Seed-NANOHA_神隠しStriker'S_第09話

Last-modified: 2007-11-19 (月) 14:39:45

AM11:07、機動六課隊舎。
「キラ!お前、いつまで寝てるつもりだ?いい加減、起きろよ!」
「ん~…あとゴフッ…!!」
「もう昼だっつの!!」
ヴィータのグラーフアイゼンが頭部に直撃した。

「お前さ~、外に遊びに行くとかしないわけ?」
ヴィータが自分と並んで廊下を歩くキラを見上げて言う。
「…ちょっと、疲れてたから…つい…。」
グラーフアイゼンで殴られた頭を摩るキラ。
「シンはティアやスバルとバイクで出かけたぞ?
エリオとキャロも…。ちょっとは見習えよ…。」
「あはは……。」
「笑って誤魔化すな!」
ごめん、ごめんと背伸びして怒鳴るヴィータを落ち着かせる。
「それで、ヴィータ副…」
「他の新人たちがいないときはヴィータでいいぞ。」
「わかった。…それで、ヴィータは何で僕を呼びに?」
「暇してるだろうと思って呼びに来たんだ。
記憶も戻ったらしいし、はやても話をしたいって言ってるしな…。」
今日は隊長たちも目立った任務はないらしい。資料を片付けたりする以外は、待機だと言う。

「はーやーて、連れてきたぞ。」
食堂でははやてだけでなく、なのはやフェイト、シグナム、シャマル、ザフィーラ、シャーリーなどの面々が食事をしながら会話していた。
「キラくん今まで寝とったんかぁ?」
「えぇ…、まぁ…。」
笑いながら言うはやてに曖昧な返事を返すキラ。
そんなキラを手招きし、はやては隣に座らせた。
右にはやて、左にシグナムだ。
「怠惰な生活は身を滅ぼすぞ。」
シグナムが厳しいことを言う。
「まぁそう言わんと、そう言えば、キラ君昨日、一昨日とシャーリーのところに入り浸ってたみたいやけど…ま・さ・か…。」
「ち、違いますよ!やましいことは…何も…。
ちょっとデバイスのメンテを一緒にやらせてもらってたんです。」
顔を赤くするシャーリーとは別に、必死で否定するキラ。
「冗談やって…。
へぇ~、キラ君、わかるんか?そういうの」
「えぇ、まぁ…。
似たような事をもとの世界でもやってましたから…。」

「あ、でもヤマトさん…。メンテしたあと色々いじってましたけど…。あれから実際に起動してから慣らしましたか?」
パンを千切り、口へ運びながらシャーリーが言う。
「いえ、まだです。昼食食べてからやろうと思ってたんで…。」
そしゃくしていたものを飲み込んでからキラ。
「それなら、私が模擬戦手伝おうか?」
水の入ったグラスを手に取りながらフェイトが言う。「あ、お願いできますか?」
「うん、いいよ。私はライトニングの隊長で、キラは私の部隊だからね。」
微笑むフェイト。すると水の入ったグラスを空にしたシグナムが
「なら、私も付き合おう。」と言う。
「えっ、いや、いいですよ。フェイト隊長が付き合ってくれるって言ってますから…。」
「お前はライトニングの一員で私は副隊長だ。上官の命令は聞くものだぞ?
それとも、私では不服か?」
「え…いや、不服とかそういうんじゃなくて…。」
何だか理不尽だが…。
「(キラ、諦めろ。
シグナムは模擬戦が大好きなんだ…。あぁなったら、止まらねぇーよ)」
ヴィータがこそっと念話で教えてくれる。
キラは笑いながら、溜め息を着いた。

場所は変わって、空間シュミュレーター。
「場所は、障害物の多い街中でいいかな?」
なのはが空間モニターを操作しながら言う。
『はい、それでいいです。』
キラ、フェイト、シグナムの三名が写るモニター。
「じゃあ、それで行こう。シャーリーは?準備できた?」
「ヤマトさんのバイタル測定、デバイスコンディションの計測準備できました。」
はやて、ヴィータもモニターとして参加。ちなみにシャマルは万が一のための治療班だ。

「それじゃあ、まずは私とだから…、準備はいいかな?」
バルディッシュを構えるフェイト。
「はい…。」
『ライフルモード』
「それじゃあ、シグナム…。合図をお願い。」
既に騎士甲冑を装備しているシグナムが合図をする。
「始め!!」

