Seed-NANOHA_140氏_第07話_前編

Last-modified: 2007-12-23 (日) 02:40:52

今までこれほど自分がコーディネーターでよかったと思ったことはない。

シンは歩きながらそうおもった。

ここはシグナムがよく知っている病院で、彼女がここまで彼を運び込んだ。

シンはすこし前に目を覚まし、痛みもほとんど引いていて、無事帰ってもいいと医師からいわれた。

担当の先生が言うには「あなた自身の体が異常に丈夫だから大事に至らなかった」ということらしい。

それを聞いて本当にコーディネーターであることに感謝したシン。

けど、付け加える医師。

「シグナムさんに感謝しなさいよ。ちょっと遅かったら生殖系に異常をきたしたかもしれなかったから。」

早い段階でここに運んできたシグナムには本当に助けられた。

それにしても、シンはシグナムを見る。

(よくもまあばれなかったな)

彼女は途中から飛んで彼を運んだと本人から聞いた。

救急車という案も「待つよりも飛ぶほうが早いだろ」と言う言葉で一蹴。

魔法って便利だなあ。心からシンはおもう。

病院から出ようとしたとき、玄関の前にははやてがいた。

「シンさん怪我いけるー?」

はやてに聞かれ「ああ」と返すシン。

それを聞いて安心したはやて。

「さっきなのはちゃんから電話があってな。お詫びがしたいって。」

その言葉でシンは疑問を浮かべる。

(俺って何かされたか?)

その疑問にはやてがすぐに答える。

「さっきシンを蹴った人、フェイトちゃんがいうにはなのはちゃんのお姉ちゃんやって。」

ああ、とシンは納得した。

病院送りにしたことをきいて、その侘びなのだろう。

「元はといえば俺が悪いことしたのに、いいのか?」

こうなったのはシンが美由希の胸を触った(というかつかんだ)ことから始まったのだ。

「それも含めてお話があるから来てって。ヴィータたちはすでにいっとるよ。」

じゃあ急いだほうがいいな。そう思い3人でなのはの親が営んでいる喫茶店に行くことになった。





ここはアースラの艦橋。

そこでリンディは目の前のモニターを見てため息をつく。

「調べるごとにすごいものがあるわね、これ。」

「本当ですよ。」

エイミィが結果を表示しながらつぶやく。

クロノは黙って結果を見ている。

「どれをとっても僕たちの世界では知らないものばかりだな。」

今リンディたちが見ているのはデスティニーの調査結果。

シンに頼んで調べさせてもらっていた。

大きな理由は2つ。一つは整備面。

流石にシンが少しやっているとはいえこのままだったらいつかガタが来る。

もうひとつは、まあ向こうの技術を見ておきたいという一つの好奇心だった。

「特に、この機体に積まれているシステム。特定の艦があれば外からでもエネルギーの供給が出来るシステム。ほかにもいろいろあるけど私たちじゃよく分からない。」

「まあ、詳しいことは彼に聞かないとわからないしね。今度彼も含めてもう一度調べてみましょう。」

そういうとリンディは手に持っている数枚のディスクを見る。

偵察が終った後、シンに渡されたディスク。

向こうの世界の規格だからここの世界では見れないため、どうにか見れるように出来ないかといわれた。

本来はこれはほかの人には見せれないが、もしこの世界の規格で見れるようになったらシンよりより先に専用記録のほうなら見てもいいという条件で作業に取り掛かり、さきほど終了したところである。

「こっちのほうも調べてみましょう。ちゃんと彼から許可は取ってあるわ。」

そういいながらディスクをはめ込むクロノ。

その中には、ここにいる全員が息を呑む映像があった。





「「・・・・・・・」」

ここはなのはの親が経営している喫茶店「翠屋」

シンがここに到着したときは客は誰もいない。

そこで、シンと美由希は向かい合う形で座っている。

なのはの親と話をした後、お互いが悪いと思っているのでお互いが謝りあうというということになったが、何かこう二人だけ残されてると言いづらいものがある。

(なんか、ドラマとかでよく見る仲直りする恋人みたい・・・)

なのはは二人のやり取りを見て思った。

もしくはこれがきっかけでこれから仲がよくなっていくパターンも思いつく。

(こういうのって、フラグがたつっていうのかな?)

どこぞの専門用語を思い出しながらみんなは二人を見ていた。

(なあなあはやて。)

小さな声でしゃべるヴィータ。

(なに?)

