SEED-IF_SEED DESTINY “M”_第1話

Last-modified: 2009-02-26 (木) 04:11:30

 C.E.71…………

 

 宇宙往還の設備、マスドライバーを、新たに、かつ早急に確保する必要性に迫られた地球連合は、その為に既存の施設を持つ海洋国家オーブに侵攻した。
 この突然の連合軍侵攻に対し、オーブの動きは緩慢だった。
 『他国に攻め込まず、他国に攻め込ませず、他国の侵略に介入せず』のオーブの理念は、なんら生かされていなかった。
 中立国を詠うならば精強でなければならないはずの軍は、実戦に際して混乱しており、情報系統は錯綜し、本来の存在意義である“オーブの国土、およびオーブ国民の生命と財産の保護”にはなんら寄与していない、場当たり的な戦闘を 起こしているだけだった。否、それでもまだ、連合軍部隊に立ち向かっている部隊はマシな方だったのである。
 連合軍の侵略対象は、主にマスドライバー施設のあるカグヤ島だったが、軍需工場の集まるオノゴロ島にも攻撃は及んだ。
 スラスターによる跳躍で次々とカグヤ島に乗り入れるストライクダガー、それを阻止しようと激しく射撃するM1アストレイ。艦砲射撃を受けるオノゴロ島。
 その両島では、戦場と化した真っ只中を、まだ避難民の脱出が、しかも装甲も持たない徴用民間船で行われていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
 その一家、4人家族も、火事場から焼け出されるように、避難船のいる港湾へと向かって走っていた。
「マユ、しっかり!」
「う、うん」
 母親に手を繋がれ、少女は脚をもつれさせかけながら走った。
 反対側の手には、ピンク色の、手のひらサイズの物体。
 それが、脚にあわせて振られていた手から、ポロッと零れ落ちた。
「あっ、マユの携帯!」
 ピンク色の携帯電話は、少し離れた、斜面の木の根元に引っかかって止まった。
 とたんに、少女は脚を止めてしまい、その方向を振り返る。
「そんなのいいから! 早く来なさい!」
「でもぉ! マユの大切な携帯なの!」
 無理やり引っ張ろうとする母親、その手を振り解こうとする少女。すると、一緒に連れ合っていた少年、少女の兄が、2人を掻き分けるようにして飛び出した。
「俺が取ってくる」
「シン!」
 少年は身軽に斜面の木の根までたどり着くと、引っかかっていた携帯電話を拾い、斜面を跳ね返るように登った。
「ほら、マユ」
 手を伸ばし、携帯電話を差し出す少年。受け取ろうと手を伸ばす少女。その間の光景に、青と白の目立つ色に包まれたそれは、割り込んできた。
 次の刹那────
 少女の視界を光が、全身を熱と衝撃が包んだ。

 

「う、うう……うう……っ」
 頭がぼうっとする、記憶が少し飛んだような感覚を受ける、右腕が熱い。頭が、痛い。
 顔を上げる。まず飛び込んできたのは、ピンク色の携帯電話。それを握っている手。
 ────あれ、でもどうしてあの手はあそこにあるんだろう?
 あやふやな思考でそんなことを考える。だが、それに続く光景を見たとき、意識に衝撃が走った。
 一緒にその携帯電話を握るようにして、そのまま斃れている────少年。
 混乱しつつ辺りを見回すように振り返る。
 さらに視界に飛び込んでくる、変わり果てた姿の父母。
「う……あ……ぁぁっ……」
 脳細胞を、神経のシナプスを焼け爛れさせるかのような激情が、奔流となって全身を駆け巡る。
「おい、まだ生存者がいるぞー!」
「大丈夫か……って、うっ……」
 駆けつけた、オーブ軍制服の男たちが駆け寄ってくる。そして、その異様な光景に思わず一瞬、立ちすくんだ。
 まだ幼い少女が、右腕を千切られている。にもかかわらず、少女は泣き叫ぶどころか、仁王立ちになり、その姿に似合わない、しかし強い気迫を感じさせる雄叫びを上げていた。
「うあぁぁぁぁっ……ああああぁぁぁっ!!!!」
 ────マユ・アスカ。9歳。
 父母、そして兄を失った彼女は、その歳、姿からは信じられない程の、激しい怒りの炎を、かすかに紫がかった瞳にたたえていた。

