Macross-Seed_◆VF791dp5AE氏_第09話

Last-modified: 2008-01-12 (土) 11:05:02

「敵戦艦よりアンノウン出撃。該当データ、ありません。
 主モニターに映像、まわします」
メインモニターに真紅の見たことの無いMSが映し出される。
「流石はミネルバ、単艦で突出してきたのはこの隠し玉があったからか。しかしなんという速さだ」
「敵艦転舵。反転しこちらへ向かってくる模様です」
「新型が出たか、敵が守勢から攻勢にかわるぞ!ダガー隊、ウィンダム隊、発進急げ!
 あの三人はまだ待機だ。新型の性能がわかち次第あいつらも出す」
「…!?大佐、アンノウンが変形を!」
「む、モノアイではなくツインアイという事は他の二機とと同じく強奪し損ねたセカンドシリーズかよ。
 やれやれ、こりゃあまた盟主様に怒られちゃうかねえ。」
変形したMSは前衛のオーブ軍に弾丸をばら撒いたようだ。が、護衛艦どころかMSにも目立った被害が見えない。
不審に思い、オーブの方へ被害状況を問い合わせようとすると爆音がダータネルス海峡に響き渡った。

 

「アンノウンよりの全周波放送です!」
「うわっ、何だこの音は!奴ら歌を撹乱に使う気か!?
 …ちょっと待て、こりゃあファイアーボンバーの[突撃ラブハート]じゃねえか!」
「大佐、この曲は一体…?」
「プラントの人気ナンバーワンバンド、ファイアーボンバーの曲だ。
 この二年で随分と胸がでっかくなったラクス・クラインと謎の男熱気バサラの二人のユニットで、プラントの議長がプロデュースしたって話題になった奴だよ。
 あの三人がディオキアで買ってきたCDを何度も聴いてるから間違いない。
 しかし、プラントのバンドだからって何で戦場で…」
「続けてアンノウンより全周波で通信が入ります!」

 
 

『行くぜぇ、コズミック・イラだろうが関係ねえ、俺の歌を聴けえ!!』

 
 

<LET'S GO つきぬけようぜ 夢でみた夜明けへ まだまだ遠いけど
 Maybe どうにかなるのさ 愛があればいつだって>

 

「ザフトめ、一体何を考えてる!?何だって新型MSから歌なんか流すんだよ!」
「ち、違います大佐。これはアンノウンのパイロットが歌っています!」

 

<俺の歌を聞けば 簡単なことさ 2つのハートをクロスさせるなんて>

 

「馬鹿な、どう聴いても本人の歌声だぞ。歌手本人が乗っているとでもいうのか?」
「そうとしか考えられません。」
「信じられん。だが、本当に熱気バサラ本人だとするなら…俺もウィンダムで出る!」

 

<夜空を駆けるラブハート 燃える想いを乗せて
 悲しみと憎しみを 撃ち落として行け>

 

「何を仰います大佐、ここで指揮を執っていただかないと困ります。戦況は未だこちらが有利です。大佐が出る意味がありません。
 第一大佐自らが出撃して、一体何をしようというのです?」
「そんなことは決まってるだろう!?」

 
 
 

<お前の胸にもラブハート まっすぐ受け止めて デスティニー>

 

「アンノウンに乗ってるであろう熱気バサラにサインを貰いに行くんだよ!
<何億光年の彼方へも、突撃ラブハート!> いやー、やっぱホンモノは一味違うねえ。
 今日という日を忘れないためにも、ちゃんと『ネオさんへ』ってしっかり書いてもらわなきゃなー」
「………大佐を拘束して独房にぶち込んでおけ。多少手荒に扱ってもかまわん。
 オーブ軍に通達、『我が方と足並みを揃えミネルバを討て、あの歌はただの性質の悪い撹乱だ』とな。
 MS隊発進。ダガー・ウィンダム両隊はミネルバを落とせ!
 あのふざけたアンノウンも含めて敵MS隊も落とす!それとエクステンデットはいつでも出れるようにして待機だ!」

 

 