(何であんなふうになってんだかまだわかんねえんだけど。)

(私も。おしえておしえて)

ヴィータの横にいるなのはの友達、アリサが混ざりに来る。

ちょっとはずかしがりながらはやては答える

(シグナムからきいたからわたしも詳しいこと知らんけど・・・)





「・・・・さっきは悪かった。」

先にシンが謝る。

お互い、あまり顔を見ないようにしている。

「こっちこそ、やりすぎてごめん。」

シンにつられて美由希も謝る。

「はい、これで仲直り。」

笑いながら桃子がみんなのジュースを出す。

別に喧嘩したというわけではないが・・・・

「すみません。」

ジュースを出され、礼を言うシン。

「きにしないで、なのはの新しいお友達なんだから。」

「お・・・お友達?・・・・」

まだ仕事仲間とかなら分かるけど・・・・友達とはちょっと違う気がする・・・・シンは思った。

「え?違うの?なのはがそうだって言ってたけど。ねえ、なのは。」

「うん。シン君はなのはの友達だよ。」

いっぺんこいつの友達の概念を聞いてみたい。シンはそう思わずにはいわれなかった。

ここで、シンは妙な視線を感じた。

そこには、なのはの友達だろうか、オレンジっぽい髪をした少女がシンを睨んでいる。

「はやてからこうなったいきさつはきいたわ。これからよろしく。ラッキースケベさん。」

「え!?ラッキー・・・」

「だってそうじゃない。偶然ぶつかって美由希さんの・・・ああもう!女の子になに言わすのよ!」

(おまえ、あの子の胸触っただろ。このぉ、ラッキースケベ。)

一人で勝手に騒ぐアリサをよそに、シンはさっきのアリサの言葉で友人、ヨウラン・ケイトを思い出し、苦笑する。

(あいつら、元気でしてるかなあ。)

いま、自分がいないことでどうなってるのか気になる。

ふと、ここである言葉を思い出す。

それは、コズミック・イラの軍全部が知っているであろう言葉だった。

(そうだった・・・もしかしたら俺はもう・・・・)

それを思い出して、気が重くなるシン。

「どうしたんだい?」

シンがうつむいたままぼうっとしていうるので、なのはの父士郎と母、桃子が気にかけて声をかける。

「あ、いや・・・向こうにいる友人を思い出して、今頃どうしてるかなって・・・」

「そうだったの・・・はやく戻れるといいですね。ご家族も心配でしょうし。」

家族。その言葉にシンは少しうつむく。そして

「たぶん悲しんでくれてはいるでしょうが心配してくれている人はいないと思います。」

「え?」

シンがいったことに二人は驚いていた。

誰も心配してくれていない?

あ、とシンがあわてて言い直す。

ついしゃべり過ぎた。





「あ、いや・・・さっきのは独り言です。忘れてください・・・」

あわてながら言っているが、まあいいとして本来言おうとしていたことをいう。

「ああ。あと、今日ここでなのは達の進級祝いとしてここでちょっとしたパーティーを開くんだが、一緒にどうだい?」

話を聞くと、毎年なのはたちが進級するごとにやっていることでなのはとその友達関連の家族が集まって食事会を開くというものだった。

「一緒に食べたほうが、食事もおいしいしね。」

桃子も笑いながら言う。

おそらくはやてとヴォルケンたちも参加するのだろう。だとしたら出るしか選択儀がない。一人でいるものつまらないだろうし。

「じゃあ、参加させてもらいます。」

「わかった。じゃあ早めに来ておいてくれよ。」

「え?」

「パーティーのメンバーは男性が少なくてね。準備にはいろいろ力仕事も必要だから協力してもらうのさ。」

「はあ・・」

まあ呼んでもらうのだからそれぐらいはまあ当然だと思う。

「じゃあ今日は早めに店を閉めてから準備をするからもうちょっとでここでいてくれないか。」

「分かりました。」

そういってシンは空いている席に行く。

士郎は、さっきのシンの言葉が思い浮かぶ。

(悲しんでくれてはいるでしょうが、心配はしてくれないと思います。)

いったい、彼に何があったのか、気になっていた。







「ふぅ。」

いすに座り込むシン。

突っ込まれている手にはピンク色の携帯電話が握り締められている。

なぜか予備の軍服の中に入っていた。

違うものかと一瞬思ったが、開くとマユの画像があったので間違いない。

何でそうなったかは別に気にしないことにした。

これまでにもここにきたときデスティニーのENが満タンだったり壊れていた右腕が復元されていたり、不思議なことばかりが起こっている。

それに比べたら、ないはずの携帯が予備の服に入っているくらい・・・・

(って、普通は十分おかしいか・・・慣れてきたのかな・・・こういうことに・・・・)

あんましなれたくないけど、と心で愚痴る。

そして、さっきのことを思い出す。

今コズミックイラで自分が置かれている状況。

戦闘中に妙な雷に打たれどこかへ消えた。

普通は考えたらありえないが、おそらく自分は今この状況に置かれている。

「・・・MIA・・・か・・・」

シンは小さくつぶやいた。