R-18_Abe-SeedDestiny-X_安部高和_26

Last-modified: 2007-11-09 (金) 20:45:36

タイガージェネシス・コントロールルーム。
ラクス戦以降は何事もなくこの場に入る事の出来たシャギアは、手探りで電気のスイッチを入れた。
「まさか本当に誰もいないとはな・・・・・・」
蛍光灯に照らされた部屋の中には、たくさんのコンピュータがずらりと並んでいた。本来ならばモブ兵が
それぞれに着きカタカタとややこしい操作をしているのだろうが、シャギアの呟きどおりこの部屋には人っ子
一人いなかった。「なんでこんな重要な場所に誰もいないの?」と疑問を感じた者はすぐに本編を見直す
といい。さすればザフト軍人の程度というものが文章でなく心で理解出来たッ!
「さて、とっとと発射させるとするか・・・・・・」
コンピュータの一つに近付くシャギア。そこにはあからさまな赤いスイッチがあり、ドリフでない限りそれが
ジェネシスの発射ボタンであるという事はもはや明白だった。
「いいのか?あんな兵器の発射ボタンがこんなあからさまで・・・・・・」
疑問を感じつつ発射ボタンに手を伸ばすシャギア。
しかし押す寸前に何気なく見た別のコンピュータにより、その疑問は氷解する事となった。
「・・・・・・、なに?」
そのコンピュータにも同じボタンがあった。改めて見回すと、全てのコンピュータに同じボタンが付いていた。
「これは・・・・・・どういう事だ?」
常識的に考えて、一つの兵器(しかも切り札的な)の発射ボタンが複数あるとは考えにくい。ボタンがたくさん
あれば、それだけ押せる人間の数も多くなる。突如トチ狂ったりくしゃみの勢いでぽちっとなされてしまうという
リスクを考えるなら、ボタンは一つ・・・・・・それも兵器を扱うに足る人間のみが握った方が良いというのは
明らかである。
「まさか・・・・・・ダミーか?」
考えられる答えは一つ。このスイッチ群の中の一つだけが本物で、残りのスイッチは全て偽物であるという事。
もちろん全てが偽物であるとも考えられるのだが、
「その通りですわ。ダミーを押した瞬間ジェネシスは全ての稼動を停止します」
それは彼女の言葉で否定された。
「・・・・・・ほう?まさかあの状況から抜け出し――!?」
言いながら振り向いて彼女――ラクスの姿を見た瞬間、シャギアは目を見開いた。
それもそのはず。今のラクスさんは、あられもない姿だった。
黒鍵磔刑から無理やり抜け出したラクスの服は、所々が破けて肌が露出しているのだ!スカートは半分以下の
長さになって白いフトモモが露になってるし脇腹~腰間の破けた部分からはおパンティの端が見え隠れしてるし胸の
部分に至っては乳房右方のブラが完全露出してウヒョー!エロい、これはエロい!むしろ全裸よりもエロいと思う
のは決して俺だけではないはず!これです、これがエロスなのです!全裸よりもこういうのがむしろ男の妄想を
掻き立ててエロいってヤツなのです!色気のない全裸など要らんのです!ぶるあぁぁぁぁぁぁぁ!!
「・・・・・・む、こほん。では本物のスイッチを教えてもらおうか」
「猫の子じゃあるまいし、はいそうですかと教えられるかですわ!」
「では体に訊くとしよう・・・・・・脱衣麻雀四回戦クリア後の如き全裸に剥いてくれる!」
この前ゲーセンで脱衣麻雀をやったら相手が天和してきた件について。

