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Lyrical DESTINY StS_外伝3

Last-modified: 2008-08-01 (金) 00:24:09

胸に湧き上がる感情は決して嘘じゃない。

 

親友にそう言われたけれど、いまいち実感できない。

 

心にはもやもやする何かがあって、12歳の自分にはまだ気づけなくて。

 

けれど、気付かなければよかったと、思いたくもなくて。

 

今は、あの日々がいい思い出。

 

私にとって、もしかしたら初恋と呼ばれるものだったのかもしれないのだから。

 

フェイトはその日、ルンルン気分だったと見た人が言った。
家の扉を開けてもなお、その顔は緩みっぱなし。
家で帰りを待っていた使い魔アルフ、義兄クロノ、義母リンディ、義姉エイミィも苦笑が絶えなかった。
「やったよ!ついに受かったよ!」
とてもうれしそうなフェイトに苦笑ながらも、やはり家族だ・・・嬉しさもある。
「やったじゃないかフェイト?これで、アースラの所属執務官が決まったな」
クロノはしたり顔でそう言うと、リンディがパンパンと手をたたく。
「じゃあ、今日はごちそうね!何がいいかしら?そうだ!なのはさんたちも呼んでパーティーしましょう!」
「か、母さん・・・今日はなのはは任務で三日間は帰ってこられないって言っていただろう?」
と、クロノ。
「はやてちゃんたちも確か遠征任務で忙しい、って言ってましたよ?」
とエイミィ。
それを聞いて、フェイトは考えた。

 

「えぇと・・・呼びたい人、いるんだけど・・・呼んじゃ、だめかな?」

 

その一言に、家族は誰も不思議には思わなかった。
「へぇ?誰だい?」
「えとね、今日知り合ったばっかりなんだけど、試験に受かってたんだよ?」
「へぇ!じゃあフェイトちゃんと同期なんだ?どんな人?」
エイミィは興味津々に、クロノはそうなのか、といった感じにフェイトに問いかける。

 

「年上の人なんだけど、管理外世界出身の人でね・・・アスラン・ザラっていう人なんだ!」
フェイトがそれを口にすると、今度はリンディが反応する。
「フェイトさん・・・あなた、面喰いねぇ?」
「は!?」
リンディの一言で目を光らせたのはクロノとエイミィ・・・クロノまで別の意味で興味津々なようだ。
「どういうことだ?フェイト・・・」
「フェイトちゃん・・・いいから、話してみ?」
目が光ってます・・・と、フェイトは半ばおびえている。
「合格発表の時に横にいた人でね・・・なんでも
管理外世界出身らしいんだけど、すごいんだよ?一発合格なんだって!」
楽しげに語るフェイトにクロノはどこか複雑そうに、エイミィはほほぉと目を輝かせていた。

 

「クロノは知らないかしら?武装隊の
Aランク魔道士5人相手に模擬戦開始3分でノックアウトしたっていう魔道士の噂」
リンディの話に、クロノは少し記憶を探る。
そう言えば、そんな話があったなぁ・・・という程度のものだったが。

 

仕方ない、といった風にリンディはため息をつくと、手元に端末を出し、モニターを出す。
そこには、アスランの顔と経歴といったものが出ていた。
「アスラン・ザラ17歳。魔道士歴は少ないけれど、
その実力は魔道士歴数年程度の人なら蹴散らすほど。魔力ランクはS+」
「「S+!?」」
魔道士ランクが破格な所為か、フェイトとクロノの声がハモる。
「えぇそうよ?・・・後見人は武装隊の航空魔道士セダン・レクサス一等空尉」
「珍しいですね?武装隊の人が後見人だなんて?」
口をはさむエイミィに、そうねとリンディも返す。
一方クロノは少し苦い顔をして、アスランのデータを見ていた。
「どうしたの、クロノ?」
フェイトも気づいたのか、声をかける。
「ん、ああ・・・少し、な」
意味深な言葉に、フェイトは首を傾げるも、あまり気にしていなかった。

