R-18_Abe-SeedDestiny-X_安部高和_10

Last-modified: 2007-11-06 (火) 21:40:25

舵とペダルの修理が終わった頃には、既にヴェサリウスの姿はなかった。
「すぐに準備しろ貴様ら!追撃するぞ!!」
「いや、ちょっと待て」
逸るイザークに異を唱えたのは阿部。彼は既に全裸となりて己の暴君を扱いていた。
「な、何をしている阿部!!そういう事は俺のベッド・・・じゃなくて自分の部屋でやれ!!」
「忘れたのかイザーク?今うちの操舵手はこんな感じなんだぜ?」
「前が見えねぇ」
ガモフの操舵手――ディアッカはボンドで目をやられたため、とても艦を動かせる状態ではなかった。
「そ、そうだったな。しかし阿部、それと貴様のせんずりはどう関係があるんだ?」
「こういう関係さ・・・・・・フンッッ!!」
絶頂。すごく大きい金玉から供給された精液は、そのままディアッカの顔に降り注いだ。
「――!?な、なんだよこのネバネバとして且つ芳醇な香りと濃厚な味わいの素敵液体は!?」
「俺の精液だぜディアッカ」
「精子の活発な動きが目に見えるよう・・・・・・はっ!?」
そこでディアッカはようやく気付いた。自身の双眼がその機能を取り戻しているという事に。
「見える・・・・・・俺にもブリッジが見えるぜ!!」
「すごい・・・・・・」
「まさか阿部の精液にそんな効能があったとは・・・・・・!」
真珠ペニスでズタズタにされたアナルですら一瞬で治癒させてしまう阿部の精液。
ボンドで潰れた目の治療など朝ファックに等しき児戯だった。
「よぅし、それでは改めて追撃を開始する!!」
それぞれが所定の位置につき、ガモフはヴェサリウスの消えた方角へと針路を取った。
「って、ちょっとタンマ」
と、動き出した辺りで阿部が制止をかける。
「どうした!?」
「救難信号だ。ここからそう遠くない位置・・・・・・あのジャンクからだ」
宇宙空間を漂う悲惨なジャンク。どう見ても生存の可能性が見られないようなその残骸から、ガモフに
救難信号が送られていた。
「なんだと!?よしニコル!通信を繋げ!!」
「こちらはザフト軍所属の戦艦ガモフです!応答願います!」
ニコルが呼びかけると、そのジャンクから返事が返ってきた。
『・・・・・・たぁ~すけてくれ~』
「――!?この声・・・・・・アスラン!?」
阿部が発見したジャンク・・・・・・それは、シンのデスティニーにバラバラにされたガズウートの残骸、
そのコクピットブロックだった。
『もしかして・・・・・・ニコルか?』
「そうです!こんなところで何やってるんですかアスラン!?」
『いやちょっと同僚に・・・・・・いやそんな事より助けてくれ!もう酸素も残り少ない!』
「わ、分かりました!」
「何をやってるんだあいつは!!」
「よし、ちょっくら阿部さんが行ってこよう」