 
 
 

機動戦士ガンダムSEED DESTINY “M”
 PHASE-01

 
 

 Oct・2・C.E.73
 プラント、アーモリー1。工廠地区。
 すでに第一線を退き、保安部隊用に使用されているモビルスーツ、ジンが、メタリックのボディに装飾を受けて、歩いている。
 そのうちの1機が、道路を走行している軍用オフローダーと接触しかけた。
「きゃっ」
 オフローダーの方が急ハンドルでジンをかわす。助手席に乗っていた少女が、反射的にダッシュボードに縋り付き悲鳴を上げた。
「ん、もう! 安全確認義務違反、再講習6時間だぞ」
 助手席の少女、マユ・アスカは、接触しかけつつすれ違ったジンを振り返り、憤ったような表情で、そうしつつもおどけた様にそう言った。
 指差す右手には、肘より上まで届く、白い長手袋をはめている。
「ははっ、厳しいな、マユは」
 隣の運転席で、ステアリングを握るヴィーノ・デュプレは、苦笑して、からかい気味にそう言った。
「あ、ヴィーノお兄ちゃん、私の事馬鹿にしてる?」
「いえいえ、そんなことありませんよ、ザフト・レッド様」
 これまた茶化すように、ヴィーノはそう言った。
 2人とも、マユは淡い緑のキャミソールに黄色のミニスカート、ヴィーノは緑色のシャツにグレーのコットンパンツという私服姿だが、この内部にいる以上、当然ZAFT軍組織の一員だった。
 マユはプラントに渡った後、数ヶ月の講習を受け、教育検定で飛び級を判断され、ZAFT軍事アカデミーに進学。
 入学後も驚異的な成績を示し、特にMSパイロットとして類稀なる才覚を持つとされ、教練課程を修了。
 その際、成績優秀者に送られる上級隊員としての証、ザフト・レッドを贈呈された。
 とは言え、マユはまだZAFT正規部隊の規定年齢に達していない。したがってザフト・レッドも、名誉称号としてであり、その年の卒業者に贈られたザフト・レッドの規定人数の中には、マユは含まれていない。
「そんな意地悪な言い方しなくたっていいじゃない」
 マユは助手席でむくれながら、不満げにそう言った。
「悪い悪い」
 ヴィーノはニタニタ笑いながら、軽口をたたく。
「でも、ミネルバも明日には竣工、ヴィーノお兄ちゃんたちとはしばらくお別れかぁ」
 ヴィーノは整備要員だったが、MS教練隊では教練用のMSを共用する“お隣さん”同士だった。
 加えて、同じく教練隊でマユと共に訓練を受けたチームも、新たに就役する大形MS搭載戦闘艦『ミネルバ』の搭乗員として配属される予定だった。マユだけが、非実戦部隊の教練隊付として残ることになる。
「就役後は月軌道艦隊って言われてるけど、それでも戻ってこれるのは1ヶ月以上は先だな」
 ヴィーノは薄い笑みで、ステアリングを握りつつそう言った。
「今日はせいぜい大騒ぎしなきゃね」
 マユは笑顔になって、そう言った。
 オフローダーは工廠地区を出て、官舎街に隣接する商店街で、一旦路肩に寄せた。
 助手席から、マユが軽やかに飛び降りる。
「それじゃ、俺、ヨウランやゲイル達拾ってくるから」
「うん、また後でね」
 ヴィーノはステアリングとシフトレバーに手をかけたままマユに言う。マユは返事をすると、踵を返して商店街に向かおうとする。

 

その時。

 

