Seed-Crayon_6-052

Last-modified: 2008-07-01 (火) 13:32:26

巨人の魂

 

 ……『彼ら』は闇の中にいた。
  『彼ら』は死と破壊の化身たち。その為に生まれ、世界に死を振り撒いてきた。
  しかし、この平和な世界は彼らの存在を必要としていない。だから『彼ら』は闇の中に封印された。
  『彼ら』もその事に異議はない。だが……『彼ら』とて、時々は日の光に憧れることだってあるのだ。
  『彼ら』の不満は頂点に達っしつつあった。
  もし『彼ら』が立ち上がれば、春日部は瞬く間に火の海に包まれるであろう……

 
 

みさえ 「うんしょ、うんしょ…ふう、これで全部ね」
ルナ  「ただいま~…ってあれ?みさえさん何してるんですか?」
みさえ 「何って…布団干しているんじゃない。今日はいい天気だしね、きっとお日さまの光でよく乾くわよ」
ステラ 「わ~い。ステラ、お日さまの匂いのするおふとん好き~~」
ルナ  「そういえば、ご近所でもお布団や洗濯物を干しているわね…
     やっぱりあれかな?お布団もこんな晴れた日に外に出られると嬉しいのかな♪……なんて」
ステラ 「……晴れた日に外に出られると…嬉しい?」
ルナ  「あ、あくまで例えよ!本気で聞き返さないでよ……もう!」
ステラ 「……ねえルナ。普段、暗い所にいる人だってたまには…お日さまの光を浴びてみたいよね?」
ルナ  「え?ま、まあそりゃそうだけど……」
ステラ 「うん。ステラ、今決めた。今日は日なたぼっこの日。
     ねえルナ、みんなでしよ?みんなで、日なたぼっこ」
ルナ  「みんなで……日なたぼっこ?誰よ、『みんな』って?」
ステラ 「みんなはみんなだよ。ステラと、シン達みんなの、お友達」

 

          *          *          *

 

シン  「ふう…結局、隣町まで自転車で行っちまったなあ。
     どうだいしんちゃん?やっと買えたアクション仮面のひみつ大百科」
しんのすけ「おおう、すごいゾ!細かい所までアクション仮面のことが解説されているゾ~!」
シン  「そうか……そりゃあ良かった。わざわざ日曜日に本屋巡りしたかいがあったってもんだ」
しん  「シン兄ちゃん、早くうちに帰ろうよ~。オラ早くうちで本をゆっくり見た……あれ?」
シン  「うん?どうした?しんちゃん」
しん  「シン兄ちゃん……なんか、春日部の町にいっぱい巨人がいるゾ?」
シン  「巨人?何言ってんだしん……うっ?あ、あれはッッ!?」

 
 

 シンとしんのすけが見たもの。それは…春日部の町のあちこちにそびえたつ、MS達の姿であった。
 ザク、ガイア、カオス、レジェンド、デストロイ……さまざまなMSが集まった、まるでMSの博覧会。

 
 

シン  「一体、何があったんだ……まさか、非常事態? 飛ばすよ、しんちゃん!しっかり掴まっていて!」
しん  「おおう!出発おしんこ~~!」

 

          *          *          *

 

ステラ 「おーらい、おーらい……はい、そんなとこでいいよ」
ルナ  「う、う~ん。いいのかしら?こんな事しちゃって……」

 
 

シン  「おお~~…い!ステラ、それにルナ!お前らMSなんか出して、何やってるんだよ!?」
ステラ 「あ、シンとしんちゃん。あのね、今日はみんなで日なたぼっこしようと思ったの。だから」
しん  「なるほど、なるほど。『もびるすーつ』のみなさんもご一諸にってわけですな」
ステラ 「ぴんぽ~ん……ガイア達だってお日さまに当たりたいと思っているはずだしね。たぶん」
シン  「だからって、ありったけのMSを出さなくったって……
     それに、あのフリーダムは何なんだよ!腰に手をやって、あさっての方向を指差しているけど!」
ステラ 「くらーく先生。『少年よ、大志を抱け』~って言ってったおじさん」
しん  「ほうほう、ステラおねいさん物知りですな~」

 

シン  「じゃあストライクルージュを足蹴にしているジャスティスは?」
ステラ 「熱海の『こんじきやしゃ』~」
シン  「……MA形態のガイアを連れているグーンは?」
ステラ 「上野のさいごーどん」
シン  「わ、和服を着て刀を腰にさしているレジェントは……?」
ステラ 「高知は桂浜のさかもとりょーまさん」

 
 

シン  「な、なんで日本各地の銅像のポーズを決めているんだ?」
ステラ 「その方が見ている方も楽しいでしょ?ステラとルナで考えたんだ」
しん  「おおう!でっかいの(デストロイMS形態)と金ぴかの(アカツキ)が揃って勝利のポーズを決めているゾ!
     アクション仮面とミミ子ちゃんですな!ワ~ハッハッハッ、ワ~ハッハッハッ……!」

 

          *          *          *

 

ステラ 「みんな、嬉しそう。お日さまの光に当たれて喜んでいるみたい……」
シン  「そ、そうかぁ?俺にはよくわからんがなあ……」
ステラ 「ステラには分かるの。みんないつも暗い所にいるから…たまにお日さまの光が恋しくなる時だってあるんだよ。
     ねえシン。これからも、時々でいいからみんなを外に出してあげよう?……ね?」
シン  「う、うん……そうだな、今じゃ定期的にメンテナンスするくらいだからな。こいつ等に、MSに触れる機会は…
     かつては命を預けた奴等なんだし、もう少しそういう所を配慮すべきだったのかも」
 
ステラ 「…お天気になったらみんな一諸に日なたぼっこして、夏になったらみんなで海で泳いだりしようね?
     友達なんだから……お友達、ステラ達とMSのみんなはお友達」
シン  「う、海で泳ぐ?MSを操縦して泳ぐのか?」
ステラ 「違うよシン。MSのみんなが海で泳ぐの。ステラ達はそのお手伝いをするだけ」
シン  「……やっぱりステラの考え方って、凡人の俺にはイマイチよく分からないなあ……」
ステラ 「えっへん。ステラ、えらい」
ルナ  「……誉めてないと思うわよ。多分」
しん  「ワ~ハッハッハッ、ワ~ハッハッハッ……!」

 
 

 ―日本には全てのモノに神が宿る、という信仰が古くからある。
  ならば戦士の命を乗せて戦うMSにも神が、魂が宿っているのではないだろうか。
  MSを忌むべきものと封印してしまうより、友達として付き合う事も求められるのかも知れない。
  何故なら、ここは春日部。

 

  みんなの故郷、春日部なのだから―

 
 

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