SEED-クレしん_14-283

Last-modified: 2009-06-16 (火) 22:54:41
 

――――ここは……何処だ?
――――俺は……そっか、俺―――――

 
 

『狙い撃つぜぇええええっ!!』

 

『よう、お前ら……満足か?こんな世界で……俺は……やだね』

 
 

――――俺……死んだんだっけ……

 

――――トレミーは……?みんなはどうなった……?
――――スメラギさん……クリス……ラッセ……リヒティ……フェルト……すまねぇ……
――――アレルヤ……ティエリア……俺が居なくても……大丈夫だよな……
――――刹那……お前なら……お前ならきっと……世界を……

 

 スタ スタ スタ スタ スタ スタ スタ スタ

 

――――っと、お迎えが来やがったか……そういや死神ってどんな奴なんだろ?
――――死神じゃなくて美人な天使だったらいいんだがなぁ……フェルトに怒られちまうな、ハハッ……

 

 しかし、『彼』の前に現れたのは死神でもましてや天使でもなかった。それは――――

 

「よっ!」

 

――――……豚?

 

「だ れ が豚じゃいっ!?」

 

   ※   ※   ※

 

「……ったく! この私を豚呼ばわりするとは不届きにも程があるぞ貴様!!」

 

――――グチグチ五月蝿ぇ死神だな……あぁ嫌だ嫌だ

 

「って聞いてるのかコラ!?」

 

――――……オイ死神

 

「死神ではない!私は人呼んで救いのヒーロー『ぶりぶりざえもん』だ!!」

 

――――救いのヒーロー?(おかしな死神もいるもんだ……)

 

「そうとも。なんならお前を救ってやってもいいぞ、救い料は破格の一億ま――――

 

――――救いなんぞ乞わねぇ

 

「……何?」

 

――――よく聞け! 救いのヒーローだか何だか知らねぇが、テメェが死神だったら さっさと俺を地獄に連れて行きやがれ! 分かったか!!

 

「じ、地獄だと!? お前正気か!? 地獄へ落ちたら終わることが無い苦しみを味わうんだぞ!!」

 

――――もとより承知だ!

 

「考え直せ!今ならまだ間に合う! 救い料だって半額で(ガチャッ)ヒィッ!!」

 

――――駄賃はこの鉛玉でいいか?分かったらさっさと俺を――

 

「ハッハッハ、どうした若いの。相当荒んでおるようだが?」
「温泉ジジイ!」

 

――――何者だ爺さん?

 

「温泉好きのただのジジイさ。さて若いの、何故君はそんなに地獄へ行きたがる?」

 

――――それだけの罪を犯した。それだけだ

 

「ふ~む……聞かせてくれないかな? おぬしの罪とやらを」

 

 ・・・・・・・・・
 ・・・・・・
 ・・・

 

「成る程。戦争根絶を謳い、世界中にケンカを売って大勢殺したと……」

 

――――そうだ。だから俺はその咎を受ける。だから地獄へ……

 

「……それは逃げる事だと思わんか?」

 

――――何?

 

「地獄へ行けばそれはそれで償いとなろう。だが、殺された者達の無念はそんな事で晴れると思うかね? 君のはただの責任逃れだぞ?」

 

――――ッ!それは……

 

「……まぁ良かろう。付いて来なさい」

 

――――どこへだ?

 

「君が望む地獄の入り口さ」

 

   ※   ※   ※

 

『彼』は老人に導かれるまま足を進める

 

――――(この爺さん何者だ……?まさかこっちが死神……)

 

「そうそう、名乗りのが遅れたな。ワシは『温泉の精』だ」

 

――――あ、あぁ……(温泉の精霊? 変な爺さんだな)俺は――

 

「着いたぞ」

 

――――……ッ! なんだこりゃ!?

