Seed-NANOHA_神隠しStriker'S_第25話

Last-modified: 2007-11-19 (月) 14:48:06

「はぁっ…はぁっ…、大丈夫か…アイゼン。」
傷付き、フラフラになりながらも何とか駆動炉へと壁に体を預けながら一歩、一歩、力ない足取りで歩いていく。
『問題ありません。』
「なのははもう…玉座の間についてるころだよな?」
『Jar』
「はやても…外で戦いながら…船が止まるのを待ってる。」
グラーフアイゼンと会話しているうちに、駆動炉へと到着した。
赤い光を放つ巨大な結晶。
恐らくはこれを壊せば船が止まるかもしれない。
正直、今の自分の力で壊すことが出来るのか?
そう問われれば、自信がない。
だが、自分がやらねばどうにもならないこの状況。
自分に全てがかかっている。
自信のあるなしは問題ではない。やるか、やらないか、それだけだ。
ヴィータはグラーフアイゼンを構えた。
「こいつをぶっ壊して、この船を止めるんだ!
リミット・ブレイク…やれるよな?」
グラーフアイゼンは姿を変えることでそれに答えた。
『ツェアシュテールングスフォルム』
巨大なドリルつきハンマー。
空中に飛び上がってさらにカートリッジ消費。ハンマーが巨大化し、ドリルの反対に設けられた推進機構からバックファイアが噴射する。
そのハンマーと呼ぶにはあまりにも大きすぎる巨大な物体が、結晶に突き刺さる。
「ぅぁああああああ!!!!!」
爆発、爆煙がたちこめる。息を切らすヴィータ、体力、魔力の限界はもうすぐそこまで来ている。
傷一つついていなかった。それどころか警報がなり響き、防衛システムが起動してしまったらしい。
部屋一杯に何らかの発射装置が発現してゆく。
絶対的な不利、いや絶体絶命。
ヴィータは自虐的に笑った。
「上等じゃねぇか…、全部まとめてぇ!!!ぶっ壊してやる!!!うぉぉぉぉぉ!!」
無数の奔流が放たれる中、ヴィータはグラーフアイゼンを振り上げ跳躍した。

『次元航行部隊の到着まであと45分です!巨大船、38分です!』
「七分差…。」
ギリリとはがみするはやて。
『主砲はミッドチルダ、首都に向けられてます…七分あれば…。』
「撃てるやろうね…。」
このままでは駄目だ。
そう考えたはやては現場の指揮を交代、リインと合流し、ゆりかごの中に突入した。

ゆりかご内部。
キラはなのはがばらまいたサーチャーを一定距離を置いて追っていた。
「まっ、破壊してもよかったんだけどね。でも、見付かると厄介だしね。
さて、僕は別ルートでクアットロのところへ急ごうか…。」
キラは六課の制服を身に纏ったままクアットロの元へと向かった。

玉座の間。
なのはは苦痛に顔を歪め、瞼を開き目の前にいるヴィヴィオの名を呼んだ。
「…ヴィヴィオ。」
呼ばれたヴィヴィオは不快そうに顔を歪め
「気安く、よばないで!!」
光弾を二発、放った。
なのはは寸でのところで回避するとヴィヴィオに向け、バインドをかける。
しかし、直ぐに引き千切られ4つの光弾がなのはの周囲で破裂。
その散弾する光弾が、なのはを障壁の上から叩き落とす。
さらに連撃。
ラウンドシールドで防御。すると、レイジングハートが何かをなのはに報告する。
『WAS エリア2終了、エリア3に入ります。あと、もう少し』
レイジングハートの報告を聞いている間にヴィヴィオがなのはの背後に回り込む。
ヴィヴィオが放つ光弾を跳躍してかわし、魔法陣を展開。
「ブラスター2!!」
一声と共に、魔力が溢れだし、その衝撃波でヴィヴィオが吹き飛ばされた。
なのはの周囲に現れるブラスタービットがヴィヴィオに再びバインドをかけ、さらにクリスタルケージで入念に捕獲。
苦しそうな、なのはの呼吸。
だが、一度かけたバインドは簡単に引き裂かれ、ヴィヴィオはクリスタルケージの破壊に取り掛かかった。

暗室。
クアットロは笑いながらなのはとヴィヴィオの戦闘をモニターしていた。
「やっぱり~、陛下ぁ~、その悪魔が使ってるパワーアップ、ど~んどん使わせちゃってくださぁい。
ブラスターとやらの正体は術者の耐えうる限界を遥かに越えた自己ブースト…。
撃てば撃つほど、守れば守るほど…術者もデバイスもその命を削っていきます。
優秀な前衛がいて後先考えない一撃必殺を撃てる状況なら、そりゃまぁおっかないスキルなんでしょうけど…。」
モニターではヴィヴィオがクリスタルケージを破壊、なのはに接近戦を挑んでいる映像がうつる。
「こんな状況では役に立ちませんわね。」

廃棄都市街、ビル屋上。
「う……こ…こは…。」
「アスラン!」
目を覚ましたアスランはゆっくりと体を起こす。
「…シン…?」
「まだ動いちゃ駄目ですよ。」
自分の側には見知らぬ女性の姿。一風変わった緑色の服を来ている、腕は光るロープの様なもので固定されていた。
「その様子だと戻ったみたいですね…記憶…。」
「…長い…夢を見てたみたいだったが…、夢じゃないんだな…。」
アスランは力なく呟き、瞼を閉じて、正気を失っていた頃のことを思い出していた。
「俺は…何て…ことを…。」
アスランの頬を涙が伝った。