そして数分後、ガモフのMSデッキ。
「た、助かった・・・・・・」
無事救助され、アスランはほっと安堵の息をついた。
「アスラン貴様!!」
「イザーク・・・・・・相変わらずだな、その血気盛んなところは」
「何スカした顔をしている!!貴様はいったい何をやっているのだ!!」
「何って・・・・・・ミネルバのクルーをやっていたんだが」
「アカデミートップの貴様が何故ガズウートなどで出撃してあまつさえダルマ以上の悲惨な状態に
なっていたのかを訊いているんだ!!」
「それは後輩の逆鱗に触れ・・・・・・ゲフンゲフン!なに、ちょっと不運が重なっただけさ」
「どう不運が重なればアカデミートップのエリートがガズウートで出撃→ダルマなんて事になるんでしょうか・・・?」
「色々あったのさ、ミネルバではな・・・・・・」
本当に色々あった。その『色々』はどれもロクなものではなかったので、アスランは話そうとはしなかったが。
「じゃあとりあえずミネルバに連絡を入れておきますね。そう遠くには行ってないでしょうから、
もしかしたらすぐに帰れるかもしれません」
そう言ってブリッジに向かうニコルを、アスランは肩を掴んで止めた。
「・・・・・・アスラン?」
「その事なんだが・・・・・・よかったら俺も一緒に行かせてもらえないか?」
「え?でも・・・・・・」
「ヴェサリウスが奪われたんだろ?あれは俺達が初めて配属された艦だ。なら俺もその奪還に
協力するしかないじゃないか!」
「なるほど・・・・・・確かにあれはアスランにとっても思い出の深い艦ですからね。分かりました、ミネルバの艦長には
なんとか掛け合ってみます」
「よろしく頼む。・・・・・・今ミネルバに帰ったらシンに殺されるからな(ボソッ」
「何か言いました?」
「い、いや何も!それよりみんな、これでクルーゼ隊の再結成だな」
アスラン、イザーク、ディアッカ、ニコル。それに阿部も加わり、この艦はかつて戦場を駆けたクルーゼ率いる
ヴェサリウスと同じ様相を呈していた。
「ふん!今の隊長はクルーゼ元隊長ではなく俺だがな!」
「まさかまた五人でバカやれる日が来るとはね」
「と言っても、艦はガモフですけどね」
「ひゅう♪賑やかになってきたじゃないの」
「よし!それじゃあ今日からこの隊は新生クルーゼ隊だ!みんなで力を合わせて頑張ろう!!」
おー、と拳を高々と突き上げるアスラン。
「「「「いや、さすがにそれは引く」」」」
「・・・・・・」
やはり誰も乗ってくれなかった。

ミネルバ、レクリエーションルーム。
「アスランさん、ガモフに乗る事になったんだって」
「ふぅん・・・・・・」
メイリンから事情を聞いたルナマリアは、レクリエーションルームで漫画を読み耽るシンにそう伝えた。
「・・・・・・逃げたな」
「え?」
「いや、なんでもないよ」
そう言って再び漫画に目を落とすシン。アスランが何を思ってガモフに乗ったのかは手に取るように分かった。
まぁバラした挙句ほったらかしにした本人が思うのもなんだが、無事に救助されたのかとちょっぴりだけ
安心もした。
「・・・・・・はっ!?」
――この状況・・・・・・もしや!
今のミネルバにはパイロットは二人だけしかいない。もちろん他のクルーは腐る程わんさかいるのだが、
予定がぴったり合うのは同じパイロット同士であるシンとルナマリアのみ。いつもシンを追い掛け回すアスランも、
ウザ系先輩のハイネもいない。
「・・・・・・ちゃぁ~んす」
そう。この状況はまさに、シンと二人きりになれる好機だった。
この好機を逃がす手はない。ルナマリアはさっそくアプローチをかけた。
「ねぇシン?ヴェサリウスの追撃任務は終わったのよね?」
「そうだな。もうあの艦を追いまわす必要はなくなったし」
マユの写真がないと分かった以上、ヴェサリウスに用はない。パイロットが一人欠けた事もあり、ミネルバは
本国へと針路を取っていた。
「じゃあプラントに帰ったらさ、どっか遊びに行かない?遊園地とか、映画とか」
いわゆるデートのお誘い、というやつである。
妹に根こそぎ男を取られているとはいえ、ルナマリアは可愛いと言っても差し支えのない女性だ。
特殊な性癖を持っていないのであれば、彼女からデートの誘いを受けて断る男はいないだろう。
「ごめん、俺用事あるから」
だがシンはそんなルナマリアの誘いを、脊髄の反射速度を超える早さでお断り申した。
「よ、用事って?」
「マユから写真が送られてきたんだ。それ愛でるから悪いけどヨウランとか誘ってよ」
残念な事に、シンは特殊な性癖の持ち主だった。
皆の知っての通り、シンは重度のシスコンである。しかもそれは「妹可愛いよ妹」などという生易しいものではなく、
本気で結婚する気でいるから困る。
「・・・・・・」
目の前に立ちはだかるシスコンの壁。その壁はあまりに高く、そしてあまりに強固。もしシンのシスコンの壁を
ATフィールドに例えるなら、それは使徒13匹掛かりでも傷一つ付けられない鉄壁の壁となるだろう。
ってかゼオライマーがダース単位でメイオウ攻撃を行っても「そよ風ッスかwwww」てな感じになるだろう。
何が言いたいのかと言うと、もしシンがエヴァンゲリオンのパイロットで彼がスパロボに参加したのであれば、
著しいゲームバランスの崩壊を呼び起こすだろうという事である。
「く、くじけないわよ・・・・・・!」
その壁に無謀にも挑まんとするルナマリア。

