Lnamaria-IF_LED GODDES_10

Last-modified: 2009-07-11 (土) 17:06:00

「フレイったら!」
ここはアークエンジェルの食堂。ミリアリアは声を荒げる。
「嫌ったら嫌!」
フレイも声を荒げる。
「なんでよー!?」
「どうしたの?」
キラが顔を出した。
「あの女の子の食事だよ。ミリィがフレイに持ってって、て言ったら、フレイが嫌だって。それでもめてるだけさ」
カズイが説明する。
「私はやーよ! コーディネーターの子の所に行くなんて。怖くって……」
「……」
キラは俯く。

 

ん?
廊下を歩いていた私は、食堂から聞こえてくる会話に耳をすませた。
「なにかと思えば……」
私は食堂に入る。
「ルナ!」
「食事はミリアリアが持って行ってやれ。男だと誘惑されるかも知れん」
「誘惑って……ルナ……ふふふ」
ミリアリアが笑い出す。
「冗談じゃないぞ。あ、キラ、お前は自室に籠もってろ!」
「え、なんでさ」
「いいから! 艦長としての命令だ!」
「えー」
「キラ」
カズイが口を出す。
「ルナがこう言ってるんだ。頼むよ」
「しょうがないな……」
「よかったー。でも、ミリィで大丈夫なの? あの子はザフトの子でしょう?
 コーディネーターって、頭いいだけじゃなくて運動神経とかも凄くいいのよ。なにかあったらどうするのよ! ねぇ?」
「フレイ!」
「まぁ、気にするのもわかるけど」
カズイが言う。
「でも、あの子はいきなり君に飛び掛ったりはしないと思うけど」
キラが、反発するように言った。
「そんなのわからないじゃない。コーディネーターの能力なんて、見かけじゃ全然わからないんだもの。凄く強かったらどうするの!?ねぇ?」
「……」
キラは俯いた。

 

「――まあ、誰が強いんですの?」
「「?」」
「ハーロー。ゲンキ。オマエモナー」
「「!?」」
「貴様!」
私は声を上げた。
「なぜここにいる!?」
「まあ、驚かせてしまったのならすみません。わたくし、喉が渇いて……。それに、笑わないでくださいね。だいぶおなかも空いてしまいましたの。こちらは食堂ですか?何かいただけると嬉しいのですけど」
「って、ちょっと待って!」
「鍵とかってしてないわけ……?」
「やだ……! なんでザフトの子が勝手に歩き回ってんの!?」
「あら、勝手にではありませんわ。わたくし、ちゃんとお部屋で聞きましたのよ。出かけてもよいですかーって。それも3度も」
「……」
「それにわたくしはザフトではありません。ザフトは軍の名称で、正式にはゾディアック・アライアンス・オーブ・フリーダム――」
「勝手に部屋を出ていいと誰が言った!」
私は声を荒げた。
「それにザフトではない!? プラント市民だとでも言うつもりか!」
「ええ、わたくしは……」
「プラントとは、理事国が資金を出し合って、力を出し合って作り上げた工場コロニーの事だ! そこに、好きで就職しておきながら強奪しておいて、白々しくプラントなどと口に出すな! プラントと言う名前を汚すな!」
「ちょ、ちょっと、ルナ……」
フレイが、袖を引くが私は止まらない。
「プラントを強奪したお前らはすべてテロリストのザフトだ! 覚えておけ!」
「そんな……」
ラクスは悲しそうに項垂れる。
「この艦はオーブの船だ。無法にもザフトがオーブにもニュートロン・ジャマーを打ち込んだ事、オーブの民は忘れていないぞ。した方が忘れても、やられた方が忘れてくれると思うなよ」
「え……」
私は首を振って深呼吸した。
「ミリィ」
「……なに?」
「ふぅ。早く、そいつを連れて行ってくれ。食事も一緒に」
「……わかったわ」
「……」
ラクスとミリィは食堂を出て行った。
「なぁ、ルナ、なんであんなに熱くなるんだ?」
サイが聞いてきた。
「……エイプリルフール・クライシス。それで家族が死んだ」
「……!」
「ルナの経験からすりゃ、無理もないだろ」
カズイが言った。
「まぁ、無理、ないかな……」
サイが少し困ったように言う。
「すまん、少し熱くなりすぎてしまった」
「いや、いいさ。事情を聞けば当然だ」
「ふぅ」
私は深呼吸すると気持ちを切り替える。
「キラ。キラはさっき言ったように、自室に籠もっていてくれ。万が一と言う事もある」
「ん、なんでさ」
「訳はいつか話す。頼む」
「まぁ、いいけど」
「すまん」
私はキラに頭を下げた。

 
 

