Seed-NANOHA_デバイスSD_01話

Last-modified: 2007-11-17 (土) 03:25:55

AM5:30

某場所

「ん……」

シン・アスカは目を覚ました。

昨日はいろいろとあってぐっすりと眠れたようだ。

だが、気分は晴れない。

(くそ……)

シンは先日の戦いを思い出す。

(あいつ、生きてたのかよ……)

シンはくそ、と悪態をつく。

せっかく倒したと思ったのに、何であいつが生きているんだよ。

あのときからそれが気になってしょうがなかった。

せっかくの目覚めもこれでは最悪というおのだ。

その機嫌の悪さに、シンが違和感を感じるのが遅れた。

とりあえず着替えようと思ったときだった。

(あれ……動かない?)

どれだけ体を動かそうとしても全然動かないのだ。

動こうとすれば何かがカタカタと鳴る音しか聞こえない。

金縛りにでもあったのだろうか……

それに、とシンは目の前を見る。

既に日は昇っていて、部屋がはっきりと見える。

おかしい、自分はミネルバにいたはずだ。

それが何でこんな女の子チックな部屋にいるのだろう。

同じ部隊のルナですらここまで行かないのに(戦艦だから当たり前であるが)

そこで、シンは目の前で鏡があることに気付く。

その鏡を見ても、自分がいないのだ。

おかしい、と思いながらシンは周囲を見ようとする。

そうするたびに、鏡にある金色の小物のようなものがカタカタと動く。

シンが動きをやめると小物もぴたっと止まる。

最後動こうとするとまたもやもカタカタ動く。

……よし、落ち着け自分。

まあ確かにフリーダムやアスランが生きていて、さらにわけのわからない言葉で精神的にやばいのは自分でもわかる。

だが、ここは何とか落ち着こう。

深呼吸深呼吸…すぅ…はぁ……よし。

何か深呼吸すると同時に小物がピカピカ光ったような気もするけどこの際ほうっておこう。

まずは状況の確認だ。

えーと、自分が動こうとすればあの小さな金色の小物が動く。

鏡に自分がいない。

と言う事は………

(俺があの変な三角の小物になっているのか……)

