【その3】(作者:16代目スレ479氏)
時は7月7日。午後7時7分――
しん 「……だいぶ雲はきれてきたけど」
シン 「満点の夜空というにはまだ遠いなあ……」
クソ暑い中、男どもの決死の晴れ乞いにもかかわらず……空模様はいまひとつだった。
イザ―クたちが四川省の奥地で見つけた幻の黄金の笹、それに織姫愛用の機織り機であんだ短冊を吊るす。
あとこれに天の川が見れるほどの夜空が加われば、織姫と彦星が一年ぶりに(強制的に)再会させられる……はずであったが。
キラ彦 「ダメだあ……これじゃおら、織姫んとこに行けねえだよお」
アウル 「と、となると……ぜー、ぜー……の、残る手はひとつしかねえ、な……」
しん 「なにハァハァしてんの?」
シン 「変質者かお前は」
アウル 「このクソ暑い中、晴れ乞いの儀式とやらで炎のそばに踊りまくったんだ!汗だくで超疲れてンだよッ!」
キラ彦 「そ、そんで?残った手つーのは……?」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ…………!
マリュ―「あ~くえんじぇる☆及び天使湯、起動!」
ナタル 「アー区エンジェル公園前派出所……始動!」
2つの建物がトランスフォームしながら合体する……!
そう、今再び伝説の浮沈艦が蘇えろうとしていた!
キラ彦 「す、すげえべ……風呂屋が、風呂屋が空さ飛ぶだよ!」
ギル 「空飛ぶ風呂釜か……フローガマ……ローガマ…………アーガマ!?」
シン 「なんすかそれ?」
タリア 「Zガン○ムくらい見なさいシン」
しん 「非常識だゾ。シンにいちゃん」
ギル 「君にはがっかりだ」
シン 「な、なんだよう!俺そんなに悪いこと言ったか!?」
ともあれ天空に舞うアークエンジェル。
だが……妙にスピードが乗らない。上昇しようにもパワーが足りないようだ
マリュ―「エンジン出力が上がらないわよ! エンジンルームなにやってるの?」
ミハエル『か、勝手なこと言ってんじゃねーよ! なんなんだよこれ!聞いてねえぞ!』
ヨハン 『天使湯がレーザー核融合炉だというのは聞いていたが……
なぜ私たちが放射能防護服を着て、スコップで直接ウラン燃料をエンジンに放り込まなければならないのだ?』
マリュ―「経費削減したらそうなっただけですけど。それがなにか?」
ミハエル『な、なにかって……昔の蒸気機関車じゃあるまいし!こんな仕事だなんて聞いてねーぞ!』
ヨハン 『私が前に学んだレーザー核融合炉とはだいぶ構造が違うような……』
マリュ―『お給料はちゃんと払ってるんだから、その分きっちり働いてもらいます。
とにかくこのままじゃ雲の上に出られないから、一生懸命エンジンの出力あげてね?じゃ♪』
ミハエル「じゃっておま………ちきしょ!一放的に通信切りやがった!」
ヨハン 「仕方あるまい。こうなったら口を動かすより手を動かせ」
ミハエル「なあ兄ィ……俺たち、ある日突然血を吐いて死んだりしないよな?」
ヨハン 「まあギャグスレだから大丈夫だろう」
ナタル 「……エンジン出力は依然25%。発進だけで精一杯という感じですね」
マリュー「うーん。経費をケチりすぎたかしら?」
シン 『……ブリッジ応答を………マリューさん聞こえますか?』
マリュ―「シン君?」
シン 『どうもこのままじゃ埒があかないんで、ここからデスティニーで飛んでみます。彦星としんちゃんと俺とで』
マリュ―「いけそう?」
シン 『こう見えても主人公ですからね。やってみせますよ』
マリュー「わかったわ……カタパルトひらけ! デスティニー発進!」
シン 「シン・アスカ!」
しん 「野原しんのすけ~♪」
キラ彦 「え?お、おら……おらは……」
「デスティニー!いきますッ!」
※ ※ ※
アークエンジェルの甲板から。一気に雲の上へ上昇するデスティニー……
雲の上は天の川が見える満点の夜空が広がっていた。
シン 「……さて。これで彦星のいう3つの条件がすべて揃ったわけだけど……」
しん 「織姫さまはどこにいんの?」
キラ彦 「おっかしいな。先に来ててもいいはずだべが……」
その時!あらぬ方向からなんかいきなりビームげなものが飛んできたッ
長年培われたカンでなんとか気づき、ギリギリでかわすシン。
シン 「な、なんだ!?」
しん 「あっ!見てあれ……」
しんのすけが指差す方向を見ると……そこにはGNスナイパーライフルを構えたデュナメスの姿が。
織ラクス『……今さらここへなにしにきただ』
シン (この人もカッぺ言葉なのか……)
キラ彦 「お、織姫か?す…すまね!今までのことは悪かったと思ってるだ!だから許してくんろ、
もう2度とこすぷれ写真とか撮らないからよ~~~!」
織ラクス『ほー。その言葉に……偽りはねえべか?』
キラ彦 「ねえべ!今度こそおら心を入れ替えるべ!」
織ラクス『そう……なら許してもいいかもしんねえな』
キラ彦 「ほ、ほんとか?」
シン 「うわ~……彦星がペコペコ織姫に頭下げてるよ」
しん 「でも意外とすんなり丸く収まりそうだゾ」
織ラクス『なら今までの事は水に流すべ。今までの事だけは…………な!』
今度は至近距離でGNビームピストルを撃ってきた。またしてもすんでの所でかわすシン。
キラ彦 「なッ?」
シン 「い、いきなりなんだよッ!?」
織ラクス『おめ……昨日から今日の夜まで、どこでなにしてた?』
キラ彦 「うッ!?」
しん 「どゆこと?」
織ラクス『あ~くえんじぇる☆……つったか?