「遅れてすみません」
私は艦長室に入った。
「ちょっと、食堂でトラブルがあったものですから」
「ほう、どんな」
フラガ少佐が促すように言う。
「はい、最初は誰がラクス・クラインの元へ食事を持って行くかと言う事だったのですが、突然、彼女自身が現れまして」
「まさか! 鍵はかけておいたはずよ!」
ラミアス大尉が驚く。
「……一応、勝手に出るなと釘を刺しておきましたが、身体検査が甘かったかも知れません」
「わかった。今度何かあったら私が身体検査をしよう」
バジルール少尉が言う。
「しかしまあ、補給の問題が解決したと思ったら、今度はピンクの髪のお姫様か。悩みの種が尽きませんなあ、艦長殿」
そう言って、フラガ少佐は私に敬礼した。
「……。あの子もこのまま月本部へ連れて行くしかないでしょうね……」
ラミアス大尉がつぶやいた。
「もう寄港予定はないだろう」
「でも、軍本部へ連れて行けば、彼女は……。いくら民間人と言っても……」
「そりゃあ大歓迎されるだろう。なんたって、クラインの娘だ。色々と利用価値はある」
「できればそんな目にはあわせたくないんです。民間人の、まだあんな少女の……」
「そうおっしゃるなら、彼らは? こうして繰艦に協力し、戦場で戦ってきたオーブの彼らだって、まだ子どもの民間人ですよ」
バジルール少尉が反論する。
「バジルール少尉、それは……」
「カズイ・バスカークや彼らを、止む終えぬとはいえ戦争に参加させておいて、あの少女だけは巻き込みたくない、とてもおっしゃるのですか?」
「……」
「彼女はクラインの娘です。ということは、その時点ですでにただの民間人ではない、と言う事ですよ」
「……」
「いや、あくまでこの艦はオーブの艦だと言う事を忘れないで頂きたい」
私は口を挟んだ。
「でも、それは……」
「ええ、名目上の事です。ですが、それを貫き通さねば、ザフトに対する武器とはなりません。ザフトはこちらの言う事を信じず、避難民が乗った中立国の船を攻撃する事になるのです。そうして頂く」
「……そうね」
「それに……オーブがラクス・クラインを捕らえたら、利用価値、などと言う事は申しません」
私はにこやかに言った。
ラミアス大尉が少しほっとした表情を見せる。が、私の続く台詞で顔色が変わる。
「なにしろザフトはテロリストですので。我が国としてはテロリストと交渉、ましてや妥協、譲歩など、考えられる事ではありません。彼女はただのテロリストとして収監させてもらいます」

 
 

オーブ――オノゴロ島
この島にはモルゲンレーテの本社と工廠がある事はよく知られているが、もう一つの会社が存在する事はあまり知られていない。その会社の名を東京マルイと言う――

 

CE.71年2月1日、0400時。オノゴロ島から北東2海里の海上に、奇怪な物体が出現した。それは、艦首と艦尾をのぞけば、どうみても潜水艦のかたちをしている。しかし排水量2万トンはありそうな巨大な潜水艦である。そして中央部には、亀の甲羅のような曲面体が盛り上がっている。それがなめらかにひらくと、曲面は左右の舷側に収容された。その下に長方形の飛行甲板が現れた。全長200メートルはある。エレベーターも2基ついている。

 

「おお!」
「本当に!」
「ミスター・グレイの言ったとおりだ!」
『イ2000』――グレイが、支援すると約束した艦艇の一つである。

 
 

「とりあえず、擬似酵素による学習は済んでいるな?」
「はっ。しかし、このビスケットみたいなのを食べるだけで学習できるとは。至れり尽くせりですな」
「よし、ジドム、アッカム、ザイックの搬入開始しろ」
「了解しました」
「終わったら、ズク、ゲルグの搬入だ。終了時間は?」
「5時間ほどです、セイラン准将殿!」
ユウナ・ロマ・セイランは頷いた。
彼らはこれより、義勇兵として秘密裏にアフリカ戦線に赴くのだ!

 
 

アークエンジェルブリッジ――
「間違いないの!?」
ラミアス大尉が確認する。
クルーのロメロが通信波を捉えたのだ。
「間違いありません! これは地球軍第8艦隊の暗号パルスです」
「追えるのか!?」
「やってますよ!……解析します!」
『こちら……8艦隊先遣……モント・ゴメリ。ア…エンジェル、応答……』
「ハルバートン准将貴下の部隊だわ!」
ブリッジに歓声が上がる!
「探してるのか、俺達を!」
ノイマンが嬉しさがはちきれんばかりに言う。
「位置は?」
冷静な声でナタルが尋ねる。
「ホフマン少佐の隊か!」
「待ってください!」
「まだかなりの距離があると思われますが」
「だが、合流できれば!」
「ああ! やっと少しは安心できるぜ!」
「では……」
私は口を挟んだ。
「緊急回線でも、通信を行ってもらいたい。文面は、『こちらはオーブ艦アークエンジェル。ザフトと称するテロリストに攻撃され、逃走中』とな!」

 
 

だが……その通信はザフトでも捉えられていた。
「どうした?」
クルーゼが艦長のアデスに問う。
「地球軍の艦艇と思われますが、こんなところでなにを……」
「……足つきがデブリ帯から月の地球軍本部へ向かおうとすれば、どうするかな?」
「しかし、足つきがデブリ帯に寄ったと言う確証も得られていません」
「私の勘だよ……。補給、もしくは出迎えの艦艇、と言う事も考えられる」
「はぁ」
「こちらの位置はまだ気づかれてはいないな。ロストするなよ。慎重に追うんだ」
「我々がですか? しかし我々にはラクス嬢の捜索と言う――」
「ラクス・クラインの捜索も無論続けるさ。だがたった一人の少女のために、あれを見逃す、というわけにもいくまい。私も後世の歴史家に笑われたくないしな」

 
 
 

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