Seed-NANOHA_140氏_第21話

Last-modified: 2007-12-23 (日) 18:26:46

「おはよー」

あくびをし、目をこすりながらシンはリビングに降りる。

すっかりこの生活に馴染んでしまった。

元の世界に戻ったらどうしよう、とすこし悩み事が増えた気がするいつもどおりの朝であった。

ただ、この八神家ではかわったことがある。それは……

「あ、おはよう……」

あの一件以降、ヴィータがシンの前でやけにおとなしく、素直になっている。(前話後編参照)

あの効果は抜群だったのだろうが、なんか違和感があってしょうがない。

まあそのうちいつもどおりになるのだろうけど……

シグナムやシャマルは静かでいいといっているが、はやてはシンと同意見らしい。

「なんや、ちがう子がおるみたいなや」と昨日すこし苦笑いを浮かべながら言っていた。

だが、ザフィーラが言うには、シンがいない時はある程度はいつもどおりに戻るらしい。

つまり、シンがずっと家にいるから家ではおとなしくなってるとザフィーラは踏んでるらしい。

本当にそうなのかの実験もかねて、今日ははやての学校も午前までなので、昼からは皆で買い物に出かけることにした。

「こうやって皆で買い物するんも、シンがうちらの家に来てからやな」

はやてに言われてシンは思い出す。

「そういえばそうだな」

はやての家に始めて訪れて、シンの服や備品を買いに行ったとき以来、シンは買い物に連いていった記憶がなかった。

確かに、こうやって全員で買い物に行くのは久しぶりだった。

今日は遠くまで買い物に行くのではやては車椅子に乗っている。

「今日は何を買いに行くんだ?」

それを聞いて、はやては笑いながら言う。

「まあいろいろやな、服も買いたいし、この前面白そうなビデオがレンタルしとるって聞いたし」

つまりは皆が買いたい物を買うことらしい。

「シンはどこかよりたいところある?」

はやてにそういわれてシンは迷う。

シンにとってこういうのが一番困る。

まだこの世界のことはあまり知らないから、どんなものがあるのか良く知らない。

有名人も、テレビ番組も雑誌も全然知らないものばかりである(ある程度は暮らしていくうちに知っているのだが)

そのなかで思いついたのが

「じゃあ…レコード店にでも行こうかな」

シンがそういってはやてが考えて

「じゃあ最初はそこにいこか。丁度一番近いし」

そういって一同は近場にあるレコード店に行く。

勿論、そこにはたくさんのCDやDVDが並べられている。





ヴィータはアニメコーナー、シグナムは演歌コーナーと、みんなが好きなところへ見に行く。

シンはとりあえず「今週のオリコンチャートコーナー」で足を止める。

とりあえず人気のアーティストの曲でも買おうかなと思った。

まずどんな曲があるのか試聴して見ることにした。

(いろいろあるんだな)

そして最後に聞いた曲。

『壊れあうから動けないさびしい羽重ねてー』

この声を聞いてシンは止まる。

この声、聞いたことがある声だった。

「ハイネ?」

この声はかつての上司(その2)、ハイネ・ヴェステンフルスの声に良く似ていた。

誰が歌っているのか気になったシンは調べてみると、流石に名前はハイネではなかった。

(そりゃあそうだよな……)

だが、曲自体が気に入ったのでこの曲を買うことにした。

そのアーティストの名前は…

「ミゲル・アイマンか」

だが、シンは知る由もない。そのミゲル・アイマンもコズミック・イラから来た来訪者ということに……だが、これ以降、彼の話は触れられることはなかった。



その後も、各自思う思いの品を買い

「ほな、最後は服やな」

そう言って、はやてとシャマルは嬉々としてデパートの衣服コーナーへと向かっていった。

そこへ……

ヴィータはどうしようか迷ったが、待つよりもはやてと一緒にいたいのでついていくことに。

「あ、シン君にはやてちゃん」

声をしたほうを向くと、いつもの3人組+忍&恭也がいた。

「あ、なのはちゃん。なのはちゃんたちも買い物?」

はやての言葉に頷くなのは。

さらに……

「なのは、はやてもいる」

偶然なのか必然なのか、ハラオウン家+エイミィまでもが来ていた。

買い物好きな女性達(シグナム除外)は嬉々として買い物に出かける。

さて、ここで困るのがずっと待っている男性人(+シグナム)

恭也、クロノは事前に「荷物係」として待機させられている。

「もう慣れたからいいけど」

とクロノはため息を混じらせながら言う。

ふと、シグナムとシンは思い出す。

別に自分達は荷物係といわれていない。

ためしにシグナムははやてに念話を試みる。





(主、私とアスカは別行動を取りたいのですがよろしいでしょうか?)

