MMGSLNSDSCVG_第04話

Last-modified: 2007-11-18 (日) 15:49:33

「上手くいったな」
「俺は、かなり“きてた”けど」
無表情なレイと首に手をやって疲れたようなシンが並んで“部屋”に入っていく。
「シン、手の内を見せ過ぎだ」
入るなり聞こえたのは、アスランのお叱りであった。
やっぱり、とシンはウンザリした顔をする。
確かに見せてないのは、最大出力のアロンダイトと、ゼロ距離射程のパルマフィオキーナくらいである。
パルマフィオキーナに至っては予測が立てられている可能性もある。
おまけに、SEEDまで発現させたのだ。
「はいはい、すみませんでした」
こっちは、高町なのはとフェイト・T・ハラオウンの2人を一気に相手したんだ。
少々、無理をしないとこっちがヤバイ。
「シン!」
シンの反省の色の見えない言葉にアスランは、真面目にやれ、と怒鳴る。
「アスラン、シンもあの2人を相手にしてたんだから」
すかさずキラがフォローに入る。そして、レイが冷静に呟く。
「相手は、管理局。下らない論争などしていては、勝てるものも勝てない」
2人の言葉にアスランは、深呼吸して落ち着く。
「とにかく、無事で良かった。…そして、第一段階は完了だ」
「しかし…」
珍しくレイが言い淀む。
「予定よりも更にダメージは減っちゃったね」
その先の言葉をキラが代わりに言った。
レクイエムによる攻撃。何も障害が無い場合の2/3をほどの被害を出せる予定であったが、
実際には、半分に至るか至らないほどのダメージを与えるに留まった。
それでも管理局にとっては、大ダメージであったのだが。
「クロノ・ハラオウン…氷結の杖、デュランダル」
その最大の要因となった男とそのデバイス。
デバイスの名前がギルの姓と同じことが、レイには少し気に入らなかった。

軽視していたわけではないが、彼らにとっての障害は、本局の魔導師でも機動六課でもなく
聖王の器いや、もはや聖王と呼んでも差し支えないだろう、ヴィヴィオであった。
そのヴィヴィオがいない時を狙ったのだが。
「通信は?」
シンがアスランに聞くと、アスランは浮かない顔をする。
「安定していない…だが、俺達4人が帰還出来たことだけは、‘あちら’に伝えることは出来た」
そうですか、と感情を込めることなくシンは呟いた。
「とにかく、このデータのロックを外さないとね」
いきなりそう言ってキラは、ディスクを掲げる。
「ロック?」
シンの口から漏れる。
「うん、初めはロックを外してからコピーしようと思ってんだけど、思ったより堅くて」
キラが堅いと言うくらいだ、相当堅かったのであろう。
キラが無理なら自分だともっと無理。
シンも苦手ではないが、キラのコンピューター技術はそう思わせるほどレベルであった。
「それでロックを解かずに丸事コピーして…そのせいで時間かかっちゃったんだけど」
キラはディスクを見ながら言った。
このディスクは市販のものではなく、キラが自ら作り出したもの。
その容量は、半端ではない。そして、今このディスクには、管理局の情報が詰まっている。
各部隊のメンバーから能力、過去の事件まで。
「じゃあ、なんとかやってみるから」
そう言うとキラは、自らの部屋に向かおうとするが
「あ…お、おい!」
シンがキラの背中を呼び止める。言い難そうな顔で頭を掻くシン。
「助かった」
シンは、小さく呟くように言うと、キラを追い越して出ていこうとする。
「良かったよ。SEEDを発現させてるからどうしようかと思ったけど」
今度は、キラがシンの背中に声をかけた。

「っ!こういう時は黙っておくもんだろ!あんたは!」
シンは、声を荒げて出ていった。
キラは、唇を緩めて「ごめん」と冗談混じりに呟いた。

「お帰りなさい。無事で良かったですわ」
部屋に戻ったキラを迎えたのは、鮮やかな桃色の髪をした少女、ラクス・クライン。
しかし、その声はかつて歌姫と呼ばれた時の声ではなく、掠れた弱々しい声であった。
「うん、ただいま」
歌うこと大好きだった彼女。そしてまた、自分も彼女の歌を聞くのが好きだった。
しかし、それは奪われたのだ。時空管理局の正義のせいで。
「上手くいったみたいですわね」
「うん。今からこのディスクの中の情報を解析しないと」
「では、紅茶を入れてきますわね」
パタパタと歩いていくラクスの後ろ姿を見送ってキラは、コンピューターを起動させた。

「第二段階を開始するまで時間がある…。それまでに少しでも戦力を削れればいいが」
アスランは、自室で戦闘記録を見ながら独り呟いた。
「高町なのは、フェイト・T・ハラオウン」
画面には、シンと戦闘を繰り広げる2人の姿。そして、なのがディバインバスターを放つ。
「この砲撃、フルゴールで塞ぎ切れたか」
だが、彼女のデバイスにはエクシードモード、そしてエクセリオンモードがあったはず。
その状態なら威力は更に上がるだろう。他にも高威力の砲撃魔法もある。
こちら側は、砲撃はキラとレイの領域。
だが、レイは一発の威力よりも数で勝負である。
キラもバラエーナ、カリドゥスが高威力といえど、この砲撃には適わない。
「なら、やはりシンに任せるか…」
シンの翼から吹き出されるミラージュコロイドはロックを無効にしてしまう。
砲撃魔導師には、非常に厄介だ。
「だが、ロック無しでもあの精度」

先程の砲撃。翼の展開具合から考えてもミラージュコロイドを使っていたのは明らかだ。
しかし、それはフェイトとの鍔ぜり合いがあったからで、かわすことも可能だったはず。
「1VS1に持ち込むしかないか」
自分達の最大の懸念材料は、連携の面であった。
個の力、そして長所を伸ばすことを2年間、重視してきた。
自分とシン、そしてキラが持つSEEDの特性がその最大の理由であったのだが。
アスランは、フェイトの戦闘を分析するのを待って、疲れを取ろうとシャワーに向かおうとする。
だが、思い出したようにコンピューターを操作する
画面が表示されるが、映っているの砂嵐。
聞こえるのは、ノイズ。
「ダメか」と呟いてシャワーに向かった。