Seed-NANOHA_140氏_第27話

Last-modified: 2007-12-23 (日) 18:29:17

午前10時の海鳴市。

この海沿いのとある場所で、結界が張られ、その中には多数の人がいた。

「とうとう今日か……」

シンはステラを見つめてぎゅっと握り締める。

「シン、頑張ってな」

はやてにいわれて、ああと返すシン。

なんかこういう気持ちで戦うのって初めてのような気がする。

強いて言えば、訓練学校にいたときテストに近いかもしれない。

「よお坊主、がんばれよ。応援してるからな」

ムゥもシンを励ますが……

「…………」

シンはそれを無視する。

かなり嫌われているご様子。

シン!とはやてが注意するがあまり効果がない。

「シン」

今度はレイがシンを呼び、レイにはちゃんと反応するシン。

やれやれ、とムゥは降参、といったポーズをとる。

「お前にならやれる。フリーダムと戦ったときを思い出せ」

フリーダムのときも相手の方が間違いなく格上だった。

だが、レイと研究の末、勝利した。

ただ、今回は別になのはを憎んでるというわけでもないが……

「だから、気軽に行け。楽しむようにな」

レイにいわれてああ、と微笑んで返すシン。



「相変わらずね、あの二人」

アリサがシンとムゥを見て思った。

そうだね、と苦笑いを浮かべてなのはも思った。

シンとムゥ、あの二人の仲は未だに治ってない。

ただシンが一方的に嫌っているだけだが……

「なのは、がんばってね」

そこに桃子がやってきてなのはの応援をする。

桃子の言葉に、うん!と頷くなのは。

「で、美由希はどっちを応援するんだ?」

恭也の言葉に、う…と俯く美由希。

どっちも応援したいが、正直迷っている。

悩んだ末に出した答えは……

「やっぱりなのはかな?妹だし」

そうか、と恭也は前を見る。

そこには上空に浮かんでいるシンとなのはがいた。

「前も見たが、まさかなのはが空を飛んで戦うなんてなあ」

そうだね、と美由希も前を向く。



『開始の合図は私がするわ』

念話で話しかけるリンディに、二人は無言で頷く。

『解ってるとは思うけど、魔法は非殺傷設定。それでも怪我をしかねない危険なことがあったら即中止ね』

大体のことを言い終えて、今度は念話を使わずに言う。

「じゃあ、二人とも準備して」

リンディの声で、お互いのデバイスを掲げる。

「ステラ!」

「レイジングハート!」

二人の体が同時に光に包まれ、お互いのバリアジャケット…シンの場合はアームドデバイスなので騎士甲冑なのだが……を装着する。

同時に構え……

「シン君!」

ふいに、なのはがシンに話しかける。

「私が勝ったら、ムゥさんと仲直りしてもらうからね!」

はぁ!?とすっとんきょんな声を上げるシン。

いきなり何を言い出すんだコイツは?

「やっぱり仲が悪いのはいけないことだから!」

いや、満面の笑みで言われても……

それ以前に……

「仲直りって……前から仲がよかったってわけじゃ……」

じゃあ、となのははいう。

「だっやら無理にでも仲良くなってもらうからね!」

それでいいのかよおい!と突っ込むのだが、行っても聞かなさそうである。

「流石なのはちゃん……」

はやてたちはなのはの話を聞いて唖然とする。

だが、たしかに仲が悪いのはいけないことだ。

そして、当の本人は……

「いやあ、すごいねえあの嬢ちゃん」

……いいのかそれで?



