第×○話 「くつ下は世界を救う!だゾ」 中編
シン(クルーゼ仮面着用中)「お、俺が独裁者……大魔王……ラスボス……光の球で弱体化したところを勇者にズバー……」
アスラン「なあ。こいつさっきから様子がおかしいが、どうしたんだ?」
しん 「たぶんこの世でいちばん嫌いなものに自分がなっていた衝撃の事実を知って、
軽いパニック状態になってるんだと思うゾ」
ルナ 「……? よくはわからないけど大変そうねえ~」
メイリン「失礼します! ザラ司令、4班が作戦遂行中に治安部隊と遭遇、戦闘になった模様です!」
アスラン「なんだと?で状況は!」
メイリン「幸いレジスタンス側の被害は軽微で済みました。それと……」
ルナ 「なに?」
メイリン「政府側の要人をひとり捕虜にしたようです。ですが……その人物というのが皇帝親衛隊の隊長という……」
アスラン「ッ! あいつか……ともかく会ってみるしかないな」
キラ 「無駄かもしれないけどね」
しん 「ねえねえシン兄ちゃん。そろそろ正気に戻ってよ~」
シン 「ううっ……」
司令室のすぐ横にある尋問室。そこに1人の男が、椅子に縛り付けられていた。
アスラン 「やはりお前か。久しぶりだな…………イザ―ク」
イザ―ク 「ふん! 俺には貴様のような反逆者の知り合いなどおらんわ!
こんな所にこそこそ隠れて、皇帝陛下に反旗を翻しおって……
不穏分子は必ず殲滅してやるからなッ!憶えておけ!」
ディアッカ「イザ―ク……」
シン (あれ? これはイザ―クさん、か……? でもなんか様子が変だな)
キラ 「……ダメ、みたいだね。やっぱり」
ルナ 「この様子じゃあ有益な情報も聞き出せそうにありませんね。さようなら……イザ―ク・ジュール」
ジャキッ!(イザ―クに向けて拳銃を突きつけた)
シン 「ちょ、ちょ、ちょっと待ッてくれよ! なんでいきなり殺そうとするんだ!
かつての仲間なんだろ?!」
メイリン「しょうがないんですよ。こうなっていたら、もう手遅れなんです」
しん 「ておくれ?」
キラ 「どうもよく知らないみたいだね。じゃあ近づいてこの人の目をよ~く見てごらん」
シン 「目?ん~……あれ?」
イザ―ク「くっ!この反逆者め!臭い息を俺に吹きかけるなッ!」
しん 「いや~お昼にギョーザ食べたばかりでして♪……おお?」
シン 「これは……イザ―クさんの瞳が、ナルトみたいにぐるぐるになってるぞ?なんだこりゃ」
アスラン「皇帝の電波洗脳術に完全にかかった者の目はみんなこうなるんだ。
この目をした者は、皇帝および帝国になんの疑問も持たぬようになり、忠実な下僕と化してしまう……」
しん 「元には戻せないの?」
ルナ 「私たちだって今までに色々試したわよ。
薬物投与、催眠術、脳手術に、粘り強く説得したり教育したり……でも結果は全てさんざんだったわ。
どんな方法で洗脳されたのかさえさっぱりわからなかったのよ」
アスラン「俺達だって出来れば助けたいさ!でも助けたくてもその方法がないんだ。
それに政府の食料配給政策が不十分なせいで、最近は食料だって満足に手に入らない!
大勢の捕虜を養う余裕は俺達にはないんだ」
ルナ 「アジトの所在を知られるわけにはいかないから逃がすわけにもいかない。となると、後はもう……」
シン 「いっそ一思いに殺すしかないってのか?そんな……」
しん 「……ん?」
ふと、しんのすけがズボンのポケットにさわると何かが入っているみたいな感触がした。
『それ』をおもわず取り出してみると……
しん 「くさっ!これは……父ちゃんのくつ下?」
イザ―ク 「この俺を殺すならさっさと殺せ!
貴様等のような下水道に潜んでいるネズミになぞに情けをかけられたくはないわッ!」
ディアッカ「イザ―ク……おまえ……」
イザ―ク 「これ以上ドブのような貴様等の臭いなぞ嗅ぎたくもない!どうした?撃てよ!撃ちやがれ!ほら!」
しん 「臭い? 臭い……臭い……」
シン 「イザ―クさん……本当に手遅れなのかよ……もう……」
しん 「いや!そんな事ないゾ―――!」
ルナ 「え?」
シン 「しんちゃん?」
しん 「イザ―ク兄ちゃん!」
イザ―ク「な、なんだこのガキ……?」
しん 「ドブの臭いがいやなら、別の臭いをたっぷりお見舞いするゾ!……てりゃ!」
そう言うと、しんのすけはイザ―クに飛び掛った。
そして、手に持った『ひろしの5日は洗っていないくつ下』をイザ―クの鼻に押し付けたのだった!
イザ―ク「ぎ、ぎゃあ―――!く、臭ェ!あまりに臭すぎて目に染みるッ―――!?