おめそこで女給の尻をカメラ片手に追いかけまわしていたぞうでねっか……?』
キラ彦 「あ、いや、それはその」
織ラクス『しらばっくれんでね!この事はぜーんぶネーナとかいう娘っ子に聞いただ!』
シン 「そんな事してたのか? あ、あんたは一体なんなんだ――――!」
キラ彦 「いや……すっげえめんこい被写体がいたもんでよ、つい夢中になっちまって……」
織ラクス『もうええ!おめさ殺しておらも死ぬ!
もうこうなったら七夕もクソもねえ!
これで綺麗さっぱり後腐れなくなるべッ!』
キラ彦 「ひ、ひえええええ!?」
シン 「……もういい。操縦席譲るからあとは当人同士で好きにしてくれ」
しん 「いやあ~面白くなってきたゾ~♪ネネちゃんがここにいたら大喜び間違いなしですな♪」
※ ※ ※
こうして天の川をバックにデスティニーとデュナメスの攻防戦……というか追いかけっこが始まった。
織姫が殺気丸出しで彦星を追う構図だ。
キラ彦 「ど、どうすればええべ?織姫のやつ本気で殺しにきてるだよ~~!」
シン 「まーなんとかなるんじゃないっすか?
いくらデュナメスたって現在太陽炉を積んでいない不完全状態だし……」
しん 「エネルギー切れるまで逃げ回ればいいんじゃない?」
織ラクス『おめ達!おらを甘くみるでね!ふんッ!』
突如デュナメスが赤い光に包まれた!これは……
シン 「お…おいおい!あれってもしかして噂のトランザムか……? んな馬鹿な!太陽炉がないのにッ」
織ラクス『こうみえてもおらは神のはしくれだ!神に不可能はねえっぺ!』
シン 「そんな無茶苦茶な!」
キラ彦 「……なら仕方ねえ。こっちも本気になるしかないべ」
しん 「本気?」
ピキ―ンッ!
シン 「種割れ!?」
キラ彦 「向こうが超性能でくるならこっちは超集中力だ。一撃食らわせてあのロボットを動けなくしてやるべ!」
しん 「お~彦ちゃん、やる気になった?」
織ラクス『いいでしょう牽牛。こい!おらが直々に叩きのめしてやるだ!』
キラ彦 「いくべ織姫……!」
シン 「彦星と織姫がMSで戦う……?今年はなんて七夕だッ!?」
キラ彦 「いくぞォォォォォッ!」
織ラクス「はあああああああッ!」
…………3分後。
アークエンジェルの甲板上に叩きつけられてるデスティニーと、デスティニーの顔を足蹴にライフル突きつけてる織姫のデュナメスの姿が。
織ラクス『……最後になんか言うことある?』
キラ彦 「すいませんごめんなさいもうしませんので許してくださいお願いします」
シン 「考えてみりゃ……織姫の体であるラクスさんも種割れできるんだっけ」
しん 「プラス向こうの怒りは凄まじいと」
シン 「こっちに勝てる要素がなにもねーじゃん……たく、主人公なのに格好悪いったらないなあ」
織ラクス「…………ま、いいですわ。久しぶりに暴れられてすっきりしましたし」
キラ彦 「え……?じ、じゃあ」
織ラクス「許してあげますわ。ほら今年はどこへデートに行くの?でずにーらんど?
それともレインボーブリッジの夜景でも見に行く?」
キラ彦 「あ、ああ。今年はでずにーしーに行こかと思ってんだけどよ」
織ラクス「じゃあさっそく行きましょ!私たちの時間は限られているんだからほら、はやくはやく!」
シン 「あの……」
キラ彦 「あ、おめたち世話になっただな。おかげで女房とよりを戻せただよ」
織ラクス「すいませんでしたね。私たちの夫婦喧嘩に巻き込んでしまって……」
しん 「まあオラは楽しかったからいいけど~」
シン 「俺は疲れたよ……来年もまた来たりとかしないでくれよな」
織ラクス「ほほほほほ。
まあお礼といってはなんですけれど、黄金の笹に願い事を書いた短冊を吊るしてくださいな」
キラ彦 「まあ……できる範囲でかなえてやるからよ」
しん 「ほんと?」
キラ彦 「神様は嘘つかねえべ」
シン 「コスプレ狂のくせに……」
織ラクス「それでは……みなさんによろしく言っといてくださいませ」
キラ彦 「んじゃあなー」
シン 「…………行ったか」
しん 「お、すぐそこにぐーすか居眠りこいてるキラにいちゃんとラクスおねいさんが」
シン 「借りてた体は無事に返すってとこか。さて……みんなにこの顛末をどう説明したらよいものかなあ」
こうして彦星と織姫の夫婦喧嘩はなんかうやむやの内に終結した。
その後はみんなで笹に短冊吊して七夕を楽しんだのであった。
(つづくゾ)