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SRW-SEED_660氏_ディバインSEED DESTINY_番外編01話

Last-modified: 2014-01-03 (金) 00:12:14
 

ディバインSEED DESTINY
IF-01 シンがドS星の王子になっちまったら編

 
 

【注意】
 本編との時系列に若干の誤差がありますがあまり気になさらずにお楽しみください。
 シンがソフトSになり、また、セツコはなんかMっぽいよね、という主観に基づいた、ちょっとえっちいお話です。
 勢いで描いたのでいろいろと荒い所が目立ちます。
 タイトルにドSとありますが、そこまでではなく、某人気投票二位の彼とも違います。
 多分全年齢板でも大丈夫だよねー、的な表現だと個人的には思いますが、エロはいらね、と言う方は以下の文章に目を通さず、スルーしてくださいまし。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 オノゴロ島の軍事施設内は、軍関係者のみならずモルゲンレーテ社の社員が利用する関係もあって、福利厚生施設などが充実している。
 地上に出れば大規模な繁華街やショッピングモールもあるが、場合によっては施設から出る事が出来ない事が往々にしてあるし、地上に出て車や足を使うよりは時間もかからない。それに割引も利いているからずっと安く買い物もできる。
 だから時間の無いものやわざわざ外にまで足を運ぶ気にならないものは、基地内の施設で買い物や食事を済ませるものが多い。
 DC総帥親衛隊ラストバタリオン特殊任務部隊クライ・ウルブズに出向中の戦技研究班グローリースター所属、セツコ・オハラ少尉も本日は基地に出店しているカフェで、スイーツを楽しんでいた。
 背の半ばほどまで伸びる黒髪は、基地の廊下を照らす真白い電子照明に煌びやかに輝いている。その髪のひと房に触れれば、触った事のないものでも極上の絹糸の様だと評価するだろう。
 すぅっと自然に目を引くような黒い髪には天使の輪が浮かびあがり、さらさらと流れる様は思わず伸びる手を抑えるのに多大な労力を必要とするだろう。
 白蝋の様な滑らかな肌は、闇夜の中でもぼんやりと輝く白雪の様に美しい。厳しく自己を律する黒を基調とした軍服に、凝肌は良く映えている。
 触れる、眺める、舐める、齧る、およそあらゆる欲求を雄に呼び起こさせる淫らさと、性の穢れを知らぬ純真な乙女の清廉さとが同居した不可思議な魅力がある。
 きつい筈の軍服の布地を大きく押し上げ、両手に余りそうなほど豊満な乳房、きゅっと華奢に見えるほど締まった腰と、そこからまろやかに伸びる尻と女性として完成された肉体。
 男なら吸い寄せられた視線を引き剥がすのに後ろ髪を引かれる肉体と、あどけない子供みたいに喜びの光を浮かべている星色の瞳とがアンバランスな魅力を醸し出している。
 誰に聞いても美人と言われるだけの若々しい美貌の持主たるセツコが、銀のトレイの上にストロベリーサンデーとソフトクリームを乗せて、気まじめ過ぎるのかあまり浮かべる事のない無邪気な笑顔を浮かべている様子は、見ていて微笑ましいほどであった。
 しかし、私室に戻って食べようと誰の目も気にせずに楽しもうという考え――以前、パフェを夢中になって楽しんでいる様子を、デンゼルに目撃されて恥ずかしかった――がセツコの注意力を散漫にしていた。それが、事件につながったのである。
 かすかに漂う甘い匂いに早く食べたいな、とセツコが浮き立つような気持ちで歩いていると、曲がり角でどん、と誰かにぶつかってしまう。ほとんどセツコと変わらぬ背丈の人影は、セツコと同じくクライ・ウルブズ所属のシン・アスカだった。
 寝癖をほとんど直さないようで、すっかり見慣れた癖っ毛とちょっと小生意気で、聞かん気の強い子供っぽい光の浮かぶ瞳と、同年代の少年としてはやや小柄な体躯とあいまって、十六歳と言う実年齢に対して幾分幼く見える。
 そのシンの軍服の胸板をべっとりとソフトクリームが汚している。シンは無言で胸元を汚すソフトクリームを見つめている。普段なら、ぶつかってきたセツコの方を心配する様なシンなのに、無言のままなのがセツコは少し気になった。
 ミニ丈のフレアスカートのポケットからハンカチを取り出して、慌ててシンの胸元を拭う。へたにソフトクリームが広がらないように丁寧にハンカチで拭いている間も、シンは無言だった。