・・・姉妹揃って難儀な男に惚れたものである。

ところ変わってヴェサリウス。
「それで、今後の方針は?」
キーボードに囲まれた艦長席に座るアビーが、副艦長の席に座るシャギアに問うた。
「ふっ・・・・・・」
含み笑いをしつつ、ワイングラスの中の液体をくゆらすシャギア。
「シャギアさん。作戦行動中はアルコールは控えてください」
「その心配は要らない。これはワインではなくオロナミンCだからな」
よく見ればしゅわしゅわと泡立っていた。
「兄さんはアルコールの類がダメなんだ」
「酔うのは己の美学のみに留めねばな・・・・・・」
「――!?上手い、上手いよ兄さん!!酒に酔うを美学に酔うと掛けるなんてすごいクオリティだよ兄さん!!」
「そう褒めるなオルバよ・・・・・・」
ニヤニヤするシャギア。別に上手くはない。
「それで、今後の方針は?」
改めて問うアビー。だんだんシャギアへの対応の仕方が分かってきた。
「そうだな・・・・・・この先には何がある?」
「このままですと、地球軍の月基地アルザッヘルに行き着きますが」
「そうか・・・・・・よし、ならば次の目的地はそこだ」
「アルザッヘル・・・・・・ですか?」
「そうだ。何か問題でもあるのか?」
「これはザフトの艦です。そして今プラントと地球は一触即発の状態です。それなのにノコノコとヴェサリウスで
アルザッヘルになど行っては、蜂の巣にされるだけかと思います」
「ふっ、アビーよ・・・・・・まだまだ青いな」
ワイングラスの中身(オロナミンC)を飲み干し、更にシャギアは続ける。
「この状況下で我々はザフトの艦に乗っている。しかしながら我々はザフトではない。ザフトでない者がザフトの
艦に乗っている理由など一つしかないと思うのだが、どうか?」
「素性を抜きにするならば、奪った・・・・・・という事ですか?」
「その通りだ。我々はザフトの艦を奪った。ではアビー、ザフトの軍艦・・・・・・しかも今現在実戦配備されている艦を
その戦場から奪おうとする者とは一体どういった者だ?」
「ジャンク屋や傭兵がそんな危険を冒すはずはありませんので・・・・・・やはり地球軍のスパイですか?」
「良い答えだ。ディ・モールト素晴らしい。そう、我々は地球軍のスパイなのだよアビー」
ザフトに侵入した地球郡のスパイならば、ザフト製の艦に乗っていても不自然ではない。それは艦ごとザフトの
情報を奪ったという事になるからである。
確かにシャギアの言い分は理に適っているのだが、
「ですが、実際の私達はスパイではありません。最悪ザフトのスパイだと思われて拘束される恐れがあります」
そもそも実際はスパイでもなんでもない。むしろ両軍の敵であるテロリストに近かった。
「アビー・・・・・・私達兄弟を誰だと思っているのだ?」
ちょっぴりお馬鹿な変態兄弟です・・・・・・とは言えなかった。
「私達は悪の美学を追求し極めんとする者だ。なればこそ、寵愛を受けるは必然かと思うのだが」
「・・・・・・運任せという事ですか?」
「ただ運に身を任せるだけの者に美学を語る資格はない。・・・・・・オルバよ、例の物だ」
「はい、兄さん」