同時に動くキラとフェイト。しかし、行動はそれぞれ異なった。
距離をとり、砲撃、射撃戦に持ち込もうとするキラと、距離をつめ、接近戦に持ち込もうとするフェイト。
『プラズマランサー』
「はっ!!」
接近しながらの射撃。
計八発の金色のランサーがキラに吸い寄せられるように誘導され向かっていく。
「フリーダム!」
後退しながらプラズマランサー迎撃のため、狙いを定めるキラ。
左右のフリーダムから勢いよく弾き跳ばされる薬筒。
『ハイマットフルバースト』
七本の奔流がプラズマランサーを飲み込み、破壊。
しかし、破壊したときには既にフェイトはキラの背後に回りこんでいた。
キラにとってそれは予想外の事態ではなかったらしい。落ち着いて対応する。
バルディッシュの右袈裟一閃をトンファーを握るような形に持ち変えた左のフリーダムで受け、右のフリーダムで通常射撃を放つと、同時に腰部のクスィフィアスも使用。
物理と魔力ダメージの複合攻撃。
障壁の上から吹き飛ばされたフェイトは体勢を立て直す。
「プラズマ…スマッシャー!」
金色の大砲撃。
『カリドゥス』
青色の大砲撃がぶつかり、すさまじい衝撃波と光となり、散った。

同刻、ミドチルダ市街。
「着いたぁ~、ティア、シン、ゲームセンター行こう!ゲームセンター。」
はしゃぎ回りながら先に行ってしまうスバル。
「ちょ、スバル!待てよ!!」
急いでバイクを駐輪場に停め、スバルを追うシン。
「まぁ、久しぶりの街だからね。嬉しいんでしょうよ。」
呆れたような笑顔を浮かべながら、シンと並走しながら溜め息をつくティアナ。
「あっ、そうだ、ティア。俺、ミッドチルダのこと全然知らないから…案内よろしく。」
「分かってるわよ。
ほら、行きましょう。馬鹿が迷子にならないうちに…。」
それもそうだなと言う感じで、シンは走るペースをあげるティアナのあとに続いた。

とあるゲームセンター。
「当たれよ、この!!」
パンッパンッと響く銃声。シンは一旦、画面外にガンコンを向け、トリガー引く。
すると、画面のリロードという文字が消え、画面内に銃を構えて再びトリガーを引く。
襲い来るゾンビ。
「シン、左だよ!左!!」
「うぃっ!?あっあぁ…。」
「馬鹿、まず最初に空中にいるやつを撃たないと!!」
「違う右!右!!」
「だぁ、スバル!引っ付くな!操作出来ないだろ!!」
「あぁ~あ、終わっちゃった。」
画面に血をイメージしたゲームオーバーの文字。
「シンって、軍にいたって言うわりに、たいしたことないのね。」
とティアナ。
「私の方がスコアもいいしぃ~…。」
スバルがニシシっと笑って言う。
「ていうか、お前らが耳元でごちゃごちゃ言うからだろ!」
「言い訳?まぁ、これで昼食はシンのおごりね。」
「わかってるよ!何処で食べるんだ?」
言い訳の一つや二つ聞いてくれても良さそうだが、まぁ、男らしく黙って従おうと思ったシンだった。
「シン、ティア、昼食食べに行く前に、これで写真とろう?」
「何だ…これ?」
「分かりやすく言うと、撮った写真に自分達でデコレーション出来る機械…かな。」
とスバルは機械の内部に入っていく。続いてシン。ティアナ。
「撮った写真はシールになってて、それを専用の手帳に貼ったりできるわけ…よしっと…。」
三人で割り勘し、小銭を出しあい。ティアナが音声案内に従って操作していく。
「三種類ぐらいとるわよ?準備はいい?」
「おう!!」
「あ、あぁ…。」
はきっと返事をするスバルと緊張しているのか、歯切れの悪い返事をするシン。狭い空間に男一人、女二人なのだ、無理もない。
スバルを中心に左右にティアナとシンが立つ。
音声がカウントを開始した。
『3、2、1』
で笑顔を作るティアナとスバルは顔をよせて、シンも笑顔で写った。
画面に撮れた写真が確認のために出てくる。
「あれ、シン、顔寄せなきゃ切れちゃうよ?現に半分切れちゃってるし…。」
スバルがとり直しのボタンを押した。
「ほら、顔よせて!」
中々顔を寄せて来ないシンにシビレを切らし、スバルがシンの肩に手を回して引き寄せた。
頬が触れるか触れないかの距離。髪から香るシャンプーの匂い。
「とるよ…!シン笑って!!」
パシャッ
機械がシャッターを切った。

