Lnamaria-IF_LED GODDES_14

Last-modified: 2009-08-07 (金) 23:03:44

「え? アークエンジェルに戻れって?」
突然、アークエンジェルから帰還信号が上がった!
「アークエンジェルがあぶないのかも知れません! 戻りましょう!」
カトーが進言する。
「ええ!」
私達はアークエンジェルへ向かう!

 
 

「くっそー! このままで終われるか!」
イザークは猛り狂っていた。
ストライクにやられた。ディアッカも、アスランも!
せめてアークエンジェルを沈めねば!
並み居るメビウスを蹴散らし、ひたすらアークエンジェルを目指す!
だが、一度分散したメビウスはまた反転しイザークにすれ違いざまに攻撃を仕掛ける。
「くそぉ! 邪魔な! 正面から立ち向かってくれば叩き切ってやるのに!」

 
 

「逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ! やらせはせん! やらせはせんぞぉ!」
カズイはアークエンジェルのデッキでひたすらビームライフルを撃ちまくっていた。

 
 

「なんだ、あいつのエネルギーは底無しか!?」
ようやくメビウスの群れを突破したイザークは、その射撃を避けながら一気に突っ込む!
「だが、これで終わりだ! ナチュラル!」

 
 

「ひぃぃ!」
カズイは悲鳴を上げる!
――!
「……あ、死んでない」
私は間一髪でデュエルの斬撃を受け止めた!
「よく粘ったわ、カズイ!」
「今だ!」
カズイは、ほっとした気持ちをすばやく切り替えると、デュエル目がけてビームライフルを撃つ!

 

その時――!

 

「イザークーーー!」
それは、ミラージュコロイドを利用してぎりぎりまで近づいて来たブリッツの、隙を狙って我慢に我慢を重ねた末の狙い澄ました攻撃だった!
グリーンフレームの発泡金属装甲が砕け散る!
「カズイ!」

 

「うわぁぁ! 死ぬ前に一度スキマなく美女で埋め尽くされたプールにタキシード着てとびこんでもみくちゃにされてみたかったーーっ!!」
カズイが悲鳴を上げた!
グリーンフレームがやられた!
「こいつ!」
私はデュエルに向かってビームサーベルを振る!
「ちぃ!」
手ごたえは軽かった。

 
 

「痛い、痛い、痛いーーー!」
イザークが悲鳴を上げていいる。
あぶない所だった。
もう少しルナマリアが踏み込めていたら、デュエルの胴体は切り裂かれていたろう。
紙一重で、装甲の上っ面だけが損壊していた。
だが、その衝撃はコクピット内部に、そしてイザークのヘルメットに及び、彼の顔を切り裂いたのだ!
「イザーク、早く撤退しましょう! 早く! 今の内に!」
ニコルが焦ったようにデュエルをかばいながら撤退していった。

 
 

私はアークエンジェルに着艦した。
「カトー! グリーンフレームを、早く中へ!」
「はい!」
運ばれていくカズイ。心配だけど、アークエンジェルは私が守らなきゃ!

 

「遅くなった」
フラガ中佐だ!
「何かあったか?」
「アークエンジェルがXナンバー2機に襲われて……カズイが……」
「そうか……よく艦を守った。今は気持ちを切り替えろ!」
「……はい!」

 

「提督、ドレイク級損耗率30%、ネルソン級10%に達しました」
「ふむ」
その報告を聞いても、役場で経理を担当する職員が金額を聞いたのであるかのように、ハルバートンは顔色一つ変えなかった。
「やはりモビルスーツに内側にもぐりこまれると弱いですな」
「……そろそろ時間だな」
ハルバートンが手にした時計を目にした時だった!
敵艦隊の後方で大きな爆発が起こった!

 

「いやっほー!!!」
「撃ちまくれ! 奴らの尻に火を付けろ!」
それは露系アメリカ人ジュガシヴィリ大佐率いる、高速戦艦バルバロッサ級フリーダムを中心とした数隻の艦艇だった。
それが、ザフト艦の後方より攻撃している。彼らは天頂部方面からの迂回攻撃に成功したのだった!
数隻の砲撃など混乱から落ち着いてしまえばたいした事は無いだろう。
だが地球軍別働隊は多くのメビウスを防空ではなく対艦攻撃にと発進させていた。
そもそもメビウス乗りの多くは宇宙戦闘機乗りとして、対艦攻撃をその体に叩き込まれて鍛え上げられた。それがザフトがモビルスーツを開発するに当たりやむを得ずザフトのモビルスーツ相手に不利な戦いを強いられていたのである。
それが、本来の敵を攻撃できる!
彼らの士気は高く、勇躍ザフト艦隊の攻撃に当たる。
更に天底部から同じく露系アメリカ人コーヴァ大佐率いる高速戦艦スターリナを中心とした一隊が加わり、ザフト艦隊の背後を塞ぐ!
ちなみにロシアで星とは自由の代名詞である。