なるほど、それなら自分の動くたびにカタカタ動くのも納得がいく。

自分があんな小物になったのか………

『って……んなわけあるかああぁぁーーーーーーーー!!!!!』

「うわ!?」

シンは力の限り絶叫した。

それと同時に何か声がしたような気がする。



『なんなんだよこれは!?ここはどこなんだよおい!!?それに俺はどうなってるんだ!!?』

先ほどの落ち着きっぷりがうそのような慌てっぷりである。

「え?…え?……」

その慌てっぷりに、横で寝ぼけながらきょろきょろしている少女の存在に気付かない。

「フェイト、どうしたんだい?」

少女、フェイトの悲鳴を聞いて一人の女性が入ってきた。

「何か人がいるように見えたけど、アルフは見なかった?」

フェイトにいわれて、アルフは周囲に気を配らせる。

確かに変な気を持っているのはいる。それも近くに。

さらに……

「変なのが二人いるよ?」

アルフの言葉でえ?とフェイトは周囲を見渡す。

もしもの事を考えてフェイトはバルディッシュを握ろうとする。

その時だった。こんこんとドアを鳴らす音が聞こえる。

「フェイト、起きているか?聞きたい事はあるんだが」

既に見知ったそのこえに、いいよ、とフェイトは言う。

ドアが開くと、そこには自分のデバイスを持つ義兄、クロノ・ハラオウンがいた。

「クロノ、どうしたの?」

デバイスなんかもって、まさか、アルフが感じたことに関係するのかもしれない。

フェイトの言葉にいや、とといってクロノはバルディッシュを見る。

「バルディッシュは問題ないのかって思って」

クロノの言葉に首をかしげる二人。

「デュランダルの調子がおかしいの?」

肯定の意味を示すように頷くクロノ。

「どうも調子がおかしいらしいんだ」

そういって待機状態のデュランダルを前に出す。

『ここはどこなんだ?』

確かに、思いっきり日本語でしゃべっている。

その時、後ろから声が聞こえた。

『おい、レイなのか?』

フェイトは声のほうを向くと、それは紛れもなくバルディッシュだった。

「バルディッシュ?」

しかし、そんなにとをほうっておいて、デバイス同士は話を続ける。

『シンか、ここはどこなのだ?』

『そんなのこっちが知りたいくらいだ。目が覚めたらこんなところにいるし、どうなってるんだ?』

『おれにもわからん…今回ばかりは気になるな』

などと話しているのをあっけにとられるしかないフェイトとクロノだった。



同時刻、高町家

「レイジングハード、どうしたんだろう……」

高町なのはは朝からうーん、頭を悩ませている。

今日は学校が休みで本当によかった。

その悩みの種は自分の相棒でもあるレイジングハートにあった。

なのはあ朝起きると毎日のようにレイジングハートに挨拶をする。

だが、いつも返事をしてくるレイジングハードが、今日に限って返事をしないのだ。

不思議に思ったなのははおーい、とかレイジングハートー?とか尋ねるが、全然応答しない。

そして、ようやくレイジングハートはなのはに気付いた。

『だれだよお前、っていうか、何でそんなにでかいんだ?』

「……ふぇ?」

訪れる沈黙………

『って……ここ、どこだよ!?確か俺は宇宙にいたはずだぜ、なのになんでこんなところにいんだよ!?』

誰かは考えるが、なのははそんな事は聞こえなかった。

今まで苦楽をともにしてきた相棒にだれだよよばわりされて、かなりもショックをうけたのだ。



少し時間はたちAM6:00 八神家

ピピピ、と朝の目覚ましがなる。

八神はやてはうーん、と背伸びして目覚ましのスイッチを押す。

ふと横を見ると、そこにはヴィータはすやすやと眠っている。

はやてはそれを見て微笑むと、今度は一緒の枕で寝ているリィンフォースを見る。

リィンフォースも、元気にどばどばと胸元から血が流れている傷を中心にして、傷だらけのリィンフォースが「ぅぅ……」とうなだれながら寝ていた。

「……え?」

はやてはあまりの光景に呆然としていた。

それどころかしばらく思考能力が停止する。

うなだれているリィンフォースの声が男のものだなんて気付いてすらいない。

(え、なんで?何でリィンがこうなったん?……は、まさか寝取る間に頭で踏み潰して……)

