さらば愛しき人よ!だゾ・エピローグ
俺としんちゃんが春日部に帰ってきてから数日が過ぎた。
歴史が少し変わった事による未来への影響はやはり無かったみたいだ…少なくとも、アスランに聞いた所では。
ただ、一部の人たちの俺に対する態度が少し変わったような気がする。
キラさんは何故か俺を尊敬の眼差しで見るようになったし、カガリさんは少し、性格が優しくなった気がする。
おでん屋のアズラエルさんは……その、何故か俺を見るとビビりまくるんだけど……
なんでそうなったのか、それぞれに聞いてみたけどよくは分からないそうだ。
まあ特に重大事ってわけでもなさそうだし、不都合がなければそれはそれでいいと思う事にした。そんなある日……
《プルルルル……プルルルルル……》
シン 「なんだ…家に誰も居ないのか?しょうがないな。(ガチャッ)もしもし…」
??? 『あの、その…の、野原さんのお宅でしょうか?』
シン 「はい?そうですけど…失礼ですがどちらさんで」
??? 『あーー!その声はやっぱりお兄ちゃん!やっと見つけた!』
シン 「え、え?お、お兄ちゃん?…って、その声はもしかして…まさか……」
マユ 『そうだよー!お兄ちゃんの大事な妹、マユだようー!ひどいよお兄ちゃん!全然連絡くれないんだもん!
お父さんもお母さんも心配してたんだよ!』
シン 「マ、マユ…?お、お前生きて…いるのか?父さんと、母さんも…?」
マユ 『何言ってるのお兄ちゃん?あったり前じゃない!みんな元気だよ!』
シン (も、もしかして…俺が歴史を変えた事によって、こっちの未来も変わったのか?
そう言うことならキラさん達の態度が少し変わったことにも納得できる!
しかし、それには腑に落ちない事がいくつかあるな…マユに聞いてみるか)
シン 「な、なあマユ。俺は少なくとも2年前からこっち、何してたんだっけ…?」
マユ 『えー忘れちゃったの?お兄ちゃん、「みんなを守れるような軍人になるんだ!」って言って、
戦争が終わると同時にプラントにぶらりと行っちゃったんじゃない!お父さんとお母さんにないしょで!」
シン 「プラントに…?何で?軍人になるんだったら、オーブ軍に入るのが自然じゃないのか?」
マユ 『お兄ちゃんがマユに言ったんじゃない。「オーブ軍や連合軍は階級の上下が堅苦しいからイヤだ」って」
シン 「……」
マユ 『お兄ちゃんがプラントに行っちゃって。それ以降連絡をくれたことなんて、数えるほどしかなかったんだよ?
確か、「マユ、俺ザフトに入れたんだぜ!しかもトップガンの赤服だ!すげーだろ」とか、
「夢にまで見た赤い翼のMSのパイロットになれたんだ!デスティニーって言うんだぜ?やったー」とか、
それくらい』
シン 「そうか…俺はザフトに入ったのか……」
どうやらマユ達が生存しているって事実以外、俺が辿った道筋の歴史をそのまま『もう一人の俺』は歩んだみたいだ。
じゃあ俺がしんちゃんとやった事は…俺自身の未来を変えたって事なのか…?
シン 「そ、それでマユ達はいま、どうしているんだ?父さんと母さんは…?」
マユ 『どうしているって…前に電話で言わなかった?
2年前の戦争で家が焼けちゃって、いい機会だからって
お父さんがモルゲンレーテを退職して念願の農業をやる事になったんじゃない』
シン 「の、農業?オーブでか?」
マユ 『戦争が終わるちょっと前に、お兄ちゃんも手伝って引っ越ししたじゃない。
今マユたちは秋田県って所に住んでいるの。もう~しっかりしてよ、お兄ちゃん』
シン (引っ越し?秋田県に?
それじゃ…マユ達は俺が参加したザフトのオーブ攻略戦とかに巻き込まれずに済んだのか!)
マユ 『マユ、こっちに来て良かったと思うな♪
確かに田舎で不便なとこも沢山あるけど、新しい友達もいっぱいできたし!
お兄ちゃんもこっちの高校に通えば良かったのに』
シン 「ああ…そうだな。俺ももう少し家族といっしょに過ごしても良かったかも、な」
マユ 『そうだよ~。あ、それとね、マユのご近所に野原銀ノ助っていうおじいちゃんがいてね。
面白いおじいちゃんなんだよ~』
シン 「そうか。よかったな……マユ。今お前……幸せ、か?」
マユ 『うん、すっごい幸せだよ!あっ…もうこんな時間!
それじゃお兄ちゃん、近いうちに会いに行くから!電話、切るね?』
シン 「ああ、待ってるよ。父さんと母さんによろしくな…」
マユ 『うん!じゃあお兄ちゃん、ばいば~い!』
ガチャ……
シン 「………」
* * *
しん 「ただいま~あれ?シン兄ちゃん…どうしたの?泣いているの……?」
シン 「え?あ…俺、泣いているのか?…へへっしんちゃん、今マユから電話がきたんだよ。
生きていたんだ!俺の…俺の死んだはずの俺の家族が!」
しん 「な~んだ、そんな事か…だからオラ、あの時言ったでしょ?
シン兄ちゃんは一生懸命がんばったんだから、マユちゃん達はきっと大丈夫だって!」
シン 「そうか…そうだよな。ははっ、しんちゃんには敵わないなあ」
しん 「えっへん!オラの言う事で外れた事なんてないゾ!」
シン (これでもう俺には振り返る過去はなくなったんだ。これからは未来を、明日だけを見つめて生きていこう。
そして近いうちにマユ達を春日部のみんなに会わせたいな…
いい奴等ばかりだからきっと、いい友達になれるはずだ。特に……)
しん 「ん?なに?」
シン 「いや、しんちゃんとマユはいい友達になれそうだな、と思ってさ」
しん 「シン兄ちゃん!オラの好みは女子高生以上のおねいさん限定だゾ!
マユちゃんのような小学生は、オラの守備範囲外ですな!」
シン 「う~ん…しんちゃんがマユを好きになっちゃうと、それはそれで兄貴としては複雑な気分だな…
やっぱり春日部に呼ぶの、やめようかな?」
しん 「なんの事?」
シン 「いや…何でもない、さ!」
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