Seed-NANOHA_神隠しStriker'S_第29話

Last-modified: 2007-11-19 (月) 14:49:58

スカリエッティアジトにて、フェイトはトーレ、セッテ、レイ、スカリエッティを拘束し、今はアジトの自爆を阻止するために奮闘していた。
素早く空間パネルを走る指。

まだここには生きている人達がいるんだ。
それを見殺しには出来ない!

自爆解除に必死なフェイトは、天井に入った亀裂に気付いていなかった。

「フェイト執務官を助けに行かないと!」
アジトを中心として発生する地震。シャッハはセインを応援に駆け付けた局員に引き渡すと再びアジト内部に戻ろうとする。
「駄目だ、シャッハ。その傷では…僕が行く。」
「ですが…。」
そこへ飛んで来たのはシンだった。着地して、シャッハとアコース二人に詰め寄ると、
「フェイトは!フェイトはどこにいる?」
ただならぬ様子で、息を乱しながら二人に聞いてくる。
戸惑う二人。
「早く!!」
シンの剣幕に気押され、アコースはデータを送った。駆け出し、再び飛行するシンは、カートリッジを数発消費してスピードをあげる。

「これで…。」
最後に一つ、キーを叩くと、地震が治まって行く。
「良かった。」
安堵したその瞬間、天井が砕け、緩んだ地盤のせいか土砂が降ってくる。
フェイトは目でそれを捉えるので精一杯で、動く事も出来ず、飲み込まれるのを待つだけだった。
衝撃に見舞われる体。しかし、どうやら土砂に飲み込まれたわけではないらしい。
ふわりと浮く体。
そして浮遊感は終りを告げ、苦しそうな呼吸音だけがフェイトの耳に飛込んでくる。
「ぜぇ…はぁ…ま、間に合った…。」
瞼を開くと、そこには黒髪、赤目のシンの姿。
「…シン?」
フェイトはお姫様だっこされているのに気付き、恥ずかしくなって頬を染めた。

土砂で埋まった通路。
「…っクソッ!こんなときに!!!」
何を急いでいるのかは分からないがとにかく。
「あの…シン、降ろして…」
「………悪い…。」
フェイトを降ろすと、シンはアロンダイトを構え、カートリッジを消費。
『High-enagy Long-range Canonn』

土砂を緋色の閃光が吹き飛ばす。
「フェイト…はぁ…はぁ…先に地上本部へ!…なのはたちが…はぁ…早く!!」
「そんなに急いで…一体何が?」
そこへ、シャーリーからの通信が入る。
『フェイト隊長!急いで!事情は私から説明します!シンはどう?すぐに行ける?』
「ちょっと休んだらすぐに行く。」
呼吸を乱しながら天井を仰ぐシン。ここまでの道中、飛翔魔法にカートリッジ上乗せでハイスピードで飛んできた。
『わかった。でも、なるべく早くね?カートリッジはこちらから転送します。
さぁ、フェイト隊長、早く。』
フェイトはアジト出口へ向かって駆け出した。
途中、シャッハとアコースにドクターとナンバーズをお願いし、力強く地を蹴り、飛翔した。

獣の咆哮が空高く轟くとフリードが失速。地上へと倒れた。
「フリード!!…」
歯を悔い縛り、目の前のキラを睨みつけるエリオ。
『ルフトメッサー』
ストラーダから放たれるかまいたち。キラがいる場所、蒼い光がまるでモニターを切ったかのように光が消え失せる。
『ソニック・ムーブ』
金色の光がある場所へと向かうと、キラの姿が現れた。ストラーダとフリーダムのサーベル二本がぶつかり合う。
同時、キラの背後に出来る魔力の道。
「うぁぁぁあああ!!!」
ケリュケイオンから供給されるエネルギーでキラを強引に弾き飛ばしたエリオ。
体が大きくのけぞったキラは、エリオの追撃を身をよじってかわす。
『ライフル&サーベルモード』
エリオに斬撃を見舞い、スバルの足元、マッハキャリバーに二発ミーティアにより強化された通常射撃を放つ。
スバルが回避の為バランスを崩した。
「スバルさん!!!」
気をとられたエリオ。刹那、両方ともフリーダムをサーベルに変える。
エリオの視界に写ったのは4つの蒼き閃光。
ストラーダは4つに砕け散った。