 

結局、アスランを呼ぼうと言い出したフェイトの意見は
取り入れられ、本局にいるはずのアスランは呼び出しをくらっていた。

 

─本局─

 

「す、すみません・・・なぜか、こんなことに」
迎えに来ていたフェイトはとても申し訳なさそうに苦笑していた。
「いや、構わないさ。合格を祝ってくれるというのなら、断る理由はないだろう?」
アスランはアスランで特に気にした様子もなく、招待を受けているようだ。
「それで、転送ポートからどこに?ミッドチルダかい?」
「あ、いえ・・・家は第97管理外世界にあるんですよ。その海鳴市ってところに
家族で住んでいます。といっても、あんまり家族がそろうことはないんですけどね」
何やら残念そうに言うフェイト・・・アスランはその気持ちが少し理解できた。
自分も幼少のころは父母が忙しく、自分はいつもキラの家に呼ばれていたから。
「けど、いるならいいじゃないか?そこが、君の帰るべき場所だろう?」
そんなことを考えていたから、そんなことを言ってしまった。
「帰るべき場所があるなら、生きる理由ができる・・・自分が安らげる場所さえあれば、戦える」
アスランはまだ早いか?とも思ったが、口のほうが止まってくれなかった。
いずれ知ることなら、自分が教えてもかまわないだろうと思ったのだ。
歩くスピードが速くならないか、と一瞬足に目をやれば、なぜか変化はしなかった。
むしろ、ゆっくりになったくらいだ。
「アスランさんは・・・ないんですか?帰る場所、守るべきものが」
「もちろんあるさ。ただ・・・
俺にとって帰るべき場所や守るべきものは、君と違うタイプのものだってことさ」
タイプ、とアスランは言った。
そのことがどこかものさびしく聞こえたのは気のせいだろうか、とフェイトは考えてしまっていた。

 

所変わって、二人は海鳴市のハラオウン家にたどりついていた。
「ここが、家、なんですよ」
「ああ、お邪魔します」
ドアを開ければ、突然パン!という音がし、二人はあっけにとられる。
「はぁい!フェイトちゃんお帰り~!アスラン君いらっしゃーい!」
ノリノリにクラッカーを片手に嬉しそうな顔をしているのはエイミィだ。
まさにパーティーする気満々な彼女の格好にフェイトは苦笑し、アスランは少し脱力していた。

 

「あぁ、いらっしゃいアスラン・ザラ君」
家の中からリンディが出てくる。
そこでようやくアスランは我に返る。
「初めまして!アスラン・ザラです!この度はご招待いただきありがとうございます!」
堅苦しい敬礼をしだすアスランに、リンディとエイミィは間を開けた後、思わず吹き出してしまう。
「アハハ!アスラン君・・・ここはプライベートだから、
別に構わないわよ?今日はあなたたちの合格祝いってことだから、ね?」
言い聞かせるようにリンディは言うと、アスランもまたはぁ、と間の抜けた返事しかできなかった。
「さぁさぁ!入って二人とも!もう準備はできてるから!」
エイミィにそう示唆されて、二人は靴を脱ぎ部屋へと通された。
すでにテーブルには数多くの料理が準備されており、そこに一人クロノが座って待っていた。
「やぁおかえりフェイト、そしていらっしゃいアスラン・ザラ君」
「お邪魔します。この度はご招待いただき・・・」
「あぁそんな堅苦しいのはやめてくれ。今日は祝いなんだ」
先ほどと全く同じ会話にフェイトは思わず笑ってしまった。

 

料理を食べながら、ハラオウン家は
一人招待されたアスランにもう容赦のない質問の雨を降らせようとしていたのだが。
その中で、最も聞くんじゃなかったという質問は真っ先に放たれたのだ。
「アスラン君は管理外世界出身という話だけれど、いったいどんな世界だったの?」
リンディの質問から始まったそれは、本当に今思えば、聞くんじゃなかった、という感じしかしなかった。

