Seed-NANOHA_140氏_第35話

Last-modified: 2007-12-23 (日) 22:30:35

シン達は控え室で待機していた。

そこで見えるモニターには、かなりの数の武装隊のメンバーがクルーゼがいるであろう施設に現れては進入していく。

様々な検討の結果、クルーゼはおそらく自分のデバイスを持っていないと予測。

彼に戦う力があればすぐにでもプレシアを襲うはずだ。

それをせず、ロストロギアの力が発動寸前になるまで待っていたのは、彼は魔法を持っていたがそれを戦うことには利用できず、

クルーゼは問いを待つ作戦に出た、と言うことである。

だが、さっきの見たとおり傀儡兵の召還はできるので、用心しつつ武装隊は進入する。

そこに……

「これは!?」

局員は信じられないものを目にする。

通常の傀儡兵サイズだが、複数のプロヴィデンスが現れたのだ。



「ん……」

気を失っていたマユは再度医務室で目を覚ます。

「マユちゃん、大丈夫?」

シャマルはさっきのことがあるのでマユを心配する。

マユはプレシアが死んだといわれて、まだショックを隠せないでいた。

だが、あのクルーゼのおかげで大切な事を思い出せた。

「いかなきゃ……」

おそらく、思い出した大切な人は、これから大きな、危ない戦いへと身を投じるだろう。

だから、今まで迷惑かけてきた分彼を助けたい。

たった一人の家族を……

「今度は、私がお兄ちゃんを守らなきゃ」

マユの言葉にシャマルは驚いた。

「マユちゃん、シン君の子と思い出したの?」

マユは力強くシャマルを見る。

「あの、私も何か手伝えることは出来ますか?」



リンディ達もプロヴィデンスが現れたときには驚いた。

いつの間にあんなものを……

だが、まずは局員に対比を命令する。

やはり所詮傀儡は傀儡、本物と比べて動きはぎこちない。

だがやはりドラグーンは厄介なもので、局員達は手間取る。

と言うことで、今現在あんな攻撃に対処できる人物は……

「シン君、それとなのはさん行ってくれる?」

リンディの言葉に二人は頷く。

正直、いきなりの実戦がこんなことになるなんてシンは思っても見なかった。

少し緊張するが、シンは局員達がいるところへ向かう。

そこに……

「あの、私も連れて行ってください!」

そういってきたのは、気を取り戻したマユだったのだ。

いきなりのことで驚く一同。

そんなマユに、クロノは厳しく言う。



「残念だが、事件の関係者である君を行かせるわけには行かない」

それに、一度戦ってクロノはわかった。

彼女はまだ戦う術をあまり知らない。

そんな彼女が行くと、確実に足手まといになる。

シンがいきなりなのはと互角以上に戦えたのは、彼の才能もあるが、リーゼによるスパルタ、そして何よりMSではあるが幾度の戦いを経験しているところが大きい。

だが、マユは自分にしか出来ないことがある事を言う。

「内部の詳しいこととかも知ってます!お願いです、連れて行ってください!!」

まだ言うマユに、クロノはどうしようと思ったが……

「わかりました、道案内、よろしくお願いします」

「提督!?」

リンディの言葉に、クロノは驚く。

「確かに道案内がいてくれると進行もはかどるし、何よりこのままだったら黙って出て行きかねないから、それだったらいっそのこと許可したほうがいいでしょ?」

リンディに図星を言われ、黙り込むクロノ。

「それじゃ、マユちゃんの護衛を、フェイトさんに頼むけどいいわね?」

リンディの言葉に二人は頷く。

マユはにっこりとシンのほうを向く。

「一緒に行こう、お兄ちゃん」

マユの言葉にシンは驚く。

「マユ、お前記憶が……」

シンの言葉にマユは頷き、さっきまで笑っていた顔が段々の涙ぐんでいく。

「やっと……やっとあえた……」

そういってマユはシンに抱きつく。

「おい、マユ……」

この感動の兄弟の再会に、グスッと涙を拭くシャマル。

「よかったな、シン」

はやての言葉に心も小さく頷く。

「マユ、今はあいつを止めよう、話はその後でも出来るから」

シンはすぐにバリアジャケットを装着する。

その姿を見てマユは驚く。

「お兄ちゃん、その格好……」

マユが知る限り、その格好はザフトの赤服だった。

そういえば、一度あったときも兄はザフトのパイロットスーツを着ていた。

兄はザフトに入っていたのだろうか……

「その事は、後で詳しく話してやるよ」そういってマユを転送場所へと連れていく。



「フェイトちゃん、大丈夫?」

なのははフェイトの表情を見て彼女を心配する。

あれだけのことがあったのだ。落ち着きがないのも無理はない。

なのははフェイトを信頼しているから心配ないとはおもうが……

「リンディさんに言って、シグナムさんあたりと変わってもらおうか?」