 

「ここが『地獄への入り口』さ」

 

 目の前に現れたのは巨大な穴。まさに地獄の入り口と言う名に相応しい……
 『彼』は穴の中を覗き込む。
 光さえも飲み込んでしまいそうなその穴に『彼』は血の気が引く……

 

「おいジジィ! ここって現s」
「(シッ!)この穴の底が、君の望んだ地獄だ。どうだ?嬉しいだろう」

 

――――おいおいマジかよ……で、どうすりゃいいんだ?

 

「簡単さ、飛び込むんだよ」

 

――――飛び込むって……そんな簡単に言うんじゃねぇ!

 

「どうした?まさか怖気付いたか?それとも地獄へ行きたいってのはウソかね?」
「フッ、情け無いヤツめ。貴様はそれでも股間に玉が付いているのか!?」

 

――――(パァンッ!)←発砲

 

「ぐわっ!!……き、貴様ぁ、死んだらどうするんだ!?」

 

――――(なんで生きてんだコイツ)

 

「……ところでどうするのかね?」

 

『彼』は無言のまま立ち尽くす

 

――――……何やってんだろな俺。ここに来てビビってやがると来たもんだ……
――――(スメラギさん……おやっさん……ラッセ……クリス……Drモレノ……リヒティ……フェルト……アレルヤ……ティエリア……刹那……後、頼んだぜ!!)

 

――――……行くとするか

 

「お、覚悟を決めなすったか」
「さぁ行け! 二度と来るんじゃねぇぞ!!」

 

――――ありがとよ

 

「達者でな!」

 

 そう言うと『彼』は穴の淵に立った

 

――――あ、そうそう、今更だけどまだ名前名乗って無かったな。俺は……

 
 

「その必要は無いよ……ニール・ディランディ君」

 
 

――――ッ!? ちょっと待て!!何で俺の(ズルッ)おわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………

 

 驚愕した『彼』は体制を崩しそのまま穴の中へと消えていった――――

 

 ・・・・・・・・・
 ・・・・・・
 ・・・

 

「……行ったか」
「おいジジィテメェ、あいつを地獄に行かせる気なんざ無かっただろ!?」
「はて、何の事やら」
「とぼけんな!! ここは『地獄の入り口』どころか『現世への戻り口』じゃねぇか!!」
「ウソは言っておらんぞ。『生きる』という事こそ、地獄の責め苦よりも何よりも辛いのさ」
「ケッ!何カッコ付けてやがる!」
「ハッハッハ、怒ってくれるなよ。これから天使ちゃん達と一緒に飲みに連れてってやるからさ」
「ヒャッホォウッ!!」
「……割り勘でな」
「なんだと~!」

 
 

(元気でな若造。お前さんはこれから、真の苦しみを味わう事になるだろう……『春日部』という地獄で)

 
 

 BGM:DAYBREAK'S BELL

 

   ※   ※   ※

 

――――あの爺さん俺の事知ってやがった……やっぱり死神……!?
――――しかし長ぇ!! いつまで続くんだこの穴は!? ホントに底あんのか!?

 

 と、ようやく一筋の光が見える

 

――――見えてきやがった……ヘッ、この期に及んでまだビビってやがる……情けねぇな俺は!
――――みんな……一足先に行ってるぜ!!!

 

 徐々に光が近付いてくる。長い長い闇を抜け、彼の目に飛び込んだのは――――――――

 

――――これは!?

 
 

目に映るのは青い空と白い雲と―――――広がる広大な都市

 
 

――――これが地獄なのか……?なんか拍子抜けだぞ……

 

 気分はまさにスカイダイビングだ。徐々に近付く眼下の都市に『彼』はふと、ある事に気が付いた……
 そう、ただのスカイダイビングとは決定的に違う、『ある事』に……

 

――――そういえば、どうやって着地すりゃいいんだ?

 

 無論、パラシュートなんて物は背負ってない

 

――――……

 
 

「うぅわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 
 

 絶叫を上げながら『彼』は急降下していった。

 
 

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