 

「・・・自分は第72管理外世界出身で、その世界はずっと戦争をしていたんです」

 

戦争・・・フェイトたちからしてみれば、遠い昔にあった
ベルカの戦時代とかを思い浮かべる程度の認識だが、アスランは違うのだ。
「戦争って確か・・・ミッドで言う質量兵器がまだあった時代の?」
「そうだな。確かに質量兵器だ・・・ボタンひとつで人の命が消える。俺もそれを繰り返していた」
重苦しい空気。
しかし、それはいずれ知ることなのだ。
彼をここに招いたことも、それを聞かなければならない要因の一つなのだから。
「俺の世界ではナチュラルとコーディネイターという二つの種族があるんだ」
アスランは思い出を語るように、CEのことを話し始める。
コーディネイターのこと、プラントのこと、ナチュラル、地球、戦争、MS、友の死、
友との死闘、始ってしまう戦争、ユニウスセブン、血のバレンタイン、母の死、
ブレイクワールド・・・そのすべてが、悲しみに覆われた鎖のようなものだ。

 

「・・・だから、帰るべき場所と守るべきもののタイプが、違うの?」
フェイトは先ほどのアスランとの会話を思い出し、そう問いかける。
「ああ。俺には守るべき家族がいない・・・帰るべき場所は、少しずつ変わっていく」
それがどんなに辛いか・・・だが、辛いと思うからこそ、彼は生きているのかもしれない。
「それが実感できるから、俺は生きていける・・・戦える」
答えはあの日に見つけられたのだから。
CE74年に終わった戦争・・・オーブの慰霊碑の前での誓い。
それはきっと、アスランに戦う理由を与えてくれたのだ。
「だがな、アスラン君」
今度はクロノが口を開く。
「僕たち管理局は・・・帰るべき場所も守るべきものもある。帰るべき場所は
仲間たちのいる・・・誰一人かけることのない場所。守るべきものは
弱い人たち・・・理不尽なことで苦しむ誰かを救うことが、僕たちの仕事なのだから」
失う辛さを知っているから・・・だから、クロノもまたそう言える。
「・・・確かに、そうですね。
自分もまた誰かを守ることができるのですから、その力一生懸命に使います」
そう。命を奪う必要はない・・・ただ、傷つけてしまうだけじゃないのだ。
アスランにとってこれは、救済だ。
命を救うことのできる仕事・・・彼が求めた最大の答え。

 

その後、団欒をつづけ、気付けば夜になっていたので、アスランはそろそろ帰ろうとしていた時だ。
「アスランさん!」
フェイトが少し眠そうな目をこすりながらアスランを呼びとめる。
「なんだい、フェイトちゃん?」
「私たちはもう同僚です・・・一緒に頑張っていきましょう!」
「・・・ああ、よろしく頼む」
その回答に、フェイトは満面の笑みで手を振った。

 

─数日後、本局─

フェイトは学校も終わり、無限書庫に用事があったので、本局に来ていた。
そこで、ひとつの問題が起きていることにフェイトは気づく。

 

─食道─
「ふざけんなよ!管理外世界出身のくせに何を言っているんだ!!」
ガシャン、と食器が落ちたり割れたりする音がする。
フェイトは何事か、と思わず駆け寄る。

 

「それが何か関係あるのか・・・?」
そして、その場にそぐわない静かな声がした。
「大ありだ!俺らはお前らが来る前からずっと次元世界を守ってきているんだ!
それをパットでの奴にいきなり従えなどと誰が了解できる!?」

 

ようやく、人ごみを抜けるとフェイトが見たのは、数人の男たちと対面しているアスランの姿だった。
「アスランさん!?」
驚きのあまり、フェイトは声を上げるが、アスランは気づかない。

 

