「私が彼を出会ったのは10年位前の事だったね」
議長は思い出す。ある少年との出会いを。
その少年は逃げていた。
もう嫌だった、ただの研究材料にされている自分が、そしてそのたびに失敗作、欠陥品と呼ばれることが……
だから彼は逃げた。
だが、いくら逃げても貴重な研究、または実験材料を手放すはずがない。
研究所からは捜索の部隊が出される。
さらに、カナードの腕には脱走されてもすぐに見つけるために発信機がつけられていた。
これでどこに逃げたのかのすぐにわかってしまう。
そこで、少年がとった行動は、偶然忍び込んだ研究所にあるレーザーでその発信機を壊すというものであった。
「だめか……プロテクションがかかってる」
だが、発信機にはプロテクションがかかっており、そう簡単には破壊できる物ではなかった。
こうしている間にも、捜索隊がきてしまう。
そこで少年が考えた事は……
「ならば腕を切り落とす!!」
そういってレーザーに自らの腕を当てようとしたときだった。
「誰はと思えばまだ子供じゃないか、そんな物騒な事をして何をしているつもりだね?」
そこにある男が現れた。
どうやらこの研究所で働いている研究者のようだ。
少年はその研究者に向かっていきなり襲いかかった。
「この反応……」
しかし、その研究者はひらりとかわし、その少年を見据える。
「君は、スーパーコーディネーターの実験体かね?」
研究者の言葉に驚く少年。
「これでも遺伝子について研究しているのでね。それに、君のような少年があのような動きはなかなか出来ないからね」
笑いながら言う研究者に、少年は唖然とする。
「それで、君は逃げて何をしたいのかね?自分を創ったものにへの復讐でもするのかね?」
研究者の言葉に、少年は黙り込む。
「いや、そんな気はない。確かに俺を作ったやつが憎いがそんなことをしても意味がないことはわかっているつもりだ」
それに、と少年が知っている事を言う。
「既に俺を作ったやつの半数はブルーコスモスに殺されている」
なるほど、と研究者は少年を見る。
「じゃあ、なぜ逃げてきたのかね?」
研究者の言葉に、少年は俯く。
どうやら考えていなかったらしい。
まあ、彼の体を見るに、かなりひどい事をされたのだろう。
それでそこから逃げ出したいと思うのは当然の事であった。
ならば、と研究者はある事実をつける。
「君はスーパーコーディネーターの出来損ないといわれているが、その完成品がブルーコスモスに殺されず、まだ生きていたらどうする?」
その研究者の言葉に、え?とそのもののほうを見る。
自分はすっかり、そいつもブルーコスモスに暗殺されているとばかりおもっていたのだ。
「それで……そいつを倒せば俺も本物になれるのか?」
少年の言葉に研究者は微笑むが、その時、サイレンの音がなった。
「どうやらきたみたいだね。悪いけどこの事は話させてもらっていたよ」
そういってこの場を後にする研究者。
「ま、待て!お前の名前は!?」
少年の言葉に研究者は振り向く。
「私の名前はギルバート・デュランダルだよ。君は?」
研究者、デュランダルの言葉に俺は…と俯いて、再度頭を上げてから自分の名前を言う。
「俺は、カナード・パルスだ」
そういって少年、カナードは名乗ると、デュランダルは微笑んで最後に言う。
「そのスーパーコーディネーターの名前は……キラ・ヤマトだ」
その言葉と同時に、研究所のドアから、質量兵器などを武装した人たちがやってくる。
その人たちに連れられていくカナード。
しかし、その表情は笑っていた。
悪意のある笑みを
「キラ…ヤマト……」
その後カナードはいつもの研究所へ連れて行かれた。
その時、彼はずっと考えていた。姿すら知らない完成体の事を……
あまたの兄弟達の犠牲のもとに作成された弟の事を……
議長は10年前の昔話(?)を話し、ふう、と一息つくデュランダル。
その話を真面目に聞く一同。
「それで、ロッサを襲ったんはカナード執務官と言うことなんですか?」
はやては議長の話を聞いて、今回の件について考える。
それでカナードのロッサとのかかわりはさっぱりわからなかった。
仕事で一緒にいたところは見たことはあるが……
「それは私にもわかりかねませんが、キラ・ヤマト関連ならその可能性は高いでしょうな」
議長のその可能性を大いに認めた。
それで少し考えて、つぶやく議長。
「彼はこのときを待っていたのだろうな、キラ・ヤマトを倒す事が彼が生きている理由なのだから……」
もっとも、そうさせた一番の要因は自分だが、と心の中でつぶやく。
だが、ああでもいわなければ彼は生きる意味を失っていただろう。
だが、ラクス・クラインの護衛を現在しているが、一応は非公式のことだ、すぐに見つかると言うことはないだろう。
