「ティアー、起きて。もう朝の4時だよ」
スバルはティアナに言われた時間帯にティアナを起こす。
イガってもいいが、そばにキャロとフリードがいるので起こさないように静かに起こす。
「ああ、ごめん。起きた」
ん、とまだ眠そうにううう、とうめきながら目を覚ますティアナ。
そんなティアナを見て、スバルは練習の事を聞く。
「練習いけそう?」
ティアナはまだ眠たそうだが、行く、といって起き上がるティアナ。
「はい、これトレーニング服」
ありがとう、といって着替えるティアナ。
「さーて、私も着替えよう」
まだ眠気が取れていないティアナはもう少しでその言葉を聞き逃すところだった。
「うん、って…なんでアンタまで?」
ティアナの言葉を全く気にしないようにスバルは言う。
「一人より二人のほうがいろんな練習できるしね。私も付き合う」
しかし、ティアナは別にいい、という。
「私に付き合ってたら、まともに休めないわよ」
しかし、だいじょうぶだよ、とスバルは言う。
「知ってるでしょ。私は日常行動だけなら4,5日くらいなら寝なくても大丈夫だって」
あっけらかんに言うが、それは日常行動だけである。
勿論なのはとの訓練もある。
「あんたの訓練は特にきついんだから、ちゃんと寝なさいよ」
はたから見ても、接近戦を主にしているスバルの訓練は自分よりも厳しいだろうというのはわかる。
だから休んで少しでも体力を回復しないと体力がついていけないはずである。
だが、スバルはそれでもやめる気はない。
まあ、スバルは言い出したらとめられないのは昔から知ってはいるが……
「やーだよ。私とスバルはコンビなんだから」
そういってスバルはティアナの方を向く。
「一緒にがんばるの」
そういってティアナは勝手にすれば、といってさっさと着替える。
スバルはそれを見て笑いながら自分も着替えた。
「で、ティアの考えている事って?」
着替えた後、二人はキャロ緒をおこっさ無いようにそーっと部屋を得て近くのはらっぱへと向かう。
「とりあえず、短期間で現状戦力をアップさせる方法。うまく出来れば、あんたとのコンビネーションの幅も、ぐっと広がるし、他のメンバーのフォローももっとすることが出来る」
それを聞いてスバルは頷く。
そうなれば、確かに戦力アップになる。
そう思うとわくわくしてくる。
「いい、まずわね……」
そういって練習を始める二人。
しかし、その奥のほうで、レイがこっそりと二人の練習を見ているのだった。
そして朝の訓練の時間。
「じゃあ、今日も引き続いて個人スキルね。基礎の繰り返しになるけど、ここはしっかりがんばろう」
なのはの言葉に、スバルとティアナは元気良く返事をする。
それを見たなのはは、ちょっと不思議に思った。
「スバルとティアナはご機嫌だけど、何かいい事あった?」
そんななのはの言葉に、いえ、と少しあわてたように答える二人。
ま、元気な頃だからいいかと思ったなのはは。
レイは、そんな二人をただ静かに見つけていた。
シンは今日の訓練を休んで、傷の治療に当たっていた。
「流石若いわね。回復が早い早い」
シャマルは笑いながらシンに言う。
シャマルの腕がいいのもあるが、コーディネーターであるシンの回復能力が普通の人間よりも高いのである。
「この調子だったら、軽い訓練くらいなら明日にでも始められるともうけど、なのはちゃんがそれを許さないと思うから、あさってくらいには参加できるんじゃない?」
そういって治療を終えるシャマル。
シンはその後どうしようかと思い、訓練を見学する事にした。
いつもしている練習も見て回る側に回れば何か学ぶ事もあるかもしれないと思ったからだ。
訓練所に到着すると、皆が一生懸命練習をしていた。
実際にするのと見るのとでは確かに違う。
「もう傷は大丈夫なのか?」
横を向くと、そこにはシグナムがいた。
「ええ、シャマル先生には大事をとって訓練には明後日から参加しろっていわれました。明日からでもできない事はないけど教導官が駄目だろうって言いそうだからって」