 ドンッ
「きゃっ」
 マユは衝撃を受けて後ろに弾き飛ばされ、車体に背中を打って、その場に尻餅をついた。
「あいたた……」
 背中を右手で擦るようにしながら、マユは顔を上げる。
 そこに、ぶつかってきた相手が見えた。
 金髪の緩い癖のついた髪をショートカットにした、自分と同年代くらいの少女。
「おーい、ステラ、何やってんだ、おいてっちまうぞ」
 彼女の連れか、2人組みの若い男性──1人は少年といっても差し支えない年恰好──が、少し離れたところから、声を発している。
「あ、うん」
 ステラ、と呼ばれた少女は、短く返事をすると、すっと立ち上がり、マユに一瞥もくれずに、たたたっと走り去ってしまった。
「あ、ちょ、ちょっと……」
 マユが慌てて手を伸ばし、声をかけようとするが、すでに相手の後姿は離れている。ステラは振り返りもせずに、残りの2人と合流し、歩いていってしまった。
「なんだ、あいつら」
 少し憤ったような表情で、オープンの運転席から一部始終を見ていたヴィーノが不満げ 言う。
 手を伸ばしたまま、呆気に取られていたマユだったが、立ち上がろうとして、それに気づいた。
「あれ?」
 マユの足元に、鉄の棒のようなものが落ちている。
 マユはかがんで手を伸ばし、それを拾い上げた。
「あの人の落し物かな」
 マユはそう言って、探るようにその鉄の棒らしきものを撫でた。
 すると、棒の様に見えたそれは1点で止められた複数の板状のもので、開くことが出来た。
「なんだい、そりゃ」
 ヴィーノが覗き込んでくる。
「鉄の……扇子?」
 マユは扇子というものの存在は知っていた。だが、一切が金属で出来たそれを見るのははじめてだった。
 マユや、ましてやヴィーノが知る由もないが、それは鉄扇と呼ばれ、れっきとした武器のひとつだ。
 たためば寸鉄として打撃に、広げれば刃として切りつけることが出来る。
 もっともそれほど実用性が高いわけではなく、A.D.前半期の日本の武人の、装飾具のようなものだった。
「あの、ステラって人が落としたのかな?」
 マユはステラ達が歩き去った方を見て、呟くように言った。
「あんな人にぶつかっといて謝りもしない連中のもん、ほっときゃ良いって。でなきゃ貰っちまえ」
 呆れた様子で、ヴィーノはそう言った。
「そういうわけには行かないって。後で届けておかなきゃ」
 そう言って、マユは鉄扇をポケットに差し込んだ。
「それよりヴィーノお兄ちゃん、いいの? ゲイルお姉ちゃん、遅れると怖いんじゃない?」
「わ、そうだった」
 マユが言うと、ヴィーノはオフローダーのインパネに据えられたクロノグラフを覗き込み、げっと驚いたようにすると、慌ててシフトレバーを入れた。
「それじゃ、30分後にここで!」
 ヴィーノはそういいながら、車を発車させる。
 マユはそれを見送ってから、自分も商店街に向かって歩き出した。

 
 

 一方。
 ステラ・ルーシェは、同行者のスティング・オークレー、アウル・ニーダと共に、マユ達とすれ違うように、徒歩でZAFTの工廠地区にたどり着いていた。
 軍用オフローダーが出迎えるように走ってきた。運転席に乗っていたZAFTの制服を着た男は、最年長の青年、スティングがカードのようなものを見せると、黙って頷いた。
 そして、3人にオフローダーに乗り込むように指示する。
「? どうした? ステラ」
 そこで、スティングはステラが落ち着かなさそうに、上着のポケットを探っている事に気づいた。
「ないの、あれ……」
 ステラが、仕種を止めずに答える。
「あー、あの変な団扇みたいなやつか」
 少年、アウルが軽口を聞くように言う。
「どこかに落としたのか?」
 スティングは子供を諭すような口調で、ステラに訊ねる。
「解らない……」
 ステラは首を左右に振った。
「いまさらしょうがないっしょ、予定通り行かないと、ネオに怒られるぞ」
 アウルは肩を竦めつつ、そう言った。
「うん……」
 ステラは後ろ髪を引かれるような様子で、頷いた。
「早く乗ってください。歩哨に怪しまれます」
 運転席の男が、3人を急かす。
「行くぞ、ステラ」
「うん」
 スティングが促し、ステラもしぶしぶと、車に乗り込んだ。