「それが上の命令ならば仕方ないだろう?私情をはさんで、より多くを失う気なのか?」
アスランもまた怒りに満ちていた。
「失う必要なんかねぇんだよ!成り上がりの執務官風情が上等たれてんじゃねぇ!!」

 

それはおかしい、とフェイトは思った。
成り上がりじゃない。
努力して、努力して・・・一生懸命だったはずだ。
知り合ってまだ間もなくても、それだけはわかる。
だから、フェイトは飛び出そうとしていた・・・だが、彼女の肩をつかむ手があった。
「!?」
フェイトが振り向くと、そこには背の高い金髪の男が
フェイトを見下ろして「しぃ」と口元に指を立ててフェイトを止めた。

 

「だが、俺にあたっても何も起こりはしない。自分たちで上に掛け合うんだな?」
アスランは当たり障りのないように言ったつもりなのだろうが、
それが他の者たちにはお高くとまって見え、よけいに腹立たしさを増すだけだった。
「この野郎がぁ!!」
耐えかねた一人は、ついにアスランに殴りかかってしまう。

 

「アスランさん!」
心配のあまり、フェイトも声を上げるが・・・アスランはその拳を難なく受け止めていた。

 

「なっ!?」
「これが正義か?」
消え入るような声・・・それを発したのはアスランだ。
骨がきしむ音が聞こえる。アスランに握られているその拳からだ。
「俺は別にプライドにこだわって、上下関係を気にする気はない・・・
だが、守るべきものを見失い、個人の利益に目をやることが・・・正義なのか!?」
信じたかった・・・そんなはずはないと。
振り上げた拳は止まらないだろう・・・アスランでさえ、その拳には怒りを込めていた。

 

「この、バカ野郎!!」
ガス、という音が響く・・・それと同時に、観衆の驚きの声。
吹き飛んだのは、アスランに殴りかかった男。
だが、その一発で終わりだ。
それ以後、アスランは特に何をするでもなく、ただ吹き飛んだ男を見下していた。
「くっ・・・なんなんだよ、お前!」
だが、吹き飛んだ男はまだも言葉を紡ぐ。
「お前なんか、来なけりゃよかった・・・
管理局なんかに入らなきゃよかった・・・お前なんか・・・なんでいるんだよ!!」
それが放たれた後は、ただ静寂が訪れた。
ざわつきはない・・・全員がアスランを見ていた。
彼の答えを待っているのだ。

 

「・・・疎まれることも、あるだろうと思っていた」

 

それに応えるように、アスランは口を開いた。

 

「だが・・・俺は・・・俺は守りたいだけだ!もう絶対に失わないように!」
握りしめた拳から血が伝う。
見れば、アスランの顔には苦悶が浮かんでいた。
「この世界を見て、俺はそれができると思った・・・信じた!
世界が優しく見えた・・・俺はこの優しさを守りたいだけだ」
最後の言葉は悲痛にさえ聞こえた。
そして、その言葉を最後にアスランに絡んでいた数人も白けたように、舌打ちをして食道から出ていく。

 

「アスランさん!!」
静まったと確信すると、フェイトはアスランに向かい走り出す。
「あ・・・フェイト、ちゃん?済まない、情けない所を見られてしまったな」
「そんなことないです!大丈夫ですか!?」
オロオロしながら、フェイトはアスランに外傷がないかを探す。
「大丈夫だ・・・心配いらないよ」
だが、どこか元気がないアスランに、フェイトは心配度を増すだけだった。
そんなフェイトが思いつくことは一つだけだった。

 

「アスランさん!これから模擬戦しよう!」

 

突然の発案にアスランは乗り気ではなかったのだが、フェイトの強引さにアスランは引っ張られるだけだった。

 

─本局・訓練室─

 

模擬戦を言い出したフェイトはもうやる気満々で、
断る機会をことごとくつぶされたアスランも仕方なく、デバイスを取り出していた。
アスランはこの時まで、フェイトのことをせいぜいAAランク程度の優秀だが、戦闘経験は薄いと考えていた。
彼は知らないのだ・・・フェイトの力を・・・経験を。