「それでは、始め!」

まあいろいろあったが、リンディの言葉とともに二人は動く。

先に動いたのはなのはだった。

『アクセルシューター』

レイジングハートから薬莢が飛び出し、なのはの周りに球体が複数出現し……

「シュート!!」

アクセルシューターは奇妙な円を描きながらシンに向かっていく。

「ステラ!」

一方、シンもカートリッジを一つ使用する。

すると、シンの手から光が発せられる。

『ファイティングアーツ』

シンはアクセルシューターに向かって避けようともせず突撃する。

「はあ!」

そしてアクセルシューターを叩き落としていく。

だが、アクセルシューターはなのはの意思によって自由自在に動き回り、なかなかうまくいかない。



「ちぃ!」

見る見るうちにアクセルシューターに囲まれそうになるシンだが……

「だったら!」

シンはかまわずなのはに向かって特攻し……

「このぉ!」

「くっ!」

シンはなのはにむかってパンチを続ける。

なのははシールドを張り攻撃を防ぐ。

何とか後ろに下がろうとするが、なかなか抜け出せないでいた。

そこに……

『シン…後ろ』

さっきのアクセルシューターがシンに向かってきた。

だが、シンはステラの言葉を無視して殴り続ける。

防御に自身のあるなのはでも、少しずつプロテクションにひびが入ってきている。

そこで、なのははシンの意図を理解したが遅かった。

シンはアクセルシューターが来るほんの手前で攻撃を止め、プロテクションを壁蹴りして上昇。

それによってアクセルシューターはなのはに向かう

アクセルシューターをとめようとするが何個かはそのままなのはの張ったプロテクションに命中、爆散した。

それを見たシンは再度攻撃を開始しようとするが、なにから薬莢が飛び出す音が聞こえる。

「ディバイィーーン……」

煙の中からなにやら光が収束し始める……

シンはとっさにシールドを張るが……

「ブァアスターーー!!」

一筋の桜色の光がシンを襲う。

「ぐっ……」

かなりの衝撃がシンを襲う。

今まで魔術祭りで戦った100人の兵(つわもの)たちよりも強力な攻撃。

(なんて火力とパワーだよ……こいつ……)

こいつこそ真の漢だ、シンはそう思う。

いけない、あの祭りのせいで奇妙な口癖が移った。

とにかく、やっぱりなのはと距離をとるものじゃない。

シンは必死で耐え、何とかディバインバスターに耐え切る。

「ふぅ……」

シンは息を少し切らしてなのはの方を見て構える。

しかし……

「何!」

シンはバインドで拘束される。

「何勘違いしているの?……」

もう一度カートリッジを放出。

今度はさっきのディバインバスターよりも強力な光が収束する。

「まだ、私の攻撃は終了してないよ!」



「なのは、本気だね」

フェイトは二人の勝負を見ていてふとつぶやく。

最初は少しシンが押していたが、やはりなのはがだんだんと有利になる。

「やっぱりいきなり全力全壊のなのはちゃんと戦うんはちょっと無理があるなあ」

苦笑いを浮かべながらはやてはいう。

それ以前にはやてさん、全力全壊って字が違いますよ。

……まあ、半分あってますけど……

一方、家族と友人達はそんななのはを唖然としてみる。

あんななのは、今まで見たことない。

そんな中、レイは冷静になのはの戦いを分析していた。

「ほぼデータどおりの戦い方だな…ただ……」

ただ、予想よりも攻撃力が高い。

「俺がレジェンドに乗っても勝てるかどうか……」

負ける確率のほうが高いかもしれない。レイはそう思った。

(ザフトの技術力も、まだまだということか……)



「いくよ!ディバイィーーーン!」

だんだんと収束されて、今にもあふれ出そうはほどに膨れ上がった光。

それ以前に、今日のなのははどこか迫力が違うような気がした。

「くっそぉーーー!」

シンは力を込めて、いつものようにバインドを引きちぎる。

しょっちゅうあの師匠にバインドをかけられ、引きちぎるのは馴れている。

多少術式が違うので苦労したが。

「バアァスタァーーーーー!!!」

『エクステンション』

バインドを引きちぎると同時に、さっきとは比べ物にならない膨大な魔力の塊がシンを襲う。

ディバインバスターは海面に激突し、激しい水しぶきを上げる。

それをシンは紙一重でかわし、その威力に唖然とする。

(デスティニーのビーム砲でもあそこまで出ないぞ……)

