Seed-Crayon_5-044_3

Last-modified: 2008-06-30 (月) 18:38:08

きょうだい【その3】
 
 ~夕食~
アウル 「これが、みさえさんの(お母さんの)味…うまいっ!」
みさえ 「うぅっ」
ルナ  「いや、あのね」
シン  「どれどれ…ん?これはルナの味だよ。みさえさんのはもっと塩が少な
みさえ 「おだまり」
シン  「…ゴメンナサイ(´・ω・`)」
アウル 「工エエェェ(´д`)ェェエエ工」
ルナ  「アウル、何よその反応」
アウル 「そうと知ったらすっげー不味くなった」
ルナ  「なっ!」
シン  「お前って本当にワガママだなぁ。とりあえず表出ろ」
アウル 「なんだよ、やんのか?」
シン  「彼女の料理をバカにされて、怒らない男がどこにいる」
 
 そう言って箸を置くと、シンは両手の関節をボキボキと鳴らし始めた。
 
みさえ 「はいストーップ!喧嘩はダメよ。
     アウル君、私の料理が食べたいならデザート作ってあげるから、ね?」
アウル 「え、あ、はい」
シン  「すみません、つい熱くなっちゃって」
ルナ  (今のは嬉しかったけど…シン、なんか情緒不安定ね。あんなに怒るなんて)
 
 シンが感情的になったのは、先程家族の死を思い出したことが関係しているのだが、ルナマリアはそれを知らない。しばらくしてシンも落ち着いたので、それ以上は気にしなかった。
 
          *          *          *
 
みさえ 「できたわ。はい、どうぞ」
 
 行儀良く座るアウルの前に、コトッ、と音を立てて皿が置かれる。
 
アウル「うわぁ…」
 
 アウルはただ感動の声をあげるのだが。
 
しん  「料理って…ただ薄力粉とベーキングパウダーと
     牛乳と卵とバターと砂糖を混ぜて焼いただけだゾ。みさえ手抜きー」
 
 ゴンッ!と鈍い音が、野原家の家中に響き渡る。
 
みさえ 「そういうこと言ってると二度と作ってあげないわよ」
しん  「……ほい」
 
 彼の的確過ぎる指摘どおり、今アウルが食べているのは普通のホットケーキだった。
 
みさえ(小声)「しょうがないでしょ。手早く作らないと、そろそろ来ちゃうんだから…」
シン  「みさえさん?何か言いました?」
みさえ 「ううん、なにも」
アウル 「美味しい…」
 
 ピンポーン…ピポピポピポポポポピンポーン!!!!!
 
アウル 「あ?」
?   『やめろステラ!こいつはそんなに押すもんじゃない!』
?   『これ、面白い…スティングもやってみる…?』
 
 アウルがこれ以上ないほど幸せな顔でホットケーキを食べていると、玄関のチャイムが連打された。
 それと一緒に、聞きなれた声が聞こえてくる。
 
アウル「あいつら…!」
 
          *          *          *
 
 アウルは勢い良く立ち、残りのホットケーキを口に詰め込むと、二階に駆け上がった。
 
シン  「おい、アウル!」
みさえ 「そのままでいいわ。先にスティング君達と話をしなきゃ」
シン  「…?なにがなんだか」
しん  「さっぱりだゾ」
 
スティング「お邪魔します」
ステラ 「シン、こんばんは…」
 
 みさえが開けた玄関から、二人が入ってきた。
 
シン  「こんばんは。アウルを迎えに来たのか?」
スティ 「おう。まったく、あの馬鹿は面倒ばかりかけやがって…。
      それで、みさえさん。アウルはどこに?」
みさえ 「…アウル君に合わせる前に、あなた達に話があるわ」
スティ 「はい?」
ステラ 「ひまちゃんは?ステラ、ひまちゃんとあそびたい…」
みさえ 「ステラちゃんも聞きなさい」
ステラ 「うぇい…みさえさん、ちょっと怖い…」
 
 一方二階に上がったアウルは、先程しんのすけ達といた部屋に入り、ドアの鍵を閉めていた。
 
アウル 「ふう…僕なにやってんだろ。シンの話を聞いて、家族の大切さがわかったのに。
     二人と仲直りしようって、そう思ったはずなのに…」
?   「たーい」
アウル 「うわっ!ひまちゃん!?ど、どうして二階に…ドアもどうやって開けたのさ」
ひまわり「たーよ」
アウル 「…気にするなって?」
ひまわり「きゃーう」
アウル 「…わかったよ」
 
          *          *          *
 
スティ 「話ってなんですか?みさえさん」
みさえ 「本当は本人同士で話し合った方がいいんだけど…
     アウル君、今は話し辛いだろうから、私が言うわね。
     ねぇ、スティング君。あなた、少しアウル君に厳しすぎないかしら?」
スティ 「…どういうことですか?」
みさえ 「言葉通りの意味よ。じゃあ逆に、ステラちゃんには甘すぎると思わない?」
スティ 「オレは、どっちも平等に扱ってるつもりですよ。これでも苦労してるんですから」
みさえ 「知ってるわ」
スティ 「じゃあ、どうしろって言うんですか。さっきネオにも同じこと言われたし…」
みさえ 「あなたは本当に良く二人の面倒を見てると思うわ。私達大人も敵わないくらい。
     でもね…それが必ずしも二人のためになるとは限らないのよ」
スティ 「!」
みさえ 「それと」
スティ 「…まだ、なにか?」
みさえ 「あなたのためにもならないわ」
スティ 「えっ…?」
みさえ 「いくらしっかりしてても、あなただってまだ子供じゃない。
     いつも二人の世話をしようと頑張らなくていいの。一緒に遊んだっていいのよ。
     あなたにとっては二人を放って置くことの方が、難しいかもしれないけど…。
     たまには大人を頼って。子供には、自分のやりたいことをやる権利があるんだから」
スティ 「みさえさん…オレ…」
みさえ 「無理にアウル君を叱ったり、ステラちゃんを甘やかさなくても大丈夫。
     私達がちゃんとフォローするわ。だから…ね?」
スティ 「オレ…うっ…うっ…」
 
 本当はずっと、誰かの助けが欲しいと思っていたのだろう。スティングは声を殺して泣き始める。
 
みさえ (こんな時まで、自分を抑えなくたっていいのに…)
 
 そう思ったみさえに抱き締められると、今度こそ大声で泣いた……
  
 
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