と、いろいろ考えているはやての顔は、だんだんと涙目になっていった。

「シャマルーーーーー!!」

はやてはやさしくリィンを持つと、大急ぎでシャマルの部屋へと向かう。

そのころ、シャマルははやての朝食の準備をしようとゆっくりと起き上がろうとしていた。

「どうしたのはやてちゃん……」

シャマルはいきなり入ってきたはやてにどうしたのだろうと思いながら、傷まみれのリィンを見て言葉を失う。

「寝取る間に私がリィンを頭で踏んだみたいで……」

あせあせとはやては説明すると、わかりました、といってリィンは急いで自分デバイス、クラールヴィントを手に取ろうとした。

「え……」

シャマルはクラールヴィントを見て言葉を失う……

「クラールヴィントも壊れてるぅ~~~」

その言葉にははやても驚く。

「騒々しいぞ、どうしたんだ?」

そして、なにやら騒がしいと思ったシグナムが駆けつける。

「シグナム…実は……」

そしてシャマルから簡単な説明を受けると…



「よし、じゃあシャマルは急いで救急用具でリィンに救急手当てをしてくれ」

シグナムの冷静な言葉にわかった、といって下に下りるシャマル。

「シグナムぅ……」

ひぐ、ひぐ、と泣きながらはやてはシグナムを見る。

「主も落ち着いてください。主はリィンに怪我などさせていません」

シグナムの言葉にえ?とはやてはシグナムを見る。

「大体頭で押さえただけであれほど傷はできませんし、もちろん血が出ても主の髪の毛に血がついているはずですが、見た限りではついていません」

シグナムにいわれて、はやては自分の頭を触る。

確かに血はついていない。

だが、それはそれで疑問に残る。

「ほな、何であんな怪我を……」

はやては考える。

普通はあそこまで怪我なんてなかなかしない。

それを一晩で何かあったのか。

「はやて~~~」

シャマルの部屋で考えていると、ヴィータは眠たそうに目をこすりながらやってきた。

「さっきから携帯がなってるんだけど」

そういってパパパパーンとどこかの狩りゲーのテーマソングが流れている携帯を差し出すヴィータ。

はやてはそれを受け取る。

中身はメールでフェイトからであった。

はやては内容を読み、シグナムとヴィータに尋ねる。

「二人とも、フェイトちゃんからデバイスの確認してって。

なんでもフェイトちゃんとクロノくん、さらになのはちゃんまでもがデバイスがおかしいっていっとるみたいなんよ」

はやての言葉に?と首をかしげながら、二人はそれぞれの部屋へと戻る。



まずはシグナム。

はやてに言われ、シグナムはレヴァンテインを手にする。

それと同時だった。

『な、なんだ貴様!!?やめろデカブツ!!』

レヴァンテインがあるまじき言葉を言ったので、シグナムは少々面食らう。

「レ、レヴァンテイン?」

一体どうなったと言うのだろうか……

『それにここはどこだ!?俺はボルテールにいたはずだぞ!それが何で地上にいるんだ!?おまけに身動き一つとれんとはどういうことだ!!ええ!!?』

ヒステリック気味にさわぐレヴァンテインに、シグナムは呆然とするしかない。

テスタロッサたちのデバイスもこういう感じなのだろうか………



次にヴィータ

ヴィータはグラーフアイゼンを手に取り、そしてすぐにおどろいた。

『君……誰?』

グラーフアイゼンはとても驚いたようにヴィータを見る。

と言うよりも半分ビビッているようにも見える。

「おい!誰ってどういう意味だ!忘れたのなら本気で怒るぞ」

グラーフアイゼンはこんな冗談は言わないはず。

なら彼は誰なのだろうか……

『えっと……ごめん。ほんとうにわかんないや』

やけに気弱なグラーフアイゼンに、ヴィータはただ黙り込むしかなかった……



AM10:00 アースラ会議室

頭に手をやり嘆きながらクロノが言う。

「朝、突然みんなのデバイスがおかしくなったりいきなりリィンフォースが大怪我を負ったりで、

おかしい事がいきなり同時に起こってみんなも混乱していると思う。実際ぼくもかなり混乱している」

クロノは資料を見ながらため息をつく。

「それで、本局に緊急メンテを行った結果……」

それ以降はクロノのとなりにいる人物、マリーが話を続ける。

「今回、かなり興味深い結果になりました」

そういいながらコンソールを動かすマリー。

足下らいろいろなデータが出力されている。

「この広い次元世界、時空漂流者がいるのはわかりますけど……それでも……その時空漂流者がデバイスに乗り移るなんて聞いたことがないですね」

つまり、と咳払いしてマリーは笑顔で言う。

「あなた達のデバイスの人格が別の人と入れ替わったんです」

「………は?」

訪れる沈黙………

「いやー、私も最初は驚いたのよねえ。まさかこんな事が起こるなんて。けど解析していくうちにいろいろわかってきて……」

一人で勝手に興奮してしゃべっているマーリーをよそに、なのはが尋ねる。

「あのー、マリーさん」

「ん?どうしたの?」

「それで、レイジングハートは?」

なのはの言葉に、ああとマリーは相槌を打つ。

今まで忘れていたのだろうか……

その中、マリーが予想外な事を口にする。

「いやー、実はもう待機しているの。人型形態で」

マリーの言っている事がわからず、首をかしげる。

人型モードなんてあったのだろうか。

「もう入ってきていいわよ」

マリーの言葉と同時に、ぷしゅうと自動ドアが開く。

それと同時に……

「「この裏切り者がーーーー!!!」」

「ごはぁ!!」

二人の男の叫びとともに、赤いものを撒き散らしながら何かがなのは達の横を通り過ぎた。

そこには、見たことも無い男の人達と少し怪我を負っている一人の女の人がいたのだった……