「まずは一人…。二人目!!」
消える蒼い光。空気が破裂したかのような甲高い破裂音。
突如、スバルの目の前に現れるキラ。
「うぃッ!?」
一瞬驚くスバルだが、すぐにリボルバーナックルで応戦。
『シールド』
キラの腕から発生する波状障壁。その障壁内部に指を食い込ませるスバル。
「ッ!?」
「ディバイン…バスター!!!」
『カリドゥス』
至近距離での魔力の爆発。
衝撃に吹き飛ばされてしまったスバルはウィングロードから落ちてしまう。
そして、キラはそれを見逃さない。
無防備になったスバルを確認するとマッハキャリバーを斬撃で切り裂いた。
キラの視界の端に見えるのザフィーラの拳。
読んでいたかのごとく、キラは避けるとザフィーラの腹部におもいっきり蹴りを入れる。
「そんなもの…効かぬわぁあ!!!」
空いている方の手でパンチを繰り出してくるザフィーラ。キラは後退してかわし直ぐ様フリーダムを前後で連結させる。
『シャイニングエッジ』
「アスラン!!」
バリアジャケットをパージさせたにも関わらず、向かってくるアスラン。
「だけじゃないよ!」
『アクセルシューター』
シャイニングエッジをかわした直後、桜色の魔力弾に囲まれてしまうキラ。
だが、ヴォワチュールリュミエールによって加速したキラはそれを難無くかわす。
再び向かってくるザフィーラを連結砲撃で吹き飛ばすと、今度はなのはに狙いを定めるキラ。
その前に立ちはだかるのはシグナム。
「飛竜一閃!!」
放たれる刃の竜。ギリギリで避けたキラは一気に加速。放たれた刃を這うように飛翔し、斬撃。
だが、シグナムの張った障壁が攻撃を阻む。
『シュベルトゲーベル』
片方のフリーダムの刃が異様な輝きを放つ。
そして、その刃で突きを放つと、障壁を貫通して砕け散る。
とっさに鞘を生成し、鞘で攻撃を防いだが、
「残念だけど、僕は二刀流なんだ…クスッ。」
アギトがとっさに炎を形成、放とうとするも
「遅いよ!」
魔力刃をシグナムに叩き込み、落下するシグナムに向け、
『クスィフィアス3』
魔力弾を放った。

「シグナム!!!」
はやてが叫ぶ。
「後四人だね…。」
「いいえ、あと六人だわ。」
声が響く。
シャマルとティアナだった。
「なのは隊長!」
シャマルがなのはを呼んだ。ティアナはキャロとともにボルテールの手の上に乗る。
「クロスファイヤーシュート!!」
『Boost Up Brret Power』
数多の魔力弾がキラを捕えようと襲うが当たらない。
避けられた。
『グラップルスティンガー』
回避行動で硬直したキラをバインドが拘束し、アスランが背後から羽交い締めにする。
「前にもあったな、こんなこと…」
『Exprosion, Count down start 10…9…』
「皆!距離をとれ!俺に近付くな!!!」
力の限り叫ぶアスラン。周囲に聞こえたかは分からない。
これを使えば、確実にキラを魔力ダメージでノックダウン出来る。
「ア゛…ス…ら…ん…。」
苦しそうなキラの顔。
アスランの顔に動揺が走るしかし、ここで失敗するわけには行かない。
「な゛~…て……ね…。」
バイドが砕け、キラの後頭部がアスランの顔面に直撃。
ほどける腕、笑うキラ。
不味い、アスランを信じて皆が距離をとっている。
『クスィフィアス3』
放たれる魔力弾。アスランは発動予定の魔法の解除に追われ障壁を展開出来ないでいる。
『ディフェンサー+』
アスランを筒みこむ金色の障壁。
漆黒のバリアジャケットに身を包み、長い金髪を揺らす少女は二刀の剣を構え、切っ先をキラへと向けた。

スカリエッティアジト。
「レイ…。」
目を開け、放心するレイに話しかけるシン。
自分のやって来た事を理解しているようで、顔に片手をやって、うなだれている。
「…シン…これは…夢ではないんだな…。」
レイは言う。
ただ、生命操作、自分を苦しめたはずの、誰よりも被害者の気持を知っているはずの自分が協力していたことが許せなかった。