「わたくし貞操のピーンチ!でもそうはいきませんわ!」
ラクスが右手を上にかざすと、ラクスの周囲に小さなハロがずらりと並んだ。
「ハロ(バッドカンパニーちゃん)・・・・・・蜂の巣にして差し上げますわ!」
「核爆発を耐え抜いた私に今更そんなものが効くと思っているのか!?」
シャギアは黒鍵をラクスに向かって投げ放つ。
「甘いですわ!」
ラクスが黒鍵を指差すと、足元の小さなハロ達は一斉にそれに向かって射撃をした。
すると黒鍵は破壊こそされなかったものの、軌道を大きくずらされてあさっての方向に飛んでいった。
「このハロ達は精密射撃が売りですのよ!」
再び射撃の合図。今度はシャギアの額に向かって射撃が繰り出された。
「その程度の銃弾、見切れぬ私だと思って――」
軽く頭をずらしてかわそうとしたシャギアだったが、不意に走った激痛によりその動きを止めた。
「ぐおっ!?」
シャギアの左足の靴。その足の小指の部分が、別のハロ達によって打ち抜かれていた。
さしものシャギアでも、タンスの角に足の小指をぶつけたかのような痛みには顔を顰める他なかった。
「――はっ!?」
そして気付いた時には、もう回避が不可能な位置にまで銃弾が届いていた。
「ぬ、ぬおぉぉぉぉぉっ!?」
シャギアの頭は僅かにずれていた。そういうわけで額を打ち抜かれるという事はなかったが、代わりに右目に
銃弾が直撃していた。
「目がっ目がァァァァァァァァッ!!」
「予定とは違いましたけど、あなたの片目は奪いましたわ!」
片目が奪われる・・・・・・つまりそれは三次元を正しく認識する事が出来なくなるという事であり、例えばコップに手を伸ばしたら
誤って倒してしまったという事態が頻発するという事になる。よく眼帯付けてるキャラとかいるけど、日常生活はそれなりに
苦労しているのです。ってかそういうのに限って強かったりするんだけど、それってどうなんだろうね?
ともかく、悶え苦しむシャギア。
「ぐおお・・・・・・これは、この痛みはッ!まるでコンタクトレンズと眼球の間にまつ毛が挟まったかのような、なんとも
言えぬ不快な痛み!涙が出るッ!涙腺が過剰反応しているかのようだッ!!」
「・・・・・・え?その程度?」
「よし治った」
次の瞬間には、ケロっとしたシャギアの姿があった。
「人体の中でも割と脆いとされる眼球への一斉射撃も通じないなんて・・・・・・この方人間ですわよね?」
たぶん。
「さて・・・・・・最後に訊くが、本物の発射スイッチはどれだ?」
黒鍵を向けつつラクスに問うシャギア。さっきまでのフザケタ様子からは到底窺えないような、殺気に満ちた視線で
ラクスを射抜く。
「教えてあげませんですわ」
それ故にラクスはぷいっと速攻で拒否した。
ああも殺気を露にするという事は、裏を返せばそれ程知りたいという事。故に黙っていれば殺される事はなく、
むしろ喋ってしまった方が余計に命が危うくなるのだ。
「ち・・・・・・」
そんなラクスの意図を察し、シャギアは苦々しい表情で黒鍵を収めた。
彼はなんとしてもラクスから本物の在り処を訊き出さなければならないのだ。誰かに訊こうにもここに来るまでに
ラクス以外の者とは出会わなかったし、仮にメサイアに戻って訊いたとしても、ラクスがマヌケでない限り彼女はここに
行くという事を誰かに伝えてあるはず。そんな事を訊いては「ラクスさまになにをしたきさまー!」と身柄を拘束される
恐れもある。彼女を人質にという手もあるが、そんな悠長な事をしている暇はない。

