SEED-IF_笑う仮面の英雄氏_第01話

Last-modified: 2008-02-26 (火) 15:37:59

 PHASE-01「ヘリオポリスを壊したものの……」

 

「ミゲルがこれを持って帰ってくれて助かったよ。
(中略)
 捕獲できぬとなれば今ここで破壊する、戦艦もな。 侮らずにかかれ!」

 

 ヴェサリウスの作戦会議室、彼の部下であるパイロットとヴェサリウス艦長らが揃って先程の戦闘の録画を見ていた。
 彼はラウ=ル=クルーゼ、ザフトでネビュラ勲章を授与されるエースパイロットとして名を知られるクルーゼ隊の指揮官である。
 彼らは今連合のMSが密かに作られているというオーブのコロニー、ヘリオポリスに侵攻して5機中4機をパクって来た。
 だが自分の機体が損傷した為、ちょっと機嫌が悪かった。

 

「ミゲル、オロールは直ちに出撃準備! D装備の許可が出ている、今度こそ完全に息の根を止めてやれ!」
「あ、ちょいまち、ミゲルはやっぱ出撃禁止」
「えぇぇっ!? 何故ですかクルーゼ隊長!」
「ナチュラルに機体を殺られる奴は自室で反省していろ」

 

 アデス艦長の台詞を遮ってクルーゼはミゲルの出撃を――自分の機体の損傷は棚に上げて――制する……八つ当たりだ。

 

「クルーゼ隊長、D装備なんて要塞攻略戦でもやるつもりなのですか?」
「そんなことしてヘリオポリスが崩壊しては……」
「私に考えがある、今は何も聞かずに指示に従ってくれ」

 

 もちろん考えなど無い、いや、ヘリオポリスを破壊する気は満々だ。
 どうせ人類など近いうちに絶滅させるのだ、遅かれ早かれ死ぬに代わりは無い。
 彼は壮年だったアル=ダ=フラガのクローンである。
 一般的に一つの細胞の分裂回数には限界があり、それを司るのがテロメアという構造で、細胞分裂の度に短くなり分裂できなくなると細胞は死ぬ。
 クローンである彼のテロメアはオリジナルであるアルより短い、と遺伝子工学の権威である友人、ギルバート=デュランダルから聞いていた。
 そう、彼は生み出された時点で短い寿命を定められていたのである。
 実際顔には老化のような皺が深く刻まれ、仮面をかぶることでそれを隠し、細胞分裂を抑える薬物を常用しているのだ。
 アルから失敗作として扱われ、常人より短い寿命、こうして虚無主義で唯我独尊になった彼は、自分が死ぬ前に人類絶滅を誓ったのだ。
 ……それってただの逆恨み?

 

「接近する熱源2、熱紋パターン、ジンです!」
「なんてこった! 拠点攻撃用の重爆撃装備だ! あんなもんをここで使う気かっ!?」
『うん』

 

 どっか~~~ん

 

「ヘリオポリスが…壊れた……どゔぢで………」
「こうまで簡単に……脆いとは……」

 

 キラやムゥが唖然とするのも無理が無いって感じにヘリオポリスはあっという間に崩壊した。
 コロニーのメインシャフトが壊れたらコリオリの力とかスクイーズ現象とかでそりゃァもうあっけなく。

 

「このような事態になろうとは……いかがされます? 中立国のコロニーを破壊したとなれば、評議会も……」
「地球軍の新型兵器を製造していたコロニーの、どこが中立だ?」
「しかし……」
「私に考えがあるといった筈だ……それに血のバレンタインの悲劇に比べれば大した事は無い、議長もそう仰るだろう」

 
 

「妻と娘の墓標、落として焼かねば世界は変わらぬ!」
「ちょっ、それ2~3年早くね!?」
「やかましい、俺のケツを舐めろ!」

 

 日本刀を装備したジン・ハイマニューバがメビウスを切り裂く、MAではMSには勝てないのだ。
 デブリベルトを哨戒中の連合軍が見たのは、どっかの歌姫が乗ったミネルバを短くしたような民間船……ではなく、落下するユニウス7だった。
 その後サトー率いるザフトから独立した部隊から全地球圏に向けて声明が発表された……ユニウス7を地球へ落し、ナチュラルの粛清を図ると。
 破片とはいえあまりにも巨大なユニウス7、その質量を止めることは動き出してしまった以上そりゃァもう不可能。
 ありったけの連合の宇宙軍が招集され、落下阻止に向けて行動を開始するが、MSに阻まれて取り付くこともできやしない。
 ついでに貫けそうな陽電子破城砲を持つ艦はサイレントランにかこつけて通信を無視しし、味方との合流を優先した。
 っていうかぶっちゃけあんな所に行くの怖いし、とは巨乳艦長の談。 ガンダムの東西を問わず巨乳艦長は無能なのです。

 

「これは、愚かなるナチュラルに対して落されるメギドの炎である!!」
「阻止限界点まであと10分!!」

 

