「くっ」
フェイトはザスタバ・スティグマドを回避し、魔法陣を展開させる。
「プラズマランサー、ファイア!」
魔法陣から放たれる雷。
『アルミューレ・リュミエール』
カナードはそれを避けようとはせず、フィールドを発生させて防ぐ。
「く…」
プラズマランサーの衝撃がフィールドを発生させてもカナードに苦痛の顔をゆがませる。
確かにこの執務官、かなりの力を持つ。
長期戦で相手の窒息をまとうかと思ったが、下手をすれば自分が不覚を取るかもしれない。
そう感じたカナードは作戦変更、全力で叩き潰す事にした。
カナードはプロテクションを解除すると共に、ランサーが直撃する前に跳躍する。
『ロムテクニカ』
カナードは装備をマシンガンからナイフに変更し、フェイトに切りかかる。
フェイトもバルディッシュを構え迎撃する。
ロムテクニカとバルディッシュがぶつかり、周囲から火花が舞う。
だが、こうなると力勝負となり、カナードが優勢になる。
『マスター、ここは一度退避したほうが。空気もそろそろ苦しくなる頃です』
バルディッシュの提案に、フェイトは頷く。
一度外にでて、なのはたちと合流する必要がある。
だが、まずはカナードを撒かなければならない。
「ふん!」
そう思慮していると、カナードは力押しでフェイトを突き飛ばす。
その隙を逃がさず、カナードはフェイトの顔面に思いっきりけりを入れる。
「う…」
フェイトハ何とかプロテクションをはって防ぐが吹き飛ばされる。
だが、これで彼と距離をあけることが出来た。
なら行動は迅速に行うべきだ。
「バルディッシュ、サードフォーム」
フェイトの命令と共に、バルディッシュはその形状を斧から魔力刃で出来た大きな大剣へと変化した。
そしてフェイトがとった行動は…
「はあぁぁーーー!」
フェイトは壁に向かい、思いっきりバルディッシュを振り下ろす。
バリアがかかっているのはドアだけである。
なら、壁は単純に破壊可能。
それなりに頑丈な壁なのだろうが、関係なく壁を破壊するフェイト。
そして、そのまま逃げる。
早くここを脱出しないと、窒息死してしまう。
「ちぃ…」
カナードは舌打ちするが、心を何とか平常に戻す。
あせる事は内、あいつはここの地図を知らない。
さっきも言ったとおり、壁は頑丈にできている。
それを片っ端から破壊するとなると、かなり体力を消耗する事になる。
カナードはいきなりだらりと猫背のような状態になり、右手を後ろに突き出す。
すると、奇妙な光景が出現し、彼の周囲にある床などが砕けていき、それが彼の腕に集まっていくのであった。
「超重斬!」
「クリティカルブレード!」
その頃、拳銃所に向かったシンとレイ。
二人もフェイトと同じように、バリアで覆われていない部分を攻撃し破壊する。
中は、何かそうこのようなところであった。
「インパルス、残り酸素濃度は?」
『通常の70%です』
インパルスの報告にあせる二人。
問題は、後数分でフェイトを見つけ出せるかだ。
「シン、これを見ろ」
そのときだった、レイはあるものを見つけた。
それは、どこをどう見ても酸素ボンベであった。
おそらく非常用においてあるのだろう。
「執務官の救出と往復にどう考えても10分では難しい…いや、それよりも短い。持っていれば役に立つかもしれない」
そう、いくら10分ですべて酸素がなくなるとはいえ、薄くなるにつれて息苦しくなり、酸素の補給が間に合わなくなる事を考えると、本当に厳しいのだ。
レイはそういうと、近くにある持ち運びがしやすい小さなボンベを持とうとしたときだった。
ガシャン、ガシャンと何かが二人の下に近づいてくる。
機械的な足音ではないのでフェイトではないことは確かだ。
だが、モビルガジェットのようなものではない。
と言う事は……
「やはり中にもいたか……」
現れたのは、先ほどまで自分が戦っていた魔道機械であった。
これで、さらに急がなくてはいけなくなった、と二人は思いながら武器を取る。
「早く決めるぞ、シン」
「ああ!」
二人は魔道機械のほうへ向かっていった。
「レイジングハート、中の様子は?」
なのはは敵を片付け、中の様子を尋ねる。
『現在の酸素濃度50%、あの中に入るの危険です』
レイジングハートの言葉にそうとなのはは研究所を見る。
まだ、敵が数万いるとかならレイジングハートの制止を振り切ってでも(レイジングハート自身も早く助けに行きましょうといいかねないが)行くのだが、
流石にもうすぐ酸素がなくなる研究所に突っ込むというのは、なのはでも得策ではないと思う。
誰もいないのなら仕方ないが、既にレイとシンが向かっている。
今はあの二人にかけるしかない。
なのはは気持ちを切り替え、スバルのほうを見る。
「これで、最後!!」
スバルは懇親の力をこめて、残っている魔道機械に一撃を見舞う。
それは腹部を貫通する。
「え?」
まさか貫通するなどとは思わなかったスバルは反応が遅れる。
そのまま爆発する魔道機械。
「うわ!」
それをまともに受けてしまったスバル。
その煙でむせ返ってしまう。
「けほ、けほ……あー、ぼろくなってたの忘れてたー」
建物と同じように、この魔道機械も老朽化が進んでいたようであった。
「かなり上達しているな」
横にいるヴィータの言葉に、そうだね、となのはは微笑みながらいう。
日々の訓練に加え、今回の緊急出動もかなりぴ売らすになっているようだ。
新人達はものすごいスピードで成長している。
それを教えている事を誇らしく思うなのは。
「さて、あいつら…間に合うのか?」
ヴィータも研究所の中を見る。
「せやから二人とも、おちついて。シンとレイもおるんやし、問題ないって」
「そうだよ、だから、ね?」
なにやら騒がしいと重い声の要を見ると、今にも研究所に突撃しそうなエリオとキャロをなだめているはやてとスバルたち。
「ですけど、早く行かないとフェイトさんが……」
キャロは今にも泣き出しそうである。
「だけど、向こうにはシンとレイがいるんだし大丈夫だよ。あの二人なら酸素がなくても活動できるらしいし……私たちが行っても何も出来ないしね」
スバルの言葉に何とか思いとどまり、研究所のほうを見る二人。
(二人とも、早くフェイトちゃんを助けてあげて……)
「はぁ…はぁ…」
多数の魔道機械の残骸が並ぶ中、フェイトは深く息をしながら周囲をみる。
このようにしないと、なかなか酸素を吸い込めない。
(バルディッシュ……どう?)
