SEED-IF_4-5氏_34

Last-modified: 2008-11-06 (木) 18:02:08

「キラ! 私を出せ! 私を出したらオーブ軍は止まるかもしれない!」
カガリが怒鳴る。さっき飲んだ栄養ドリンクのおかげで元気いっぱいだ。
「うん!」
キラもうなづく。
「わたくしは反対ですわ」
ラクスが言う。
こいつは……いつもの言葉と反対の言葉を言う。
見抜かれてる、こいつにだけは……。
こいつは表面の顔と違う、もっと恐ろしい者だ。こいつがキラを立て、仲間を操り……
カガリは、偽ラクスの画像を見るラクスの、冷たい憎しみのこもった表情を見てしまった事があった。カガリだけが知っているラクスの一面かも知れない。いや、バルトフェルド隊長はさすがに知っているだろうか。それにノイマンもあやしい。
カガリの背中に冷や汗が吹き出る。
「なんでだよ、いいじゃないか?」
気安そうにカガリはラクスの肩に手をかける。心の中は恐怖に震えながら。背中に冷や汗をかきながら。
「そうだよ! なんでさ!」
キラが不服そうに言う。
「だって、まだカガリさんは……」
ラクスがしまったと言うように口を閉ざす。
「なに?」
キラが不思議そうにラクスに尋ねる。
「……」
ラクスは無言でキラから目をそらす。
「いいだろう? カガリが出ればオーブ軍は止まるかも知れないんだ。大丈夫。カガリは僕が守る!」
ラクスはバルトフェルドの方を見る。彼は、どうしようもないと言うように肩をすくめる。
「……キラが、そう言うのでしたら」
不承不承、ラクスはカガリが出撃する事を受け入れる。
キラ、感謝だ! 全てが終わってお前が生きていたら必ず救ってやる! 最高の病院に入れて最高の医者をつけてやるからな!
カガリは心の中でキラに手を合わせた。

 
 

「さぁて、始まったぞぅ」
バルトフェルドが楽しげな口調で言った。
「ええ、始まってしまったわ」
マリューが気遣わしげに答える。
「だが、奴らには我々など、大して眼中に入っていない。奴らの関心はすべて地球軍とオーブ軍。言葉で何か言っても意に介さないだろう。ならば我々がする事は、言葉で何か言う事ではない。最高のタイミングで、横合いから思い切り殴りつける!」

 
 

「ええい、なんだ、この数は!」
セイバーとインパルスそれぞれに10機程度のムラサメが張り付き、かわるがわる攻撃する。
反撃しようとすると、後ろに別の敵機が付き、断念する事しばしば。
群れて戦うナチュラルの戦法である。
セイバーとインパルスは大量の敵機に翻弄される。
その隙に残りの一隊がミネルバ以外の艦艇に次々に攻撃を成功させていく。

 

「タンホイザー、軸線よろし」
「よし! 起動! 照準、敵護衛艦群!」
「は!」
「タンホイザー起動。照準、敵護衛艦群。プライマリ兵装バンクコンタクト。出力定格。セーフティ解除」

 
 

ミネルバの陽電子砲が発射体勢に入るのはタケミカズチからも見て取れた。
「敵艦、陽電子砲発射態勢!」
「ぁ……」
「回避! 面舵20!」
トダカは叫んだ。

 
 

「てぇ!」
アーサーが叫んだ時、何かがミネルバの陽電子砲を貫いた。
爆発が起こる。
「「うわぁ!!」」
「ん?」
「何?」

 

「何よ? 何処から! なに……?」
天上から下りてくるモビルスーツがあった。
「あぁ……フリーダム!? キラ!?」
アスランは思わず声を上げた。

 

「タンホイザー被弾! FCSダウンしました!」
「消火急げ! FCS再起動! ダメージコントロール班待機! 着水する! 総員衝撃に備えよ!」

 

そして、そのモビルスーツの後方から姿を現したあの艦は……

 

「あれは……アークエンジェル!?」
アスランは再び声を上げた。

 

アークエンジェルから、一機のモビルスーツが発進する。

 

『私は、オーブ連合首長国代表、カガリ・ユラ・アスハ! オーブ軍は軍を退け!』

 

「え!?」
「ええ!?」
ユウナ達は驚きの声を上げる。

 
 

「カガリ!?」
そしてアスランも、また。

 
 

『オーブ軍! タケミカズチに着艦する。用意しろ!』
その声が響くと、そのモビルスーツはタケミカズチに向かってまっすぐやってくる。
フリーダムは一瞬、慌てたような、後を追うような動きを見せるが、止まる。
「げ、迎撃を!」
アマギが叫ぶ。
「待て!」
ユウナが止める。
あれはカガリの声だ!
皆が呆然としている間に、そのモビルスーツはタケミカズチに着艦してしまう。