 

「じゃあルールはどちらかを負かすことと非殺傷設定を守ること、それでいいな?」
「うん!それじゃあ・・・開始の合図を」
そう言ってフェイトはバルディッシュを握り、アスランから距離をとる。
「では・・・行くぞ!」
アスランからの開始の合図、そしてアスラン自身もバリアジャケットを装備する。

 

深紅に彩られたバリアジャケット・・・その燃えるような色は、彼の正義を現すかのように、鮮烈に見えた。
「行くぞ、ジャスティス!」
(了解、モードジャスティス)
右手に魔力刃が噴き出すラケルタ・ソード。
左にはジャスティス防御の要であるシールドユニットが装備されている。
オールラウンダーなこの装備が、アスランを魔道士として規格外れにさせた要因の一つでもある。

 

フェイトはじっくりとアスランを観察した。
執務官に必要な観察眼を今ここで使用しているのだ。

 

だが、アスランも相手に無駄な情報を与えてはならないという考えがあり、そして動く。

 

「ジャスティス!ルプス・ライフル!」
左手にライフルを持ち、アスランはフェイトを狙う。
ライフルは連射が効くようにしてあり、最大10秒間に5連発はできるようになっている。
一発の威力はなのはのアクセルシューター3発分はあり、
当たり所によっては敵を一発で昏倒できるほどである。

 

「くっ!」
(ラウンドシールド)
よけずにラウンドシールドで防ぐ・・・フェイトほどならよけること自体は造作もないが、
一発を受けておき、どの程度の威力かを完璧に分析するためにあえて受けたのだ。
(威力確認・・・上下誤差の予測完了)
バルディッシュがそう告げると、フェイトは頷いてプラズマランサーを精製する。
(ファイア)
放たれたプラズマランサーは誘導されながらアスランへと向かう。
「この程度!」
しかし、アスランは難なくたたき落とし、またライフルでフェイトを狙い撃つ。
直線で進む射撃など、フェイトにはあまり意味がない。
そんなことは数発撃ってアスランも理解しているはずだが、アスランはあえて連射でフェイトを狙う。

 

「そんな攻撃じゃ私は捉えられない!!」
フェイトは一瞬でアスランとの間合いを侵略する。
(ハーケンセット)
「たぁぁぁぁぁぁぁ!!」
小細工などいらない。一撃目をたたきこむことに迷いなど、ない。
振り下ろされるハーケン・・・だが、アスランは素早く顔を上げ、シールドユニットでそれを防ぐ。
火花が飛び散る・・・だが、アスランは気圧された様子は全くなく、むしろフェイトを押し返した。
「圧倒された!?」
驚きを隠せず、フェイトは術式を展開する。
「プラズマ・・・スマッシャー!!」
即座に放たれたプラズマ・スマッシャーはアスランに回避を許さず、アスランは受けるしかなかった。

 

「ジャスティス・・・イージス・シールド」
ここにきて、アスランは左手のシールドユニットを突き出す。
すると、そのユニットからアスランの魔力が放出され始め、強固な魔力壁を作り出す。

 