確認画面を見たティアナとスバルが吹き出した。
「へ…変な顔~…。」
「あ、あんた…ククク…なんて顔してんのよ…。」
飛びっ切りの笑顔で写るティアナとスバル、その横で引きつった笑みを浮かべるシンが写っていた。
「し、仕方ないだろっ…!」
「はいはい、次は、ティアナが真ん中ね!」
場所を入れ替え、同じようにして撮る。
「最後はシン、あんたが真ん中よ。」
二人の匂いにクラクラし始めるシン。顔を動かせば触れてしまいそうなそんな距離だった。
そんなドキドキ緊張からようやくシンは解放。
その後、三人は近くのファーストフード店でホットドッグを買って食べ、デザートにアイスを食べながら、エリオとキャロに通信回線を繋いだ。
モニター越しに相変わらずのやんわりした雰囲気をかもしだすエリオとキャロの二人。
「あっ、エリオ、キャロ、これ見てみ。」
「す、スバル!やめろ!!」
笑顔二人の横にいるガッチガチの引きつった笑顔のシン。
笑顔二人の横にいる口は笑っているが目が笑ってないシン。
笑顔二人に挟まれて顔を真っ赤にしてうつ向いているシン。
それら三種の写真をエリオとキャロに見せるスバル。
エリオもキャロも笑っていた。それから一通り話したあと通信を終える。
三人はアイスを舐めながら身近にあったベンチに腰かけ今更ながらに気付いたスバルが言った。
「そう言えば、キラは?」

「すまない、キラ・ヤマト。やりすぎた。」
ビルの瓦礫に向けシグナムが声をかけると、瓦礫をかきわけてキラがのっそり立ち上がった。
「…ッつ…。」
『キラさん、十分なデータとれましたんで、上がっていいですよ?』
「あ、はい。取り合えず、シグナムさん、ありがとうございます。」
「いや、こっちこそ。まぁ、打撲はシャマルさんがなんとかしてくれますんで…。」
フリーダムを待機形態に戻し、一同は訓練場から出ていった。

技術室。
「取り合えず、ミーティア起動時にかかる負担と、フルバーストラッシュにかかる負担を考えた方が良さそうですね…。」
シャーリーはそう言ってキーを叩く。
「…そうですね、まだ使った事がないから分からないけど…念には念をってとこですかね?」
「うん、そんなところですね。なのはさんのエクシードの調整と一緒にやっちゃいますんで、キラさんはシャワーでも浴びてきたらどうですか?」
キラはしばらく考えるようにしてから
「わかりました。後をお願いします。ついでにシャマルさんのところにも寄って行きますんで。」
と言った。

「何か、ホントにゆっくりって感じだな…。」
橋の手摺に背中を預け、シンは空を仰ぎながら言った。
「そうねぇ、訓練づけの毎日だったしね…。」
とティアナ。
「何か事件とか起きてないといいよね…。このままゆっくりしてたいっ…と言うか。」
スバルがそんなことを言った最中に、緊急通信が入った。エリオからだ。
何でも、とあるケースを持ったボロボロの少女を発見したらしい。
「合流しないと…。」
ティアナは駆け出し、その後をシンとスバルが追った。

聖王教会。
カリムとクロノは機動六課の今後の任務について話しあっていた。
シグナムも聞いておいてくれとの事で、いざ、話そうと口を開こうとしたとき、はやてからカリムへ直接通信が入った。

薄暗く、細い路地。
キャロは膝に少女の頭を寝かせ、エリオはそれを眺めている。
二人とも浮かない表情で、沈黙が続いていた。
「エリオ!!キャロ!!」
そこへ、シンとスバルを引き連れたティアナがやって来る。
「スバルさん、ティアさん。」
「シンさん。」
エリオとキャロがかけつけてくれた三人へと向き直る。
「この子か、随分ぼろぼろだけど、何かあったのか?」
シンがキャロとエリオに聞く。
「地下水路を通って、かなり長い距離、歩いてきたんだと思います。」
キャロは少女の様子をうかがうように視線を落とす。
シンの手に力が入った。
「まだ、こんな幼いのに……何で…。」
「ケースの封印処理は?」
ティアナがエリオの方を向く。
「キャロがしてくれました。ガジェットが見付ける心配はないと思います。
それから、これ…」
エリオは手に持っている鎖に繋がったケースをティアナに見せた。
「ケースがもう一個?」
「はい、今、ロングアーチに調べてもらってます。」
疑問に思うティアナ。それに答えるエリオ。
「隊長たちとシャマル先生、それにリィン曹長がこっちに向かってきてくれてるみたいだし…。
取り合えず、現状を確保しつつ、周辺警戒ね。」
ティアナの指示に皆が返事をした。