Seed-NANOHA_まじかるしん_第3話

Last-modified: 2022-05-29 (日) 20:50:23

「ひどい………」

なのはは空から周囲を見て嘆く。

辺りには炎があがっているところもあり、あちらこちらに局員が倒れている。

自分が教えたこともある局員の姿もある。

そして、その被害のほぼ中心地に、自分の同じ年くらいの男がいた。

なのははさっき男に威嚇として威力を抑えたディバインバスターを放ち、男もなのはの存在に気付いた。

男、オルガ・サブナックはなのはを見て一瞬笑い、持っているデバイスをかかげ、なのはにむける。

「ちょっとまって、あなたはいったい…」

『トーデス・ブロック』

確かに先に仕掛けたのは自分なのだが、話なんて最初から全く聞く気が無いようで、先制攻撃を仕掛けるオルガ。

オルガの周囲に現れたのはバスケットボールくらいの大きさの球状の魔力が二つ。

そのうちの一つをなのはにめがけて発射する。

ずっと前にもこんなことがあったような……そう思いながら得意の防御魔法を発動する。

『プロテクション・パワード』

なのはの目の前に桜色の障壁が出現し、目の前に迫る魔力を防ごうとする。

しかし………

「はっ!」

オルガは鼻で笑いながら指示を出す。

「弾けやがれ!」

『発光』

オルガのデバイス、カラミティが指示を出し、トーデスブロックは障壁に迫る前に弾け、激しくまばゆい光を放つ。

「うっ」

突然の発光に、なのはは目をつむってしまう。

プロテクションは張ったままだが、出力が弱まってしまう。

そこに、もう一つのトーデスブロックがなのはを襲う。

「くっ」

一つのトーデスブロックを発光させ目くらましを起こし、もう一つの本命をその隙に叩き込む。

これがオルガの得意戦法である。

プロテンションと魔力の激しいぶつかり合いの末、トーデスブロックが爆発する。

この手段で多数の魔術師を倒してきたオルガ。

意外とあっけない、そう思いオルガはあまりの期待はずれにため息を吐きながらその場を去ろうとしたと時だった。

「な、何!」

急に、オルガの手足にバインドがかけられた。

「んだよ、このぉ!」

オルガが必死にバインドを解こうとするが、なかなか外れない。

そこへ、声が聞こえる。

「いい手段だったけど、発光と爆発のせいで相手を倒したかどうか確かめられないのが弱点だね」



そこには、さっきの女が無傷のままオルガに向かってデバイスを向けてたっていた。

(無傷だと……)

あれを受けて無事、しかも無傷ですむ相手なんて今までいなかった。

「私は、時空管理局教導管、高町なのは。今回の騒動を起こした理由は?」

対してなのはは、オルガに今回の騒ぎの理由を聞こうとする。

別に話さないつもりもないし、どうでもいいオルガは簡単に、一言で言う。

「しらねえよそんなもん」

「え!?」

意外とあっさり喋った事と、知らないという言葉になのははびっくりする。

「しらないって、そんなわけ無いでしょ!」

ふざけているのか、なのははそう思う。

対してオルガは、バインドを解こうとしながら答える。

「俺は……ただ…暴れろって言われただけだ……上の連中の理由なんて知ったこっちゃねえよ」

相変わらずあっさりしゃべるオルガ。

「じゃあ、命令した人の名前は?」

もしかしたてこの調子なら言ってくれるかもしれない。そう思ったなのははストレートに答える。

だが、流石にそのことは言わないオルガ。

戦況は、以前なのはが有利のまま、しかし……

『マスター、後ろです』

「え?」

レイジングハートに言われて、後ろを振り向いたとき、ものすごい速さでチェーン状の魔力につながれた鉄球が、棘状の魔力を発しながらなのはに突っ込んでくる。

予想以上のスピードで、レイジングハートのプロテクションを発生させる前に、鉄球はなのはの腹部に直撃する。

「あぐ!」

その衝撃で吹き飛ばされるなのは。

「いただき」

『エクツァーン』

さらに別の魔術師らしき人物が放つ魔力が吹き飛んでいるなのはをおそう。

今度はプロテクションを張るが、衝撃は防御しきれず、そのまま吹き飛ばされる。

「きゃあ!」

そのまま、なのははビルの中に突っ込んでいく。



オルガは急に不機嫌になる。

あの魔術師にかけられたバインドを解こうとしたとき、いつもの「お仲間さん」に獲物を横取りされる。

さらに……

「オルガ、お前なにやってんの?」

「正直言ってださいよ、それ」

バインドで縛られたままなので、二人に笑われる。

「うるせえ!お前らこそなにやってんだ!!」

オルガはやっとバインドを解き、吹き飛んだなのはのほうを見る。

「別に。適当に暴れてて、おまえがあれ使ったのが見えただけさ」



赤髪の男性、クロト・ブエル、緑色の髪の男性、シャニ・アンドラス。二人もオルガと同じくただ暴れろといわれてあばれて、飽きてきたと思ったら、オルガがあの発光コンボ(クロト談)を使っているのを見かけた。