なるほど、とシグナムは微笑を浮かべる。
確かになのはならいいそうな事である。
シンは練習風景を見て、前からシグナムに聞きたかった事を聞く。
「副隊長は参加しないんですか?」
シンの問に、シグナムは笑いながら答える。
「私は古い騎士だからな。使い勝手の異なる新型のアームドデバイスをもつスバルやエリオに教えてやれる事はできないし、後衛のティアナやキャロ、そしてほぼオールラウンドなお前やレイに教えてやれることはない」
「そうなんですか」
「ああ。それに、私自身人に物を教えることに向いていなくてな。教えてやれる事は「敵に近づいて斬れ」としか言えん」
なるほど、とシンはシグナムの言葉に苦笑する。
ふと、スバルとティアナを見て思う。
今日はやけに張り切っているな、と思った。
二人の身になにかあったのだろうか。
ティアナなんかあれだけ自主練習をしていたのにその疲れを全く見せていない。
何か昔の自分を見ているようであった。
管理局の訓練校に入ったときの、がむしゃらに練習していた自分を。
そして引き起こしたちょっとした事件。
それは、シンのこの将来を変えるのには十分だった。
そして出会った今の相棒。
いろいろな事を思い出し、そんなシンをシグナムは少し不思議そうに見ていた。
朝の訓練も終わり、メンバーは昼食を取る事にした。
ちなみに、昼の部は3時からで、現在は1時前、昼食を取り、休息するには十分な時間だった。
「いっただっきまーす」
そのなか、スバルはいつものように元気よく昼食を取る。
その食欲を見て、毎度ながらあっけに取られる。
男であるシンやレイよりも多く食べているのだ。
ついシンが「どこにそんだけ吸収されてるんだよ」と突っ込んだが「その分動いてるから大丈夫」といってまた食事再開した。
おそらくあれを全部食べた後デザートとかいってアイスでも食べるのだろう。
シンはそう思いながら昼食を取る。
ちなみに、今日の昼食はナポリタンである。
ここのナポリタンはちょっとピンクがかっているのが特徴だ。
教官たちはこれを見て、「喫茶店」とか「マウンテン」とか「ワカヤマ」とか「登山」とか食事やナポリタンとはあまり関係のない事を言っていたが、何だったのだろうか。
そういえば「生クリームやいちごがない」とかも言ってたっけ……いかん、気分悪くなってきた。
生クリームといちごのかかったナポリタン……うぇ。
シンは少し吐き気を催しながら昼食を平らげる。
その後はする事がないし、朝も訓練(見学)が終った後なのはに「見学もいいけど、今は体を休たほうがいい」といわれたので、自室で寝ておくことにした。
なかなかこんなに寝る時間もないので、今のうちに体力の回復をしておいてもいい。
シンはしばらくの間深い眠りにつく……
「それで、彼の様態は?」
これは夢、ただ、家族を失う夢に比べ、ここ最近はあまり見ない夢であった。
「全治3ヶ月といったところですね」
金色の髪をしている女性の医師は、長い金髪の少年に彼の容態について言う。
「傷自体が深くて、もう少しずれていたらかなり危ないところでした。彼の体が異常に頑丈にできていた事が救いですね」
話の内容なこうだった。
管理局の魔術学校の生徒同士の1対1の模擬戦。
その時、彼の対戦相手は殺傷設定を秘密でONにしたまま彼に攻撃してきたのだ。
彼はそんな事を知らずに模擬戦を開始する。
魔術師としての腕では、特訓の成果もあり、対戦相手より彼のほうが少しだが上であった。
しかし、今日の彼はいささか調子が悪かった。
理由はいろいろあった。
毎日の授業はともかく。学費を稼ぐため、ほぼ毎日バイトに明け暮れていた。
そして、終った後でも居残って自分で自主学習したり、寮の前で自己流の練習をしたりしていて、余り眠っていない日々が続いた。
相するまでには理由があった。
彼は、当時の成績はあまりいい方ではなかった。