念のために変わってもらおうかと聞いたら、フェイトは首を横に振る。

「うん、だいじょうぶだよなのは」

そういって笑って見せるフェイト。

「さ、いこう。なのは」

そう言ってフェイトは転送場所へ向かう。



「なのは」

なのはも向かおうと思ったが、それはクロノに止められる。

「その…フェイトを頼む……あいつ、無茶してるだろうから」

クロノはぽりぽりと顔を欠きながらいう。

そんなクロノに、なのははうんと頷いてフェイトを追う。

「さすがクロノお兄さん。妹への対処もばっちりですな」

うわあ!と驚きながら後ろを振り向くと、そこにはエイミィがニヤつかせながらクロノの後ろにいた。

「い、いきなり現れるな!おどろくだろ!!」

顔を真っ赤にしながらクロノはエイミィを見る。

エイミィは相変わらずの顔でクロノを見る。

「それでシン君とマユちゃんのやりとりがちょっとうらやましいとか思ってて、それでちょっと自分でもして見たいとでも思ってみたいんでしょ?」

思い返される先ほどの二人のやり取り。

正直に言えば、ちょっとは思っているがもちろんそれを口には出さないクロノ。

「そ、そんなわけ無いだろ!何を言ってるんだまったく…それよりも早く君も持ち場に戻れ!」

そんなクロノの言葉にはいはい、と笑いながら持ち場に戻るエイミィ。

全く、この非常時に何を考えてるのだろうか……

だが、幾分か心がすっきりしたような気がしないまでも無い。

どうやらまいっているのは自分も同じらしい。

(全く、すべてお見通しということか……)

クロノはそういってモニターを見た。

そこには早くも敵地に乗り込もうとしているシンたちがいた。



局員は傀儡兵プロヴィデンスに苦戦する。

ドラグーンという今まで見たこと無いものに少々手間取っているのだ。

この攻撃、威力自体はそこまで高くはないのだが、一番恐ろしいのはどこから攻撃するかわからないということである。

さらに本体はプロテクションで守られているため決定的なダメージをなかなか耐えられない。

予測のつかない攻撃に局員は一時後退を考える。

そこに桃色と黄色の砲撃がプロヴィデンスをまとめて襲う。

プロテクションを貫かれ、プロヴィデンスは爆散する。

「はあぁぁーーーー!!」

そのあと、赤いバリアジャケットを身にまとったシンが右手を光らせながら突撃する。

『パルマフィオキーナ』

プロテクションを展開しているプロヴィデンスに突進し、パルマフィオキーナを破裂させプロテクションを破壊。

その後スラッシュエッジで攻撃、破壊した。

「ここは私達が引き受けます。皆さんは先に中のほうへ」

後から現れたフェイトたちの言葉に頷いて、局員は先に進む。

それを呆然と見つめるマユ。

まあ、大の大人がたった10歳の子供の指示に従っているのだ。当然だろう。

あらかた敵を片付け、まだあっけに取られているマユにこそっと教えるシン。

「あの二人、AAA以上の能力を持ってるんだ」

マユもプレシアから魔術についてある程度の事は聞いている。

勿論魔術ランクのことも。

AAAランクの魔術師はそうそういないと教えてもらったマユ。

そんな魔術師が目の前に二人もいる。



そこで、マユは思った。

「お兄ちゃんのランクは?」

マユはシンのランクが気になって聞いてみた。

聞かれたシンはばつが悪そうに言う。

「俺はまだAAで、前になのは模擬戦をやってボコボコにされた」

それを聞いて、マユはシンがなのはに手も足も出ないまま倒されるのを見てつい笑ってしまう。

「わ、笑うこと無いだろ」

シンは顔を赤らめながらいう。

こうやって妹と話すのは久しぶりだ。まあ、死んでると思ったから当然なのだが。

「そんなことないよ、私ももう少しで負けそうだったし」

そこへなのは達もやってくる。

「もう周辺に魔力反応はないよ、私達も行こう」

落ち着いたなのはと違って、フェイトは少しあせっているように感じる。

それはマユも同じで、4人はマユの案内で実験室へ向かおうとしたときだった。

『みんな!一旦後退して!!』

大まかなエイミィの声が聞こえた。

なんだ?と思った時、かなりの魔力反応を察知する。

この魔力、リィンフォースとの戦いのときぐらいはあるとなのはとフェイトは思った。

とっさのエイミィの反応ですぐに転送される一同。



「クク……」

クルーゼはつい笑みをこぼす。

すべての準備は整い、クルーゼはロストロギアを発動させる。

体中をさすような魔力。

まさか、これ以上の力を持つとは思わなかった。

この力さえあれば、世界への復讐も簡単に出来るかもしれない。

だがまずは……

「あの管理局が邪魔だな……」

まずはあれから片付けるとしようか。

そう思っているとクルーゼは光に包まれた。

それと同時に、横で倒れていた女性と、機材の中にいる少女の体がピクリと動いていることに、クルーゼは気付かなかった……