」

 
 

ヘリオポリス崩壊から数時間後――
「へぇ、ずいぶんぶっ壊れてるなぁ!」
ジャンク屋、ロウ・ギュールは崩壊したヘリオポリスに潜入した。
「やったな! 一番乗りだ!」
「本当に、本当に大丈夫なのぉ-? さっきまで地球連合軍とザフトが戦ってたんでしょ?」
メンバーの山吹樹里がぼやく。
「大丈夫ですよ。脱出は確認しています。我々以外に誰もいませんよ。今のこのコロニーは我々ジャンク屋にとって、たくさんのお宝が眠っているはずです」
メンバーのリーアム・ガーフィールドが答える。
「そう言う事!」
彼らは更にヘリオポリスの奥深くに進入していく!

 
 

「そう言えばフラガ少佐」
シミュレーターの訓練も一息ついた頃、私はフラガ少佐に話しかけた。
「なにかね?」
「コロニー内での戦闘の時、わかった事があります」
「ふむ」
「ザフトのイージスのパイロットは、カトーのゼミの、キラ・ヤマトの知り人かもしれません。『キラだろう』と言って呼びかけてきました」
「ふん、それで?」
表情を変えずにドリンクをすするフラガ少佐に、私は明るい笑顔で言った。
「キラ・ヤマトはザフトの攻撃で死んだ事にしちゃいましたから♪」
「……ぷ。ぅははっはは!」
「そう言う事で、お願いしますね。せいぜい利用してください。あ、キラには絶対秘密厳守で」
「了解、あんたとは気が合いそうだ。姫様」
「カズイもいいか?」
「あ、ああ?」
「要するに、いざって時はその事を持ち出してイージスのパイロットの気を混乱させてやれと言う事だな」
「わかりました。でも、姫様って……?」
「ふ……秘密だぞ?」
私はカズイにウインクした。

 
 

ザフト艦ローラシア級ガモフ――

 

「アルテミスの傘はレーザーも実体弾も通さない。ま、向こうからも同じことだがな」
艦長のゼルマンは言った。
ガモフは地球連合、ユーラシアのアルテミス要塞を確認できる位置まで進出していた。
ガモフには、ヘリオポリスでGAT-X102 デュエルを強奪したイーザーク・ジュール、GAT-X103 バスターを強奪したディアッカ・エルスマン、GAT-X207 ブリッツを強奪したニコル・アマルフィが配属されている。
他のパイロットも配属されていたのだが、ヘリオポリス強襲の際、ヘリオポリス防衛隊の必死の防戦に遭い未帰還となっていた……
「だから攻撃もしてこないって事? 馬鹿みたいな話だな」
ディアッカが言う。本人は残忍で狡猾な男を目指しているらしいが、残念で迂闊、と言うのが周囲の評価である。
「だが、防御兵器としては一級だぞ。そして重要な拠点でもないため、我が軍もこれまで手出しせずに来たが……。あの傘を突破する手立ては今のところない。もし入り込まれたとすれば、厄介なところに入り込まれたな」
「じゃあどうするの?出てくるまで待つ? ふっふふふ……」
ゼルマンはこの物言いにむかつく。が、部下の言葉に熱くなるのもみっともないので黙っている。
「ふざけるなよ、ディアッカ。お前は戻られた隊長になにもできませんでした、と報告したいのか?それこそいい恥さらしだ」
イザークが言う。
「ともかく……」
ゼルマンは続けた。
「本艦の任務は、地球軍の新型艦がアルテミスに逃げ込んだかどうか確認する事だ。何らかの作戦を立てねばなるまい」
「傘は、常に開いているわけではないんですよね?」
ニコルが問いかける。
「ああ、周辺に敵のいない時まで展開させてはおらん。だが閉じている所を近づいても、こちらが要塞を射程に入れる前に察知され、展開されてしまう」
「僕の機体、あのブリッツならうまくやれるかもしれません」
「ほう?」
「あれにはフェイズシフトの他にもう一つ、ちょっと面白い機能があるんです」
ニコルはにやりと笑った。

 
 

「へぇ! ビームライフルかぁ! お宝ゲット! 探せばもっとあるかもな」
ロウは先行きが良いと喜んだ。
「しかし、ビームライフルとは……オーブにモビルスーツは無いはずなのに……」
リーアムが訝しげに言う。
「へぇ、こいつ、キメラとエネルギー直結すれば使えるぜ」
ロウは、嬉しそうだ。ちなみにキメラとはドリルなどが付いた作業用のモビルアーマーである。
「こいつはいよいよ、お宝の臭いだぜ!」
ロウは
「ロウ、これは……!」
「これは、モビルスーツが乗っていたような、台?」
「持ってかれちゃったんですかねぇ?」
「いいや、まだまだ! まだ探すぞ!」
ロウはキメラのドリルで穴を掘り始めた。

 
 

「なんと言う事だ……」
ウズミは呻いた。
「オーブが二度も焼かれてしまうとは……」
ウナトも同じく呻く。
「なんなのだ? ラクス・クラインとは? 何故一介の権力者の娘が世界を混乱に導く力など持てるのだ……」
二人は、グレイと名乗る男に、不可思議な方法でこれからオーブが断固として中立を図った場合の未来を見せられたのだった。
「おわかり、頂けましたか」
グレイが声をかける。
「うむ。だが、オーブはいつまでも中立を守る気はない。この未来は違うのでは? それに私の養子も違う。カガリ・ユラ・アスハなど知らんぞ」
「そうです! これは平行世界の出来事です」
「なんと……」
「しかし、もうおわかりでしょう。あなたが事を為すにも今のオーブには力が足りない。手助けをして差し上げたいのです」
グレイは不思議な笑みを浮かべた。