「それで、あいつが無傷でおりてきてさ、どうせだったらあっちとやりあったほうが面白そうだったから。まだピンピンしてるみたいだし」

シャニはビルを見ながら答える。

そこには、さっきの二人の攻撃を受けても、なお立ち上がってこちらに向かっているなのはの姿がある。

しかし、二人の攻撃とビルに突っ込んだ衝撃で、あちらこちらに傷があり、クロトの鉄球、ミョルニルを受けた腹部も手で抑えている。

プロテクションを張らずに、あの攻撃を受けてまだあの状態でいて、その闘志は消えていない。

オルガはそれを見て、真っ先に攻撃を加えようとする。

「あれは俺の獲物だ!おまえら邪魔すんな!ひっこんでろ!」

だが、そんな言葉は二人には無意味だった。

「おまえ、あいつに一度つかまってんじゃん。次は俺だよ」

「なに言ってんだよシャニ!あいつは僕にやらせろよ」

いつもの如く二人は言い合いになり……

「馬鹿が!」

その隙にオルガはなのはに攻撃を加えようとする。

そのときだった。

『プラズマランサー』

雷のような複数の魔力がオルガたちの周囲に降り注いだ。

「なんだ!?……上?」

クロトたちも喧嘩をやめて上を見る。

そこには、黒いバリアジャケットを身にまとった魔術師と、白いコートのようなバリアジャケットを身にまとった魔術師がいた。



「フェイトちゃん、はやてちゃん………」

なのはは、親友の登場にほっとする。

あきらめる気は無かったが、正直どうしようかと模索していた。

相手は3人、しかもこっちは負傷している。

そんなときに、彼女達はかけつけてくれた。

けん制したあと、二人はなのはの元へ駆けつけた。

「なのは、大丈夫?」

フェイトの声に、平気だよ、というなのは

だが腹部を抑えている手で嘘だとすぐにわかった。

「フェイトちゃん。なのはちゃんにそれ言っても無駄や」

それを聞いて、それもそうだね、とフェイトは笑う。

なのははいつも他人を心配させないと無理をしたり平気でもないのに平気という。

はっきり言って逆にそっちのほうが心配なのを早く理解して欲しい。

だが、そんな話をする時間などは勿論無い。

「とりあえず、あの3人何とかしよ」



そういってはやては考える。

本来は自分が二人の援護をするのだが、負傷しているなのはを相手に任せるのは得策ではない。

かといってフェイト一人に任せるのも酷だ。

しかも結界のせいで念話が出来ず増援も呼べない。

考えていると、なのはははやてにいう

「はやてちゃん。私大丈夫だから」

これくらいの傷、どうってことないといった感じでレイジングハートを構える。

いや、無理でしょ?見ててもわかるし。

だが、なのはは一度こうと決めたらてこでも動かない筋金入りの頑固者である。

どうせ言っても無理だろう。そう思った。

「わかった。でも、あんまし無茶せんといてよ」

なのははは振り向かずにわかってる、という。

本当にわかってるんやろか…と心配するはやて。

だが、ここは菜の葉とフェイトに任せるしかない。

なのはちゃんのフォローは自分ががんばったらええ。

フェイトもそれをわかっているのか、少しはやてのほうをみて頷く。

オルガたちも、なのはたちをみる。

「オルガ、やっぱあいつやっていいよ。俺はあの黒いのとやるから」

そういってシャニはデバイス、フォビドゥンを構える。

「手負いの相手やるのも面白くないし、やっぱ僕あいつにしよーっと」

じゃらり、と一風変わったクロトのデバイス、レイダーを持つ。

オルガはなのはと戦いたいのは変わらない。

そのなかで戦いは始まる。



「なんなんだ、さっきの?」

シンはさっきの妙な光を見て考える。

さっきから結界を張っていそうな奴を探していたが、インパルスは索敵には向かないし、シン自身そういうのは苦手であった。

それでも探していると、いきなり光が現れたのだ。

『マイスター。いっそのこと行ってみてはどうでしょうか?何も手がかりがない今、行動してみると何か得られるかもしれません』

インパルスの考えに、シンも確かに、と思う。

そのときだった。

「おらどけどけー!」

後ろから声が聞こえて、シンは振り向くと、猛スピードで女の子が突っ込んできた。

「な、なんだ?」

そのまま少女が突っ込めば、確実にシンに激突するが、少女はよける気がなさそうだ。

「おわ!」

シンはかろうじてそれをよける。

すると、急ブレーキのように少女はとまる。

「ボーっとすんな!あぶねーだろ!!」

あぶないのはどっちだよ、とシンはため息をつく。

(まてよ、こいつどっかで……)

