「はあ……」
マユはため息を付いていた。
以前、プレシアがもうすぐ管理局の人間が来ると言っていた。
プレシアのしていることは本来してはいけないかららしい。
だが……
「なのはちゃん、はやてちゃん、フェイトちゃん……」
以前地上に降り立ったときに知り合い、友達になった3人の少女。
だが、彼女達は管理局に入っているらしい。
管理局の人たちが来るとなれば間違いなく彼女達も来るだろう。
自分は彼女達と戦えるのだろうか……
そう思い廊下をふらふらと歩いていた。
その時だった。
ズキュウゥゥン!
急に銃声が鳴り響いたのだ。
近くで起こったため、マユはびっくりする。
(何でこんなところで銃声が?……)
マユは恐る恐る銃声のしたほうを向く。
そこはプレシアの部屋だった。
都合よくドアが少し開いていて、マユはその中を見る。
「!!」
そこを見ると、プレシアが腹を押さえて倒れていて、クルーゼが銃を持っていたのだ。
いきなりのことで頭が回らない。
何故こんなことになってしまったのか……
話は数分前にさかのぼる。
「もうすぐ、もうすぐよ……」
アリシアは心の中から喜ぶ。
もうすぐ、もうすぐアリシアは復活する。
このロストロギアの力はすさまじい力を持っている。
それはクルーゼも感じていた。
だが……
「ですが、管理局はどうしますかね?」
今の彼女達の最大の敵は管理局である。
またやつらが邪魔をしに来る。それももうすぐ。
「今度こそ邪魔はさせないわ……」
プレシアは急にはをきしませる。
その時だった。
「いいことを教えよう。安心しきったときにやわらかい横腹を突かれると痛い目を見るのだよ」
「!!」
そういったとき、けたたましい銃声とともにプレシアが倒れる。
クルーゼが持っていた銃でプレシアを撃ったのだ。
「く、クルーゼ……」
プレシアは激痛に耐えながらクルーゼを睨む。
まさかここで本性を現すとは……油断していた。
「おや、反撃しないのかね?それとも激痛で集中できないかな?しないのなら都合がいいのだがね」
そういってクルーゼはプレシアをバインドで拘束する。
それは腹部にも生成され、傷口に触れ痛みに耐えるプレシア。
クルーゼはそんなプレシアを見て笑う。
「あなたが何故用心していたにもかかわらず、こうなってしまったのか教えてあげよう」
そういって、手を差し出す。
「それはマユ君のせいだよ。彼女とともにいることであなたはアリシア・テスタロッサといたときのあなたを思い出し、心のどこかに余裕が出来た。といったところかな」
クルーゼは笑いながらいう。
「全く、彼女は本当に役に立ったよ。おかげで計画がここまでうなくいくとはね」
本当にいい拾い物をした、とクルーゼは思う。
「……何が目的なの?」
プレシアは息を切らしながらクルーゼを見る。
「それはあなたもわかっているでしょう」
そういってクルーゼはロストロギアに目を向ける。
そしてクルーゼは話した。プレシアとであったときの自分の気持ちを。
クルーゼはプレシアに助けられた後も人類を恨んでいて、復讐をしたいと思っている。
だが、もう以前みたいにザフトを利用することも出来ない。
そこで目に付いたのはあのロストロギア。
あの力さえあれば、おそらく自分の夢をかなえることが出来る。
「ですが、最初は魔法が使えるものにしか使えないと思っていたのですがね……」
しかし、今は彼も魔法が使える。
それを聞いてプレシアは鼻で笑う。
「あなたはロストロギアのことを何もわかってないわね。下手に使おうとすると身を滅ぼすわよ」
プレシアの言葉にクルーゼは鼻で笑う。
「それは百も承知だよ。君のおかげで苦しみから解放されはしたが、余命がほとんどないのは変わらないからね。人類さえ滅べば、私自身はどうなってもいいのだよ」
もう持たないこの身体。だが、もう願いさえかなえれば後はどうでもいい。
