Seed-NANOHA魔法少年_第04話

Last-modified: 2008-05-28 (水) 23:28:01

私は、地上訓練校39班のアカス・ユマ。
私の39班には、ほかにティアナ・ランスターって言う女の人がいます。
長くてきれいなオレンジ色の髪を阿波寝ている、かっこよくってどこかあこがれる女性。
だけど、あんまりお話をしようとしない。
だから私は思う。
私は、あの人のことを知りたい。
そして、お友達になりたい。
ルームメイトじゃなくって、お友達に……

 

「へぇ、こんなのもあるんだ……」
スバルは、うわぁ、と目の前のモニターを見る。
ここは訓練生が集会などで集まるホール。
そこに、全生徒が終結していた。
「この順位は、俺たち教官陣が独自で決めたものだ。おのおの参考するように
そして目の前のモニターには、各班のこれまでの成績が記されている。
いくら訓練校といっても、その中でもやはり競争というものはある。
その競争心が、各自の力を増幅させるのもまた事実であるからだ。
「まあ、今回はあんまり期待できないけどな」
「そ、そうだね……」
その中、自分たち32班は初日をはじめとした、入学数日のミスもあり、今回はそこまで高くないだろうとふんでいる。
さて、自分たちの順位はどれくらいだろうか……と、最下位から調べていくシン。
そのときだった。
「げ!俺たちあの凸凹コンビよりも下かよ!」
このような声が聞こえて、え?とシンはふっと上を見る。
そこに写っていたものは……
「じ、13番……」
スバルの言葉に、何?とシンはさらに顔の角度を上げた。
そこには、13番の横に書かれている自分の名前たちの名前と班番号。
32番のでこぼこぶりはみんな良く知っているので、まさかの順位に一同がどよめきだす。
だが、一番驚いているのは自分たちだった。
本人たちは気づいていないのだが、最近の二人の成績は目覚しく、目を見張るものがある。
教官たちはこれまでのミス、そして現在の彼らのスキルを考慮してこのような結果となった。
「この調子だと、最終的に結構なところまでいけそうだな」
「うん!」
二人は、これからの順位のことを考えて、お互いに笑みを浮かべる。
シンとっては、できればアカデミー時と同じ、トップガンである10位以内には入りたい。
そう思い、モニターの順位を見る。
現在は13位、まだ10位以内を狙える範囲内だ。
そのとき、聞こえた。
「あの子……確か管理局のお偉いさんのお嬢様だったよな?」
「ああ……なんでも、コネで入ったってうわさだぜ」
突然と聞こえてくる声に、シンはばれないよう視線を向けると、少数はスバルに向かって何か言っていた。
お偉い?コネ?
いっている意味が良くわからない。
「シン、ちょっと屋上へ行こう」
「え?ああ」
シンは、スバルに引っ張られるように黙ってついていく。
それと同時に、別のほうでも外に向かう一行がいた。

 