管理局地上本部。
「同行を願います。」
シグナムが静かに言った。
「断る…、ルーテシアを救いに戻り、スカリエッティを止めねばならん。」
「スカリエッティと戦闘機人たちは既に逮捕、ルーテシア・アルピーノも私たちの部下たちが保護するべく、動いてます。」
ゼストがふと、手に持つ槍型デバイスを構えた。
「ならば、私のなすべきことは一つか…。」
アギトがゼストをとめようとするが、「じっとしていろ!!!」一喝され、動けなかった。
ゼストのなすべきことが言わずともわかるのか、シグナムはレヴァンティンを構えた。
「夢を描いて未来を見つめたはずが、いつのまにか、随分と道をたがえてしまった。
本当に守りたいものを守るそれだけのことが、何と難しいことか…。」
そしてその言葉を最後に沈黙がその場を支配した。

動き出したのは同時だった。
ゼストの一閃をかいくぐるシグナム。髪をゆわいている紐をゼストの槍が捕える。
振り返ったゼストの視界には、跳躍して本棚を足場に力を溜めているシグナムの姿。
上段に構え、レヴァンティンによる縦一閃。
ゼストは柄部分で受け止める。
柄から切り砕かれるゼストの槍。だが、直もゼストは攻撃を繰り出そうとする。
己の拳で
排出されるカートリッジ。
「紫電一閃。」
呟くようにシグナムが言った。
向かってくるゼストに渾身の一撃を叩き込んだ。

ゆりかご内部、駆動炉。
「ちくしょう…、」
咆哮とともにもう一度、駆動炉本体に打撃を加える。
防衛システムはすべて破壊した。
もう魔力は空になる寸前。グラーフアイゼンも傷だらけだ。
強固な装甲に弾き飛ばされてしまう。グラーフアイゼンがヴィータの手からすっぽぬけた。
もう一度、ヴィータは力の入らない足で立ち上がる。
「何で…だよ、何で通らねぇ…。」
苛立ちを通り越して、情けなさへと変わって行く。
「こいつを壊せねぇと…はやてのことも…なのはのことも…。」
グラーフアイゼンを引きずり一歩一歩、駆動炉本体へと近付いていく。
「守れねぇんだ!!!!こいつをぶち抜けねぇと…意味ねぇんだぁあ!!!!!!」
疲労困憊、ボロボロの体、ボロボロのデバイス。渾身の一撃が駆動炉本体へと突き刺さる。
爆発をお越し、後退するヴィータ。
瞬間、グラーフアイゼンが砕け散り、ヴィータは力尽きた。
飛翔魔法も維持出来ず、暗い闇へと落ちて行く。
何処へ繋がっているかはわからない。
(駄目だ…守れなかった…。はやて、みんな…ごめん。)
薄れ行く意識の中で暖かな白い光に包まれるのをヴィータは感じた。
駆動炉はグラーフアイゼンのドリル部分の破片が突き刺さっており、見事、その活動を停止した。

クアットロのいる暗室、ゆりかご最深部にふわりと入って来たのは桜色の輝きを放つ球体。
「防御機構フル可動、予備エンジン駆動、自動修復開始。ッ!?」
何かの気配を感じたクアットロ、振り向くと桜色の球体を視界に捕える。
「何、コレ?」
瞬間、蒼い閃光が走り破壊した。

『WAS成功、しかし、破壊されました。位置特定、距離算出。』
なのはに告げるレイジングハート。
「見つけた。」
モニターは出ない、だが位置はわかる。なのはは四機のブラスタービットを用い直ぐ様ヴィヴィオを拘束した。

「それのせいで多分、君の位置はバレたよ?」
「キラ?」
クアットロの前に舞い降りたのはバリアジャケットを纏ったキラの姿。
「君は逃げるといい…万が一のときはドクターから逃がせって言われてるからね。行く宛てはドクターに聞いてるんでしょ?」
左右のフリーダム、両腰のクスィフィアスから全てのカートリッジ、四十二発が消費され、連結。魔法陣を展開する。
頷くクアットロ。
『All SEED Burst』
一気に増大する魔力。
『METEOR Set Up』
不快なまでに眩しい閃光がゆりかごの船体に穴を開けた。
「シルバーカーテン…それを使えば逃げられると思う。保証はないけど…。
さぁ、行って、じゃないと修復されて塞がれちゃうよ。」
クアットロはゆりかごから離脱した。
なのはは最深部へとレイジングハートエクセリオンの矛先を向けた。
キラは玉座の間へと左右のストライクフリーダムの銃口を向けた。
スタンスを開きどっしりと構えるなのは。
「ブラスター3!!!!」
スタンスを開きどっしりと構えるキラ。
桜色の環状魔法陣を展開、ブラスタービット四機がなのはの周囲に停滞する。
蒼色の環状魔法陣を展開、キラの腰部砲身が持ち上がり、腹部、左右のフリーダムむ銃口に合計5つの環状魔法陣が展開される。
『Divine Buster/HighMAT Full Burst』
なのはから放たれる巨大な奔流、キラから放たれる巨大な奔流。
二つの奔流がゆりかご内部通路の壁を突き破り、衝突、反応、爆発した。