その時だった。
キィ、と少しだけドアがひらいたのだ。
「あ……」
そこにいた少女、マユはしまった、と思った。
話が良く聞こえなかったため、ついドアを押してしまったのだ。
だが、クルーゼは自分を利用しているということはわかった。
クルーゼは笑いながらマユを見る。
そしてゆっくりと銃をマユへと向ける。
「君もずいぶんと利用させてもらったよ。だが、見られたからには……わかっているね」
そういってクルーゼはゆっくりとトリガーを引く。
マユは銃を見て怯えている。
ふとクルーゼは思いつく。
彼女は体内にデバイスを取り込んでいる。
だから撃ってもデバイスが彼女を守るだろう。
そう思い撃つのをためらった一瞬の隙だった。
「何!?」
クルーゼはバインド拘束される。
「マユ、今のうちに逃げなさい!」
プレシアは腹部を押さえながらバインドでクルーゼを拘束する。
「け、けど……」
怪我をしているプレシアを放っておくことは出来ないが、自分ではどうすることも出来ない。
マユはプレシアにごめんなさいといってその場を後にする。
「ちい!」
クルーゼはバインドを解いてプレシアを見る。
やはり銃で撃たれたこともあって力はそんなにない。
「ふん、なめたまねをしてくれる……」
そういってクルーゼはもう一度プレシアに銃を向け、引き金をもう一度引くのだった……
「ふう、さて、マユ君をどうするか……」
そう思慮して、クルーゼはその場所を後にするのだった……
「もうすぐだね、決戦まで」
はやてたちは翠屋で話しをしながら数日後のことについて話していた。
さっき会議ですべての準備が整ったので、明日のこの国の世界で午後2時にプレシア・テスタロッサがいるところへ攻撃をかけるので、皆はそれぞれ思い思いのときを過ごしている。
「そうやな……」
はやては管理局に入って、おそらくはじめての大きなたたないになるので緊張している。
「心配しなくても、私達が主には指一本触れさせません」
シグナムの言葉に、ヴィータもまかせろ、といってにっこりと笑い、はやてもそれにつられて笑う。
その横では……
「……」
フェイトの元気がなく、さっきから俯いている。
「フェイト……」
アルフはフェイトを心配する。
そういえば、この話でアルフのセリフのほぼ半分が「フェイト」と思ったのは内緒である。
「なあ、そのフェイトの母親ってどんなやつだったんだ?」
シンはいまいちプレシア・テスタロッサがどのような人物かよく分からない。
フェイトハそこまで悪いようにはいわないが、アルフはプレシアのことを思いっきり嫌っている。
沈んでいるフェイトの変わりになのはが説明する。
プレシアにはアリシアと言う娘がいた。
しかし彼女はプレシアの研究の実験で死んでしまう。
プレシアはそれを認めず、どうにかしてアリシアを目覚めさせようとする。
フェイトはその間の代わりに作ったといわれている。
その後もプレシアの事を聞き、シンはアルフが怒るのも無理ないと思った。
「にしても、どうしてフェイトハそんな人なのにずっと慕ってたんだ?」
話の途中にアルフがいっていたが、何か失敗するとすぐにお仕置きといって鞭で叩かれていたらしい。
そんな人を何で慕っていたのだろうか……
「それは……私はただ、母さんに笑って欲しかったから……」
フェイトの埋め込まれたアリシアが生きていたときの記憶。
フェイトはもう一度笑っているプレシアを見たかったのだった。
だから、あのときのプレシアの笑みを見て、フェイトの心は多きく揺れたのだった。
あの笑みは、今までずっと欲しかった笑みだったから。
そう話していたときだった。
『マスター、魔力反応です』
レイジングハートの言葉に、なのはたちも頷く。
レイジングハートが気付くと同時になのは達も魔力を感知した。
場所はかなり近い。
皆は翠屋をでてシャマルが結界を張る。