そして、プラズマ・スマッシャーとイージス・シールドはぶつかる。
が、AAAクラスの砲撃威力を持つプラズマ・スマッシャーをそう防げるものではない。
「だが、俺達なら防げる・・・ジャスティスをなめるなよ!!」
(その通りです!)
瞬間、シールドユニットにあたっていたプラズマ・スマッシャーの威力がはじけたように拡散する。
「嘘っ!?」
驕っていたわけじゃないが、それでもこんなに早く突破されるとは
フェイトも思っていなくて、動きが少し停滞してしまう。
「モード・セイバー!」
(セイバー・ブレード展開)
右手にあるラケルタ・ソードの魔力刃の威力が割り増す。
そして、次に攻撃を受けるのはフェイトだった。
「くっ!」
咄嗟にハーケンで受け、どうにかアスランの攻撃を受けるが、
フェイトの体格ではそれも続かなかった。
「ったぁ!!」
アスランの気迫とその勢いに、思わずフェイトは吹き飛ばされてしまう。
「きゃあ!」
姿勢制御もできず、そのまま落下するかと思いきや、どうにか地面激突前に体勢を整えた。
(マスター、消耗が激しいです・・・相手のペースにはまっていますよ?)
バルディッシュから忠告のように紡がれたその言葉・・・だが、フェイトもそれは実感していた。
肩で息をして、上空から自分を見下ろしているアスランを見て、このままでは負ける、とさえ思っていた。
だからこそ、完璧に整え、大きく息を吸い込む。
「バルディッシュ・・・ザンバー・フォーム」
(了解、ザンバー・フォーム)
突如として、空気が変わる。

 

「2発カートリッジをロード?・・・だが!」
(いかなるものが来ようと、防いで見せます)
アスランもジャスティスもすべてを受けきる気構えであった。

 

バルディッシュが形態を変える・・・巨大な大剣へと姿を変えたのだ。
それにはアスランも息をのむ。

 

「はぁ・・・仕方ない、ジャスティス・・・こちらも相応に、な?」
(了解)
アスランも一息・・・そして、気を引き締め、ジャスティスに命じる。
「フルドライブ!!」
(了解、フルドライブ・・・インフィニット・ジャスティス)
紅い光は広がり・・・輝く。

 

数分後、模擬戦は終わった。
結果は引き分け、お互いのデバイスが戦闘状態を維持できなくなったからだ。
「うぅ・・・勝てなかった・・・」
だが、勝てなかったことに満足できず、落ち込んでいるフェイトがここにいた。
「ま、俺も驚いたよ。まさか勝てないとは・・・」
アスランはアスランでどうやら納得できていないようだ。
「アスランさんは・・・」
「アスランだ、フェイト」
「?」
ふと、そんなことを言い出すアスランにフェイトは疑問符を浮かべる
「さんとかちゃんとか・・・つけるの面倒くさいだろ?」
それを聞くと、間をおいてフェイトは吹き出し、笑いだしてしまう。
「な、なんだよ?」
「いや、だって・・・フフ、おかしくて」
あまりにフェイトが笑うものだから、アスランは少しそっぽを向く。
「けど・・・ありがと」
フェイトのその言葉を聞いて、アスランは少しだけ、不安そうな顔をする。
「・・・なぁ、フェイト」
「何?」
「俺は・・・人殺しだ」
その一言に、フェイトは思わずアスランの目を見る。
「俺は元居た世界で、軍人として・・・敵を殺してきた」
アスランの目には悔恨が、フェイトの目には不安が映る。
しかし、なぜ?おそらく、自分のことを知ってほしいと思ったからだろう。
「殺したんだ・・・この手で、質量兵器のボタンを押すだけで殺した。
この手に銃を握り、敵を撃ち殺した。ナイフを握って、敵を切り殺した」
それを聞くたびに、フェイトは気持ちが悪くなって、何かがこみ上げえづきそうになる。
「アスランは、きっと頑張りすぎたんだね?」
「え?」
口元を押さえていた手を下し、フェイトはアスランの目をまっすぐ見つめる。
「けど、過去は消せないから・・・アスランはそれを背負うしかない。捨てられない」
その言葉はきっとフェイトの後ろにもあるもの。
彼女の根底をなす言葉。
母を信じ、母のために戦い、母を救えなかったフェイト。
父を信じ、母の死を引き金に戦い、父も誰も救えなかったアスラン。
二人はよく似ていた。
そう・・・よく似ているのだ。

 