彼に襲われたロッサと言う男も、その対策はしているだろう。
そし、その中でフェイトは何か考えているように俯いてた……
「か、カナード!貴様、どういうことだ!!」
議長がカナードを話をする少し前、もう少しわかりやすく言うと、
カナードが昔自分を創ったものの一人とであった後、すぐにカナードはジェラードのものへ向かった。
「だから言っただろう。俺はここを、管理局を抜ける」
カナードのいきなりの言葉に、ジェラードは唖然とする。
「言ったはずだ、お前に協力するのはキラ・ヤマトを見つけるまでだという約束だ。
ついさっき、そのキラ・ヤマトのある程度の居場所を突き止めた。
ここまでだ、ジェラード」
そういって、彼はこの場を去ろうとする。
「ま、待て!」
しかし、ジェラードはまだ彼を引きとめようとする。
そんなジェラードを見て、カナードは彼を睨む。
「これ以上俺を止めると、あの事を話すぞ。
お前はこの地位に上り詰めるまで行ってきた事をな……」
カナードの言葉に、ジェラードはとうとう黙り込んでしまう。
「じゃあ、後の事は任せたぞ」
そういって、カナードはその場所を後にして、カナードはコズミック・イラへと向かった。
自分が自分であるために……
このとき、一人の管理局執務官は管理局を辞めたのであった
その後、ストームレーダーに戻り、クロノを通じて本局と地上本部にカナードの事を聞いたはやてだが、どうやら彼は既に管理局を離れたらしい。
もしかしたらもうこの世界に向かっているかもしれない。
本来、機動六課とは関係ないことなのだが、黙って見過ごすわけにもいかない。
「そういうわけで、本局からの指令、それとこの世界いる管理局員はうちらだけということもあって、
機動六課はカナード・パルスの捜索、そして逮捕の任務を請け負う事になった」
ミネルバ内でこれからの話をするなのは達機動六課。
何故彼女達がいまだにミネルバにいるのには理由がある
現在、カナード・パルスを捜索しているのだが、彼がどこにいるのかさっぱりわからないという事である。
そこに助言をしてくれたのは議長であった。
彼はおそらく自分が生まれたところに足を運ぶだろう、と
彼が生まれた…いや、作られた場所は宇宙にあった。
既にバイオハザード事件で、まだコロニー自体は生きているが、既に無人のコロニーだ。
議長はイザークに事情を話し、特別にメンデルまで運んでくれる事になった。
「失敗作、か……」
シンは与えられた部屋でさっき聞いた議長の話を思い出す。
以前は彼の部隊に入っていたが、どうにも彼が失敗作とは思えなかった。
それ以前に、彼がコーディネーターであることにも驚いた。
今まで一度のそんな事を聞かされていなかったからだ。
まあ、自分もほとんど言わなかったからお互い様だが。
ふと、シンは外を見る。
自分は何回か体験しているが、おそらくスバルの事だから初めての宇宙に騒いでいるだろう。
そのシンの予想通り、スバルはじっと宇宙空間を見つめていた。
「すごい……」
初めての宇宙空間に、スバルは目を輝かせながら宇宙を見る。
普通ならティアナがそれをいさめているのだが、ティアナも初めての体験なものだからぼうっと宇宙空間に心を奪われていた。
「本当…」
本局がある次元空間とはまた違う宇宙空間。
「飲み物もって来ました」
と、先ほどからミネルバ館内を散策してきたエリオとキャロが飲み物を持ってきた。
「あ、ありがとう二人とも」
スバルは飲み物を受け取り、ぷしゅ、とプルタブをあける。
「この船って、手すりがエスカレーターみたいになってたんですよ」
キャロもキャロで珍しいものを見てうれしそうに話す。
「そりゃあ、重力がないから普通のエスカレーターは使えないよねえ……」
笑いながらスバルはジュースをうちへ運ぶ。
「けど、私も宇宙は始めてやなあ」
その頃、スバルたちとは離れた場所で、隊長陣は隊長陣で話をしていた。
はやての言葉に、そうですね、とシグナムは頷く。
一同が思い思い話をしている中、フェイトとなのははどこか上の空であった。
「二人とも、どうしたんだよ?」
ヴィータの言葉に、え?と二人は同時にヴィータの方を向く。
「べ、別に同ってこともないよ、ねえ」
「う、うん」
二人は渇いた笑いを浮かべるが、シグナムはため息を付きながら答える。
「テスタロッサはカナード・パルス。高町はアスカが見つけた少女といったところか」
「「う」」
シグナムに図星を言われ、二人は渇いた笑みのまま固まる。
「まあ、確かに二つとも重要な事やなあ……」
少女のそうだが、今はカナード・パルスの事が重要である。
果たして、彼は本当にメンデルにいるのだろうか?
