ここは、ある惑星のとある場所
「ほお、これが……」
「ええ、そうです。破壊の書です」
そこに、二人の男が話し合いをしていた。
一人は、ムルタ・アズラエル。
そしてもう一人は、紫色の唇がいっそう際立つ奇妙な人物。
彼の名前はロード・ジブリール。
アズラエルと主に、テロ組織「ブルーコスモス」の頂点に立つ男。
「全く、あの時は適当な部下に任せたのが間違いでしたね」
アズラエルは4年前のことを思い出す。
この『破壊の書』を完全な形で起動させるためには、大量の魔力と「ある物」が必要となってくる。
だが、その作業を部下に任せると、その部下はまだたまっていないのに血の気に走り、無理やり起動させてしまったのだ。
そのせいで見つけなければいけなくなってしまった。
「それでは、今度は誰が?」
ジブリールはアズラエルに聞く。
アズラエルはふっと笑いながら答える。
「あのネオ・ロアノークに任せましょうか。もしものときは私も出ますし」
それにしても、とアズラエルはあのときを思い出す。
「私にあれを使用させる状況に追い込まれるとは、少々管理局を甘く見ていましたね」
アズラエルはそういって肩をほぐす。
「あれ、性能はバカ高いですけど……使用後の負担が強すぎますからねえ……」
この二人はただ組織のトップに立つだけではなく、魔術師としてもかなり高い能力を持つ。
「まあゆっくりと行きましょう」
そうですな、と二人はワイングラスを手にとり、しばし談笑しあっていた。
「それで、高町一等空尉」
廊下で、なのはたち3人ははやての部屋に行く途中で話をしていた。
レイの言葉に、なのはは笑いながら言う。
「なのはさんでいいよ。皆そう呼んでるから」
ふたりは、そんななのはを不思議そうに見る。
(あいつとはえらい違いだなあ……)
シンはあのガルシアを思い出す。
少なくとも、あの中年親父よりはよさそうだな、とシンは心の中で思った。
「で、バレル一等陸士。私に何か用?」
なのはにいわれて、レイは答える。
「早く行かなくていいのですか?既に集合時間をかなりすぎてますが……」
ああ、となのはは頷きながらなのははいう。
「遅れるって言ってるからね。それにもう少しで着くよ」
ですが、とまだ何か言いたげなレイ。
変わりにシンは答える。
「空尉はともかく、俺達は遅れるなんて一言もいってませんよ?」
レイとは対照的に、少し生意気にシンはいう。
なのはのそばにいた女性も、新しく入ってくるのが俺達なんて知らないだろう。
シンに言われ、なのはは考える。
「そういうことなら、ちょっと急ごうか」
そう言って3人は駆け足で目的地へ行くのだった。
「おっそいなぁ……」
はやては苦笑いしながら待つ。
なのははシャマルから事前に遅れると聞いているが、残りの二人、リンディが入れて欲しいといわれた人物が一向にこない。
連絡も未だになく、集合時間に15分も遅れている。
「全く。連絡もせずに時間に遅れるとは……」
シグナムはため息を付く。
話によれば緊急に配属されるのはまだ入局して2ヶ月と聞く。
そんな新人が大幅な遅刻など、聞いて呆れる。
『ねえねえティア』
『なによ?』
『私達以外に緊急で入る人って誰かな?』
『私が知ってるわけないでしょ』
その横で、機動六課に配属される人物二名はひそひそと話をしていた。
二人の名前はスバル・ナカジマにティアナ・ランスター。
階級は二人とも二等陸士。
「テスタロッサさん。テスタロッサさんもその人のことは解らないんですか?」
フェイトは横にいる子供、エリオ・モンディアルにいわれて首を縦に振る。
「話じゃ、本人も今日いきなり転属を言い渡されたからしいからただ迷ってるだけかもしれないけどね」
そうですか、と再度ドアの方を見るエリオ。
「キュー」