 

「シン君、ごめんね」
「……いいですよ。これ位は」
「え、う、うん……」

 

 聞き慣れた年頃の少年らしいシンの声とは思えぬ、こちらの心の後ろめたい部分を見透かして、言外に何でも知っているぞ、すべてお見通しだと脅しているような、抗えぬ何かを感じさせる声。
 我知らず、セツコは小さく肩を震わせた。目の前にいるのが本当に自分の知るシン・アスカなのか、セツコには分からなくなる。
 もともと新兵上がりのセツコは生来の気弱な性格も手伝って、前大戦時からDCの最前線で戦い続け、軍内部でDC最強のパイロットの一人として目されるシンに対して、どこか遠慮した態度で接していた。
 そんな態度でシンに接してしまうのは、自分が軍人と言う職業に向いているだろうか、と日々自問している事も影響しているだろう。
 シン自身は自分の事をそれほど大それた存在とは考えていないようで、年上なんだからそんなに気にしなくていいですよ、ときさくな調子でセツコに接してくれているのだが、セツコはまだその一歩を踏めずにいた。
 それでもシンの明るい瞳や態度は同年代の友人に恵まれなかったセツコには、好ましく思えたし、シンといつも一緒にいるステラやエウレカ達と接せられる事もセツコには嬉しい経験だった。
 だが、今のシンの瞳はどうだろう。いつもは宝石みたいにキラキラと輝いているシンの瞳が、どろりと濁った光を宿している。心の奥底で何か、得体の知れないどろどろとした暗い情念がセツコを飲み込んでしまおうと渦巻いているような、冷たい悪意に満ちた瞳。
 セツコの頭の中で、危ない、逃げなきゃ、と叫ぶ声と魅入られたように呆然とする声がする。甘い香りに誘われて食虫花に溶かされながら食われる虫や、蜘蛛の巣に掛かり、その牙に掛かる時を待つしかない哀れな蝶もまた、同じような事を考えるのだろうか。

 

「落ちない。ご、ごめんね、シン君」
「……」

 

 まただ。氷の彫像に見つめられているようにセツコの背筋に震えが走る。どくん、と心臓の鼓動が強くなるのを感じる。全身を巡る血流に濃厚な酒精が混じっているかのように体の細胞一つ一つが熱を帯びている。
 自分の知らないシンを前に心はどこか恐怖を覚えているのに、体は心を裏切って不可思議な反応を見せていた。解離する心と体の反応に、セツコは自分がどうすればいいのか分からなくなっていた。
 シンの胸元からハンカチを握っていた自分の右手を放して、ポケットにハンカチを仕舞い込む。その間も、ハンカチをしまった後もシンは無言を維持し、セツコに沈黙の圧力をかけてくる。その男を知らぬ体に、心に。
 気づけば、セツコの唇は動いていた。なにか、知ってはならぬ背徳の果実の味を求める様な期待感が、胸の奥で疼いていた。蛇にそそのかされた最初の人間が、禁じられた果実をもぎ取った時、きっと今のセツコと同じ背徳感に胸を震わせていたのだろう。

 

「シン君、私の部屋、来ない? その、制服を汚したままだと悪いし、タオルとか、拭くものが足りないから」
「……そんなに気にしなくていいって、言っているでしょう?」

 

 冷たい瞳が、感情を排した声が、セツコの耳から目からするすると忍び込み、甘く惑わせる。ゆるりと昂らせる。確実に狂わせる。
 薄い花びらで形作った様に可憐なセツコの唇は、幽かに震えていた。熱にうなされた病人の様に、夜の闇の中に迷い込んだ夢遊病者の様に、魔女の宴に誘われた無垢な生贄の様に。セツコは、果たしでいずれか? そして、シンは熱病か、夢か、魔女か?