一方、こちらはオーブ遠征軍旗艦タケミカヅチ。
連合の艦艇から一斉にMSが飛び立つのを見て、司令官のユウナ・ロマ・セイランが指示を飛ばす。
「連合も動き出したか。奴らに手柄を取られるわけには行けないな。
 こちらもMS隊を全機出せ!」
しかし、トダカや副官のアマギからは反対する声が上がる。
「ユウナ様、連合が前に出たのならここは後方支援に徹するべきです。
 ミネルバのMS隊は強敵です。わざわざ強敵に当たってこちらの被害を増やす必要は無いでしょう。
 無理に火中の栗を拾いに行く必要はありません、手柄はこの後のディオキア攻略戦でも十分に立てれます」
「そうです、こうやって地中海まで来た時点で、連合に対する義理は果たせているはずです。
 ユウナ様、ここは抑えるべきではないでしょうか」
しかし、ユウナはそんな慎重論など聞く耳を持たない。
「いいや、今回の作戦の先陣は我々オーブ軍だ。これはスエズを出発した時点で決まっていたことだ。
 だというのに今連合の後塵を拝することになってみろ、また無理難題を突きつけられるかもしれないだろ!?」
「しかし…」
「トダカ、それともオーブ軍は連合の後ろに隠れてばかりの腰抜け兵だ、などといわれたいのか?
 臆病者の指揮官の下には弱卒しか居ない、と?」
「なっ……私が、オーブの兵が臆病者ですと!解りました、そこまでいわれては私とて退けません。
 MS隊を発進させましょう」
「そうそう、それでいいんだよ。ほら、護衛艦も前にだしなよ、ちゃっちゃとね」

 

 

一番が終わると、敵が正気に戻ったのか攻撃を再開してきた。
オーブもさらにMSを出してきたし、連合のMSも出てきている。
「クッ、なんて数だよ!?」
見渡す限り、敵、敵、敵。流石にこの数を相手にたった三機で突撃するのは無茶だ。
「シン、ミネルバまで一度退くぞ!味方の伏せてある地点まで後退するんだ!」
「了解……!?バサラさん、後退です!ひとまず下がってください!」
しかしバサラは歌い続けるだけでなく、さらに敵へ向かって進んでいく。
「バサラさん、退くんだ!その位置では!」
敵の銃口が一斉に火を噴く。大量のビームやミサイルが一機突出しているバルキリーへ、そしてインパルスとセイバーへと向かう。
しかし、バサラとバルキリーは前進をやめるどころかさらに突き進み、間奏が終わると二番も歌いだした。

 
 
 

<LET'S DANCE 星たちも歌う 一瞬だって長くできる
 翼を振ったら ROCK WITH ME
 BABY なんとかするから その手を離さないで>

 

自機への攻撃をかわしながらアスランが見たものは、にわかには信じがたい光景だった。
「な!!?」
ビームを避け、ミサイルを避ける。避けられない攻撃はピンポイントバリアで確実に防ぎ、斬りかかるMSをかわす。
スピーカーポッドを敵機に打ちこみ、三つの形態を使い分け、曲芸のように縦ロールや横ロールで攻撃を避け続ける。
エースパイロットでも難しいであろう状況判断を的確に行っている。しかも、バサラは歌いながらだ。
(信じられない、本当にあれだけの動きを歌いながらやっているのか!?)

 
 

<俺の歌を聞いて パワーを出せよ 最後まであきらめちゃいけないぜ>

 

インパルスに斬りかかってきたウィンダムの攻撃を避け、逆にこちらが袈裟懸けに切り裂く。
二つに別れ爆発するウィンダムに目もくれずにバサラとバルキリーを確認するが、まだ落ちていない。
今も敵のミサイルと連携した斬撃をを軽々とかわし、歌い続けている。
「嘘だろ!?歌いながらあんな芸当、どうやったらできるんだ!?」
シンの叫びにミネルバのハイネから律儀に答えが返ってくる。
『そんなに気になるんなら通信用モニターに映像まわしてみな』
そういわれてバルキリーに通信を繋ぐと――
「ってえぇぇ!歌ってるだけじゃなくてギターまで弾いてる!?」

 

<明日を駆けるラブハート 真っ赤な軌跡を描き
 ときめきと微笑みを バラまいてゆけ>

 

『ハッハハ、驚くのはいいがちゃんと避けろよ、ホレ』
「うわっ、このぉ!」
モニターに気を取られたせいで危うかったが、何とか攻撃をかわし体勢を立て直す。
再度攻撃してきたダガーを落とし、自分の見間違いであることを願ってモニターに目を向けるが――
「ちょ、見間違いじゃないのかよ!?」
見間違いではない。
どう見ても忙しなく腕を動かし、ギターを弾いているようにしか見えない。

 

<すべての心にラブハート 火花が散りそうなテレパシー
 溢れる想いは流線型 突撃ラブハート>

 

訂正しよう、どう見てもギターを弾きながら歌っているようにしか見えない。
というより通信を繋いだ時点でギター音もバサラの歌声もうるさいくらいにコックピットに響いている。
「どうやったらギター弾きながらあんな操縦ができるんですか!」
『ソコはソレ、アレはアイツの専用機だから。後は言わなくてもわかるな?』
「わかりませんよ!」

