SEED-IF_4-5氏_22

Last-modified: 2008-08-07 (木) 18:01:00

「では、こちらからもちょっと頼みがある。ギナ、ロウを呼んでくれ」
「ふん」
「なんだ? 機嫌悪いな」
「ふふふ。凄腕の傭兵に殺されそうになった所を、今から呼ぶロウ・ギュール――ジャンク屋に助けられてな。それ以来懲りたのか、一人で出撃する事がなくなったわ」
「ああ! それで!」
「おう、この人か?」
ギナが人を一人連れて帰ってきた。
「ああ、ロウ、こいつがユウナ・ロマ・セイランだ」
「やあ、よろしく!」
ロウは手を出す。
「よろしく。で、頼み事とは?」
「いやぁ、俺ちょっと火星に行ってたんだけども、やっと地球ってとこで、一緒に火星から来た奴にモビルスーツをぱくられちゃって!」
「そりゃ、災難だったねぇ」
「で、火星から地球に使節団が来てるはずなんだわ。オーブにも寄るはずだから、待たせてもらおうかと思って」
「もう、来て、すれ違いかもよ?」
「それでも、情報は手に入る……実は、ぱくったのは使節団の一員じゃないんだけどさ。なんか手がかりがないかと思って」
「おーけー!」

 
 

オーブ――
『発進は定刻通り。各艦員は最終チェックを急いで下さい。砲術B班は第三兵装バンクへ。コンディションイエロー発令。パイロットはブリーフィングルームへ集合して下さい』

 

「やれやれ、せっかくオーブが中立守ったってのに、出航かぁ。もう少し居たかったな、この国」
マユは天井を見上げる。
「しかたがない。時間がたてばカーペンタリアの地球軍がこちらへやってくる」
レイが答える。
「ま、そうなんだけどね」
マユとレイが会話している間、ルナマリアはモニターから外を眺めていた。
「やっぱり名残惜しいかい?」
ショーンがルナマリアに話しかけた。
「名残惜しい……かなぁ。複雑です」
「まぁ、帰る所がある奴はいい」
「……あ……」
ショーンの故郷はユニウス7だった。
「ああ、気にするな。もう、吹っ切れてる」
さばさばした声でショーンは言った。
「カーペンタリアまで、頑張ろうぜ!」
「ええ!」
ショーンは去っていった。
「ショーンは……強いな」
ルナマリアはつぶやいた。
「あたしも……頑張らなきゃ」

 

「FCSコンタクト。パワーバスオンライン。ゲート開放」
発進準備を進めるアーサーの声を確かめて、タリアは命令する。
「前進微速。ミネルバ発進する!」
「前進微速。ミネルバ発進!」

 

オーブ軍本部――
「ミネルバ出港しました」
オペレーターがウナトに報告する。
「かなりの高速艦と言う事だからな。領海を出るのも直ぐだろう。地球軍の様子はどうか」
「哨戒艇の報告から、もう領海の近くまで来ているものと」
「こちらの配備は終わっているな」
「はい」
「ふん、さあて、どうなる事かな?」
ウナトは、ザフトの最新鋭艦たるミネルバが情けない戦いを見せた場合、プラントを見限るつもりでいた。
もっとも、ミネルバがあぶなくなった時に、ウナトが示唆した行動をとった場合、裏切るつもりは無かったが。
もしそうなった場合、オーブはミネルバを手に入れる事ができる。地球軍はミネルバを無力化できる。ミネルバの乗員は身の安全を得られる。誰も損をする者がいない様にウナトは配慮したのだ。

 