「うっそ……」
そして彼女、ティアナ・ランスターも、二人の成績に驚いていた。
あのでこぼこコンビが、13番?
何かの間違いではないのだろうか……
ためしに、自分の頬をつねってみる。
痛い……
やはり夢ではなかった。
「あのお……まず私たちの成績を見たほうが……」
ユマの言葉に、そ、そうね……とティアナはもう一度モニターを見る。
はたして自分たちは……
「4番……」
その予想以上の順位に、ティアナは笑みを浮かべる。
かなり上位のランクだ。
「やりましたね!」
ユマもその順位に大いに喜んでいる。
(これならトップも十分に狙える)
自分の将来の夢へ進むため、そのための一歩を踏みしめることができた。
ティアナは拳をぎゅっと握り締め、これまでの努力が身に結んでいると笑顔でうなずく。
そんな彼女だったが……
「あの子、士官学校も空隊も落ちてるんでしょ?」
「!」
少し小さな声だが、それでも彼女の耳に入ってしまった。
ティアナはその声を聞いて、拳を解いてぴたっと立ち止まった。
「格下の陸士部隊ならトップを狙えると思ってるんじゃないの?」
「笑っちゃうよなあ、恥ずかしくないのかよ?」
「まあ、結局狙えなかったんだから、おあいにくさまってところじゃないの?」
「ざまあねえよな」
次々と聞こえてくる野次に、ティアナはかっとなって後ろを振り向く。
野次を受け流すほど、彼女の精神は発達してはいなかった。
(さっきの……いったい誰が……)
ティアナは睨み見つけるように。
それと同時に、何人かがさっと視線をそらした。
どうやら、聞こえているとは思わなかったらしい。
あいつらか、とティアナはその人物たちを睨んだまま、ずんずんと男の前に立った。
「何だよ?」
男もティアナを睨むが、ティアナはそれをも上回る迫力で睨み返し、言い放った。
「さっきからこそこそと……言いたいことがあるなら面を向かってと言いなさいよ」
「ちょ、ちょっと、ランスターさん!?」
まさかの挑発とも思える言葉に、ユマは驚いてティアナをみる。
何も火に油を注がなくても……
いっぽう、男もその言葉を聞いて、そうかい、と嫌らしい笑みを浮かべる。
場には、それは重い空気がまわりに立ち込める。
「おい貴様ら!何をしている!?」
そこに、教官が二人の下へ駆けつけようとしている。
それを見た相手は、ちっと舌打ちしてさっさとどこかへと消えていった。
「ランスターさん」
ユマは、まだ表情を変えないまま相手を見つめるティアナを心配そうに見る。
あんなに怒っているティアナを見るのは初めてだった。
「ごめん、ちょっと外へでているわ」
自分を心配しているユマを突き放すように、ティアナは黙って外へと向かっていった。
ユマはじっと、彼女の背中を見ていた。
(私、もっとランスターさんのことを知りたい)
思えば、昨夜は彼女のことをあまり知らない。
お互い秘密していることは確かにある。
自分だって、ティアナに隠していることはたくさんある。
だけど……
「やっぱり、隠し事は良くないよね……」
ユマは小さくうなずき、ティアナの後を追っていった。

 