『残り30%、非常に危険です』
バルディッシュの言葉に、そう、とフェイトはもう一度深く息をつく。
これは早く戻らなくては、そう思い移動しようと思ったときだった。
急に目の前にある壁が壊れたのだ。
それと同時に、フェイトの首に何かが掴みかかる。
「あ…が…」
それはお思いっきり彼女の首を絞め、窒息させようとする。
壁を壊した衝撃の煙で何かわからなかったが、それがだんだんと見えるようになってきた。
「ここまでだ……」
今フェイトの首を絞めているのはハイペリオンなのだが、何かが違う。
(こ…これは……)
フェイトは何とか意識を保とうとする中、フェイトを掴んでいる腕を見る。
明らかに人もものでもないし、モビルジャケット時のものでもない。
さらにその肩には3枚の羽のようなものもある。
全く未知のものであった。
「これが俺のアルター…もといレアスキル「シェルブリッド」だ」
カナードはこの腕の事を簡単にレアスキルのようなものだと説明した。
そういって、再度フェイトの首を絞めるカナード。
「が…あ…ああ……」
その力は異常だった。
いくらモビルジャケットを着ているからといっても、このような力が出るのだろか。
とうとうフェイトの意識が朦朧としだす。
本当にフェイトの意識がブラックアウトする瞬間、何かが聞こえた。
『デリュージー』
二つ魔力弾がカナードに向かって放たれる。
「これは?」
カナードは魔力弾を見て、それが見覚えのあるものだと気付く。
魔力弾はカナードに命中し、カナードはフェイトを話す。
「がは…はあ…は…はあ……」
フェイトはやっと開放されるが、既に酸素はほとんどないため、酸素をとりいえれる事ができない。
フェイトは本当に死とはこういうものなのかと感じた。
「はあぁぁ!!」
そこで、ザクになったレイがファルクスで切りかかる。
カナードは右手でそれを受け止める。
(これがバルス執務官の能力か……)
いくら魔術師としての能力が上だとしても、ファルクスを素手(実際はそうではないが)て受け止めるとは…
だが、これで隙を与える事ができた。
「シン!」
レイの言葉と共に、シンは驚くべき行動に出た。
「フォースシルエット、パージ!」
シンの命令と主に、インパルスの背中にあるフォースシルエットが射出される。
レイも、スラッシュウィザードからブレイスウィザードに変更する事で武器の大きさが変わり、さらにカナードへの隙を作る。
それと同時に下がり、シンははフェイトを抱えその場を後にする。
そのときには、シンがパージしたフォースシルエットが最大戦速でカナードに襲う。
カナードはそれを受け止める。
既に最大戦速で突き進んでいくそれは、カナードにかなりの衝撃を与える事となる。
「考えたな……だが!!」
カナードは思いっきりフォースシルエットを弾き飛ばす。
だが、二人の更なる手土産がおいてあった。
そこには大きな酸素ボンベがおいてあり、その周囲にはこの世界のモビルジャケット「ザク」に搭載されている火薬を使っていない魔力爆弾があった。
あくまで個人の防具用で、威力は少ない。
だが、この酸素ボンベには穴が開いていた。
そこに魔力爆弾が爆発した。
小さな爆発だが、酸素ボンベにある高密度の酸素を吸収し、巨大な炎となって周囲を燃やし尽くす。
その爆発を見て、二人は急いできた道を戻る。
「なんとか巻いたな……」
ちなみに、先ほどフォースシルエットをパーにしたが、魔力を消費して再度精製する事は可能である。
最初は元から魔力を注ぎ込む事によって、戦闘中は魔力無しで呼び寄せる事ができる。
レイは少しほっとするが、これで終わるとは限らない。
もしかすれば、このまま逃げるかもしれない。
だが、今はフェイトの救出が最優先である。
一方そのフェイトは、シンにお姫様抱きかかえられ、渡されたボンベで酸素を得ている。
(二人ともありがとう)
フェイトは抱きかかえられ、少し恥ずかしがりながら二人に礼を言う。
その時だった。
後ろから、なにやらけたたましい音が聞こえてくる。
「まさか……」
レイは少し冷や汗をかきながら後ろを向く。
そこには、片っ端から壁をぶち抜いて二人を追ってくるカナードの姿があった。
な「何とかカナードを巻き、フェイトを救出する事ができたシンとレイ」
ス「勿論、カナードも追撃を開始する」
ティ「そして、研究所外で野戦いが始まる」
エ「次回『ベルカの騎士』お楽しみに」
シグ「やっと私たちの出番か……」
ヴィ「ずっとフォワード陣の内容で、さっきもフェイトがメインだったからな」
な「……」
フェ「し、心配ないよなのは。この事件が終われば出番もあるっていってたし」
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