「間もなくオーブ領海を抜けます」
「降下作戦はどうなってるのかしらね。カーペンタリアとの連絡は? まだ取れない? シン?」
「はい。呼び出しはずっと続けているんですが」
「本艦前方20に多数の熱紋反応」
「ぇ!?」
「これは……地球軍艦隊です。ステングラー級1、ダニロフ級2、他にも数隻ほどの中小艦艇を確認。本艦前方左右に展開しています」
「ええぇッ!」
「想定の範囲内よ。驚かないの、アーサー。地球軍の足は速かったようね」
「後方オーブ領海線にオーブ艦隊」
「え!?」
「展開中です。……? 先頭艦がえらく突出しています」
「先頭艦……? そう」
タリアは微笑んだ。
「オーブ艦隊はとりあえず気にしなくていいわ。コンディションレッド発令。ブリッジ遮蔽。対艦、対モビルスーツ戦闘用意。大気圏内戦闘よアーサー。解ってるわね」
「は、はい!」
「コンディションレッド発令。コンディションレッド発令。パイロットは搭乗機にて待機せよ」
「艦長、タリア・グラディスよりミネルバ全クルーへ」
タリアは全クルーに通達する。
「現在本艦の前面には空母1隻を含む地球軍艦隊が展開中である。地球軍は本艦の出港を知り、網を張っていたと思われる。本艦はなんとしてもこれを突破しなければならない。このミネルバクルーとしての誇りを持ち、最後まで諦めない各員の奮闘を期待する」
「ランチャー2、ランチャー7、全門パルシファル装填。シウス、トリスタン、イゾルデ起動!」
「ルナマリアには発進後あまり艦から離れるなと言って。レイとマユは甲板から上空のモビルスーツを狙撃」
「はい」
「イゾルデとトリスタンは左舷の巡洋艦に火力を集中。左を突破する!」
「はい!」

 

『カタパルト推力正常。針路クリアー。セイバー発進どうぞ!』
「ルナマリア・ホーク、セイバー、出るわよ!」
「ザク、レイ・ザ・バレル機発進スタンバイ。全システムオンライン。発進シークエンスを開始します。マユ・アスカ機発進スタンバイ。ウィザードはブレイズを装備します』
「海に落ちるなよ、マユ。落ちても拾ってはやれない」
「意地悪ね」

 

レイとマユ、ショーンとゲイルは上甲板に上がって対空砲火を作り出す。
セイバーはダイブ&ズームで襲って来る地球軍モビルスーツを翻弄する。
「このままなら、いける! ……あ、あれは!?」」

 

それはミネルバからも確認された。空母から何かが、発進してくる。
「アンノウン接近。これは……」
「ん?」
「光学映像出ます」
「なんだあれは!?」
「モビルアーマー……」
タリアはそのモビルアーマーの凶悪な人相に息を呑んだ。
「あんなにデカい…!」
「あんなのに取り付かれたら終わりだわ。アーサー、タンホイザー起動。あれと共に左前方の艦隊を薙ぎ払う」
「ええー!?」
「沈みたいの!?」
「ぁはいー! ぃいえッ! タンホイザー起動! 射線軸コントロール移行! 照準、敵モビルアーマー!」
アーサーは、ごくっと息を呑むと言った。
「てぇ!」

 

盛大に水煙が上がる。そしてそれが晴れると……
「「あぁ…」」
「あぁ……タンホイザーを……そんな……跳ね返した?」
「取り舵20、機関最大、トリスタン照準、左舷敵戦艦」
タリアが一瞬の呆然から立ち直ると指示を出す。
「でも艦長! どうするんです? あれ……」
「貴方も考えなさい!マリク、回避任せる」
「はい!」
「シン、ルナマリアは? 戻れる?」
「ぁはい」

 

「させない!」
地球軍のモビルアーマーがミネルバを狙おうとする。
ルナマリアは上空から逆落としに射撃する。
――!
何かに弾かれる。モビルアーマーのビーム砲が、上空を狙う。
「くぅぅ、相手がこいつだけならどうにでもできるのに!」
スラスターを吹かしてモビルアーマーを振り切り、上昇すると、ミネルバに接近する地球軍のモビルスーツを追い散らす。