「一緒に行こう、レイ!」
『エクスカリバー』
発光を増すアロンダイトの魔力刃。レイにかけられたバインドを破壊する。
「協力すれば、きっと罪だって軽くなる!」
「相手は…誰だ?」
「キラ・ヤマトって人…レイは知ってるだろ?」
頷くレイ。
「よく知っている。だが何故?」
シンは立ち上がり、レイに腕を差し出しながら言った。
「世界最高のコーディネイターだって利用されるときはされるし、負けるときは負けるし、失敗するときはする。
死ぬときは死ぬんだ。」
レイはシンの手を取り立ち上がる。
「人の夢、人の未来、素晴らしい結果でも所詮は人、そういうことだよ。あの人も…な。
レイも俺たちと見た目は変わらない。
まぁ、レイの場合はテロメアに問題があるんだけど…。でもレイが生きている限り、俺たちとどこも変わらない人間だ。
出来損ないなんかじゃない。失敗作なんかじゃない。
ラウ・ル・クルーゼなんかじゃない。」
レイはしばらく、シンを呆っと眺めていたがやがて薄く笑うと
「…よもやお前から励まされるとはな…。そうだな…、最後ぐらい、レイ・ザ・バレルとして在るべきだな。」
そう言った。
「場所はどこだ?俺が何処までやれるかはわからないが、やってやる!」
「そうこなくっちゃ…。」
シンは笑みを浮かべると、局員達と入れ違いにアジトの外へでて、レイとともに廃棄都市街へと向かった。
切断されたストラーダを握り締め、修復をかけるエリオ。
幸い、本体部分は損傷していなかった。
フリードの元へ向かうと、フリードが鳴いて羽をばたつかせる。どうやら乗れと言っているようだ。
エリオはフリードに跨ると飛翔させ、ボルテールの横へつける。

エリオもキャロも、今のキラを見て悲しくなった。
機動六課で初出動したとき、キラが言っていた言葉を思い出す。
『何かを守る為には、想いだけでも…力だけでも駄目なんだ。』
エリオはその言葉を胸に刻みつけた。守りたい、その想いだけがあっても空回りしてしまうだけ…。
だから守りたいものに見合うだけの力をつけようとおもった。
キャロはその言葉を胸に刻みつけた。自分が初めてフリードを制御したとき、力を制御出来たとき、
強大な力だけがあっても、その力が空回りして誰かを傷付けてしまうだけ…。
だから守るために見合う力をつけようと思った。
だから力に見合う守りたいものを見つけようと思った。
なのに、今目の前のキラは力を誇示しているだけだ。
だから悲しい、だから止めたい、止めてあげたい。エリオとキャロが今まさにフェイトへ攻撃を仕掛けようとしているキラに向け叫んだ。
「僕達に!」
「私達に!」
「「想いだけでも、力だけでもって教えてくれたのはキラさんじゃないですか!!!!」」

キラはその言葉に目を覚ました。
そう、自分がエリオとキャロに言った言葉だ。
『サーベルモード』
フリーダムを支えにして立ち上がるキラ。
「みんなが…がんばってるのに…諦めちゃ…駄目だよね…フリーダム…。」
『Yes』
もう二発も受けてしまえば自分は消えてしまうだろう。空けた体を眺めながらキラは考える。
「いい加減、あきらめたら?わかったでしょ?僕には勝てないって…。
第一、攻撃だってまだ一回も当ててないしね。」
もう一人のキラが言う。
逆転するにはフルバーストを当てるしかない。
キラはそう考える。あとは相手の動きを止める方法だけだ。
相手を油断させる。キラはサーベル状態のフリーダムを右手に持ったまま、一歩一歩、もう一人の自分へと近付いていった。

二刀流対二刀流、金と蒼の魔力光が飛び交う中、魔力を回復してもらったなのはも戦線復帰。
フェイトを中心にキラを追い詰めようとするが、届かない。
「あと一歩なのに…。」
魔力的ではなく、体力、集中力的に限界が近付いている。
とにかく、動きが早すぎて、動きを止めるにはキラが攻撃を仕掛けてきた瞬間に鍔競り合いに持ち込むしかないのだが、フェイトではパワー不足。
アスランではスピード不足だ。エリオでは実力的に差が有りすぎる。
一方、なのはとはやてが放つ牽制の射撃なんかも、弾速、誘導補正が足りない。
足りないものはスピードと連射、誘導に優れ、弾速の早い魔法だった。

キラはもう一人の自分に向けてフリーダムのサーベルを構えた。
「僕は偽善者かも知れないけど…それでも僕の体を君に譲るわけにはいかない!!!」
「消えかけの体でよく言えるね?やってごらんよ?」もう一人の自分も同じようにしてフリーダムのサーベルを構えた。