しんは、この赤い髪に少女をそこかで見た感じがする。

考える前に、少女から話しかける。



「あ、そうだ。おいお前、はやて知らないか?八神はやて」

いきなりえらそうに、シンはそう思うがおそらく彼女に言っても聞かないだろう。

「はやてって…確か機動6課の八神はやて二等陸佐のことか?」

確か名前だけは聞いたことがある。なんでも若くしてSS級の実力を持つ魔術師だと聞く。

シンの言葉に知ってるのか?と聞いてくる。

「いや、名前しか聞いたことないし……それよりお前は何をしに着たんだ?お使いか?」

それを聞いて少女はむっとするが、ぐっとこらえた。

「この町にはやてがいて、なんか事件があるから駆けつけたんだよ。念話もできねえし。ああ、どこにいるんだよはやて~」

さっきの威勢はどこへいったのか、だんだん落ち着きがなくなっていく少女(元からなさそうだが)

「えっと、さっき妙な光があったから、そっちに行ってみたらどうだ?俺もそっちに行って確かめたいこともあるし」

シンの言葉に少女はおっしゃ、サンキュ、といってすっ飛んでいった。

続いてシンもつづいて行こうとしたが…

「な……なんだよあれ………」

シンは、奇妙な円柱の光を見る。

何かあることは間違いない、シンは感じる。

場所も図書館に近く、レイが駆けつけているはずだ。

だが、シンはさっきの光は少女に任せ、自分はあそこに言ってみることにした。



「バルディッシュ、ハーケンフォーム」

『イエス・サー』

フェイトはバルディッシュをアサルトフォームからハーケンフォームに変える。

それを見たシャニはすこし驚く。

「へぇ、アンタもそういう武器使うんだ」

そういってシャニはフォビドゥンを構えなおす。

『ニーズヘグ』

フォビドゥンの形状がハーケンフォームに似た鎌のような形に変わる。

「なら、尚のこと負けられないね」

シャニはフェイトめがけて切りかかる。

「うらぁーー!!」

しかし、それは簡単に交わされ、逆にフェイトは少し距離をとり……

「プラズマランサー……」

カートリッジを消費し、さっきシャニたちに向けてはなった魔法を使う。

「ファイア!」

指示とともに、複数の雷がシャニを襲う。

だが、シャニは回避しようとはしない。

「はっ、効かないよ」

フォビドゥンもカートリッジを二つ消費し……

『ゲシュマイディッヒ・パンツァー』

一瞬、シャニの前方が少し歪んだように見えるが、何をしたのかさっぱりわからない。

その間にもプラズマランサーは今にもシャニに直撃しようとしていた。

しかし、届く前に、ランサーはシャニをよけるように進むだけだった。

「え!?」

そんな指示を、自分は出していない。



フェイトは改めてランサーをシャニに向かわせる。

だが、同じようにシャニを避けてしまう。

(もしかしてさっきの……)

フェイトは、さっきのゆがみになにかあると見た、そして、今度はハーケンフォームで切りにかかる。

「はあぁーーー!」

一撃がシャニに当たろうとしたとき、魔力刃が歪む。

それを見たシャニはすかさず一撃を加えようとする。

(やっぱり……)

