第3話『北の目の破壊』
前回の作戦で、ノースポイントの当面の安全を確保した俺たちだが、
敗戦直前の我らがISAFには問題がまだまだあった。
そのうちのひとつが北の港、セントアークからの各種戦力の生き残りの撤退で、
敵性航空機をシェズナ山山頂のレーダー、通称"北の目"支援しており、
撤退作戦はまったくといっていいほど進んでいない。そこで俺たちに下された任務が――
「敵レーダーサイトの破壊?」
「そうだ。作戦名は『ホワイトアウト』、結構日時は10月10日1628時。
今回の俺たちの任務は護衛ではない。レーダーの破壊だけなら前回と同じで十分だが、
対空火器も多数あるし、今回はオメガをふたつに分断する。
俺たちのうち何人かはロケットランチャーを装備して出撃してもらう」
「んな任務ハームでもぶっ放せばすむことでしょう。俺たちに回すかぁ?専門家に任せろだぜ」
ヴァイパー7が言っていることだが、俺たちにそんな高価な装備は回ってこない。
撤退現場の制空権確保のためにSAMサイトを破壊しているやつらがもっとも必要な装備だし、
敗戦をギリギリで回避しているISAFに大量に増産する力もないのだ。
AGM-88に限らず、AGM-84H、スラマーも同様だ。
さらにどの道俺らの機体にその二つは積めない。
「そんな装備を俺たちに回す余裕があるか、ISAFに?第一いまさら言ってもしょうがないことだろ?」
ヴァイパー2がなだめる。そういえば、だれがロケット積むんだろう?
「それで隊長、俺らの編成は?」
ハイネに先を越された。隊長は少し考えた後、
「俺とハイネが護衛を担当する。俺は2機担当する。 ハイネ、シンの援護を頼む」
「了解」
「ハイネが援護かぁ・・・・心配だな」
「んだと?! そんなこといってると守ってやんないぞ!?」
「ハイハイ、冗談冗談」
そんなこんなで当日、俺たちは基地を飛びたった。
俺たちの担当は東側のレーダーサイト、こっちに来るオメガは5、7、11、そしてメビウス1。
そういえば、メビウスってあいつしかいないのかな?
西側はレイピアとオメガの残りが担当。例の番号のばらつきはどこも同じらしい。
俺の装備はサイドワインダー2発にロケット4つ。ハイネはサイドワインダーを満載。
少し重いが、いざって時は空戦も何とかなるだろう。
「スカイアイより全機へ。間もなく目標へ到達する。注意せよ」
スカイアイから連絡。その直後、再び連絡が入った。
「敵機確認。方位011、高度9000、速度400。数は2。
ヴァイパー、直ちに迎撃せよ」
「ヴァイパー1了解。ヴァイパー6は残れ。3を見失うな」
「ヴァイパー6、了解」
隊長は増槽を投棄、高度を上げ迎撃に入る。
その間に俺たちは攻撃を開始する。
敵対空砲を捉え、ロケットを発射する。
対空砲は爆炎の中に。レーダー上からも消える。それとほぼ同時に
上空で火球が2つ。隊長が撃墜したらしい。
「1機で2機をやるとは・・・・すごすぎる」
「ああ・・・」
ハイネが思わず感想を漏らす。まったく持って同感だ。
他の対空砲も各個撃破され、レーダーの攻撃に入っていた。
メビウス1が一直線に並ぶレーダーに進入、爆弾を投下していく。
F-4ならではの現在でも侮れない搭載量の爆弾が半分以上のレーダーを潰す。
俺もレーダーにロケットをぶち込む。
「こちらスカイアイ、敵機の接近を確認。数は3、いや4!
機種はF-16!警戒せよ」
F-16とはエルジアも出し惜しみはしないということか。
残ったレーダーは爆弾があまっているやつに任せ、
俺やメビウス1も迎撃に入る。
高空に待機していた隊長が降下。俺たちに並ぶ。
「ヴァイパー6、俺について来い。メビウス1、ヴァイパー3と右側を。
俺たちは左をやる」
「了解した、ヴァイパー1」
敵機は散開。隊長たちも左へ急旋回。俺たちも右側を追う。
だが敵もやるもので、なかなか後ろを見せてくれない。
メビウス1のファントムは急に上昇に入る。それを追おうと1機敵が上昇。
隙だらけの背中をみせた。機銃を発射。
敵は山肌へ墜落した。
残り1機は降下してきたメビウス1から逃れようと機動力に物を言わせ急旋回。
だがメビウス1は移動した先を見越したのか敵機とは別の方向に機種を向け、機銃を発射。
自分から機銃の雨に突っ込む形となった敵は爆散した。
隊長たちからも撃墜のコール。
「ヴァイパー1、スプラッシュ3」
「ヴァイパー6スプラッシュ1!やったぜ!派手なやつをやった!」
西側担当も任務を無事終わらせたようで、合流して帰還した。
毎回恒例の騒ぎを起こした翌日、俺たちにうれしい知らせが入った。
新型機が俺たちの部隊に配備されることのなったのだ。さらに、他の部隊からヘイロー隊を加え、
俺たちはヴァイパー、レイピア、オメガ、ヘイロー、そしてメビウスをあわせ、1つの航空団を形成することになった。
ハイネは二日酔いに頭を抱えていたが、俺たちは新型を見に行く。
オメガはF/A-18ホーネットだった。万能な活躍をするF-4の、まさしく正統な後継機だ。
レイピアはF-14。おそらくはA型がベースなのだろうが、戦時改修を施されたらしく、
新型のB型とも互角の対地性能を得たらしい。さらにカタログスペックではエンジン出力も少し上がっているようだ。
新しく航空団へ来たヘイローは、Mig-29を使用するということだ。
エルジアも使用しているが、汎用的な戦い方をできる機体だ。
搭載火器も用意できるので心配はないらしい。
俺たちヴァイパーはF-16。ブロックナンバー50の最新型だ。
それを見たハイネは二日酔いも吹っ飛んだのか、歓声を上げている。
メビウス1はF-15。空戦専門とも言えるやつだが、俺たちの任務の多様性に対応するために、
E型ほどでもないが爆弾も携行できるように改良されたらしい。
メビウス1は新しい愛機にでかでかとメビウスの輪のエンブレムが描かれていくのを
とてもうれしそうに見ていた。
「隊長、こんなにいい機がそろって俺たちは助かりますが司令部は納得しているのでしょうか?」
俺は思わず聞いていた。
隊長は苦笑いしながら、
「『これだけいい機体をやったんだからちゃんと働け』といいたいんだろ。まったく・・・」
と答えた。
この日の夜は新人歓迎会ということで、昨日に引き続き大騒ぎになった。
その中で、緑色の髪をした若い人、ヘイロー隊の2番機の人が話しかけてきた。
「すこし、いいですか?」
ハイネは目を開きながら、
「お前・・・もしかしてザフトの!?クルーゼ隊にいた!?」
「えぇ!?そうなのか、ハイネ?」
大声を聞かれてなかったか心配だが、それよりも驚きが勝っていた。
なにしろ、またあっちから来た人がいたのだ。
「ハイ、ニコル・アマルフィといいます。よろしくお願いします」
二コルは丁寧に言った。
「お前も、ISAFに入ったのか」
「ハイ、こちらで平和に暮らすのも良かったのですが、やっぱり平和は守らなくちゃと思って」
「俺やシンも一緒だよ。向こうでできなかったことを、今度こそってな」
「そうですね。これからもお互い頑張りましょう」
こうして部隊としても、ハイネや俺としても新しい仲間を加え、決意も新たに戦っていくことになった。