 

「シン、君……私の部屋に、来て」
「“来て”? どうしてもって、セツコさんが言うんなら行きますけど?」

 

 シンの瞳が告げる。来て欲しいのなら、なんて言えばいいか、分かるな? と。シンの瞳の中に赤く染められて映るセツコは、震える唇でどこか陶然と呟いて答える。さながら血の海に沈んだ生贄の処女のよう。

 

「来て……ください」

 

 セツコの目にゆっくりと、そしてはっきりと吊り上がるシンの唇が動いた。どこにでもいる少年の笑みではなく、自分の掌に内に翼を痛めた小鳥が舞い降りた事を喜ぶ笑みだった。
 ただし、自分の手の中に舞い降りた小鳥を慈しむのではなく、自分の手で羽をむしり、痛んだ翼も無事な翼も折り、足をもいでから、嘴を砕いて、小さな首を捻るのを楽しみにしている残酷な性根の持ち主だけが浮かべる笑み。

 

 セツコの部屋は、持主の性格を表す様に綺麗に整頓されていて女性らしい飾りっ気もなく、生活感には乏しい。濡らしたタオルでシンの胸元を拭う。力を込め過ぎない様に気をつけながら、どこか怯えたままセツコは腕を動かす。
 タオル地が制服に擦れる、しゅ、しゅ、という布擦れの音だけがセツコの部屋の中に響き渡る。二人は、セツコの使っているベッドの上に座っている。

 

 しゅ、しゅ、しゅ。

 

 セツコはシンの瞳を見る事が恐ろしく、顔を伏せたまま腕を動かす。シンは不気味なまでの沈黙を守ったまま。

 

 しゅ、しゅ、しゅ、しゅ、しゅ…………。

 

 これが巨大なMSを動かすパイロットの腕なのかと、信じられないくらいにか細いセツコの手首をシンの手が掴み止めた。シンの手も、意外にほっそりとした指をしている。
 しかし、数年間激烈な剣の修業に明け暮れた掌は潰れた豆やタコで覆われていて、意外な逞しさと硬さに、セツコはまるで手錠でも掛けられた様な感覚を覚えていた。だが、シン自身はほとんど力を加えていない。
 セツコの細腕でも簡単に振り払える程度の力に過ぎない。だというのに、セツコが手錠や枷を嵌められているように払う事が出来ないのは、セツコ自身が払う事を拒絶しているからだ。
 心の中でシンの手を払わないと、そう警告する自分の声をセツコは遠く聞いていた。シンの赤い赤い瞳が、セツコの瞳を見つめる。視線がそのままセツコの瞳を貫いて、脳髄を刺し貫くような感覚。びりり、と背筋を走った電流が全身に伝播して体を痺れさせる。

 

「服は、もう、いいですから」

 

 一語一語、噛み千切る様にシンは言う。セツコは黙ってシンの言葉に耳を傾ける。シンの言葉と視線はまるで麻薬の様にセツコの体を弛緩させる。セツコが固く握るタオルを、指を一つ一つ抓んで離させる。
 セツコは、ただ呆然とシンの指が自分の指を摘まんで動かすのを見つめる事しかできなかった。

 

「あの、シン君……」
「服だけじゃなくて、ここにも、ついているでしょう? ソフトクリーム」

 

 そういって襟を掻き開きシンは少し上向きになって、首筋に掛かって、今は溶けたソフトクリームの一欠けらをセツコに示した。セツコが、拭こうとタオルを伸ばすのを、シンが優しく手で受けて止めた。

 

「タオルなんかじゃなくて、こっちで拭いて下さい」
「シンく……!?」

 

 あろうことかシンは空いている左手の指を、セツコの無防備な口に差し込む。うっすらと口紅を刷いた唇は呆気なく無遠慮なシンの指の侵入を許して、奥にある舌を抓まれる。親指と人さし指が、舌肉を摘み触れるか否かと言う繊細さで爪を立てて嬲った。

 

「シン……くん。苦し、や、やめ……んん!?」

 

 にゅるにゅると唾液に塗れてぬめりを帯びたシンの指がセツコの口の中を凌辱する。こりこりと弾力のあるセツコの舌を、シンの指がこねくり回し、かすかな痛みと苦しさに、セツコは顔を顰めた。
 歪む美貌を、シンは薄く笑いながら見つめていた。まるで弧月の様に冷たい笑み。善意で向けられた笑みでない事は、生まれたばかりの乳飲み子とて分かろう。その内に、シンの指が舌だけでなく歯茎や歯列、口内の上あたりを器用に撫でさすり始めた。
 繊細な羽毛でこそばゆくくすぐられるような感触に、セツコは驚きながら苦しげに呻く。

