それは日曜日の朝の出来事であった。
シン 「ぶッ―――――――!?な、なんだこりゃ!」
しん 「おおう!このお味噌汁、味噌のお味がもの凄いゾ」
むさえ 「こ、これ作ったの誰……?もしかしてみさえ姉?」
みさえ 「ち、違うわよ!今日のお味噌汁を作ったのは……」
ルナ 「……はい。それは私です……」
シン 「ル、ルナかこれ作ったの?これちゃんとダシ取ったのかよ?」
ルナ 「えッ!味噌汁って、お湯にお味噌入れればいいんじゃなかったの?」
シン 「んなわきゃないだろうが!まったく……
朝っぱらからお湯でとかした味噌を飲まされるとは思わなかったぜ」
ルナ 「う。で、でもしょうがないじゃない。初めて作ったんだし少しくらい失敗することだって……」
シン 「俺達に出す前に味見すればすぐ分かるだろ!このもの凄い味くらい!!」
ルナ 「ううっ……」
むさえ 「ま、まあまあシン君もそうルナちゃんを責めないで、ね?」
しん 「そうそう。これはこれでオツなお味だゾ~♪」
ひろし 「誰だって最初っから上手くやれるわけじゃないんだからさ。」
シン 「またみんなしてルナを庇って……でも俺はごめんだぜ!
いつもいつもルナが料理を憶えるたびに実験台にされるのはもうまっぴら」
ごい~~~ん!
シン 「痛ェ!?」
しん 「おお~ルナおねいさんの投げた魔法びんがシン兄ちゃんの頭にストラ~イク!だゾ」
ルナ 「う、うッさいわね!黙って聞いていれば自分で料理もしないくせに、言いたい放題いっちゃって……!
そんなに文句あるんなら私もう料理なんてやらない!……ふん!」
みさえ 「あっルナちゃん?どこへ……」
ルナ 「出掛けてきます!今日一日帰りませんから……じゃ!」
しん 「あ~あ。ルナおねいさん、怒って出て行っちゃったゾ」
ひろし 「まるで女房に逃げられたダメ亭主って感じだな」
しん 「シン兄ちゃん甲斐性なさすぎ~♪」
シン 「いてて……ル、ルナのやつめ~」
※ ※ ※
で、ここはメイリンの住んでいるアパート。
ルナはここに来るなり妹に不満をあらいざらい不満をブチまけた挙句、部屋に居座り本を読みつつ寝っころがっていたのだった。
メイリン 「……ねえお姉ちゃん、いつまでここに居るつもりなの~?」
ルナ 「んー?そうねえ……あんたんとこにあるMAJ○R全巻一気読みし終わるまで、かな。」
メイリン (てことは軽く4~5時間は私の部屋に居座るつもり?!)
ルナ 「かきーん!ゴロー打った~左中間ヒット~」
~1時間経過~
メイリン 「あ、そうだお姉ちゃん。そういえば前々から聞きたかったことがあるんだけど……いい?」
ルナ 「……なに?」
メイリン 「ずっと不思議に思ってたんだけど、お姉ちゃんとシンとの関係ってどうなってるの?」
ルナ 「どう、て?」
メイリン 「だって2人は恋人同士なんでしょ?それも一つ屋根の下で暮らしている」
ルナ 「恋人?こいびと、こいびと………
うーん。私とシンの関係はそーゆーのとはちょーっと違う、かな」
メイリン 「なにそれ?シンはお姉ちゃんの彼氏じゃないの?」
ルナ 「そこらへんはそうねえ……難しいところだわね。
実をいうと私ね、昔はシンのこと腕はたつけど子供みたいに我侭なヤツって思ってたわけよ。
でもね……あんたの脱走の件がきっかけでシンのこと初めて理解できたような気がしたの。
ああ、この人は他人のために本気で怒ったり泣いたりできる、
イザという時は命をも賭けることができる人なんだなーって。
ま、それで好きになっちゃったわけね……多分そこらへんはステラも同じなんじゃないかしら」
メイリン 「はあ」
ルナ 「でもね……そりゃあ、初めはシンとの彼氏彼女の関係をはっきりさせたいって思ったりもしたけど。
春日部で暮らしているうちにこう、シンと私の距離感がだんだん変わってきて……
いい感じに固定しちゃったかなー?って、そんな感じなわけなのよ」
メイリン 「う~お姉ちゃんの言ってることってイマイチよくわかんない。どゆこと?」
ルナ 「そうねえ……ま、例えるなら私とシンとの関係は、私とメイリンの関係のようなもの、かな」
メイリン 「わ、私とお姉ちゃん?」
ルナ 「家族、てことよ」
メイリン 「……家族?」
ルナ 「そ。家族だって時にはケンカするでしょ?でも、たいしたきっかけがなくても
いつの間にか仲直りできちゃう。それもまた家族……でしょ?」
メイリン 「そ、そりゃそうだけど……それと恋人云々にどういう関係が……」
ルナ 「ん、もう5時か。さてそろそろいいかな?じゃあ私野原家に帰るわ。じゃあね~♪」
メイリン 「え?あ、ち、ちょっとお姉ちゃ……もう!なんのために私の部屋に来たのようー!」
※ ※ ※
まあ、そのなんていうのかな。
ほら恋人どうしってのはちょっとしたことがきっかけでお互い気に入らなくなってすぐ別れたりするでしょ?
でも家族にはあまりそういうのってないじゃない。何故だかわかる?
ルナ 「ただいまー……ん?なんか騒がしいわね?」
それはね、家族には絆ってものがあるからよ。
だから時々お互いが気に入らなくなっても絆があるから最後は相手を許せちゃうわけ。
しん 「おお~これがシン兄ちゃんの作った料理の数々ですか♪」
むさえ 「あまり見栄えはよくないわねえ」
シン 「し、しょうがねーだろ!料理なんざアカデミーでサバイバルの教習受けたとき以来なんだから!……ん?」
ま、そこらへんの機微に私が気付けたのはしんちゃん達、野原家のみんなと一緒に暮らしてきたおかげなんだけど。
ともあれ私とシンはもう家族みたいなもの……だから別に今さら好きとか嫌いとかはっきりさせなくても、心が通じ合っていればそれで良いと思うわけよ。
わたしルナマリア・ホークとしては、ね。
ルナ 「ただいま。シン」
シン 「ルナ……ん、おかえり」
しん 「それでは。ルナおねいさんも帰ってきたことだし、
シン兄ちゃんお手製のお料理で晩ごはんといきますか~♪」
ルナ 「へえ?シンの……うわーなにこれ?ブッサイクな盛り付けねえ~?」
シン 「う、うるさい!」