彼はこのミッドチルダ式といわれる魔法はあわないらしい。
彼はコーディネーターといって、遺伝子を操作して様々な恩恵を得るというものだ。
そういうのだからかは知らないが、コーディネーターは主にミッドチルダ式に良く見られる射撃がメインの杖上のインテリジェントデバイスではなく、接近戦がメインとなり、動き回るアームドデバイスを使用しているけいこうがある(勿論個人差にもよるが)
だから、彼ははやくこの世界の魔法になれるよう努力した。
数ヶ月そんな調子で、体調を崩さないわけがない。
ただ、運が悪くその見返りがこの模擬戦だっただけなのだ。
模擬戦の最中、急にめまいが襲ってきて一瞬ふらつく。
相手はそれを見逃さず、彼に一撃を与える。
普通ならそれで倒れるだけなのだが、殺傷設定をONにしているため、同時にあたりに鮮血がとぶ。
それであたりは騒然としている中、対戦相手は狂ったように笑っていた。
彼を傷つけた事を意ともせず、むしろ喜んでいるように彼を見下す。
そして、何とか意識をつなぎとめている中、こんな声が聞こえた。
「ざまあみやがれコーディネーター!この化け物が!!」
この言葉を最後に、彼の意識は途絶えた。
相手はコーディネーターの事を知っている星の生まれで、彼はコーディネーターの事を憎んでいた。
もともとその星の人々はコーディネーターの事を快く思っていない人が多かったのだ。
運よく会話の内容が外へ漏れることがなかったのは救いだった。
だが、結局相手はその後この学校を退学する事になり、さらには殺人未遂の容疑で逮捕される事となった。
その後の取り調べで、彼はクスリをやっていた事もわかった。
おそらくかなりの興奮状態だったのだろう。良く今までばれなかったものだ。
その時の裁判とか様々な賠償金で、シンは入院費や今後の学費(学費はともかく訓練内で起きた事故(というか事件)なのでそもそも入院費は要らない)をバイトを切り詰めなくても支払える分までにはもらう事ができた。
彼は目覚めた後、あの相手が言った言葉を思い出す。
(ざまあみやがれコーディネーター!この化け物が!!)
確かに、中には自分を、コーディネーターを嫌っている人がいるのはわかっていた。
さらに、相手は必要以上にヒステリックだった事も。
しかし、いざ目の前であそこまでいわれると当時14歳の彼にはさすがにこたえるものがある。
彼は入院中ほとんどその事を考えていた。
そして退院し、また訓練校に通うが、次期なのかすぐに夏季休暇に入る事になる。
その昼休みに、いつもチームプレイでチームを組んでて、同じ部屋で住んでいるルームメイトでもあるシンと同じくらいの少年が尋ねる。
「休暇中に合わせたい人がいる」とだけ言ってきた自分と同じ世界出身のチームメイト。
そして夏季休暇になり、そのチームメイトが言っていた人物に会いに行くために、彼はチームメイトの家に行く。
チームメイトの家にははじめていくが、彼の家の周りには様々な豪華な家が立ち並ぶ。
いわゆる高級住宅街というものである。
そしてチームメイトはある家に泊まる。
その家は、他の家にも負けない…いやその住宅街でも最も豪華なつくりをしている。
チームメイトはインターホンを鳴らし、ある人物が出てくる。
その人物を見て彼は驚く。
その人物は、プラントの最高評議会議長、ギルバートデュランダルである。
「ギル、ただいま戻りました」
そのチームメイトの言葉に、ギルことギルバートデュランダルは笑みを浮かべる。
「お帰り、レイ……君がレイが言っていた人だね、シン・アスカ君」
これが彼、シン・アスカとギルバート・デュランダル議長の出会いである。
そのあと、シンは議長と話をした後、ちょっとした検査をする事になった。
シンは不思議に思って検査をする。
どうも魔力検査らしいのだ。
少し怪しいと持ったが、流石に国のトップである人が何かするわけでもないと思うし、レイの知人なら大丈夫だろうということで、その検査を受ける事になった。