 

「んんん……はぅ、んぐぅ……」

 

 上気し、ほのかに赤みの射したセツコの頬やうるみ始めた瞳に、シンはぞくりぞくりと、背骨をじかに削られるような怖気とそれ以上の快楽を感じている。
 セツコの瞳が、やめて、ひどい事しないで、と無言で訴えるが、その祭壇の上の子羊の様な瞳こそが、シンを昂らせるのだとセツコは気付いていない。

 

 いや、本当にそうだろうか?
 気づいているからこそ、そんな瞳をしているのではないだろうか。シンにもっと、ひどい事をして欲しくて。体の奥の方で燃え始めたどこか淫らな炎をもっと燃やして欲しくて。
 真実はセツコ自身にしかわからない。あるいは、その体だけにしか。
 セツコの腕はちっぽけな抵抗を示す様にシンの胸板にあてがわれ、弱々しく押し返そうとしていた。だが、わずかほどにも力の込められていない細腕では、シンどころか子供にさえ勝ち目はないだろう。
 少なくともセツコの体はもう、シンに抗う事をやめつつあった。

 

「んはっ、くちゅ、ううん。……ああっ」

 

 セツコの蜂腰に、柔軟性を兼ね備えたワイヤーを束ねた逞しさを持つシンの腕が巻かれた。鉄の拘束力に、瞬間、セツコが息を呑んだ。
 抱き寄せられ、セツコがシンの胸元に寄せた腕と乳果実とが潰れる。柔らかな乳房の感触と、頼りなげな細腕の感触に、シンはちりちりとうなじを焼くような飢えを覚えて、たまらず唇を吊り上げる。
 月光夜に少女の白肌に乱杭歯を突き立てようとする吸血鬼もきっと同じ笑みを浮かべるのだろう。あるいは、娼婦を切り裂く霧の街の殺人鬼の笑みか。
 抑えきれぬ愉悦に細められたシンの瞳に射すくめられて、セツコの体が脱力した。腕も足も指も、瞳さえも、セツコの言う事を聞こうとはしない。赤いまなざしを注ぐ目の前の少年に、奪われてしまった。
 再びシンの指がセツコの舌に絡みだした。柔らかく暖かな舌肉に爪が立てられかすかな痛みが口内から脳髄へと伝達され、セツコは反射的に瞼を閉じた。
 やや乱暴な程度にセツコの口の中をシンが責め立て、快楽なのか痛みなのか分からぬ感覚の中へとセツコは放り込まれた。何もかも砕いて海の底に沈める大渦に飲まれた小舟の様に、流されるままセツコは悶える。
 細かくぴく、ぴく、と震えるセツコの体を、シンは愛しげに繊細な細工ものを扱う様に指でなぞり弄んだ。
 諦めに支配されたのか、混乱したまま状況に流された所為なのか、セツコの舌がシンの指におずおずと絡められた。ぬるぬるとセツコの口の中でぬめりきった二本の指と舌とが、蛇と蛇とが交わるかの様に妖しく蠢めきはじめた。
 鱗を持たぬ肌色の蛇が、その全身を白く泡立ち始めた唾液に塗れてぬるぬると擦り合い、絡み合う。鉤状に曲げられた指に掴まれたセツコの舌が苦しげに上下にのたうつのをしっかりと捕らえたまま、シンの指が扱きはじめる。
 わざと力を込めてセツコの舌を締めつけて、セツコが苦しげに呻く声が、シンの耳に心地よく響く。

 

「あ、ああ。シ、ン君、んんん……ふあ、ああ」
「はは、ははは」

 