答えは意外と簡単に帰ってきた。

(ほうやな。ずっと待つんも嫌やろうし、ゆっくりしてき)

ああそれと、と一言付け足す。

(ヴィータも連れてってあげて、あの子はあんまし服には興味なさそうやけん連れてったほうがええと思う)

ヴィータはいつも「服ははやてが選んだのだったら何でもいい」という。

承諾を得たので、三人はデパートを出ることにした。



「で、別行動とったはいいけど、どうする?」

3人はショッピングモールを歩いている。

あのメンバーで服を買うとなると、恐ろしく時間がかかることは3人ともわかっていた。

「趣味がバラバラの3人だからな……」

シグナムがそういうと、なあなあとヴィータがシンの服のすそを引っ張る。

ほんとに変わったな、とシンは思った。

「腹減ったからなんか食いたいんだけど……」

あいかわらずヴィータはこの調子であった。

それを聞いてはぁ、とため息をつくシグナム。

「少し前に昼食を食べただろう」

シグナムの言葉にヴィータはむっとする。

「べつにいいじゃん。それにいつかも言ったけど、今は育ち盛りだ。」

だったらお前はずっと育ち盛りのままだろう、と突っ込もうかどうかシンは迷ったが、結局いわなかったことにした。

「まあ、おれも喉かわいたし。何よりよるところが無いから近くにある喫茶店にでもよるか?」

シンの言っていることももっともなので、3人は近くにある喫茶店に行くことにした。

とりあえず近くの喫茶店に入ってメニューを注文する。

その途中……

「なあヴィータ」

シンに呼ばれて、すこしびくっとしてシンのほうを向くヴィータ。

「もうあのことで怒ってないから、いい加減うじうじするのやめないか?はやても心配してるぞ」

そうシンに言われて、ヴィータはうつむいてしまう。

「別に……」

二人はん?とヴィータのほうを向く。

「別にうじうじしてるわけじゃねえよ」

ヴィータはそっぽを向きながら言う。

「アタシ、ときどきやりすぎてはやてやシャマルによく怒られた」

それはシンも時々見ていた。

「それで、この前のことで流石に自分でもこのままじゃいけないと思って、ちょっとずつ変わっていこうって思ったんだよ」

なるほど、それで今のようになっているのか、とシンは納得した。

つまり、ヴィータは、ヴィータなりにはやてに迷惑をかけないようにしようとしているのだ。

それを聞いて、二人は苦笑した。

「な、なんだよ…」

人が真面目に話しているのに何で笑うんだよ、とヴィータはむくれる。

「昨日、お前のことで皆と話してたんだ。ヴィータがなんか変だって」

それでどうしたんだろうと皆が思っていた。





「なるほど。そういうことだったのか。お前なりに考えていたのだな」

シグナムは意外そうにヴィータを見る。

悪いかよ、とすねるヴィータ

『別にわるくはないよ』

話していると、いきなりはやてが念話で話しかけていた。

『は、はやて?』

ヴィータはきょとんとする。

『ごめんな、こそっと隠れ聞きしとって』

はやてもはやてでヴィータが気になっていて、ついつい念話で会話を聞いてしまっていたのだった。

『主、買い物は?』

シグナムの疑問に答えたのはシャマルだった。

『大体買う服も決まって今は皆でレジで清算しているところよ』

上機嫌に答えるシャマル。どうやらいい服が見つかったらしい。

『なるほど、そうことやったんか……』

うーん、とはやてはヴィータの話を聞いて頷く。

『は、はやて……』

ちなみに、シンは魔法が使えないため、念話を使っているのはわかるが、どんな話をしているのかさっぱりわからない。

『ヴィータ、ヴィータの気持ちはうれしいけど、うちはいつもどおりのヴィータでいてほしい』

え?とヴィータは上を見る。

普通の人から見れば「何をしてるんだこいつは?」と疑問を抱かざるを得ない。

『確かに、ヴィータはときどきやりすぎるけど……』

はやてにいわれてしょんぼりするヴィータ。

『けど、そういうところも含めて、うちはヴィータが好きや』

しょんぼりしたと思えば今度は喜ぶヴィータ。

どんな話をしているのか全然解らないシンには全然解らない。ただヴィータがつぎつぎと表情を変えているだけである。

『せやから、そんなに考えすぎんといつもどおりのヴィータでおってほしい』

うん!と元気に念話で返すヴィータ。

その時、

「お客様、ご注文のメニューです」

ウェイトレスが、シン達が注文したメニューを持ってきた。

ちなみに、シンとシグナムはコーヒーで、ヴィータはイチゴパフェ。

「いただきまーす」

ヴィータがパフェを食べている中、シンはコーヒーをすすりながら尋ねる。

「おい、一体何の話だったんだヴィータ?」

シンの問にヴィータはパフェを口に含んだまま言う。

「えほあ、いあまえのあらひていえうえれっていあえあ」

「はっきりしゃべれ」

口に物を入れながらしゃべるヴィータに、シグナムがため息をつきながら突っ込む。

こんなやり取りは久しぶりのような気がする。

シグナムに言われて口の中にあるものを飲み込んでヴィータ食もう一度しゃべる。

「だから、いままでのアタシでいてくれっていったんだよ」

はやての言葉の効果は抜群だ、もういつもの喋り方に戻ってる。





「ふうん。それよりも早く食べろよ、さっきシグナムに聞いたけど、もう会計してるんだろ?さっさと合流しないと」

わかってるよ、とヴィータは再度パフェを食べる。

シンも、コーヒーをすする。

(やっぱブラックにするべきだったか?)

そう思いながら、休日が過ぎていった。

「ほうひえは、ほうのはんめひあんなんあおふな?」

「だからはっきりしゃべれ」