 
 

危うい操縦をしながらハイネとコントのようなやり取りをやっているとアスランからも通信が入った。
『シン、何をやっている!?落とされるぞ、動くんだ!』
「こっちの状況も知らないくせに偉そうに言うな、アスラン!
 いやむしろアンタは知らないほうがいいから、ハイネに何を言われても通信を繋ぐな!」
『ハァ?』
『おい、アスラン。状況がわからないんだったらお前もバサラと通信してみな。
 ただし、それなりに覚悟しておくのがオススメだぜ?』
「ちょ、ハイネやめろって!」
『?よく解らんが、やってみよう』

 

数秒後、セイバーの動きが止まった。相当ショックだったらしい。
……あ、ミサイルの直撃喰らって吹っ飛んだ。でもVPSだし、大丈夫か。

 

「って、おいハイネ!何でこの状況で援軍に来ないんだよ!」
『いや、だってもうすぐタンホイザーがそっちに撃ち込まれるし。プランじゃ突入はその後の予定だろ?』
「そんなのバサラさんがこうしてつっこんできた時点で立ち消えてるだろ!?」
『まあまあ、そういきり立つなよ。バサラの歌でも聞いて落ち着くんだ。
 ホラ、間奏も終わって今が一番いい所だぜ?』

 
 

<夜空を駆けるラブハート 燃える想いを乗せて
 悲しみと憎しみを 撃ち落として行け>

 

「確かにそうだけど、ソレとこれとは…」
『オッ、タンホイザーのチャージが終わった見たいだぜ。
 さっさと斜線軸から退避しないとお前もアスランも落ちちまうぞ?』
アスランは…どうやら海面スレスレで復帰していたらしく、今の通信を聞いてそのまま離脱するようだ。
「バサラさんはどうするんですか!?」
『アイツがそんなもんで落ちるわけねえだろ、ホレホレ急げ』
「うわあぁ!落ちたら恨むぞ、この野郎!」

 
 
 

<お前の胸にもラブハート まっすぐ受け止めて デスティニー
 何億光年の彼方へも>

 

「タンホイザー、軸線よろし」
「タンホイザー起動、目標敵護衛艦群及び敵MS」
「了解、タンホイザー起動。目標敵護衛艦群及び敵MS。
 プライマリ兵装バンクコンタクト、出力定規格。セーフティー解除」

 

<明日を駆けるラブハート 真っ赤な軌跡を描き
 ときめきと微笑みを バラまいてゆけ>

 

「!敵艦、陽電子砲発射体勢!」
「な、なに!回避、取り舵20!」

 

<すべての心にラブハート 火花が散りそうなテレパシー>

 

「てーっ!」
タンホイザーが敵をなぎ払う――直前、上空から一条のビームがタンホイザーに降りる。
刹那、タンホイザーがチャージされていたエネルギーを暴走させて大爆発を起こす。

 

<溢れる思いは――っ!?>

 

「なっ、ミネルバが!」
タンホイザー自体は大破、付近も爆発のせいでボロボロのようだ。
艦前部の出力に異常が出たのか、ミネルバが前傾姿勢になっている。
バサラさんも突如起きた大爆発に歌うのをとめてしまっている。
敵味方を含めて、一時的にだか時間が止まったかのようだ。

 
 

「一体、どこから攻撃が――」

 
 

上空から何かが降りてくる。アレは、あの翼を持ったMSは――

 

「――っ、フリーダム!」

 

「フリーダム…キラ、キラなのか!!?」

 

――あの時、オーブに、俺の家族に戦争を運んできたMSだ。

 

アレは俺にとっては忌まわしい死神であり復讐の為の道標、『ヤキンの英雄』フリーダム!

 
 
 

機動戦士ガンダムSEED DESTINY feat.熱気バサラ
第九話 乱入者~INTRUDER~

 
 

次回予告

 

ハイネ「俺とバサラでの初の戦場ライブに乱入してきたのはなんと、あのヤキンの英雄フリーダム。
     更には不沈艦アークエンジェルにさらわれたオーブのお姫さんまで乱入してきちまった!
     だが、そんなの俺達には関係ねえ、相手が誰であろうと想いのつまった歌を聞かせてやるぜ!」
シン  「いや、ハイネは歌ってないんじゃ…」
ハイネ「次回、起動戦士ガンダムSEED DESTNY feat.熱気バサラ 第10話 想いの重さに――」

 

バサラ「過激にファイヤー!!」