 
 

「クルーゼ隊長! 大変です! 後方から敵の攻撃が!」
「見ればわかる! くそう、ハルバートンめ! うずくまって動かないと思っていたらこいつを狙っていたのか!?」
クルーゼがその事態に対応しようとした時だった。
「前方の敵艦隊が! 足つきを先頭に立てて押し出して来ます!」
「なにぃ?」

 
 

「ふん、貴艦に先陣をきられる事を希望す、か。良いだろう」
第8艦隊司令部からの依頼に、兄部は頷く。
「ようし、アークエンジェル、前進!」

 

「これでチェックメイトだ。ザフトの馬鹿共め。これでも知将と呼ばれているのだぞ? 素直に正面から戦っているだけだと思ったか? よし、両翼の高速戦艦群に司令を出せ! 敵を包囲しろ!」
ハルバートンは命じた。
「はっ」
「鶴翼の陣か!」
司令部が活気付く。
「よかったので? 閣下 アークエンジェルを先頭にして……」
ホフマンは言った。
「もしあれらが失われでもすれば……」
「ふふ」
ハルバートンはほくそえんだ。
「すでにデータは月基地へ送ってある。今はアークエンジェルの攻撃力を使わない手はあるまい」
「はぁ」
そう言うはじから、アークエンジェルの特装砲『ローエングリン』がまばゆい光を放つ!
「それに、ここでザフト艦隊を撃滅できればアークエンジェルを失っても惜しくはあるまい。同型艦が建造中であるしな」
にやりと、ハルバートンは笑った。
戦況図を確認すると、ザフト艦隊はコップの形の中に包囲されつつあった。
「さぁ、相手は罠に追い込んだ! 陣形をパターンBに変更だ!」

 

パターンB――半円形に敵を包囲する陣形である。
利点としては、艦砲戦の際、艦と艦の間が広がり、被害を受けにくくなる事である。だがそれは……モビルスーツの攻撃を受けている間は艦と艦の対空砲が連携できず密度が減り、むしろ防御力を減少させるものとして使えなかったのだが……
今まで邪魔だったモビルスーツも、後方から攻撃された母艦が心配であろう事と、バッテリー切れの心配から帰還する機体が多くなってきた。
地球軍はこの戦闘の峠を越したのだ。
ハルバートンはジュガシヴィリ隊、コーヴァ隊と連携し、挟撃体制に持って行く。
更に、今まで防空に振り分けられていた本隊のメビウスも、余裕が出てきたことでザフト艦隊攻撃へと回される。
ザフト艦隊は球状の形にザフト軍を包み込もうとする地球軍に包囲されようとしていた。

 

「いかん! このままでは!」
クルーゼには、自艦隊の危機が見て取れた。
相手の砲撃は一点に集中する。対してこちらからの砲撃は拡散するばかりだ。
「閣下! 180度回頭致しましょうか?」
「馬鹿! そんな事をしたら奴らの思う壺だ! 天頂だ! 天頂方向が敵密度が薄い! 天頂方向へ撤退せよ! 攻撃力を全て天頂方面へ叩きつけろ!」
咄嗟にクルーゼは命令した。

 

――それは、ハルバートンがわざと空けた撤退路であった。
『窮鼠猫を噛む』
それを恐れたのだ。
クルーゼが指示した撤退路に当たる地球軍艦艇が、道を開け地球軍はコップ状に変化する。
死地では死に物狂いに戦うザフト兵達も、希望が示されると、それにすがりつき、逃げ出す事に必死となる。
一気にそこに集中したザフト艦艇に周囲からの第8艦隊の射撃が集中し、エネルギーの奔流が彼らを揺さぶる!