(さて・・・・・・)
まず状況を確認する。
眼前には半裸(ウヒョー)になったラクス。自分を挟んで、後ろにはスイッチの付いた多数のコンピュータ群。
(位置が悪いな・・・・・・)
するとシャギアはおもむろに黒鍵を構え、ラクスに向かって突進した。
「なっ――!?」
投擲に徹していた今までとは明らかに違う行動。少し戸惑うも、ラクスはハロ(ビッグシールド・ガードナーちゃん)を
展開した。
「無駄無駄無駄ァ!!」
もはや黒鍵など使わず蹴りで粉砕するシャギア。
たまらずラクスは横に避け、そしてそれを見計らったようなシャギアの回し蹴りを喰らって豪快に吹っ飛ばされた。
「あいたた・・・・・・」
ラクスが吹っ飛ばされた先は、コンピュータ群の前・・・・・・さっきまでシャギアがいた位置だ。
つまりシャギアとラクスの位置が入れ替わった形になるな。
「自らコンピュータから離れるなんて・・・・・・失策でしたわね」
ここでラクスがダミーのスイッチを押せばジェネシスが発射される事はなくなる。
手近なスイッチまでの距離は一メートルもない。客観的に見れば詰んだッ!第三部完!!
「何を言っているんだ。その位置が良いんじゃあないか」
しかしシャギアは承知の上、故に間髪入れずにありったけの黒鍵を空に放った。
「もう疲れたろう?刃のシャワーでも浴びて汗を流すといい」
その全ての黒鍵から刃が伸び、重力に従って落下する。部屋の全てを埋め尽くす、避ける隙間のない刃のシャワー。
「何をするかと思えば・・・・・・ふぅ、思った以上に浅はかですわね」
ラクスは落ち着いて自分の頭上にハロ(ビッグシールド・ガードナーちゃん)を展開した。
シャギアの黒鍵相手にハロ(B・Gちゃん)が通用しないというのは今までの戦闘から明らかだ。
しかしそれは、あくまで『シャギアから放たれた黒鍵』である場合の話。万有引力程度の力に引かれて落ちる黒鍵
なら、ハロ(B・Gちゃん)でも余裕で受け止められるのだ。そろそろ突っ込まれそうだから明言しておくけど、
ここに重力はあります。あるんです。
そしてラクスの想定どおり、黒鍵はハロ(B・Gちゃん)に浅く刺さるだけに留まった。
「ふふっ、ゲームオーバーですわ。あとはわたくしが――」
「くっくっく・・・・・・」
完全に詰んだと思われたその時、シャギアの悪い含み笑い。
「な、何がおかしいんですの?」
「これが笑わずにいられるかと問われれば、答えはNOだ。何故なら既に私の目的は達成されたのだからな」
「な、何を言っているのですか・・・・・・?」
「私が何も考えずに黒鍵を投げたと思っているのか?おまえを殺すだけならわざわざあれだけの黒鍵を、しかも
防がれると分かっているような投げ方で放ったりはしない。それらはそう・・・・・・ダミーなのだよ」
「ダミー・・・・・・はっ!?あなたまさか!?」
「さすがは最高協議会の議員、察しがいいな。私があれだけの黒鍵を投げた真意はそう、既に目星を付けていた
本物のスイッチを押すための隠れ蓑だったのだよラクス・クライン!見るがいい!我が黒鍵によって押された
ジェネシス発射スイッチを!!」
「そんな!?」
ラクスがばっと振り向く。
「――ほう、そこか」
彼女の視線の先には、本物のスイッチの付いたコンピュータ。
――そこに、黒鍵は刺さってなかった。

「――ッ!?しまった――」
ラクスが己を悔いる前に、シャギアは彼女の横を走り去っていた。
シャギアは本物の在り処などこれっぽっちも見当がついていなかった。シャギアがわざわざ大量の黒鍵をばら撒いたのは、
それが本物への投擲のカモフラージュだと思い込ませるため。彼の真の狙いは、ラクスに本物を押したと思わせて
彼女自身に本物のスイッチを見てもらう事だった。わざわざ位置を入れ替えたのも、黒鍵がただの一つもスイッチに
触れていないのを視界に収めさせないためだ。
「ですが、その前にわたくしが――」
「そうはさせん!」
「――!?」
ラクスがスイッチに手を伸ばす前に、シャギアは通り道に刺さっていた黒鍵を拾って投げ放った。
その黒鍵はラクスに致命傷を負わせるには充分なもの。なんらかのハロで防がなければ、ラクスが重傷を
負うのは誰の目にも明らか。
――そしてそれは、ラクスがスイッチを押すのを諦めなければ防げない速度で放たれていた。
「ははは勝ったッ!第三部完!!」
そしてシャギアがスイッチに手を伸ばそうとした時――
ダンッ!
「・・・・・・!?」
異質な音が部屋に響いた。
次いで、羽虫のようにか細いラクスの声。
「それは・・・・・・こちらのセリフですわ・・・・・・!」
「ば、馬鹿な・・・・・・」
本来なら鳴らないはずの、鳴るとはとても思えなかったその音は、ラクスがダミーのスイッチを拳で叩いた音だった。
「正気か、貴様・・・・・・!」
ラクスの体には、何本もの黒鍵が刺さっていた。露出した肌からは幾本もの血の筋が流れ、純白だった彼女の服は
徐々に赤く染まっていく。
「半端な覚悟では・・・・・・議員は務まりませんのよ・・・・・・!!」
ずるずると崩れ落ちるラクス。彼女は自身の命よりも、ジェネシスの発射阻止を優先した。
「身を呈しての発射阻止、か・・・・・・しかし!」
シャギアは改めてスイッチに向き直る。
「運がなかったな、ラクス・クライン!!」
「な――そんな!?」
渾身の力を込めての発射阻止――しかし、それは叶わなかった。
シャギアがカモフラージュとして放り投げた黒鍵・・・・・・運の悪い事に、その内の一本が今ラクスが叩いたスイッチ
とパネルの隙間に絶妙に刺さっており、スイッチは少女の力ではとても押し込めないような固さになっていた。
ラクスはおろかシャギアもそれは想定外――まさに『運』そのものが引き起こした結果だった。
「そして今度こそ――勝ったッ!第三部完!!」