こりゃさっさと終らせないとやばい目にあう。シンはそう確信した。

「はぁ……はぁ……」

なのはは全力のバスターを放ち、流石に少し疲れが見える。

シンはその隙に攻撃を仕掛ける。

「ステラ!フラッシュエッジ!」

『了解。フラッシュエッジ』

シンの両手が少し光ると、両手に短刀ほどの長さの魔力刃を持つ刀状の武器が現れる。

「へえ……」

恭也と士郎は、自分達が使う刀に似ているのをシンがもち、どう使うのか興味があった。

シンはスラッシュエッジを構え……

『モード・ブーメラン』

「このお!」

シンはフラッシュエッジをなのはに向かって投げた。

フラッシュエッジは弧を何度も描きながらなのはに向かってゆく。

だが、それを簡単にかわすなのは。



そこに……

「もらった!!」

「うっ……」

再度、シンのパンチの応酬。

予想通りシンの機動力はなのはを超えていた。

それに、なのはに勝つにはこのように相手に攻撃をさせないように攻撃をする必要がある。

質より量、ゴリ押し戦法である。

「オーラオラオラオラオラオラオラオラアアーーー!!」

繰り出される無数のパンチ。

今のシンなら自分でもないなにかがシンには出せそうな気がしてきた。

ス○○ドといったか。まあ、今は関係ない話である。

なのははシンの攻撃を防いでいると。

『マスター、後ろです』

そこに、さっき避けたフラッシュエッジが再度なのはを襲う。

シンはこれを狙っていた。

わざと攻撃を避けさせ、こっちが避けられないような連続攻撃で動きを止め、フラッシュエッジでダメージを与える作戦。

どの道正面衝突しても勝てないのは火を見るより明らか。

だったら頭を使って作戦を練るしかない。

さっきなのはもよく似た攻撃をしてきたが、こっちは今なのはの動きを封じている。

やれる、そう思ったが……

「これはさっきのお返し!」

『シールドブレイク』

なのははわざとシールドを破裂、爆発させ、なのははフラッシュエッジを回避し、フラッシュエッジはシンを襲うことになる。

「くそ、ステラ!」

『モード・サーベル』

フラッシュエッジはシンの手に戻り、刃の部分が伸び、接近戦用の武器となった。

お互いの距離が開き、なのはは再度アクセルシューターを展開し、

「シュート!」

さっきのは様子見だったのか、今度のは弾の数も速度は桁違いに高い。

「くそ!」

シンは迎撃用の魔法を展開する。

『CIWS』

シンの周りに、シンの顔ほどの大きさの魔法陣が複数出現する。

魔方陣はぴったりシンについてきて、シンが下がれば魔法陣も下がる。

シンは、下がりながらアクセルシューターに向かって、魔方陣から砲撃を連射で迎撃する。

一発一発の威力はおそらく最弱のCIWS。

だが、底連射力を駆使して地道に一つ一つシューターを落としていき、CIWSの攻撃をかわしたシューターはフラッシュエッジで切り落としていく。

それに必死でまだシンは気付いていない。

落としている最中に、シューターをコントロールしながら、エクセリオンモードにチェンジし、自身が持つ最大級の魔法を準備していることに……



「まだまだなっていないな」

シグナムはシンのフラッシュエッジの振りを見て思う。

以前シンが剣道道場に来ていたときに少し練習風景を見ていたが、あんな状態でいきなり二刀流は無理がある。

ただ、まだまだのびそうではあるが。

「ほな、シグナムが使い方教えてあげんとな」

はやてが話しかけてきて、そうですね、と微笑むシグナム。

これからもシンは大変そうやな、とはやて思った。



「これで…ラストーーー!」

シンはフラッシュエッジを振るい、最後のシューターを破壊する。

全く、なんて数だよ、とシンは息を切らしながら思う。

そして、シンはやっと気付く。

なのはが次の攻撃の準備をしていることに。

「受けてみて、これが私の全力全開!」

なのははそういってレイジングハートをシンに向けて構える。

それと同時に再度、シンにバインドをかける。

いくらバインドを引きちぎるシンでも、このタイミングではちぎったとしても避けることはできない。

だから動きを止めるためのバインドで、そこまで拘束力は高くない。

「スタアァーライトオォーーーー……」

はちきれんばかりに収束される魔力。

シンはそれを見て息を呑む。

殺られる。

非殺傷設定なのはわかってるが、それでも殺される。そんな感じがシンの体全体に伝わる。

その時、シンの中で何かが弾ける。

このまま終ってたまるか!!

「ブゥレイカーーーーーー!!」

放たれる膨大な魔力。

シンはすぐにバインドを千切る。

だが、目の前にはスターライトブレイカーが目前に迫る。

「ステラ……」

シンはステラに命令し、ステラが何か唱えるが、それはスターライトブレイカーの膨大な魔力に阻まれ、聞こえるものは誰もいなかった。