そこには傀儡兵がいた。
よく見ると、傀儡兵は何者かを追っているようだった。
その人物は……
「え、マユちゃん!?」
マユが傀儡兵に追われていたのだ。
何故彼女が追われているかわからなかったが、助けなければいけない。
そう思い助けようといくなのはだが、シンが真っ先に飛び込んで、マユの一番近い傀儡兵をアロンダイトでたたっ切った。
「大丈夫か!マユ!!」
マユは急いでいた。
急いでなのは達にあのことを言わないと。
そう思い全力で走った。飛んだ。
そうしていると、おそらくクルーゼが呼び出したであろう傀儡兵がマユを追ってきた。
マユがまだ見たこともない、おそらく上位の傀儡兵が執拗にマユを攻め立てる。
何とか攻撃は防いでいるが、まだ実戦をまともにしたことがないマユ(あの時はつかまっただけ)に複数の傀儡兵を相手にするのは難しい。
「きゃあ!?」
いきなり爆発が起こり、マユはそれに吹き飛ばされてしまう。
しまった、と思ったが、何故か傀儡兵の攻撃が来ないのだ。
どうしたのだろうと思い傀儡兵のほうを向くと、見知らぬ人が前に立っている。
「大丈夫か!マユ!!」
なんで知らない人が私の名前を知ってるんだろうと思ったが、マユはその見知らぬ人にどこか親近感が沸くが、理由がわからなかった。
ただ、助けが来たとわかると安心する。
「マユちゃん!」
シンに少し遅れて、なのはたちも到着した。
なのはたちを見て完全に安心しきったマユは、今までの疲れで眠ってしまう。
傀儡兵を殲滅したあと、マユをアースラの医務室へ運び、食堂で話をするなのは達。
マユにはシャマルがついている。
「けど、どうしてマユちゃんが?」
なのはは、何故マユがまたここに来たのかわからない。
それに傀儡兵が彼女は追っていた理由も。
おそらく向こうで何かあったのだろうが。
もうすぐ決戦も近い。出来ればマユに目ををさめてもらい、詳しい話を知りたかった。
ふと、シンは不思議に思ったことがある。
マユの千切れていた腕のことだ。
シンは覚えている。
マユの千切れていた腕のことを。
シンはそのことを聞いた。
「魔法って千切れた腕の生成って言うのも出来るのか?」
そんなどこかのSFみたいなこと、出来るのか?と思うシン。
「出来るよ。かなりの技術力は要るけどね」
ふうん、とシンは考え、フェイトのことを思い出す。
フェイトには失礼だが、フェイトを作った人物なら腕の一本や二本など作るのは簡単なのだろう。
「みんな、話があるんだけどちょっといい?」
話をしていると、シャマルがやってきた。
なんだろうと思ってシャマルの話を聞く一同。
「マユちゃんの検査をしていたら、脳波に以上が感じられたの」
シャマルの言葉で皆(特にシン)は驚く。
「多分、記憶操作か何かだと思うんだけど……」
シャマルの言葉に、シグナムは察した。
「アスカ、お前はこの世界で一度、マユに会ったのか?」
シグナムの問に、ああと頷くシン。
それにフェイトもどうだったか察する。
「つまり、母さんがマユにあるシンについての記憶を消したってこと?」
それを聞いて、そんな、とシンは愕然とする。
「けど、それはマユちゃんが目覚めてみないとわからないから。気を落とさないで」
まだシンのことを忘れたというわけはない。
元気付けるシャマルに、ああと言い返すシン。
「それをいいたかったの。彼女が目が覚めてるといけないから私は医務室に戻ってますね。目が覚めたらまた連絡します」
そういってシャマルはその場を後にする。
「………」
シャマルの話を聞いて、シンは俯いたままであった。
妹が目覚めたとき、自分のことを忘れているといわれれば当然かもしれない。
「マユ……」
そして数時間後、兄妹は再会するのだった……
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