フェイトは確信して、すんでのところで斬撃を避ける。

おそらくさっきの空間のゆがみが魔力の軌道を変えているのだろう。

「逃がさないよ」

そのすきをシャニが狙う

『フレスベルグ』

フォビドゥンから魔力が放出される。

奇妙な軌道を描きながら。

「!自分も魔法も!?」

フェイトは魔力の不規則な動きに翻弄される。

ある程度の射撃魔法を回避するフェイトにとって、この攻撃は天敵とも言えるような攻撃だった。



「おらおら!さっきまでの威勢はどうした!?」

「くっ!」

さっきから、なのはは防戦一方だった。

傷は予想よりも深く、うまく体を動かせない。

それで、攻撃に移る前に、どうしても敵の攻撃を防御するしかなくなってしまう。

膨大な魔力量をもつなのはでも、これではいつか魔力が尽きる。

防戦といえば、はやても防戦一方である。

もともとはやては一対一には向いていない支援型である。

フェイトとなのはを前衛に出し、自分が援護する。これが3人のときの戦い方だ。

だが、今回は相手が少し悪かった。

不運にも、おそらくあの3人の中で一番のスピードを持っていそうな魔術師が相手なのだ。

二人の援護をしようにも……

「だめでしょ!君は僕の相手をしてくれなきゃ!!必殺!!!」

このように邪魔が入り援護どころではなくなる。

はやてはなんとか敵の鉄球攻撃をかわす。

さっきのシャニという魔術師もそうだが、この鉄球も微妙に軌道を変えて攻撃してくる。

「激・滅!」

『アフラマズダ』

レイダーから砲撃が放たれる。

「リィン、防御を」

はやてはそれを防御する。



「それにしても、あの言い方どないにかならへんの?撃滅!とか、滅殺!とか、気になってしゃあない」

『マイスター、私にいわれても……』

ついつい愚痴ってしまうはやて。

あの男性は奇妙な二字熟語を連発してくる。

しかも物騒なものばかり……

「これでどうだ!激滅!」

『ミョルニル』

レイダーの鉄球に魔力が纏い、はやてに向かい突撃する。

不規則に移動するので、防御するのだが……

「う!」

さっきの砲撃とは威力がまるで違う。

かなりの衝撃がはやてを襲う。

『マイスター!はっきりいって厳しいです!』

少しずつ、シールドにひびが入っていく。

もう破れられる。そう思ったときだった。

『ラケーテンハンマー』

「うおおりゃあぁぁーーーーーー!!」

聞きなれたこれが聞こえる。そう思ったとき、シールドが破られてしまう。

普通ならその攻撃は問答無用にはやてを襲うのだが、同時に赤い髪の少女の攻撃が攻撃を受け止める。

「吼えろ!クラークアイゼン!!」

少女は懇親の力で攻撃をはじき返す。

「ヴィー…タ?」

はやては予想外の人物にきょとんとする。

「何なんだお前は!!」

クロトはいきなり乱入してきた子供を睨む。

だが、その子供、ヴィータは逆ににらみ返す。

「てめぇ、許さねえ!よくもはやてを!!」

ヴィータは相棒、クラーフアイゼンを構える。

「なんだか知らないが、てめぇも瞬殺……う!!?」

あいつも一緒に倒そうとしたが、急に苦しみだすクロト。

なんだ?と偽装にクロトを見る二人。

同じように、オルガとシャニも苦しみだす。

「くそぉ!もう時間かよ!!」

その時、念話が聞こえる。

「皆さん、ご苦労様です。皆さんのおかげで順調に進みましたよ。そろそろ時間も来ることですし、撤退してください」



それをきてくそ!と叫び、最後になのはを見るオルガ。

「次に合ったときは絶対にぶっ殺してやるからな!!」

そういって、3人はどこかへと転移していった。



「はやて!大丈夫か!?」

ヴィータははやてがやられているのを見て、速攻で助けに入った。

そのおかげで、シールドを破られはしたが、はやてに怪我は無い。

「大丈夫や、これもヴィータのおかげや、ほんまにありがとう」

それおきて、うれしくなるヴィータ。

「ヴィータちゃん。いつの間に?アースラにいたんじゃ?」

後ろを見ると、なのはとフェイトもいた。

「なんかはやてがいるところに結界張られてるから見てこいってクロノに言われたんだよ」

それで、シャマルは結界を張っている人物を探しにザフィーラはシャマルの護衛、シグナムは重要任務を受けているユーノの所へ、そしてヴィータははやてを探しに来たのだ。


「それにしても、あの3人はなんだったんだろう。かなりとくしゅな魔術師みたいだったけど、急に苦しみだして……」

それをきいて皆は考える。

「まあとりあえず、うちらは事後処理や。なのはちゃんは医務室へ行って早く診察してもらい」

そういってため息をつくはやて。

今日はさんざんや……

休日やとおもったら事件は起こるし、事後処理もものすごいことになるやろうし…それはフェイトちゃんも一緒か。

だがはやてはそれよりも事件が起こる前のことを考えていた。

(うち、お嫁にいけるんかいな……)

確かに、話こんでいて不注意だったことは見とめる。みとめるけど……

もういちど、はやては大きくため息をつく。

「なあなあなのは。はやてどうしたんだ?」

事情を知らないヴィータはなのはに聞く。

まあ、いろいろあったとだけいうなのは。

その後、リィンフォースから事情を知り、ヴィータはそういつを探し出そうとするのであるが、それは後ほどの話である。