 
 

アルテミス要塞指令ブース――
「なんだ?」
ジェラート・ガルシアはアイスを舐めながら訝しげに言う。
「ザフト艦ローラシア級離脱します。イエロー18、マーク20、チャーリー、距離700。さらに遠ざかりつつあります」
「わかった。後はライズに任せる。引き続き対空監視を怠るなよ」
「はっ」
ジェラートはおいしそうに少し溶けかかっていた。ガルシアはそれをペロっと舐める。
ミント味であった。ジェラート自身の冷たさと相まって、たまらぬ爽快感であった。
ちなみにジェラート(Gelato)はイタリア語で「凍った」と言う意味の名前がついた氷菓である。
果汁、果肉、牛乳、砂糖、時にはコーヒーや香草などを混ぜた物を凍らせて作る。イタリア人の夏には欠かせないお菓子である。 一般的なアイスクリームと比べて空気含有量が35%未満と少なく密度が濃く味にコクがある。また、乳脂肪分は4~8%で一般的なアイスクリームの約半分であり比較的低カロリーである。

 
 

ザフト艦ガモフ――
「アルテミスとの距離、3500。光波防御帯、以前変化なし」

 

「ミラージュコロイド、電磁圧チェック。システムオールグリーン。はぁ……テストもなしの一発勝負か。大丈夫かな……」
自分が発案したのだ、なんとしても成功させて見せるとニコルはブリッツのコクピットで誓った。

 

「しかし、地球軍も姑息な物を作る……」
ガモフの休憩室でイザークがあざ笑うように言った。
「ニコルにはちょうどいいさ。臆病者にはね……」
ディアッカは、自分では狡猾そうに見えると思っている笑みを浮かべた。

 
 

「ん? 向こう側に穴があるぞ!」
ロウは嬉々として掘り続けた。
「あ、開いた。こ、これは――」
そこに横たわっていたのは、一体のモビルスーツに見える物であった――!
その機体は両手足、頭は白、胸、胴は青、腰が黄色、足底は赤。胸に2連の黄色い砲口を持ち背部に大型の赤いウィングを背負っている。黄色い六芒星マークのベルトをしている。
「こいつはお宝だぜ!」
『大変よ! ロウ!』
ロウ達の母艦に残っていたプロフェッサーと呼ばれる女性が落ち着いた声で危機を知らせてきた。
「なんだ!?」
『気をつけて! そっちにモビルアーマーが向かっているわ!』
「お仲間(ジャンク屋)か?」
『違うわね。完全武装した傭兵よ! 戦ったら勝ち目はないわ!』
「ロウ、どうします?」
「ふ、知れた事!」
ロウは、そのモビルスーツに見える物に乗り込んだ!
「ちょっと、強い相手に普通は逃げるでしょ?」
リーアムは焦る。
「まったく、ナチュラルは面白い考え方をする物です」
「まかせとけって! お宝を傷つけないように戦うさ!」

 
 

アルテミス管制室――
「定時哨戒、近接防空圏内に敵影、艦なし」
「よし、もういいだろう……。全周囲光波防御帯収容。第2警戒態勢に移行」

 

「ふ……ようやく」
ニコルはブリッツを発進させた。
「ミラージュコロイド生成良好。散布減損率35%。使えるのは、80分が限界か……」
説明しよう。ブリッツが持つミラージュコロイド生成機能。
ミラージュコロイドは可視光線を歪め、レーダー波を吸収するガス状物質。これを磁気で機体周囲に纏うことにより、視覚的及び電波的にも自機の存在を隠匿することが可能なのである!

 

順調にアルテミスに近づいたブリッツは、おもむろにビームを発射する!

 

「なんだ!?」
「どうした!?」
アルテミス管制室が騒然となる。
「管制室、この振動はなんだ!?」
「不明です!周辺に機影なし!」
「だがこれは爆発だぞ!!」
「超長距離からの攻撃かも知れん! 傘を開け!」

 

ニコルは傘が展開されるとニヤリと笑った。
「あれか!」
ブリッツはビームサーベルで光波防御帯発生装置を破壊していく!

 

「防御エリア内に、モビルスーツ!リフレクターが落とされていきます!」
「なんだと!?」
「傘が破られた!?そんな馬鹿な!!」
絶対と思っていたアルテミスの傘――それが破られるなど……
ガルシアはうろたえてジェラートをぽとりと床に落としてしまった!
「司令!」

 

「あいつは港か!?」
ニコルはアークエンジェルの存在を確認するために港へ進んでいく。

 

「ははっは! アルテミスの傘も形無しだな!」
傘が無くなったアルテミスに、モビルスーツの進入を防ぐ手立てはない。
デュエル、バスターも進入し、アークエンジェルを目指す!
「あの艦は!?」
「わからない! ニコル、どこだ!」

 

「無い……」
ニコルはつぶやいた。
ドックには、地球軍の新型艦の姿はなかった……
「ニコル! いたか?」
「イザーク、ディアッカ、ここは空です。逃げ出した形跡もない。引き上げましょう」
「ち、隊長の勘も鈍ったかな」
ディアッカはぼやいた。

 
 
 

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