「おい、スバル……」
外へ出て、シンはいまだに黙っているスバルを見る。
さっきから彼女は、星が広がる満天の夜空を見ているばかり。
静寂があたりとつつみ、聞こえるのは風になびく木の葉の音のみだった。
そして、スバルはようやく口を開く。
「私には、お姉ちゃんとお父さんがいるのは知ってるよね?」
その内容は、自分の家族のものだった。
シンはうなずき、以前聞いたことを思い出す。
スバルの家族は姉と父親で母親は小さいときになくなっているということを。
「実は、ギン姉と父さんも、時空管理局に入っているんだ。
ギン姉は捜査官で、父さんは部隊の部隊長」
それを聞いて、シンはさっきのことに納得した。
部隊長ランクとなると、それなりに偉い役職である。
だから、スバルは親のコネでここに入ったんじゃないかということだ。
だが。はっきり言おう。
「普通、まだ小さい自分の娘が管理局に入るって言えば、反対するだろうなあ……」
「うん。それはもう……」
あはは、とスバルは管理居に入ることを反対した父親と姉を思い起こす。
心配してくれているのだろうという事は自分でもわかっている。
だけど、もう決めてしまったのだ。
そんな彼女のわがままと思える行動に、父は降参し、ここにいるということだ。
「それに、陸士部隊にコネではいる人ってあんまりいないしね。
士官学校ならあるかもしれないけど」
普通、ただ陸士の訓練校にコネでいれるやつはいない。
だから、さっきのひそひそ話はあまり気にしてはいない。
ただ、シンはスバルの話を聞いて、意外に思ったが、同時にあきれ果てた。
「しっかしお前、本当にわがままなやつだな……家族にもそこまで言えるなんて……」
自分も、多少はわがままだという自覚はある。
しかし、さすがに両親にはそこまでわがままを言えたためしはない。
シンのあきれ顔に、あははと苦笑を浮かべる。
「で、そのシューティングアーツってやつもわがままで?」
「まあ、そうなるのかな?」
シューティングアーツ……自分の世界では聞いたことのない格闘武術。
マーシャルアーツのようなものだろうか……
スバルは、それも姉から教わっているらしい。
仲間との意思疎通は大切だと以前の出来事からわかったので、シンはスバルとはできるだけ話をするようにしている。
しかし……
(言うべきなのか?)
シンは時たま迷う。
自分が時空漂流者ということを打ち明けようかどうか。
ミゼットは、自分のように魔力を秘めている時空漂流者は、自分の世界が見つかるまで、はたまたずっとそこで働くなどの違いはあるが、
ほとんどの漂流者は、一度管理局に入っている。
だから、別に自分は時空漂流者だ、暗いなら言ってもいいと思っている。
だが、そうなれば自分の生い立ちを話すことになる。
そうすれば、いつかは話すときがくる。
自分は軍人で、質量兵器を使ってかなりの人を殺していることを。
はたして、その話を質量兵器が禁止されているこの世界、さらにまだ12歳の少女に話してもいいものかどうか、迷う。
それ以前に、いわないにしてもいつまで隠しとおせるかもわからない。
今まではうまくはぐらかしているが、それがいつまで隠せれるかもわからないのだ。
シンはそのことを最近悩んでいる。
もし、スバルが向こうの仲間であるレイ・ザ・バレルのようにあまり自分のことを話さない人物だったら、こんな迷いなんてなかっただろう。
「シン?」
と、ずっと上の空で考えていると、シンは彼女のほうを向く。
また考え込んでしまったらしい。
「なんだよ?」
シンがたずねると、スバルはにんまり笑いながらファイティングポーズをとる。
「ちょっとシューティングアーツやってみる?」
「は?」
いきなりの言葉にシンは一瞬ぽかんとなったが、シンはその意図を理解して……
「別にいい」
と軽く受け流した。
別になら習わなくてもいいし、別に習っても生かせる機会なんてないと判断したからだ。
しかし、スバルはえ~~~、とむくれてシンを見る。

 

どうしても教えたいのか……
「いいじゃん、ちょっとした基本だけだよお」
どうやら、わがままモードが発動したらしい。
自分はアカデミーで、一応白兵線は優秀な成績で習っている。
いまさら教えてもらう必要はないし、教えるのがスバルではなお更だ。
しかし、そんなことは知るはずもないスバルは、まあいいから、と必死で進めようとする。
(こいつ、本当にしつこい……)
果たして、このわがまま娘をどう言い返そうか、と脳をフル回転させるシン。
そのときだった。
ガチャリとドアが開かれ、ふとシンとスバルはそのほうを見る。
そこに、オレンジ色の髪をした少女がいた。
その顔は暗く、少しだが涙を流している。
「あ、あんたたち……あ……」
少女、ティアナは既に先にいた二人を見て、ようやく自分が涙を流していることに気づいた。
自分でも気づかなかったとはいえ、他人に涙を見られたのは、ひどく恥ずかしい。
ティアナはすぐに涙を拭くと、すぐさま立ち去ろうとする。
「お、おい」
なにかシンたちが引きとめようとしたが、それを振り払おうとそのまま引き返し、自室に戻ろうとするティアナ。
「あ……」
しかし、振り向いたそこには、はぁ、はぁ……と息をきらしているユマの姿があった。
自分を追うために、走ってきたのだろうか……
とりあえず、ティアナは3人に囲まれる形となってしまった。

 