するとオルバは、三枚のカードをポケットから取り出した。
「これは・・・・・・?」
「IDカードだ。・・・・・・地球軍のな」
それぞれシャギア、オルバ、アビーの顔写真の付いたIDカード。IDカードとはつまり身分を証明する物であり、
これさえあれば連合軍の基地を我が物顔で歩く事が出来る。
「それは分かります。分かりますが・・・・・・」
当然これは偽造したものである。しかもこれを作るに当たってシャギアは連合軍のメインコンピュータに侵入してデータを
書き換えたというわけでもなく、ただ単に『連合の基地で問題なく使える』という、機械を騙すだけの代物だった。
例えるならCD-RにコピーしたCDのような物で、聴くのは問題無く出来るがちょっと調べればすぐに偽者と分かって
しまうようなものだった。
「なに、心配は要らない。本格的な書き換えはアルザッヘルで行えばいいだけの話だ。我々が正式なアルザッヘルの
軍人であると打ち込んでしまえば、これはまさしく本物の連合軍のカードとなる」
「それはかえって危険なような気がします。私達がアルザッヘルの者ではないという事は、アルザッヘルの兵士
にはすぐに分かってしまうのではないですか?」
「確かにそうだ。我々はアルザッヘル基地の者ではなく、どこか別の基地のスパイとしてアルザッヘルに行くのだからな」
そもそもアルザッヘル基地はザフトにスパイを送り込んではいない。故にシャギア達がスパイとしてアルザッヘルに
行くには、アルザッヘル基地以外の基地のスパイとして振舞わなければならない。
「だがそれも心配は要らない」
シャギアは新たにオロナミンCをグラスに注ぎ、こう告げた。
「我々が書き換えた頃には、アルザッヘル基地は壊滅しているからな」

ガモフ、ブリッジ。
とりあえずヴェサリウスの逃げた方角にガモフは向かっていた。
「今のところ反応はなし、か」
アスランが呟いた。
アスランの担当はCIC。索敵したりミサイル撃ったりとCICは割と忙しいので、人手は多い方がいいという理由で、
彼は阿部と共にCICの任に就いていた。
「くそっ、どこに逃げたんだあいつらは!!」
イザークが苛立つ。宇宙はヤバイくらいに広いので、戦艦のようなデカブツでも捜すのは一苦労だった。
「何か情報でもあればいいんですけどね・・・・・・」
ニコルが呟く。
するとそれに呼応するかのように、阿部のモニターにとある反応が生まれた。
「おや?これは・・・・・・」
「どうした阿部!?見つけたか!?」
「これは・・・・・・間違いない、ヴェサリウスの反応だ」
阿部が見つけたのは、まさにイザークが望んでいたヴェサリウスの反応だった。
「なんだと!?それは本当か!?」
「ああ、それは間違いない。しかし、どうにもおかしい・・・・・・」
「どういう事だ?」
「いや・・・・・・あいつらは俺達から逃げているはずだ。なのにヴェサリウスから広域に渡って電波が発信されている」
追跡者を撒こうとするならば、艦の運行は極限まで慎重なものになる。どこかに通信を入れるなどもっての他、ましてや
今のように無意味に電波を発信するなど、とても考えられない行為だ。
今のヴェサリウスの行為は、まるで見つけてくださいと言わんばかりのものだった。
「ふっ、どうやら向こうにも迂闊で残念な奴がいるようだな!!」
「・・・・・・非グレイトォ」
「阿部!やつらの今いる位置はどこだ!!」
「月周辺・・・・・・アルザッヘルといったところか。しかしイザーク・・・・・・罠かも知れないぜ?」
「構うものか!!それとも貴様・・・・・・まさか臆しているのか!?」
「それは世界で一番の愚問だぜイザーク」
「そうだろうな。貴様は罠だろうとなんだろうと喰っちまう男だからな!」
「そういう事よ。むしろ俺は安心したぜ。おまえが罠と知っても臆さかった事にな」
「ふっ、言うじゃないか。よしディアッカ!針路をアルザッヘルに取れ!!」
「了解!!」
ディアッカは舵を回し、艦首を月に向けた。
「今度こそ覚悟しろシャギア・・・・・・目に物を見せてやる!!」
「今度こそケツにモノを突き立ててやろうじゃないの」
「もうボンドは使わないよ」
「まぁ実際罠でも阿部さんならなんとかしてくれそうですね」
「キラ・・・・・・」
それぞれの思惑を胸に、ガモフはアルザッヘルへと針路を取った。

機動戦士阿部さんSEED DESTINY X
第十話~細かい事は気にせずお楽しみください~