その結果を見てデュランダルは驚いていた。
せっかくと言う事で、数日の間議長の家に泊まらせてもらうことになった。
シンは豪邸での生活なんてなかったから、かなり緊張した数日間となった。
あの時出来た傷も、プラント脅威の技術力で傷口も完全に感知した。
ただ、その時の医者が少々危ないきがした。
彼は医者でもあり、プラントの兵士としても有名な人らしい。
二ルナは「ドクター」と言うことも聞いた。
そンな生活をおくっていると、議長に呼び出しを受ける。
「議長、何でしょうか?」
シンは彼の部屋に入る。
そこには既にレイもいた。
そして、そこには二つのデバイスのようなものがあった。
「私から、ちょっとした贈り物をしようとおもってね」
そういって二つあるうちのデバイスをシンに渡す。
「以前した検査は、実はこのデバイスの適格者を決めるものだったのだよ」
技量の言葉にシンはえ?と議長のほうを向く。
「そして君はその資格を得た。おめでとう」
なんでも、議長は議長であると同時にかなり名のある剣術を使い手。
さらには遺伝子工学の博士号をとっていたりデバイスマスターの資格を取っていたりとさりげなくかなりの人物だった(ある意味化け物といってもおかしなないだろう)
「そ、そんな。受け取れませんよ」
シンはそういって返却しようとするが、デュランダルはそれを逆に拒否する。
「いや、これは君が手にする権利がある。君は素質があるし、何より私からのお願いだ」
議長にそこまで言われて、シンはデバイスを手に取る。
『おはようございます。マイスター』
デバイスから発せられる声。
「ありがとう。あと、このデバイスの名前だが」
そういって議長はデバイスを見る。
「この名前はインパルスと言う」
「ン…シン」
シンは誰かに起こされた気がして目を開ける。そこにはレイがいた。
「ん、レイ?」
シンは目を覚まし、周囲を見ると既に日は暗くなっていた。
「どうした、へんな夢でも見たのか?」
レイにそう言われてシンは苦笑しながら言う。
「いや、ちょっと昔を思い出しただけさ」
シンの言葉にそうか、とレイは
「そろそろ食事の時間だ」
そういわれてシンは起き上がる。
「それと、教官から伝言がある。傷の具合によっては明日から訓練に参加するかもしれないそうだ」
わかったといってシンはベッドからと立ち上がる。
おそらくスバルたちのことだから待っているだろう。
待たせてたら何を言われるかもしれない。
そう思って二人は食堂へと急ぐのであった。
その日の深夜、今日もティアナとスバルは訓練をしていた。
「やった……」
その二人の顔はすがすがしく、誰から見てもうれしそうにしている。
「やったねティア」
いつもならうるさいといういつものスバルの言葉も、今回ばかりは素直にええと言う。
「やっと完成した。クロスシフトC……」
訓練の成果はばっちりであった。
後は模擬戦の日を待つばかり。
「けど、アンタはそれでいいの?」
ふいに、スバルはティアナに聞かれる。
「練習に付き合ってくれるのはうれしいけど、それはアンタの憧れのなのはさんに逆らう事になることになるから」
ティアナの言葉に、スバルは笑いながら言う。
「私は逆らうのも怒られるのも馴れてるし、それに逆らってるって言っても強くなるための努力だもん。
結果を出せばわかってくれるよ。」
そのあと、スバルは憧れの人を思いながら言う。
「なのはさん、やさしいもん」
そういってにっこりと笑うスバル。
だが、いつもどおり、誰にも気付かれないようにこそっとレイは二人の様子を観察していた。
旗から見ればストーカー?とか家○婦は○た?とか言われてもおかしくはない。
レイは気付かれないように、ゆっくりと部屋に戻って行くのだった……
そして時は過ぎ、模擬戦の日がやってくる……
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