臭い!染みる!臭い!染みる!く、くさ…………がはッ(ばたっ)」
キラ 「し、失神した……? 君、なにしたの?」
しん 「これの臭いをかがせただけだゾ。」
シン 「それは……ぶっ!ひろしさんのくつ下じゃないか!ど、どこからそんなもんを……」
しん 「なぜかポッケに入ってたの。う~ん、オラのズボンってばまるで四○元ポケットだゾ♪」
イザ―ク 「……げ、げほッ!げほッ!」
ルナ 「あ、気がついた」
イザ―ク 「な、な、な……いきなり俺になにをするか!このキョシヌケがあ~~~~!!」
アスラン 「……ッ! お、お前……いまなんと言った?腰抜け……だと?」
ディアッカ「親衛隊の隊長に任命されてからというものの、そのセリフを一度たりとも言ったことがないはずだぜ!グレィトッ!」
イザ―ク 「それがどうしたと……む?いたた、頭が痛い!俺は今まで何をしてたんだ?
それに……アスランにディアッカ?なんでお前らがこんな汚い所にいる?」
アスラン 「ま、まさか! イザ―ク、目を見せてみろ!」
メイリン 「ど、どうしたんですか司令?!」
アスラン 「……め、目のぐるぐるが無くなっている。まさか、今ので洗脳が解けたってのか?!」
キラ 「す、すごい!君どんな手を使ったの?」
しん 「だからこれの臭いをかがせたんだって」
キラ 「これ?……く、臭ッ!なにこれ!新手のBC兵器?!」
ルナ 「ちょ、ちょっと!このままじゃ基地中にその臭いが広がっちゃうわ!
このビニール袋にそれを入れて!2重、いえ5重くらいにして……ふう。もう大丈夫かしら?」
アスラン「それにしても驚いたな。イザ―クの洗脳が本当に解けたかどうかは今しばらく検査をする必要があるが……
まさか洗脳がくつ下の臭いでなんとかなるとは。よほどすごい気付け効果があるみたいだなそれ」
しん 「うんうん。なにせオラの父ちゃんの足の臭さは宇宙一ですからなあ~~♪」
キラ 「ねえ君。このくつ下をしばらく貸してくれないかな?
この臭いを分析して生産することが出来れば、世界中の人達の洗脳を解くことができるかもしれない!」
シン 「うーむ、なんかいきなり凄いことになってきたな」
しん 「別にいいよ~」
キラ 「ありがとう。じゃあこれ2、3日借りるよ! 忙しくなってきたなあ~~~~♪」
シン 「……嬉しそうですね」
イザ―ク「……で、アスラン。どうなってるんだこれは? それになぜ俺は椅子に縛られているんだ?」
アスラン「ふふ。じっくり説明してやるさ……なにせ時間だけはたっぷりあるからな」
~そんで数日後~
シン 「ロン!ピンフ、イーぺーコードラドラ……満貫で逆転だな♪」
アスラン「ぐぐ……まさか南四局のオーラスで直撃を食らうとは!」
しん 「こっちでもズラのお兄さんはまーじゃん弱いゾ」
ルナ 「あ、あんた達……いくら暇だからって気を抜きすぎじゃないの?」
シン 「そんな事言っても、あとはキラさんの研究結果待ちだしなあ」
しん 「そうそう。アホウは寝て待て、というしね~」
メイリン「それを言うなら果報では?」
しん 「おお~そうともいう~~」
バンッ!
キラ 「出来た!出来たよ完成だ! 洗脳を完全に解除できるキラ・ヤマト特製気付け芳香剤!」
アスラン「やったかキラ!」
キラ 「他の捕虜に試して効果も確認済みさ!これで僕達の絶望的な戦いにようやく一筋の光明が!」
ルナ 「ううっ……志半ばで死んでいったみんな!ようやくあなた達の仇をとることが出来そうよ……ぐすっ」
しん 「うーん。臭いくつ下ひとつでこんなに喜んでくれるなんてねえ~?」
シン 「この場にもしひろしさん居たら、この事をどう思うのやら」
メイリン 「それで、これからどうします?地道に洗脳を解いて仲間を増やしていくんですか?」
アスラン 「いや、ちまちまやってたら帝国側がさらなる対策をとるかもしれん。
ここは一発、勝負をかけた方がいいと思う」
ディアッカ「具体的にはどうすんだ?」
イザ―ク 「それは俺が説明してやる。
俺の記憶によれば数日後、皇帝と各自治区の議長が秘密裏に集まって非公式に会議を開くそうだ。
そこを襲撃して皇帝を殺し、議長どもの洗脳を解けば……」
ルナ 「一気に形勢逆転ってわけね?」
アスラン 「俺達の……いや、この宇宙の存亡を賭けた戦いになりそうだな」
シン 「あ、あの!」
キラ 「ん?どうしたの?」
シン 「その作戦、俺も参加していいですか?」
アスラン 「別にかまわんが……命がけの戦いになるぞ?」
シン 「委細承知!」
しん 「んじゃオラもオラも~♪」
シン (この世界の俺がなにをトチ狂ったのかは知らんが……
皇帝とやらになった俺の不始末は俺自身の手でつける!
決戦だ!もうひとりの俺! このシン・アスカが今行ってやるぜッ!)
(続く)