「あ、おとなしくしてなきゃ、フリード」
その横で、小さな竜フリード、本名フードリヒが動き回っているので、そのそばにいる少女、キャロ・ル・ルシエが咎める。
このエリオとキャロは、フェイトが保護した人物だが、二人が始めて顔を合わしたのは最近である。
その時、こんこん、ドアを叩く音が聞こえる。
「はやてちゃん。入るよ」
なのはの声が聞こえ、入って、と返事をするはやて。
扉が開き、なのはと、後ろに二人ん男性がいた。
「なのはちゃん。その二人は?」
言った後、はやては黒い髪の少年を見る。
(あの子ってもしかして……)
思い起こされる出来事。
彼は、あの時にはやての胸を触った人物と瓜二つ。
というよりおそらくだが彼だろう。
「時間に間に合わずすいませんでした。本日より本局の特務隊Xより転属することになりましたレイ・ザ・バレル一等陸士です」
レイはビシッと敬礼をし、自己紹介をする。
シンも少し適当そうに見える敬礼をして答える。
「同じく、シン・アスカ一等空士。時間に遅れ、申し訳ありませんでし……ん?」
シンも遅れたことを謝ろうとしたら、前方から妙な殺気に気付く。
「よくも……よくも!」
そこには、妖精といわれてもおかしくないくらいの小さな、それは小さな女の子がシンを睨みつける。
まるで親の敵のように。
「よくも私とはやてちゃんをーーーーー!!!」
小さすぎる少女、リィンフォースは魔方陣を展開する。
「って、何だよおい!!」
いきなりのことでシンは慌てる。
「石化の槍、ミストルティン!!」
リィンフォースの周囲に魔力が集まり、それが一斉にシンに向かう。
シンが防御しようとするが……
(やべ、インパルスはヨウランに預けてるんだった……)
シンは舌打ちして、横っ飛びでミストルティンを回避する。
レイも巻き添えはごめんとばかりにさっと避ける。
勿論そこには……
「え?」
ミストルティンはまっすぐなのはのほうへ向かうが……
『プロテクション』
レイジングハートがプロテクションを展開し、防御する。
『ご無事ですか?マスター』
なのはのデバイス、レイジングハートはなのはのことを案ずる。
「大丈夫だよ。ありがとう、レイジングハート」
なのははほっとする。
あたっていれば自分が石像になっていただろう。
「ったく……何なんだよおい……」
シンは起き上がり、さっき魔法を仕掛けてきたリィンを見る。
「うっふっふっふっふっふ………」
そこには、顔の上半分が髪の影で隠れているが、目が妖しく光っているリィンフォースがいた。
解りやすくいうと、初号○の暴○。
伏字の意味ないなこれ………
「リィン!いいかげんにし!!」
スパーン!
「へぶ!」
景気の良いハリセンの音が部屋中に響く。
辺りは静寂に包まれる。
とりあえずシャマルがつっこむ。
「はやてちゃん。ハリセンなんかいつの間に?」
……どこかずれてるぞシャマル。
「ハリセンは関西人の必須アイテムや!」
はやてもなんかずれてますよ。
っというか、ハリセンなんか今初めてつかったでしょ?
そもそも関西弁をしゃべっているだけで、はやて自身関西人なんて資料もないんですから。
そんな事もいざしらず、はやてはリィンをみる。
その顔はすさまじく、まさしく怒髪、天を貫くとはこのことである。
「いきなり人様を襲ったらあかんよ!」
だってぇ、と反論するリィン。
「はやてちゃんだってあの人に胸をもまれたじゃないですかあ!」
わたしも踏まれたし!とむくれるリィン。
そのリィンの一言で、皆がシンのほうへと目を向ける。
「貴様……」
その中で、シグナムは静かにレヴァンテインを起動させながらシンのほうを向く。
さらに、デバイスから炎が帯びている。
シンはもう何がなんだかわからない。
何で本人じゃないやつが怒るんだよ?