 

「あ、艦長!」
「なに、シン?」
「通信です!」
「どこから? 出して」
『……ミネルバ聞こえるか?』
ミネルバの状況とは打って変って落ち着いた声が答える。
「聞こえるわ。貴方は誰? こっちは忙しいのよ?」
『こちらはザフトのアスラン・ザラ。貴艦への着艦許可を求む』
「ええー!」
「アスラン・ザラ!? 残念だけどその暇はないわ。本艦はオーブ近海で地球軍と戦闘中よ」
『なんだと!?』
相手の声に初めて驚きが走る。
『位置を知らせろ! 加勢する』
「シン、位置を知らせてやりなさい」
「ぁはい」
「艦長!?」
「アーサー、今は一機でも援護が欲しいの」
「は、はい!」

 

「……アスランが?」
ルナマルアは驚く。
その時上空から何かが急降下してきて、地球軍のモビルスーツを撃破する。
――アスラン・ザラのインパルスであった。

 

「――! アスラン! 地球軍のモビルスーツの相手、頼めますか?」
「ルナマリアか! わかった!」
「艦長、敵空母を狙ってタンホイザーを撃ってください!」
「どう言う事?」
「いいから早く!」
「わかったわ。アーサー、タンホイザー起動!」
「はい、タンホイザー起動。照準、敵空母!」

 

再び、あのモビルアーマーが空母を守るようにミネルバとの間に入る。
そして上面をミネルバに向ける。
「やっぱり!」
ルナマリアはすばやくモビルアーマーの後方に回り込むとビーム砲を連射! そして急上昇!
後ろで、弱点の下腹をやられて爆散していくモビルアーマーが見えた。

 

「やった!」
「やったか!」
「タンホイザー、てぇ!」
タンホイザーのビームが空母に伸びる!
水煙が止んだ時、空母は消滅していた。

 

「ふふふ。ざまあ見ろ!」
ルナマリアは急降下し、地球軍の戦闘艦のブリッジにビーム砲を叩き込む。叩き込む。
地球軍のモビルスーツはアスランのインパルスに牽制されている。
ルナマリアは軒並み地球軍艦艇のブリッジを潰すと、次に戦闘艦の砲塔、ミサイル発射管を狙う。とうとう、沈み始める艦が出る。
地球軍は、撤退を開始した。

 

「ザク全機、収容完了。セイバー、インパルス、帰投しました」
「もうこれ以上の追撃はないと考えたいところだけど、判らないわね。パイロットは兎に角休ませて。アーサー、艦の被害状況の把握急いでね」
「はい!」
「ふぅ。ああ、それから、状況が聞きたいわ。アスラン・ザラ、連れてきて頂戴」
「はっ」
「ダメージコントロール、各セクションは速やかに状況を報告せよ」
「第4後方バンクに……」
「でもこうして切り抜けられたのは間違いなくルナマリアのおかげね」
「ええ、おお、信じられませんよ! あのモビルアーマーにタンホイザーを防がれた時は終わりかと思いました!」
「でもあれがセイバー……と言うかあの子の力なのね」
「え?」
「何故レイではなく、ルナマリアにあの機体が預けられたのかずっと、ちょっと不思議だったけど。まさかここまで解ってったってことなのかしら。デュランダル議長は……」
「かもしれませんね。議長はDNA解析の専門家でもいらっしゃいますから」

 

「ルナー!」
「ん?」
「あはは、おーい!」
シンはモビルスーツから降りた。
「よくやったな」
「お疲れさん」
「すげーなおい」
整備員が、声をかけてくる
「聞いたぜーこのー。すっげー活躍だったんだって?」
ヴィーノが抱きついてくる。
「いやーほんとよくやってくれたー」
ルナマリアは人垣の中からある人の顔を捜す。
人垣の向こうで、レイが微笑んだ。ルナマリアは顔をほころばせた。

 
 
 

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