「私の友達がね、教えてくれたんだ・・・想いは心で受け継いで、胸の内に秘める
ものだって・・・だからね、もしアスランがその犠牲になった人たちの共通の想いを
受け継ぐなら、胸に秘めて今日を、明日を・・・未来を生きればいいんだよ!」
「・・・ああ、ああ!そうだな!わかっているさ、俺も!」
アスランは笑った。
濁りなどない。
少女のような存在が救いだと、アスランは理解した。
(本当に・・・来て良かった)
そう、心からアスランは思っていた。

 

「ふぅ・・・どうやら、いい子に巡り合えたみたいだなアスラン」
そんな二人を蔭から見守っている者がいた。
セダン・レクサス・・・食堂でアスランと男たちのとケンカを
止めに入ろうとしたフェイトを止めたのも彼である。
セダンは、そのまま背を向けて、廊下を歩いて行った。
その顔には笑みを浮かべて。

 

そのあと、二人は揃って技術部にデバイスの修理を申請すると、フェイトにとって
顔見知りのマリエル技官が出てきて、受領するも・・・アスランのジャスティスに
関しては苦笑が絶えなかった。

 

数日後、フェイトはアスランと二人でデバイスを受け取りに本局に来ていたのだが、
またも食堂でアスランはこの間騒動になっていたグループと対面していた。
「・・・何か、用ですか?」
下手になってはいるが、やはり不機嫌そうなアスランに、フェイトはおろおろしっぱなしである。
「こないだは・・・悪かった、です」
だが、彼らから出たのは全く予想外な言葉だった。
「はぁ?」
「いや、だから・・・俺らは、新参者に従わなきゃならないってのが気に
食わなかったんだが、アンタの覚悟に・・・な?とにかく、悪かった、です」
まだ不満はありそうな物の、素直じゃないな、とアスランは笑った。
「なら、一緒に食事でも如何ですか?」
そのあとはアスランとフェイト、それに彼らもあわせて多人数で食事をした。

 

それからしばらくたったある日、それは告げられた。
「元居た世界に帰る!?」
驚きの声を上げたのはフェイト。
アスランもどこか後ろめたそうに目をそらしている。
「大丈夫、一週間くらいで帰ってくるから・・・俺も管理局にいて少しは功績も挙げた。だから、俺の出身世界から数人優秀なやつらを連れてくることにしたんだ」
アスランは語った。
出身世界に戻り、こちらに連れてきて、こちらの世界で守れる戦いを見せてやりたい、させてやりたい、と。
まるで、子供が親に嬉しそうに夢を語るようなそんな仕草の
アスランを見て、フェイトはこれ以上何も言えなかった。

 

結局アスランは次の日には発った。
しかし、一週間たってもアスランが帰ってくることはなかった。

 

─学校─

 

「へぇ?アスラン君、まだ帰ってきてへんの?」
昼食時に、いつものメンバーで食べていた時にフェイトが話していたのだ。
「遅いよね?次元事故の報せもないし、何があったんだろう?」
「わかんない・・・けど、かかりすぎてるから、
調査依頼もしたんだけど、不明って結果しか返ってこなくて」
若干目がウルウルしているフェイトを見て、
なのは、はやて、アリサ、すずかの三人は少し思ったことを口にした。
「フェイトちゃんて、そのアスランて人のこと好きなの?」
切り出したのはすずかだ。
「へ!?」
突然話をふられ、フェイトはまぬけな声を上げる。
「けど、けっこーな美形さんやで?アスラン君は・・・なぁなのはちゃん?」
「そうだね。顔が女の人みたいに整ってるんだよ?羨ましくなるくらい」
「へぇ・・・ちょっと見てみたいわね?」
二人の証言からアリサが興味を持ち、写真とかないの?と言い出していた。
「フェイトちゃん、持ってるんやない?」
そこで再び話を振られたフェイトはえ!?と少し後ずさった。
アリサとすずかの目が異様に光る。
危機を察知したフェイトは持ち前のスピードを生かし逃げようとするのだが、
あっけなく捕縛されてしまう。
「今は持ってないよ~ホントに~」
捕縛され半泣きになりながらも訴えるフェイトに嘘は見受けられず、仕方なく開放。
「けど、フェイトちゃんがねぇ・・・それも年上」
「ホント・・・フェイトがねぇ」
しみじみ言うアリサとすずかに、フェイトはちょっと待って!のポーズをとるが、拾ってもらえなかった。
結局フェイトはアスランに惚れているというタレこみが流れてしまい、
結果学校中にまでそのうわさは流れた。

 

─フェイト・T・ハラオウンは年上に恋をしたっ!