 戸惑いながらも一心不乱に舌を動かして指に絡めてくるセツコが、熱に浮かされた瞳で見つめながら媚びた声を出すのを、シンは乾ききった笑いと共に楽しんでいた。
 やがて血を吸う蛭の様な艶めかしさと赤みを帯びたセツコの唇から、ちゅぽんといやらしい水音を立ててシンの指が抜き取られた。銀の糸でセツコの唇と繋がるシンの指を、セツコの瞳が物欲しそうに追う。
 くっ、と噛み殺した笑い声がシンの喉の奥で鳴る。ほんの数十分前まで怯えきっていたセツコが、自分の口内を散々に弄び蹂躙したモノを物欲しげに見つめるとは。思った以上に目の前の人は、楽しませてくれる。
 子供がお気に入りの玩具へ向ける感情に近いものが、シンの胸の奥でくすぶり始めた。セツコの唾液に濡れ光る指で、さっきまでむしゃぶりついてきたセツコの唇をなぞった。
 体中が敏感になっているのか、元から敏感だったのかセツコは、輪郭をなぞるように触れてくるシンの指の感触に、ああ、と熱い吐息を無意識の内に零す。

 

「いやらしい人だ」

 

 シンが何を言ったのか、数秒たってから理解した時、がつんと頭を横殴りにされたような衝撃が、ようやくセツコの心を襲った。蕩けはじめ、赤く火照っていたセツコの顔が、さぁっと潮が引くように血の気が引いて青く変わる。

 

「え、あ、ああ、わ、私」
「年下のガキに指しゃぶらされて、だらしなく声なんか出して、恥ずかしくないんですか? これじゃあまるで、雌犬だ」
「っ、どう、してそんな事言うの?」

 

 じわり、セツコの瞳に涙の紗幕が掛かりはじめる。そもそも自分の口の中に指を入れて来て、抵抗する間もなく動かし始めたのは、シン君の方だと、理性の働きが少しずつ戻り始めたセツコは、抗議しようとした。

 

「途中で気分が出始めて、媚びていたのは誰ですか? アンタでしょう? いいや、そもそも最初からアンタに抵抗する気なんてなかったんだ。自分は嫌がった、抵抗したっていう振りをしていただけだ。
 おれを突き飛ばす事も、口を閉じる事もしなかった。今になって違う違うと叫んだって、遅いんだよ。そんなに嫌ならおれの指に歯を立てる位はできただろうが」
「うぅ」

 

 痛いほど強く抱き寄せられ、セツコは豹変したように強い言葉を吐くシンの言葉と表情に、呼吸さえ忘れて目を大きく開く。自分があわれな子兎で、目の前のシンが自分に牙を立てようとしている獅子なのだと、ようやく悟る。
 口から零れた唾液でべとべとになっている唇を、同じく唾液に濡れたままのシンの指が拭った。びくりと震えるセツコの体を腰に巻いていたシンの腕が、慰める様に背中を撫で始める。

 

「いいですよ、おれはそれで」
「?」
「おれみたいなガキに指しゃぶらされて、口の中弄くり回されて、途中から声なんか出す変態女でも。それ位の方が可愛げがある」
「な、なに、を」

 

 こんな状況で、変態と言われても、可愛げがある。その一言でセツコは狼狽しはじめた。その様子に、くくく、とシンの喉から肉食獣の笑い声が零れる。いい。本当にいい。セツコは、本当に食い散らかしがいのある獲物だ。
 唇に触れていたシンの指が、セツコの肌から離れぬまま、てらてらと輝く痕を残しながら左耳まで流れる。そっと耳たぶを摘み、そこに吐息をまぶしながらシンが冷たく囁いた。冷たい囁きはセツコの鼓膜に触れて熱く粘度に富んだ囁きに代わって心に絡み付く。

 

「さあ、早く舐め取って」

 

 鋭い犬歯がぷつりと音を立てて耳朶を一噛みし、針でつつかれたのと等しい痛みにセツコが呻く。冷たい笑みを浮かべたままシンの顔が離れ、首筋をセツコへと向ける。ソフトクリームは匂いだけをそこに残すきりだ。
 蔑みの色と共にセツコを見下ろすシンの瞳に、セツコは誘蛾灯に惹かれる蛾のようにシンの白い首筋へと顔を近づかせた。あ、ああ、とそれだけはしていけないと思いながら、切なく震える舌が、シンの首筋に触れる。
 生暖かい感触にシンがかすかに呻く。羞恥の想いが残っているのか長い睫毛を震わせながら瞼をとじ、ちろちろと舌を動かす。零れたセツコの黒髪がさわさわと触れてこそばゆく、匂いたつ甘い髪の香りにシンは酔いしれた。
 頬に掛かる髪を掻き上げるセツコの無意識の仕草に、シンは匂いたつ様な色香を覚えて、血が熱を帯びるのを感じる。