 

「カ、カガリ様!?」
そのモビルスーツから降りてきた人物を見ると甲板要員は驚きの声を上げた。
「そうだ。すぐブリッジに行く。案内しろ!」
「は、はいっ」

 
 

「艦長……あの……」
アーサーがタリアに恐る恐る伺いを立てる。
「いいからちょっと待って。本艦は今一番不利なのよ?」
「ぁぁぁ……」
「まったく……何がどうなってるんだか…まさか、このままオーブが退くなんて事は……」
「艦長。動きがあったらこっちも出ますよ?いいですね?」
待機しているハイネが言った。
「ええ、お願い」

 
 

『ユウナ・ロマ・セイラン』
また、ネオからの通信が入る。
『これはどういうことです?』
「あ……ぁ……いやこれは……」
『あれは何です? 本当に貴国の代表ですか?』
ユウナは心を立て直すと言った。
「現在確認中です。ではまた!」
その時、カガリがブリッジに入ってきた。
「ユウナ!」
「カガリ!」
「話は後だ! すぐモビルスーツを戻せ! アークエンジェルの奴らは実力を持ってこの戦闘を止めようとしている! 被害が出ない内に早く!」
「わかった」
ユウナは答えた。
「トダカ。モビルスーツ隊を退かせろ」
「し、しかし……」
「いいから」
オーブ軍のモビルスーツは撤退していく。
『ユウナ・ロマ・セイラン』
また、ネオから通信があった。
『これは、どう言う事だ』
少し怒りの篭った声がする。
「いや、ロアノーク大佐。先程のはアークエンジェルに拉致されていた我が国の代表です」
『ならば、何故攻撃を止めた?』
「アークエンジェルが、この戦闘を実力を持って止めようとしているそうです。被害の出ない内に退いたまで」
『ほう……お国もとをも含めて色々と面倒なことになりそうですが?』
「同盟国からの忠告です。被害の出ない内に、この場は退いた方がいい」
その時カガリが横から通信機を取った。
「とにかくモビルスーツは出撃させるな! 砲撃はしてもいい!」
『ふざけるな! この事は必ず問題にさせてもらう!』
通話は切れた。

 

地球軍艦艇からモビルスーツが発艦していく。
「よーし! 奇妙な乱入で混乱したが幸い状況はこちらに有利だ! オーブ軍などいらん! ザフト軍を打ち破れ!」
ネオが指令を出す。

 
 

「アーサー! 迎撃!」
「は、はい!」
「シン! モビルスーツ全機発進させて」
「はい!」

 

「ハイネ・ヴェステンフルス、グフ、行くぜ!」
「マユ・アスカ、ザク、行きます!」
「レイ・ザ・バレル、ザク、発進する!」

 
 

「ユウナ、いいのか? もしオーブが再び焼かれるような事になれば……」
「心配するなよカガリ。今の国際情勢で、地球連合はオーブを敵に出来っこないさ。それに国元には彼ら、『青風会』や『紺碧会』が……いやなんでもない」
「そ、そうか」
父よ、貴方は偉かった――!
改めてユウナは父ウナトに尊敬の念を新たにする。
ユーラシアと大西洋連邦を混乱に陥れ、この国際情勢を作り出したのは父上だ。いざと言う時、オーブの生きる道を広げるために……。そして灰田さんと言う得体の知れない、だがすごい力を持つ人物とも知り合い……。
「しかし、このままならねぇ、カガリ。オーブの国際的信頼は地に落ちるな」
ユウナはカガリに助言した。
「あ、砲撃なら、砲撃ならやってもいい! 砲撃なら、多分大丈夫だ。被害は出ないだろう。砲撃の場合は進路を妨害して邪魔するとか言ってた」
「ん? そうかい? じゃ、砲撃再開だ。トダカ。地球軍を援護してやれ。盛大にな」
「はっ。砲撃開始!」

 
 

「行くぞ!」
スウェンは号令をかける。スウェンはストライクノワール改、他の者はスローターダガー改だ。
「はいよ」
「了解!」
「あの赤い戦闘機型のは厄介だ。後回しにするぞ!」

 
 

「10時の方向よりミサイル8!」
「回避! 取り舵10!」
「うぅ……」
「トリスタン、てぇ!」

 
 

ザフト側に不利な戦いが続く。
「クラミズハとイワサコを前に出せ! 二隻一気に追い込むんだ!」

 
 
 

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