 テロ成功を確信するサトー隊の狂気の歓声と、阻止限界点が近いと絶叫する連合のオペ娘の絶叫がハーモニーを奏でる。
 今頃キラは巨大なデンドロパックを装着して「間に合え~間に合え~」と呟いてるに違いない。 嘘だけど。
 長距離からの艦砲射撃程度ではビクともせず、核兵器はNJにより使えない、接近してドリルを打ち込もうにもMSに阻まれる。
 進退窮まりもはやこれまで、地球は核(兵器で破壊されたコロニーの残骸)の炎に包まれようとしていた。
 ……が、その時。
 デブリベルトを蹴散らすように移動してきた巨大な影、それは崩壊したヘリオポリスについていた資源採掘小惑星とヘリオポリスの残骸。
 崩壊の影響で安定軌道を離れて暴走した残骸は、神の悪戯か悪魔の偽善か阻止限界点ギリギリを通過中のユニウス7との衝突コースにあった。

 

「なんとーーーーーっ!?」
「今だ、全機出撃! テロリスト共を制圧しろ!!」

 

 音の無い空間で、各自が思わず頭の中で擬音を奏でてしまう程見事に2つの塊は衝突し、お互いに方向を変えた。
 動揺するサトー隊にプラントからの勅命を受けたクルーゼ隊が突入する、ジンやシグーに混じってGAT達も戦い、程なくサトー隊は全機逮捕された。
 エースパイロットの大群とPS装甲付きのMSに乗った赤服じゃ勝てっこ無いよね。
 実はクルーゼ隊はサイレントランで逃げる足付きを追尾しようとし、向かう方向にヘリオポリスの残骸が進むのでこれに隠れていた。
 ところが移動中にユニウス7落下の報を聞き、なんとなく計算してみたらこれが衝突コースにあると知ってびっくり!
 サトー隊の暴挙を察知していたクルーゼ隊長はヘリオポリスを破壊することで未曾有の天災を阻止する為に、一人で事前に策を講じていたのだ!
 もちろん偶然だが、クルーゼはまるで自分が計算していたように振る舞い、部下もみなそう信じ込んだ……あまりにも自信たっぷりだったので。
 追悼の下見でその辺にいたラクスはこの戦いを見ており、その知略と勇敢さを全世界に伝えたのだ。
 ちなみにミゲルも生き残り、修理の終わった専用機で終戦まで『魔弾の射手』という名前を恐怖と共に連合兵士の心に刻むことになる。
 ヘリオポリスからの戦いを振り返り、後に赤服を着た彼はこう語っている。
『あの時は自分も相当焦っていました、出撃したら戦死していたかもしれない……隊長はそれを知って出撃を止めてくれたのです。
 あのおかげで冷静に、そして用心深くなれました、クルーゼ隊長には本当に感謝しています』

 

 こうしてクルーゼはテロリストのユニウス7落しを阻止し、地上の数多くの人間を救った。
 ある研究によれば、ユニウス7落下の被害はNJ投下で弱っていた地上は残された人口の5割が死亡したであろうと予測された。
 これが発表された時、地上の市民はクルーゼのその卓越した先を見越した作戦に感心し、そして命を救われたことに感謝した。
 連合の軍人も『敵ながら一般人の無用な死者を出さぬ為に戦った事は賞賛に値する』と褒め称え、連合の各国首脳陣からも感謝された。
 プラントからも自国民の無謀なテロ活動を最小限の戦力で防ぎ、プラントの名誉を護ったとして新たな勲章が与えられるらしい。
 唯一自国のコロニーを破壊されたオーブは遺憾の意を表したが、市民に被害は無く、ユニウス7落下阻止には他に方法が無かったこと。
 そして中立を表明しながら連合MS製造していたことを指摘されると、ウズミ代表を表面上更迭して沈黙せざるを得なかった。
 こうしてクルーゼの栄光の履歴に、地球と地上の民を救った英雄であることが記されたのである……VIVELA、Creuset!

 

「……あれ~~~~~~ぇ!?」

 
 
 

】【

 
 
 

【あとがき】
94 笑う仮面の英雄 sage 2008/02/14(木) 11:21:44 ID:???
ドラえもんの秘密道具『よい子バンド』並に、何をしてもいいことになってしまうクルーゼを突発的に書いてみた
後悔はしていない
好評だったら続きを書くかも

 

【レス】
95 通常の名無しさんの3倍 sage 2008/02/14(木) 13:00:00 ID:???
余りの強引さに漢を感じたw、続きもこの調子で頑張って欲しい!

でも割を食ったウズミがちょっとかわいそうw
という事でこんなフォローはいかが?

一見ただ一人損したかに見えたウズミ、しかしそこは我らがクルーゼ抜かりはない
この一件により多忙であったウズミに娘カガリを徹底的に鍛えなおす余裕が生まれたのだ
それが後のオーブ国民にとってどれだけ役に立ったかは言うまでもない…

こんな感じで

「お父様の鬼ぃぃぃぃ」

あれ?、今度はカガリが救われてない気が…

 

96 通常の名無しさんの3倍 sage 2008/02/14(木) 16:11:19 ID:???
ちょっとジェットコースター的な展開だけど、クルーゼはやってることが裏目に出てる感じがでて良いですね。

 

100 通常の名無しさんの3倍 sage 2008/02/14(木) 17:48:55 ID:???
アナベル・サトー…、いや何でもない