 

……結果的に、クルーゼは脱出する事に成功する。
だがその代償は――
キーロフ、ソコリニコフ、チュバール、ピャタコフ、ブハーリン、ボロージン、ルイコフ、ラデック、トゥハチェフスキー、コシオール、カラハン、ヤキール、ヨッフェ、トムスキー、メイエルホリド、ゴーリキー、ヴァヴィロフ、ヤゴーダ、エジョフ、メンジンスキー、ラシェビッチ、ベリヤ。
以上の艦が撃沈破と言う大ダメージを食らったのである。

 

後世、この戦いは『スターリンの大粛清』と呼称される事となる――

 
 

「勝った……」
「撤退していくぞ、奴ら!」
「勝ったのか!?」
「勝った……」
「勝った……」
「俺らは勝ったんだ!」
控えめだった勝利を讃える声が次第に大きくなってくる。
なにしろ久方ぶりに地球軍がザフトに対して勝利したのである!
「知将ハルバートン万歳!」
「魔術師ハルバートン!」
「ミラクル・ハルバートン!」
歓喜の声が、第8艦隊に響いた。

 
 

「大丈夫なのですか? カズイは?」
私はアークエンジェル艦内に戻ると、真っ先に救護室に駆け込んだ。
「ああ、命に別状はない」
カトーが答えた。
「そうですか……よかった……」
「しかし、グリーンフレームが手ひどくやられた」
「そう、でも、もうすぐプトレマイオス基地に着くのでしょう?」
「ああ。……こりゃ、地球軍にモビルスーツをもらった方が早いかも知れんな。はは」

 
 

「負けたか……」
アスランは休憩所で空を見つめていた。
彼のシグーは、ストライクによって大破していた。
「どうしたんです。負けたのはしょうがないじゃないですか。勝負は時の運! 次頑張れば……」
ラスティが気遣うように言う。
「あのストライクのパイロット……」
「ああ、あのナチュラルとは思えない機体ですね。それが?」
「言ったんだ。『今度はラクス・クラインを殺すのか』って……」
「アスラン……きっと、無事ですよ」
明るい声を作ってラスティは言った。
「きっと、また無事に会えますって。僕の勘、当たるんですよ?」
アスランは微かに笑った。

 
 

「アズラエル殿」
ウズミは国防産業連合理事、『ブルーコスモス』の盟主ムルタ・アズラエルと会見していた。
ウズミは、ニュートロン・ジャマーが地球に打ち込まれたその日から、黒衣の喪服を身に着けていた。
それは一種異様な迫力を彼にもたらしていた。
「いつになったらサモアにカーペンタリア攻略の兵力が積み上がるのですかな」
「いや、そう言われましてもですねぇ、エイプリルフール・クライシスの被害から立ち直るのだけだって、難儀なんですから」
アズラエルはいい訳染みた口調になるのをしゃくに感じながら言った。
実際、救援を必要としている地域は山ほどあるのは間違いないのだが。
「オーブ国民、堂々とザフトを敵とし討てる時を待ち望んでおります。聞けば、赤道連合も同じとの事。あの国はザフトのカオシュン攻略のために一方的に何の理由も無く国土を侵略されましたからな。きっとアフリカ共同体も同じ気持ちでありましょう」
「わかります、わかりますとも」
「ところで、第8艦隊がザフト艦隊を破ったそうで。おめでとうございます」
「いや、ありがとうございます」
「我が国のマスドライバーもその一助になっていると思うと嬉しい限りですな」
「いや、オーブのご配慮には感謝をしております」
国家間の緊張を煽るのを恐れるため公表はされていなかったが、オーブはカグヤマスドライバーを地球連合に格安で使用させていた。
「そうそう、ストライクと言うモビルスーツが活躍しているとか……なんでもオーブ製のOSを入れたらとたんに使い物になったとか。ああ、いやいや、ストライクはオーブで開発していたモビルスーツでしたな。我が国は中立国ですからなぁ」
「はぁ、なんなんです? 要求があるなら聞きましょう」
「いや、G兵器のパテントですよ。PS装甲などの技術提供も……。代わりに我がオーブはOSを提供する。ソフト開発ではオーブの方が進んでいるようですからな。その方がモビルスーツの配備も早く進みましょう……」
ウズミは身を乗り出し顔を近づけた。
「みんなで幸せになりましょうよ? ねぇ?」
アズラエルは気を飲まれてこくんと頷いた。

 

ザフト艦隊との会戦後、地球軍も手早く艦隊をまとめて月面プトレマイオス基地へと向かった。
私達は無事、プトレマイオス基地に着いた。
でも、一息つく間もなく、とんでもない知らせが待っていたのだった……!

 
 
 

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