「よくも…よくもわが主にそんな卑猥なことを……覚悟は出来ているのだろうな?」
主、ということはこいつは使い魔か何かだろうか……
だが、今はそんな事を考えてる暇はない
「シ、シグナム、と、とにかく落ち着き!……ちょっとシャマル、なんで旅の鏡発動させるん!?」
ふと横を見ると、なにやら魔方陣を展開させているシャマルがいた。
「はやてちゃん、こういうエッチな人にはお仕置きが必要よ」
うふふ、と微笑を浮かべるシャマル。
だが、その顔は怖い。
ザフィーラもシンをにらんでいる。
「リンカーコアをブチ撒けろ!!」
言葉と同時にシャマルは魔方陣に手を突っ込もうとする。
「ええかげんにし!!」
再度はやてが叫び、二人とも少しだけ落ち着く。
「けどはやてちゃん……」
シャマルたちはまだどこか不服そうであった。
騎士の皆が自分の心配をしてくれるのは嬉しいが……
「もとはといえば、私がなのはちゃんと話しこんどったんが悪いんや。それに、ちゃんと彼も謝ってくれた、それでええやろ?」
はやてがこうまでいっても、どこか納得できていないシグナム。
はやては気付いていないが、シンもヨウラン達と話し込んでいたのでシンが悪いことは明らかである。
「そういえばヴィータはどうした?こういうことには一番にあいつに向かっていきそうなのだが?」
ザフィーラはヴィータを見る。
彼女はずっとシンを見ていた。
「おい、おまえ」
シンは誰かに呼ばれたと思い、後ろを向くとそこに少女が立っていた。
「お前は……あのときの子供か」
確か、あのときの事件で八神二等陸佐を探していた少女であった。
少女はむっとするが、まだ自分が名乗っていないことを思い出す。
「私はヴィータだ。お前のおかげではやてを助けられた。ありがとな!」
睨んだかと思えば、次は笑いながらシンを見る。
忙しいやつだなあ、とシンは思う。
「ヴィータが言ってた人って君やったんや。ありがとうな。おかげで助かったわ」
はやてのヴィータ殻多少は話を聞いているので、シンに礼を言う。
ヴィータから少し話を聞いたシグナムたちは……
「主を助けてくれたのならば、それに免じて今回の件は不問にしておいてやる。これからよろしくな」
と、なんとか納得してくれた。
はあ、とあっけに取られるしかできないシン。
これが「絶対服従」というものだろうか……
「シン」
今度は誰だよ……俺、管理局に知り合いはいないはずなんだけどな……など思いながら振り向くと、確かにちょっとした知人がいた。
というより、恩人と呼んだほうがいいかもしれない。
「あんたは、えっと……」
シンは名前を思い出そうとするが、確か聞いてなかったような…と思い出す。
「あ、そっか。あの時は忙しくて名前を言ってなかったね。私はフェイト・T(テスタロッサ)・ハラオウン」
そういうと、フェイトはシンを見て微笑む。
「元気そうで良かった。管理局に入ってたのにはびっくりしたけど」
シンはあのときの、4年前の礼を言うのを忘れていた。
あの時は人と話すことなんて出来ず、家族を失い途方にくれていた。
「あの時はありがとうございました」
シンは礼を言うと、フェイトはべつにいいよ、という。
「あと、ちょっと君に伝言があるの」
伝言?とシンは考える。
「助けてくれてありがとうって男の子が」
いわれて、ああと思い出す。
「ですけど、実際はあなたが助けて…俺は何もしてません」
だが、シンがやったことはほとんど囮のようなもので、実際は彼女が助けたはずだ。
そんなシンに、フェイトは「ううん」首を横に振る。
「君がいたから、あの子を助けられたんだよ。だから、君が助けたのも同然だよ」
そう言われて、シンは少しうれしくなる。
管理局に入り、人に感謝されるのは初めてだったのだ。
「フェイトさん。彼と知り合いなんですか?」
エリオが彼を見てフェイトにたずねる。
「彼は、私がエリオたちを預かる前に、ちょっと前に保護した人だよ」
へえ、とエリオはシンを見ていた。
ここは管理局のロビー。
そこで、機動六課の部隊長、八神はやてからの挨拶があった。
はやては機動六課のメンバーを見る。
「私が、機動六課課長、そして、この本部隊の総部隊長の八神はやてです」
はやての挨拶と同時に、一斉に拍手が沸き起こった。
その中で、シンは他の隊員の後ろでヤル気のなさそうに拍手をする。
シンは、学校の校長の挨拶時代からこういうのは好きではない。