 

「ふむ、んん、ふああ、あふうう」

 

 おそるおそる舌を伸ばしていたセツコも徐々に慣れ、残っていた羞恥心を忘れて舌の動きを大胆なモノにしてゆく。思いきりよく伸ばした舌先から付け根までを利用してじゅる、と音を立てて舐める。
 シンの首筋をぬらぬらと輝かせるだけに飽いたのか、セツコがついばむ様に唇を動かし始めた。ちゅ、ちゅ、と小さな音が連続する。セツコの自発的な奉仕に、シンは気分を良くしてセツコの髪を空いている手で梳いた。
 何の抵抗もなくさらさらと指の間を黒髪が流れて行く。この髪に触れるだけでも痺れるような心地よさが感じられる。シンの指が心地よかったのか、セツコの唇の動きが早まった。
 シンの首筋をついばみ口づく度にセツコの唇が奏でる音が、絶えることなく続いてゆく。ひとつ音が重なる度にセツコは、薄く理性を剥がされて、じくじくと膿の様に心の中に滲みだす獣欲に飲まれて行く。

 

「ふう、ん、んん、はぁ、あ、んん」
「随分いい声だしますね。気持ち良くなってきました?」
「…………んん」
「上手ですね。ひょっとして初めてじゃない? 男なんて知らない顔をして置いて、はは」
「んむっ」

 

 異議を唱える様にセツコが歯を立てて来た。痕が残るほど強くではないが、それでもシンにはわずかな痛みが伝わる。セツコからしたら、せめてもの抵抗であったろう。だがそれがシンの癇に障った。
 セツコの細い顎先を掴んで引き剥がす。突然の乱暴に、セツコの瞳が怯えに震えていた。柳眉を寄せて乱暴される事に怯えるセツコの様子に、シンは嬉しげに口元を歪ませた。歪む。この表現こそが的確な動きであった。
 そのまま肩を押してベッドの上に押し倒して、セツコが何か言う前に覆いかぶさった。恐怖と不安と期待と欲情のカクテルを呑んだように頬を複雑な感情で朱に染め上げたセツコの瞳を、シンの瞳がまっすぐに貫く。
 この冷たい瞳がセツコの体を麻痺させて、セツコの心を踏み込めば二度と戻れない快楽の泥沼へと踏み込む事へとの躊躇を奪う。
 ボタンごとセツコの制服の前を力任せに開き、セツコの両足の間にシンの腰が割り込む。M字に足を押し開かれ、両手をまとめて片手で掴まれ、身動きの取れなくなったセツコを前に、シンはゆっくり口を動かした。

 

「男なら誰でもいいんだろうが、なんなら今から別の奴、呼んでこようか?」
「や……いや」

 

 震えるセツコの姿が、なんと愛おしい事か、なんといじらしい事か、なんと嗜虐心をくすぐる事か。

 

「はは、人に見られるのは嫌か。そのうち、見ていられないと……」
「……違う」
「うん?」
「シン君じゃなきゃ、いや。貴方じゃなきゃ、いやなの」
「……」

 

 今、口にしてはっきりとセツコには分かった。こうも唯々諾々とシンの言う事に従い、体が淫らな熱を孕んで行くのは、相手がシンだからだ。それ以外のだれかだったら、こうも自分は従順になりはしない。
 体の反応だってこうも素直にはならないだろう。何の情も抱かぬ相手に愛撫されるのと、技巧が拙くても愛する人にされるのとでは後者の方が心も体も喜ぶ。それもまた真理だ。
 ただ体を守るための防衛反応とは違い、心と体が共に歓喜と共に迎え入れようとする相手、セツコにとってそれは、シンだった。
 怯えを払拭しまっすぐに自分の瞳を向けるセツコに、数瞬シンが見惚れる。神の遣わした愛の天使の矢に心臓を射抜かれたように、嗜虐の仮面を脱ぎ去ってセツコに見入る。

 

「シン君?」
「っ!」

 