 

この誤解というか噂はおそらく消えないだろう。

 

家に帰ると、珍しく誰もおらず、フェイトは一人ソファに寝そべる。
「ふぅ・・・私、アスランのこと、好き・・・なのかな?」
いまいち、よくわからない、と考え込むフェイト。
「はやてやなのははそう見える・・・っていうけど、私全然意識したことないのに」
だが、考えれば考えるほど、そうなのかな?そうなのかな!?と自分に問いかけてしまっていた。
クッションをぎゅ~っと抱きしめながら、
悶えるように考え込むフェイトは数十分それを続けるが、結局答えは出なかった。

 

フェイトのこの感情は、恋と呼ぶには少し淡く、友情と呼ぶにはまた見当違いな気がする。
同期生の執務官。
その見地でもいいはずなのだが、とかく女性陣は他人の恋愛話に耳ざとく、噂が好きなものだ。
フェイトはこのときほど、自覚のない感覚をしてしまったと後悔しなかったことはないだろう。

 

「けど、今は確かめられないんだ・・・アスランはまだ帰ってきたないんだもん」
12歳の自分が恋なんて早い、とフェイトは思うも、
その一方でそうなのかな、と疑問に思うフェイトもいた。
そして、帰ってきたら絶対にはっきりさせるんだ!と意気込むのであった。

 

しかし、アスランは1年たっても帰ってこなかった。
さすがにさびしい・・・フェイトにとってはアスランは大事な友達なのだ。
会えなくなるのは寂しいのだ。
「何やってるんだろう・・・アスラン」
いつしか、写真の中のアスランを見てどんどん不安になる自分がいた。
不安はさらに不安を呼び、仕事に身が入らなくスラなっていた。
そんなフェイトを見かねて、クロノは大いに叱った。
フェイトも指摘され、自分が腑抜けていたことに気づき、活を入れなおしていた。

 

2年たって、ようやくアスランがいないことにもなれたフェイトは、
写真のデータが入ったメモリもすべてしまってしまった。
しかし、胸に秘めている決意は変わらない。

 

アスランが望む世界・・・優しい世界、私はあなたが帰ってくるまであなたの正義を貫く。
それがみんなのためにもなるから・・・あなたがいつ帰ってきてもいいように、
皆が平和でいられる世界を・・・皆で頑張って作る。
一人の力なんて弱いけど、皆で結束した力は何にも負けないから・・・そう、たとえ神様にだって。

 

「いつか・・・いつかまた会えるから・・・アスラン、あなたのために、私は頑張るよ?」
友達だからね・・・また会いたいんだ。

 

あなたに・・・。

 

そして、アスランがいなくなってから5年後、17歳になったフェイトは
再びアスランと・・・17歳のアスランと再会を果たした。
運命のいたずらか・・・しかし、この再会はきっと、偶然じゃないんだろう。
だって、再会したときのフェイトは本当にうれしそうだったのだから。
また会えた喜びが、彼女を笑顔にした。
もちろん、涙も流している・・・けど、それはうれし涙だ。

 

「・・・おかえり、アスラン!」

 

きっと、今ならわかる。
5年前、胸にあった気持ちはきっと恋だった・・・けど、今は、恥ずかしいから言わない。
言ってやらない。

 

けど、もっと強くなって・・・アスランに完全勝利できたら、言うんだ。

 

だから・・・この気持ちを伝える言葉は胸に秘めておく。

 

また会えた・・・“あなた”のために。