Seed-NANOHA_140氏_第36話

Last-modified: 2007-12-23 (日) 22:31:13

シン達はエイミィによって外へ転送される。

そこには、シグナムやレイ、待機中のメンバーがいた。

そして先ほどシンがいた場所は、輝かしいほどの光に包まれている。

それと同時に、かなり異質の魔力とともに大きさを増していく。

おそらくクルーゼがあのロストロギアでも発動させたのだろう。

そして光がやみ、少しずつ姿が見えてくる。

「うげ……」

アルフがとても嫌そうな顔をする。

先ほどの光とは反対にまがまがしいまでの奇妙な生物のようなもの変わっていた。

なのはたちは、以前戦った闇の書の暴走プログラムを思い出す。

見た目は全然違うが、とてつもなく巨大な敵という事には変わりない。

「すばらしい……これがロストロギアの力と言うものか」

響いてくるクルーゼの声。

だが、以前のようなレイと似ている声ではあるのだが、多少ダミ声が混じっている。

「ここまでしたら話し合いの余地は無いな……」

クロノがつぶやくが、元から話し合いで済ませれるようなやつではないということは予測していた。

「クルーゼ……」

ムゥは、そんなクルーゼを怒りながら、だがどこか寂しそうに見る。

そこまでして人類を滅ぼしたいのか、と。

リンディは、重い腰を上げるかのようにゆっくりと立ち上がり、ある決意をする。

「現段階でロストロギア、ラウ・ル・クルーゼの捕縛を断念。本艦はアルカンシェルであれを打ち抜きます」

リンディに続いてクロノが言う。

「聞いたとおりだ、見て解るとおり奴はもう人じゃない。遠慮するな、思いっきり行くぞ!」

そういって皆は頷く。

あんなやつを放っておくと大変な目にあってしまう。

まずシン達の世界は滅ぼされる可能性が高い。

しかし、なのはたちはどこか気が気でなかった。

姿が変わったとしても、元は人であったものを倒さなければならない。

だが、彼が行った行為は許せれるものではない。

そう思って力強く自分の相棒を手に握る。

今はアルカンシェルのチャージがたまるまで、アースラを護衛しながら戦う必要がある。

距離が離れているとはいえ大変な作戦になりそうだった。

クルーゼらしきものはなのはたちを見る。

そしてアースラを見て、彼らの作戦をある程度は理解した。

「私の野望、この手で叶える前にまずは邪魔者である君達から葬ってやろう」

そういってクルーゼは問答無用に攻撃を開始する。

ドラグーンに似たものをこれでもかというくらい放出するクルーゼ

「クルーゼ!貴様との因縁、今回で最後にしてやる!!」

そういってムゥ、そしてレイもドラグーンを放出するが、あまりにも数の差がありすぎる。

「アクセルシューター!」

「プラズマランサー!」

「ブラッティダガー!」

『シュワルゲブリーゲン』

『ファイヤーフライ』

『スティンガーレイ』



複数弾を持つ魔術師も詠唱を始め、一斉に放出する。

勿論、ドラグーンだけではなくてクルーゼ自身からの攻撃も来るので、それにも対処しなければならない。

「これじゃあ地球軍の月面基地攻略作戦のほうが遥かにマシだな……」

レイはそう愚痴を言いながらいう。

そして気付く。

自分が愚痴を言いながら戦っていることに。

少しは人に近づいたのか、とレイは自嘲気味に笑う。

「これ、闇の書さんとの戦いのときよりきついね」

なのはは息を荒げながらいう。

あの時と比べて、弾幕の数が半端ではない。

アースラはまだ大丈夫そうだからいいが、先にこちらが持つかどうかわからない。

だが、確かにドラグーンの数は減ってきている。

……ある程度減ったらまた出てくるというゲームのような事が起きてはいるが。

「けど、このままじゃこっちがじり貧だ!どうにかしないとやばい!」

シンはドラグーン、そしてクルーゼの攻撃をかわし、地道に破壊しながら言う。



「アルカンシェルチャージ完了まであと10分」

オペレーターの言葉を聞きながら戦況を見るリンディ。

アルカンシェル。かなり強力な魔法だが同時に周囲に与える影響も大きな魔力兵器。

しかし、ここは次元空間なため、気にせずにぶっ放すことが出来る。

「後10分……」

おそらく長い10分になりそうだ、とリンディは思う。

この10分ですべてが決まる。

彼を逃してしまえば、少なくともシンたちが要るコズミック・イラが大変な事になる。

だから早いうちに叩いておく必要がある。

ただ……

「アルカンシェルが先か、それとも向こうが転移するのが先か。そこが勝負の分かれ目……」

リンディはそうつぶやいてサイドモニターを見る。



「……」

その頃、マユはただ遠くで見る事しかできなかった。

(皆がんばってるのに……)