「平和と法の守護する、時空管理局の部隊として事件に立ち向かい、人々を守っていくことが私達の使命です。ここにいるメンバー全員が一丸となって、事件に立ち向かえることを信じています」
ふと、はやては気付く。
「あ、長い挨拶は嫌われるんで、ここまで」
はやての言葉に、再度拍手が送られる。
そんなはやてに、シンはあっけに取られる。
(長くなるって……まだ1分もたってねえよ……)
シンは、予想よりもはるかに早い挨拶にあっけに取られる。
あと、最後に、とはやては言う。
「実は、設立してすぐなんやけど、機動六課は明日から5日間の急になります。せやから、今日はいろいろ準備せなあかんこととかがあるやろうから、今日は仕事をがんばって、休暇で体を休めて、ベストコンディションで仕事に望んでな」
はやての言葉に、みんなの顔が喜ぶ。
そういって、はやては右手を上げる。
「以上、機動六課部隊長、八神はやてでした」
終わりの言葉に、再度ロビーに拍手が響き渡った。
「シン・アスカ一等陸士、レイ・ザ・バレル一等陸士」
シンとレイはロビーのイスに座っていると、部隊長室にいた最年少と思われる二人組みがやってきて、二人に対して敬礼した。
「エリオ・モンディアル三等陸士です。これからよろしくお願いします」
「キャロ・ル・ルシエ三等陸士であります。これと、この子はフリードリヒです」
「キュー」
いきなりの自己紹介に、ああ、としか返せないシン。
レイははそんな二人を見て静かに言う。
「そこまでしなくても、普通にシンとレイでいい」
レイの言葉に、逆にエリオたちは困惑する。
「ですが、お二人のほうが年齢も上ですし、何より階級も上ですし」
エリオの言葉にキャロも頷く。
そういうエリオに、今度はシンが言う。
「気にしなくていいさ。お前らも今年管理局入りしたんだろ?」
シンの言葉に頷く二人。
「俺も管理局に入ってまだ2ヶ月しかたってないしな、そういう面では同じさ」
シンの言葉に、今度はエリオが驚く。
「じゃあ、配属されてすぐに一等空士になったんですか?」
エリオの質問に、ああと答えるレイ。
「うそ!」
すると、今度は後ろから声がしたので振り返ると、青い髪の女とツインテールの女がいた。
確かこの二人も機動六課のフォワードだったような……
「私達なんて3年でやっと2等陸士なのに……」
その場でがっくりと肩を落とす青い髪の少女。
「えーと…あんたは……」
シンの迷いに最初に気付いたのはツインテールの、シンと同じくらいの年の少女だった。
「ティアナ・ランスター二等陸士よ……スバル」
ティアナにいわれ、青い髪の少女、スバルはシンの方を向く。
「私はスバル・ナカジマ二等陸士。よろしく」
その後、六課のフォワードたちはそれぞれ話をしていると……
「そこにいたのか、二人とも」
聞きなれた声が聞こえ、声のほうへ向くと、ヨウランたちがいた。
「シン、ご注文の品がやっと出来たぞ」
そういってなにかをシンに向かって投げる。
シンはそれをキャッチする。
『ヨウランさん、放り投げないでください』
わるいわるい、とヨウランは軽く謝る。
ヨウランは今投げたのはシンのデバイスであるインパルス。
二人にインパルスに関することがあって、数日前から渡していたのだ。
「以外と早かったな。てっきり明日ぐらいとおもったけどな」
シンの問に、ああとヴィーノが答える。
「それがさ、なんか手伝ってくれる人がいてさ。それでかなりはかどったんだ」
ヴィーノの言葉に、シンは顔をしかめる。
「大丈夫なのか、それ?」
そんなシンの心配をよそに、問題ない、とヨウランが言う。
「俺も今日知ったけど、その人も機動六課に入るらしいんだ、えっと名前は確か……シャリオ・フィニーノって人」
ふぅーん、とシンはインパルスを見る。
「あれ、ちゃんと忘れるなよ」
ヨウランの言葉に、解ってるよ、とシンは言う。
「じゃ、ちょっと性能を試してくる」
そういってシンは席を立ち、訓練室へ向かっていく。
その時、エリオが話しかけてきた。
「あの、自分も一緒に行っていいですか?」
これから一緒に戦う人の戦いを見ておきたいと思っているエリオ。
シンは少し考えて……
「好きにすればいいさ」
と一応許可する。
こうして、結局全員で見に行くことになるのであった。
そこで、予想外の出来事にあうことも知らずに………
「あ、ちょうど良かった、今から早速最初の訓練をしようと思ってるんだけど……」
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