「か、艦長!ジェネシスが稼動しました!!」
「なんだとぅ!!?」
悪趣味な塗装の施されたジェネシスがグイングインと音を立てる。まるで神父が蛙にディスクを突き刺したように、
あのジェネシスからは十秒後にγ線が発射されるであろう事は明白だった。
「か、回避だ回避!!北斗の拳みたいな死に方はイヤン!!」
「間に合いません!!」
「にゃんだとぅ!!?」
プラント宙域・・・・・・そのジェネシスの射線上にいる艦&MSは、てんやわんやの大騒ぎだった。
なんとか逃げようとする者、神に祈る者、好きだったあの子にアタックする者、漏らしちまっている者・・・・・・
射線上の様相はヒサンなものだった。
――と、そんな中を高速で突き進むMSが一機。
「な、なんだアレは!?真っ直ぐジェネシスに向かっているぞ!」
闇に映える、肉色のカラーリング――
「艦長!アレはもしかしてもしかすると、あの!」
ツナギを着込んだ良い男――
「あの、ジェネシスをケツで防いだという・・・・・・」
『久しぶりに俺、参上!!』
本当に久しぶりなインモラルが、ジェネシスに向かっていった。

――そこから少し離れた場所。
『カッコつけるのはいいけどね、インモラル・・・・・・それがおまえの最後なんだよ』
デブリの影に隠れた一機のMSが、大剣を携えてゆっくりと身を動かした。

「一時はどうなるかとも思ったが・・・・・・やはり運は我々に向いているようだ」
無事にスイッチを押し終えたシャギアは、もうここに用はないなと出口に向かった。
「――――」
その途中、とあるコンピュータの下で、血を流しつつ荒く息を吐く少女。その目は焦点が定まっておらず、放っておけば
どうなるかは目に見えて明らかだった。
「・・・・・・」
この施設内には誰もいない。助けを呼ばない限りは、この場には誰も来ないだろう。おそらくメサイアでは発射された
ジェネシスの対応にてんてこ舞いで、ラクスの存在に気付く可能性は限りなく低い。
そして今のラクスはとても人を呼べるような状態ではない。意識があるかどうかさえ危うい状態だ。
「・・・・・・、ふん」
シャギアはラクスを一瞥した後ドアに向かい、そして備え付けの受話器を取った。
「あー、ラクス・クラインがジェネシスのコントロールルームにて重傷を負っている。早く来ないと死ぬぞ」
『な、なんだと!?貴様は――』
応対に出た兵士の言葉を聞かず、電話を切るシャギア。
そして再びラクスに視線を移し、独り言のように呟いた。
「私は負けていた・・・・・・貴様の覚悟に。だからこれは報奨だ。受け取るが良い・・・・・・ラクス・クライン」
そしてシャギアはコントロールルームから出た。

機動戦士阿部さんSEED DESTINY X
第二十六話~つまりエロ本の乳首よりもボンボンの下着の方がエロいって事なのです~