こうして自分が見ているだけと言うのが悔しくて仕方が無い。

自分だってあの中へ行きたい。

しかし、今の自分では役に立たないどころか足を引っ張るだけ。

それがとても悔しかった。

みんなの力になりたい。

「え!?」

そう思ったとき、右手のデバイスが光りだす。

『マスターの意思によりプロテクション解除。『ラー』モードに移行』

そういうと、マユのバリアジャケットの姿が変わっていく。

魔法使いっぽかったジャケットから、どこか天使のようなものを連想させるものに変わっていく。

おそらくプレシアがマユの成長に合わせてプロテクトでもかけていたのだろう。

マユのデバイス「ゼフォン」に開放された「ラー」モード」

掛け合わせて「ラーゼフォン」といったところか。



このラーゼフォン。今までなったこともないのに、その使い方が何故かわかる事に戸惑うマユ。

その時だった。

「っつ!」

一発のドラグーンがシンにあたる。

その隙の逃すまいと複数のドラグーンがシンを襲う。

「くっそーーーー!」

シンはこれで何度目かわからない何かが弾け、感覚がクリアになっていく。

シンは先ほどまでの動きが嘘かのように次々と攻撃をかわし、破壊する。

ふと思ったのは、この感覚になった場合ほとんどが接近戦しかしない事である。

その例におぼれず、シンはスラッシュエッジサーベルモードとフルコールドを駆使してドラグーンを破壊する。

「!!」

その時、クルーゼから放たれた一撃がシンを襲う。

シンはシールドを張ろうとするが、その前に人影が現れる。

『音障壁』

その人影は透明色と言う少々変わった障壁(壁と言うべきか?)で攻撃を防ぐ。

誰なのかと思って間を見ると、そこにいたのは……

「お兄ちゃん、大丈夫?」

「マユ!?」

シンは前の前にいるマユを見て驚く。

しかもなにやらさっきのバリアジャケットとは姿が変わっている。

「おまえ、どうしたんだよそこ格好……」

シンはその格好をまじまじと見る。

だが、ここは戦場と言う事をシンは忘れていない。

その時、マユは意識を集中させる。

『ヴォイス』

マユの周囲から波紋のようなものが発生し、その波紋に触れたドラグーン次々と破壊されていく。

シンはそんなマユの力に驚く。

いつの間にそんな力を。

「ふぅ……」

波紋が止むと同時に、マユは深く息をする。

この形態になったばかりで、まだ制御がうまくいかないらしい。

しかし、その間にも新しいドラグーンが襲う。

「くそ!さっきから全く減った感じがしない…ゴキブリみたいにうろちょろと!」

あのーシンさん。ゴキブリは1匹見たら数十匹要ることは覚悟しろっていってるだけで、そうそう数十匹もいませんよ。

いたら気持ち悪いし。

それに数十って生ぬるい数でもないし。

そこへ

「刃もて、血に染めよ。穿(うが)て、ブラッディダガー!」

目の前に赤い刃のような魔力刃がドラグーンを襲う。

そしてさっきの声……

「シン、大丈夫?」

上からはやてがやってきた。

今のははやての魔法なのだろう。



「もうすぐアルカンシェルのチャージも終る。もうちょっとや、がんばろう。」

はやての言葉にああ、と答えるシン。

その目ははやてをみている。

そんなシンをはやては?と見つめる。

「やけに物騒な呪文だよな、さっきの。刃とか、血に染めよとか」

シンはブラッティダガーを出したときに行った呪文の事を言う。

あんまりはやてには似合わない。

「しょうがないやん。そういう呪文何なんやし」

そうおもっていると、不意にクルーゼからの攻撃がゆるくなった事に気付くシン達。

その時「いけない」とリンディの声が消えた。

『ふっ、どうやら私の勝ちのようだ。たった今転移分の魔力チャージが完了した。おしかったね』

流石にこんなに大きなものを目標のところまで転移させるにはかなりの魔力が要る。

だからたまるのにチャージに時間がかかる。

「間に合わなかったか」と言うクロノの声が聞こえる。

「まだだ!」

そういってレイがクルーゼのところへ突っ込んでいく。

シンはレイの行動を察知する。

「やめろレイ!」

そういってあまり得意ではないバインドをレジェンドに放つシン。

バインドはレジェンドの左手首に絡みつく。

確かに、それなら奴を倒せるかもしれない。

「まだ方法があるはずだ、早まるんじゃない!」

おそらくアルカンシェルというものを除けば一番威力が高いだろうが……

『離せシン!彼を止めるにはこうするしかない!』

ちなみに、なのは立ちは会話の話についていけない。

レイとクルーゼだけがわかっていた。

『見上げた根性だよレイ。まさか自爆を選ぶとは……』

クルーゼの言葉に驚くなのはたち。

そういえば以前シンが言っていた。

レジェンド、そしてデスティニーには核で動いているということを。

確かに、それならあれを倒せないまでも時間を稼ぐ事ができたかもしれない。

だが、そんな事はなのはも、ここにいるみんなが望んではいない事だった。

『惜しいな、レイの行かせておけば倒せていたのかもしれないのに、残念だったね』

そういってクルーゼは転移用の魔法陣を展開する。

しかし……

『何!?』

クルーゼは違和感を感じる。

そして、それはなのはたちから見ても明らかだった。

転移用の魔法陣がだんだんと消えていくのだ。

そして、クルーゼとは違う声が聞こえた。

『いい加減に死なさいクルーゼ』

キュに現れた女性の声。

その声はまさしく……

「かあ……さん……」

そう、その声はプレシア・テスタロッサだった。

『プレシア・テスタロッサ……生きていたのか……』

『ええ、最後の魔力をあのロストロギアに流しこんでね』



流石長年様々な事を研究したわけではなかったということだ。

流石の予想外の展開にクルーゼは舌打ちする。

『だが、生きていたところ悪いが、そのままではどうしようがないのではないかね?』

クルーゼの言葉に、プレシアの言葉が止む。

しかし……

『私はもういいわ、こうやってアリシアといっしょにいられることができたから』

プレシアノ言葉に驚く一同。

そして次に聞こえてきた声は……

『フェイト、マユちゃん。聞こえる?』

フェイトを少し幼くしたような声。

フェイトはこの声に聞き覚えがある。

それは、一度闇の書との戦いのときに、夢の中であったアリシアの声そのものだったから。

「アリシア……」