 訝しそうに名前を呼ぶセツコの声で我に返って、シンはセツコの顔を改めて見つめた。

 

「あの……」

 

 また言葉でいじめられるのか、痛みを与えられるのかと期待の混じった怯えを見せるセツコの唇を、不意を突いたシンの唇が塞いだ。自分の唇に重なってきた柔らかな感触に、セツコの目が大きく開く。ファーストキスだった。

 

「あ、あむ、うく、んん」

 

 唇を重ねるだけの優しいキスに、セツコは驚きよりも胸の中をいっぱいにする暖かな気持ちに酔いしれた。十秒か、一分か、一時間にも感じられる口づけが終わり、シンの唇が離れた時、セツコは頬を桜色に染め上げて恍惚の溜息をついた。

 

「シン、君」
「……アンタは、おれのもんだ」
「ふあ」

 

 セツコの顎に手を添えて上を向かせ、露わになった首筋に唇を押しつけながらシンが囁く。目に見えない麻薬の様な言葉が、水にぶちまけられた墨みたいに広がって、セツコの体に浸透して冒して行く。それはあまりにも甘美な麻薬であった。

 

「だから、おれもアンタのものだ」
「あ、ああ、シン君」

 

 我知らず、しかし心の底からシンを求めて、セツコの足がシンの体に絡み付き咥えこむ。

 

「斬艦刀よりもすげーもんぶちこんでやろうか」

 

 子供の様に無邪気で楽しげなシンの声が、セツコの脳の中で幾十にも渦を巻いて浸透していった。

 

   *   *   *

 

「……さん、……ツコさん」
「ん、はあ、シンくん……。はぁ、ああ」
「…………なんというか、気まずい声だなあ。夢におれが出てきていたりして。セツコさん、こんな所で寝たら、風邪を引きますよ!!」

 

 肩を揺さぶられてセツコは目を覚ました。どうやらオノゴロのシミュレーター機器の中で眠ってしまったようだ。目の焦点を合わせて肩を揺する相手を見ると、びくん、と肩を震わせる。
 鮮明すぎるほどの夢の中に出てきた痴情の相手であり、最後にはご主……げふんげふん、と喜んで呼んだシン・アスカ少年である。

 

「セツコさん、大丈夫ですか? 汗びっしょりかいてますよ。はい、タオル」
「え、あ、た、タオル?」
「? そうですけど」

 

 反射的に舌を伸ばしそうになってしまい、慌ててセツコは口を閉ざした。シンはそんなセツコの様子を不思議そうに見ていたが、そのままタオルを差し出して、セツコもそれを受取る。
 心配そうに自分を見つめてくるシンの瞳が、良く知っている暖かなものだと確認して、セツコは安堵と認めたくはないがはっきりと失望を感じていた。そんな自分が、セツコは卑しくて情けなくて、思わず顔を伏せる。
 シンはそんなセツコの様子を、シミュレーターで好成績が出なかったせいだろうと解釈したらしい。クライ・ウルブズ内で一番技量的に未熟であると自覚しているセツコが、時に無茶な訓練を自己に課す事を隊内で知らぬ者はいない。

 

「あんまり根を詰めると、体を壊しちゃいますよ。それに、疲れ切った状態で訓練してもいい結果には繋がらないですよ。ちゃんと休まないと、セツコさんが無理し過ぎるから、みんな心配しているんです」
「う、うん。心配してくれてありがとう」

 

 夢の中とのギャップに恥ずかしさを覚え、セツコはタオルに口元を埋めた。かすかに頬を上気させて、なにやらうーと唸ったり、首を小さく左右に振っていやいやをするセツコの様子がひどく可愛らしくて、シンは顔を赤くしてそっぽを向いた。

 

「セツコさん、寝汗ひどいみたいですし、一度シャワーを浴びた方がいいですよ。おれはインパルスの整備状況見てきますから」
「あ、シン君」
「はい?」

 

 振り返るシンに

 

――私の部屋に来て下さい

 

 媚びた淫らな女の声で言いそうになり、セツコはそれを胸の中で押し殺した。あの夢が、意味するものが果たして何だったのか、セツコは考えないようにした。夢が潜在意識の願望であるのなら、あの夢でシンがセツコにした事は、それは、セツコが……。

 
 

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