(な……何が起こっているんだ?)
(さ、さあ……)
しかし、事情をまったく読み込めない二人は、この状況にただ迷うばかりであった。
「ら、ランスターさん……」
ユマが走ってティアナを追いかけた理由。
彼女が走って自分のところに来た理由。
なんとなくだがそれは察しがついている。
おそらく……いや、確実に先ほどのことだろう。
順位を発表されたときに起こした騒動のことだ。
「いっとくけどね、あれは間違ってない行動だと思ってるから」
まったく思っても見ないことを言われたら、一度はっきり言わないとずっと誤解を生む原因となる。
ただ、ちょっとけんか腰だったこと、完全に血が上っていたことは認める。
だけど、その行為自体は間違ってはいないと思っている。
ユマはうつむきながらティアナの話を聞く。
「私、ランスターさんの事はあんまりしらない……だから、ランスターさんがしたことがいいことなのかわからない」
「え?」
「だって、ランスターさん、あんまり自分のことを話してくれませんから」
以前言ったが、ティアナはあまり人とのかかわりをとろうとはせず、一定の距離を保っている。
最初のころは、ユマも仕方がないと思っていたが、だんだんとそれでいいのか?という疑問が膨らんできたのだ。
そして今日の事件。
「確かに、私とランスターさんは、今はただの仮のコンビだけど……」
ユマは決めた。
自分は、ティアナのことがもっと知りたい。
「だけど、仮とはいえコンビだから……ううん、一緒に組んでいる仲間だから知りたいんです。さっきのこと、本当はどう思っているのか」
まっすぐとティアナを見つめるユマに、ティアナはただ黙ることしかできなかった。
こんなこというやつを見るのは初めてで、どうしたものかと考えてしまう。
今までは、ティアナの態度に有無を言わずしたがっているだけか、そりが合わずに口げんかをしているか、のどちらかだったのだ。
(だけど……)
だが、それと同時に、これだけ自分のことを思ってくれている人もいるんだ、とも思った。
これだけ、自分のことを考えてくれている事がいるなんて、思いもしなかったのだ。

 

「私は……」
ティアナは、少し体を小刻みに震わせながら、このひとつ年下の少女を見る。
だから、なぜか彼女の前では本心をいえる気がした。
「私は、確かに空戦も、士官学校も落ちた」
それは、ある人物のことがきっかけだった。
だが、それは真っ先につまずいた。
空戦の適性検査におち、仕官学校の試験にも落ちてしまい、今はここにいる。
「だけど、だからってここを卑下しているわけじゃない。一生懸命やって、ここにいる」
それが、彼女の本当の答えだった。
ティアナの本心を聞いたユマはそっか……と嬉しそうにつぶやく。
やっと言ってくれた。
あんな態度をとってはいたが、ティアナ自身はどうでもよさそうだった。
おそらく、あれが彼女の性格なのだろう。
だけど、これで自分たちは本当のパートナーになれたかもしれないと思った。
なら、今度は自分の番だ。今度は自分が今まで黙っていた秘密を言うべきだ。
ユマはそう思い、息を整える。
そのときだった。
「おい、もういいか?」
突然聞こえた声に二人は、ん?とその方向を向く。
そして、げっ!とティアナは驚き、さぁ……と血の気が引いた。
そういえば、この二人がいるのをすっかり忘れていた。
そこには、どうしたものか、と困ったような顔をするシンと、楽しそうに話を聞いているスバルの姿があった。
「あの……あなたたちは?」
どうやらティアナはこの二人を知っているようだが、ユマは見たことがない。
ただ、彼女も顔は知らないがでこぼこコンビの事は知っているので、二人組みの男女まさか……ともいながらも尋ねる。
「あ、私は32班のスバル・ナカジマです」
「32班、シン・アスカだ」
元気よく挨拶するスバルと打って変わって、シンは申し訳なさそうな顔をする。
それでティアナは察した。
確実に聞かれてた。
「いや……俺達もすぐに立ち去ろうと思ったけど、屋上の出入り口はそこしかないから、帰ろうにも帰れなくてな……」
シンたちは帰れないまま、先ほどのやり取りを無理やり聞かされたのだ。
ある意味自分のせいとはいえ、さっきのやり取りを聞かれたと思い返したとき、ティアナの顔がカアァッと真っ赤になる。
「あ、私は39班のユマ・アカスです。それでこの人がティアナ・ランスターさん」
いまだに顔を真っ赤にしているティアナに変わり、比較的落ち着いているユマは、とりあえずティアナの分の自己紹介をする。
これが、シンたちと32班とティアナ達39班が本格的に出会った瞬間だった。