その中、フェイトは彼の事を以前の自分に似ていると感じた。
彼の行動を見ると、昔の自分、プレシアに認めてもらおうとがんばっていたときの事を…
「カナード・パルスか……やつの実力の噂は聞いている」
何せカナードは執務官の中でもかなりの実力の持ち主である。
その腕は、同じ執務官であるフェイトとほぼ同等かそれ以上とまで言われている。
さらに、彼もはやてと同じで、特殊なレアスキルを持っているという。
だが、所詮は一人だ。
隊長陣で取り囲めば恐れるものはないとはやては思っている。
最も、この作戦を思いついたとき、シグナムはかなり不満そうな顔をしていたが。
そのなか、フェイトはある事を口にする。
「はやて、今回の件、私に任せてくれていい?」
「くそ、やってくれる……」
カナードは舌打ちしながら目の前の研究所を見る。
ヴェロッサからデータを奪ったのはいいのだが、そのデータ自体にキラ・ヤマトの居場所を記されていなかったのだ。
データにあったのは、彼の秘密と、ある人物のボディーガードをしている事ぐらい。
だが、それが誰なのかは記されていなかった。
「わざとか……」
おそらく、ロッサは念を入れて大事な事は伏せていたのだろう。そして、大丈夫だとおもえば自らの口を開くといったところか。
それならゆっくりと探せばいい。
だが、その前に行きたいところがあった。
そこがこの研究所。
ここでキラ・ヤマト、そして自分を含めた失敗作が作られた研究所。
カナードはここにキラ・ヤマトの事で何か情報があると思ったが、流石に何もなかった。
その時、カナードは散らばっている写真の固まりを発見する。
まあ、そんなものはどうでもいい、そう思いその部屋を出ようとしたときだった。
自分のほかに魔力の反応を感じたカナードとハイペリオンは感じた。
その数値は高く、魔力数値だけで考えると自分と同じくらいだろう。
いや……
(外にも何人かいるな……)
研究所の外にも何人かの魔術師がいる。
しかも、どれもこちらへ向かってきているものと同じ魔力数値のものばかりである。
管理局がここをかぎつけたのか……
そう思うと、ぎいぃ、と目の前の扉が開かれる。
(確かあいつは……)
カナードはその人物に見覚えがあった。
服を見るからに、その人は執務官であることがわかる。
金色の外髪をなびかせている女性は、かつて何回か面識があった。
名前は確か……
「管理局執務官、フェイト・T・ハラオウンです。少し話を聞かせてもらいます」
シ「カナードと一人で接触を図るフェイト」
レ「そして明かされる、自分がうまれた秘密とそれにより被害となった命を…」
フェ「次回、魔道戦士まじかるしん「残る命、散る命」に、テイクオフ」
シ「あれ?これって運命でもあるけど全然違うものじゃなかったっけ?」
レ「そうだが、このSSにはそんなものは通用しない」
ス「そうだよね……(汗)」
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