 
 

「さて、ゲイルお姉ちゃんにお仕置きされてるのかな?」
 一度工廠地区に戻ったマユは、軍用の腕時計を見ながら、工廠地区内のヴィーノ達との待ち合わせ場所に立っていた。
 私服姿から、ザフト・レッドの制服に着替えている。
 待ち人来たらず。ボーッと立ち尽くして、きょろきょろとあわただしい周囲を見回す。
「あれ……」
 ふと、きらきらと鮮やかに金髪が視界に入り、視線をそちらに向けた。
「あれ、ステラさん?」
 その姿を確認して、思わず声に出してしまう。
 制服のズボンのポケットを探る。忙しさにかまけてまだ届けていなかった鉄扇が、尻ポケットに入っているの確認すると、マユは迷わず駆け出した。
「おーい、ステラさーんっ、ちょっと待ってよー」
 マユは声を張り上げるが、MSや車両の上げる音で聞こえないのか、ステラ達は振り返ることもなく、建物の影に入ってしまった。
「はぁ、はぁ……見失っちゃったか……」
 ステラ達を見失った場所まで走ってきてから、辺りを見回す。
「?」
 そこで、MSのハンガーのひとつが、扉が開けっ放しになっていることに気がついた。
「どーして、この扉、開けっ放しなの?」
 マユは怪訝に思いつつ、ハンガーの中を覗く。
 そこには、鉛色をしたMSが3体、収納されていた。
 PS装甲の待機状態。そして、特徴的なツインアイの頭部。
 その存在だけは知っていた。ZAFTが開発中の新型モビルスーツ3機。
「…………」
 マユは立ち尽くす。
 自然と脳裏に浮かんだのは、青と白のモビルスーツ。
 同じく青緑色を基調にしたMS、カラミティと、乱闘を繰り広げる。
 ──足元には避難民。無辜の市民のはずだった。
 その中に、自分達もいる。
 携帯電話が手から零れ落ちる。我が侭を言う自分。拾いに行くと言って土手を駆け下りた兄。
 閃光。
 衝撃。
 熱。
 次に視界に写ったのは、引き千切られた自分の右腕。それに向かってピンク色の携帯電話を差し出したまま斃れた兄の姿。やはり斃れている両親。

 

 ────もし、あの時自分があんな我が侭を言わなければ……

 

 マユはぶんぶんと、激しく首を左右に振って、フラッシュバックする記憶を振り払った。
「こんなことしている場合じゃなかった」
 自分に言い聞かせるように呟く。
「そうすると、あの3人はメーカーのテストパイロットか何かなのかな?」
 誰に聞かせるわけでもなく呟き、小首をかしげた。
 それならば、軍服を着ているわけでもないのに、軍の工廠施設にいるのも説明がつく。
 そう考えながら、MSのコクピットに伸びるキャットウォークへと、階段を上がった。
「ステラさーん、いないのー?」
キョロキョロと見回しながら、2機のMSの前を通過し、マユが入ってきた方から一番奥のMSのコクピットの前まで来たとき。
タタタタタタ……
突如、発砲音が聞こえてきた。
「えっ?」
音源の方を振り返る。コントロールルームの方だった。
詳細はわからないが、尋常ではないことが起こっている事は理解できた。 マユは様子を伺いながら、MSの影に身を潜める。
「丸腰……」  
反射的に腰のホルスターに手を伸ばして、拳銃を携行していなかったことに気付き、後悔する。
何か武器になるように物はないかと、着衣を探ると、尻ポケットに固い感触を見つけた。
「何もないよりはマシかな……」
それをポケットから取り出し、握り締める。
様子を伺おうと、目の前のMSの胸によじ登る。
発砲音は聞こえなくなったが、見下ろすと、ZAFTの整備員や歩哨が、血にまみれて斃れているのが見えた。
そして、キャットウォークに通じる階段を、カンカンと登ってくる音が響いた。
並べられている2機のMSに、誰かが取り付いたのが見えた。より詳しく伺おうと、身を乗り出す。
 と、その時。
 ゆらりと、マユが乗っているMSが揺れた。誰かがコクピットを開けようとしたのだ。
「わっ、え、ちょっと……きゃっ」
 バランスを崩し、手を滑らせ、マユは頭部からまっ逆さまに、キャットウォークめがけて落ちる。
 ごいーん♪
 かなり良い音が響いたが、マユが激突したのは硬いキャットウォークの床ではなかった。
「あいたたたたた……」
 よろけながら立ち上がり、激突した何かを振り返る。
 まだちかちかとする視界の中に、人が倒れていた。
「って、え? ステラさん!?」
 マユは、斃れているステラに驚いて声を出した。
 しかし、直後に、さらに驚愕する事態が起きる。
 並べられていた、他の2機のMSが起動した。VPS装甲が鮮やかに染まり、ツインアイに光が点る。

 

 そして。

 

 突然、その2機は腕を振るい、武器を使って、ハンガーを破壊し始めたのである。
「ちょっ、ど、どうなってるの!?」
 キャットウォークが、目の前から先がぐにゃりと曲がって、あらぬ方向に分断されている。マユは身構えつつ、困惑の声を出した。
 マユの困惑をあざ笑うかのように、2機はハンガーの壁が破壊されると、そこから覗く向かいのハンガーに向かって、発砲し、破壊しつくそうとする。
「いったい……なにやってんのよ!?」
 わけが解らなかったが、とにかく事態を収拾させなければならないと感じた。その為には、目の前の2機を停止させなければならない。
 自分の近くには、MSが1機。
「ステラさん、ごめんね」
 とにかく、生身のままでは危ないと、ステラを担いでコクピットに入り込む。気絶したままの相手に謝罪の言葉を口にしながら、なるべく身体が動かないようにデッドスペースへ押込んだ。
「私に、扱えるかな……?」
 シートに腰を下ろし、メインコンソールと向かい合う。疑わしそうに呟きつつ、起動スイッチを入れる。
 メインディスプレィに、OSの起動画面が表示された。

 

 Generation
 Un subdued
 Nuclear power source
 Drive
 Assault
 Module
 COMPLEX

 

「設定デフォルトか……動かないよりマシってだけだね」
 憔悴した顔で、呟く。

 

 ZGMF-X88S GAIA

 

「ガイア……」
 表示された機種名を、マユは口に出して呟いた。
 VPS装甲が起動し、全身が黒に近い灰色をベースにした色に染まる。
『おい、ステラ、何をもたもたやってんだよ』
 通信用ディスプレィに、自分よりわずかに年上くらいの少年の顔が映し出された。ステラといっしょにいた少年だ。
『早くしないと、ネオに怒られちまうぜ』
『あまり急かすなアウル。全部が資料通りとは限らないんだ』
 別のもう1機から、さらにやや年上の青年の顔が映し出された。こちらも、先程ステラといっしょにいた男の1人だ。
 ────奪う? ZAFTの新型MSを奪って……
 マユは、視線を横に走らせ、その視界にステラを捉えた。
「まさか、ステラさん達はテロリスト?」
 怪訝そうに眉を寄せ、息を呑む。
 だが、それも一瞬のこと。
『おいステラ、早くしろってば』
 緊張感のない表情で、アウルと呼ばれた少年が言う。
 その口調に、無性に頭に血が上った。
 OSの画面を確認する。武器は────
「これかっ」
 通信と外部スピーカーの両方をONにし、叫ぶ。
『いい加減にしろぉっ!!』
 ヴァジュラ・ビームサーベルを抜き、ガイアに構えさせる。
『げっ!?』
『何!?』
 アウルが間抜けな声を出す。もう1人の強奪犯も驚愕の声を上げた。
 マユは腹の底からわきあがってきたそれを声に出し、叫ぶ。

 

「そんなに戦争がしたいの? アナタたちはっ!!」